最悪の再会
あの宣戦布告から何週間か過ぎた。あれから、俺達も曹操達も……誰一人として動いていない……三大勢力はあの後、しっかりと同盟を組んだようだ
現在は、他の勢力とも同盟を組もうとしているらしい。その有力候補は主神オーディン達のアースガルズだ。オーディンと言えば、誰もが知っているだろう存在だ
アースガルズの主神であり、ミーミルの泉に片目を差し出した。その時に、魔術・魔力・その他の術式・結界に関して詳しくなった存在だ
隻眼の老人であり、伝説の神槍である『グングニル』と持つ神。戦争に置いて、一番警戒すべき存在だ
他にも勢力的にはまだある。誰もが知っているであろう神、オリュンポス神話の主神、ゼウス。ギリシアの三大神の一柱である。他にもポセイドンなどがいるが……まだ、前には出てこないだろう
現在は学校で言う夏休みが終わった所だ
グレモリー眷属とシトリー眷属は冥界に戻り、そのまま冥界で修業を終えた。赤龍帝よりも、あのヴリトラの方が成長しているのは驚きだな
それぞれが面白い成長を遂げたという事は分かっている。それ以上に、バアル家の当主の力が異常だったことも記憶にある
サイラオーグ・バアル。悪魔としても異例な存在……魔力という物から一番縁遠い悪魔。バアル家とく言うの魔力、滅びの力を受け継がずに生まれた存在
その為に、非常な不遇をかこって青春を生きたが、その体一つでバアル家の次期当主の座を奪い取ったほどの実力者である
若手No.1であり、修行により強くなり、拳で戦うスタイルを持つ存在だ……他の悪魔と違い、慢心という物を完全に捨てきった悪魔
「しかも……」
俺はそのサイラオーグの横に居る存在に目を配り、面白いと思いながら見る。俺が見ている存在は、サイラオーグの
おそらくは、前に資料で見た
何せ、
「危険人物だな……」
俺は俺の中で、かなりの実力を持つだろう存在のチェックをしている。それは昔からであり、今でもそれは変わらないでいる。だから、今此処でそれを書いているのだ
現在書かれている人物は、オーディン・サーゼクス・セラフォル—・アジュカ・ファルビウム・
サイラオーグ・タンニーン……他にもいるが、これが一番だろうと考えている
「もう少しだ……もう少しだけ、悪魔陣営の勢力が減ってくれれば、俺は戦争を完全に開始できる」
………………そう言えば、若手の中に確か……ディオドラが居たな……前の若手の顔合わせには、モニター越しで見たが……あの時の顔……
「何かあるな……」
予想だが、ディオドラには何か隠し事がある筈だ……調べてみる価値はあるか……
俺は資料をあさりながら、ディオドラの眷属構成から性格まで、その全てを調べつくしていった。そして、ある答えへとたどり着いた
そして、俺は……そのデータを見ながら笑った
「愚かだったな、サーゼクス。お前の信じている若手にも、どうやら屑はいたようだ」
その真実を知り、俺は心の底から笑った。悪魔が悪魔に裏切られるとは……滑稽にもほどがある。旧魔王でもない存在に裏切られるお前は、さぞ無能なのだろう
「まぁいいさ。はぐれ達も中級クラスには上がった。もう既に準備は完了だ……」
今回知ったディオドラの件で、必ず旧魔王が動き出すはずだ。だから、俺もそれに参戦しよう。少しだが、戦力減らしになるだろう
俺はそう思いながら椅子に座る……すると、横から黒歌がしなだれかかってきた
「ふにゃ~ん」
「……おい、黒歌。お前は何をしている?」
「んにゃ? 颯真に甘えてるのにゃ。これは私の意志にゃ、否定される義理はないにゃ」
「なら、俺がそれを拒否する意味はあるな」
俺は黒歌の顔を掴み剥がそうとするが、黒歌も負けじと俺の腰にしがみ付く。見ているだけなら、微笑ましい風景かもしれないが、相手が颯真なのでそうもいかない
颯真の顔は真剣そのもの。本気で黒歌を剥がしにかかっている……天道を使えば簡単なのだが、こんな下らない事に魔力を消費していられない
「ふにゃにゃにゃにゃ……!!」
「チッ!! この馬鹿力め……!! 筋力だけで言うなら俺よりも上なのがウザいな……!!」
颯真は別段筋力が弱いわけでは無い。だが、どちらかと言えば技で勝負する人間。それが、格闘重視の黒歌に勝てるわけもなく、そのままの状態が続く
しかも、黒歌は俺の腰に力を込め過ぎてやがる。段々めりめり嫌な音が走り始めてきやがった……!!
「姉様、その辺にしておいてください……颯真さんに暴れられては、此処が絶対に持ちませんから」
その醜い争いは、白音によって終戦した。黒歌も妹である白音に言われると何も言えないようで、力を込めていた手を、腰から離していく
その様子を見て、少し息を漏らす颯真は、自分の腰のあたりを触っておれていないか確認する。どうやら、ヒビも入っていないので、大丈夫そうだ
「………………」
「白音、黒歌から解放したことはまだ感謝できる。だが……お前も、俺の膝の上に乗る必要はないだろ」
「……甘えているだけです」
俺はその言葉を先程聞いたので、イライラして直ぐに白音を降ろす。この頃はこればかりだ……夏休みに入ってからという物、こいつはずっとこうしてくる
正直言えば、鬱陶しい。自分の戦争準備の最中にされた時は、本気で切り刻んでやろうと思ったが、俺の為に死ぬことが本望だと言う事を思い出し、やめた
「………………」
「颯真様!! 情報が来ております!!」
「ああ、今いく。黒歌に白音……いい加減にしなければ、今度こそ斬るぞ」
俺は二人に忠告して連絡場所へと向かう。冥界に居る俺の勢力に加担している存在から連絡が来ているらしい。それは何の情報か……
『颯真様、お呼び出しして申し訳ありません』
「そう言うのはいい。用件を伝えろ」
『はい。次のレーティングゲームの試合の次期が分かりました』
次のレーティングゲーム。それは、夏休みの間に行われていた物の事だ。それは、若手でレーティングゲームをして、自分達を高めるとでも言う物だ
最初はグレモリーとシトリーの勝負……俺の予想は当然シトリーだった。勝てはしなかったが、ヴリトラが活躍をして、赤龍帝を倒したことから、金星となった
王としてはやはり……シトリーの方が上だった
そして、これを利用するだろう旧魔王が居ると思っている。狙いは当然、グレモリー眷属のはずだ……何せ、サーゼクスの妹がいるんだから
「そうか……何時だ?」
『数日後……グレモリーとアスタロトの試合だそうです。しかも、アスタロトは勝ったらグレモリー眷属のアルジェントに婚約を申し込むと……』
……ほう……つまり、奴が……
「そうか……ならば、その時期にもう一度……俺は戦いに行く……お前らは例の物を急げ」
『はい、了解しました。それでは、失礼します』
次の試合。必ず奴らが動く……お前らの行動、ちゃんと利用させてもらうぞ。お前らみたいな奴等ほど、単純で馬鹿な存在はいない
旧魔王の馬鹿共よ……
数日後、俺は冥界の会場に来ていた。会場に来ている存在共を確認すれば、一番厄介なオーディンが居る事に気付いたが、そこまでの問題ではない
ようは、オーディンがいない場所で襲撃すればいいだけの話だが……
「……少し厳重だな」
「貴様には当然の行為だ。戦争を判断した糞野郎に制裁を加える……それが我々の仕事」
俺は転移と共に包囲され、何百もの雑魚に囲まれている。会場までの距離はそこまでだが、試合はまだ始まっていない。と言うよりは、ある事に対する準備だろう
「なるほどな……グレモリーを利用して奴らを誘き寄せる作戦か……よくサーゼクスが許可した物だ」
「貴様には分かるまい。魔王様の決断を……!!」
「ああ、分かりたくないからな……もういいだろう? 貴様らは此処で消える。何、悔いる事は無い。死が早まるだけだ」
俺は天照を使用して、全員を黒き炎に沈めた。この程度の雑魚相手に俺が手間取ると、そう考えている思想が気に食わないな……
『————————』
「………………??? 誰だ……?」
聞こえる……誰かが俺につぶやきかけているのがな……いや、この場合は違うか。語りかけていると、そう言った方が正しい
「……チッ……聞こえなくなりやがった」
何だ、あの声は……
「いや……考えるのは後だ……俺が今すべきことをやろう。考える事なんざ、いくらでもできる」
俺は直ぐに内部へと侵入、複雑な作りだが……警備が甘い……この程度で、俺を出し抜けると思って……いや、待て……おかしい
俺がここに来るのは確かに難しい筈だ。いや、そうでなければおかしい……!! なら何でおれは………………此処まで『誰にも会わずに』来れた……!!
その考えに至った俺は、直ぐに扉へと走るが……そこに封印術式が浮かび上がる。術式の複雑な仕組みから察するに、これはオーディンがやった物……
くっそ、気を抜きすぎた。慢心した良い証拠だ……
「……誰だ」
俺は後ろに感じる気配に反応して、そのまま振り返る。暗い空間であるため、相手の姿は見えない。だが、俺には『懐かしい』と感じる魔力だった
コツンコツンッと音を立てながら、俺の方へと近づいてくる。段々と光のあたる部分へと姿が出てきて、そのまま姿を現した
その姿を見た時、俺は懐かしいと感じた意味が分かった。その姿は昔から全く変わっていない
「……久しぶりね、颯真。元気……だった?」
「………………貴様の様な屑の顔を、もう一度見るハメになるとはな……」
………………鳴神芹香………………
「……見た感じは、元気そうね。もう何年になるのか、分からないけど……大きくなって……」
「何年会っていないか分からないのは、お前が俺やあの糞野郎に興味がないからじゃないのか?」
俺は長年合っていなかった母親にも、躊躇い無く冷たい言葉をかけて行く。それが当然であると、芹香は受け入れていく。何せ、捨てたのだから
鳴神颯真にとって、家族とは屑の塊である。それは一生変わることの無い事実であり、そうなる原因を作ったのは母親なのだから、言う事すらない
「もう……母親だとは思っていないかもしれない……でも、貴方を愛していたのは本当なの!!!」
「………………」
「あの人にきつく当たられるようになってからは、もう一緒に生きていけないって思ったわ。貴方を一緒に連れて行けば、また巻き込まれる。だから、力だけを教えて……あの場所を去ったわ」
涙を流しながら、芹香は語る。自分が進んだ道は、小さい頃の俺には厳しすぎる物だったと……だから、俺を連れて行く事は出来なかったと……
「いつか、あの力であの人を押さえて……また会いに行こうと思ってた……でも、貴方は犯罪者になってしまった。だから、会うのが遅くなってしまったの……!!」
俺がアイツを殺し、そして悪魔を殺したから自分は会いに来れなかったと……本当ならすぐに会いに行きたかったんだと、心の底から言っている
「私の事をもう信用していないかもしれない…………でも、お願い!!! 最後のチャンスを頂戴!!」
もう相手との距離は一歩程度しかない。颯真は芹香から目を離さずに、その言葉に耳を傾けている。それを見て、芹香はまだ話す
「貴方を受け入れる準備が出来たの!! 相手はガルダ・パイモン!! 彼ならあなたを受け入れて、面倒を見てくれるわ。サーゼクス様には私と彼から言って説得する!! お願い……!! 私を信じて……!!」
涙を流しながら……体を震わせながら……それでも、颯真から目を離さずに見つめ続ける。今までの努力は知らないが、彼女が言っていることが『本当』だという事は、颯真には分かっている
だからこそ、颯真はそれを目を離さずに見ていた
「……母さん」
颯真はゆっくりと……だが、しっかりと腕を上げて、そのまま受け入れる体制へと入る。それの意味が分かった芹香は、喜びながら颯真に抱きついた
ようやく届いたわ……!! もうこの子を一人にはしない……!! ずっと傍に居てあげるのよ……!! 今まで与えてあげられなかった愛情をこの子にそそぐのよ……!!
想いが届いたと嬉しくなり、涙を流しながら……感動の再会を体全体で味わっていた……
「言いたい事はそれだけでいいのか?」
嬉しく感じて、涙を流して、感動の再会だと……そう思っていたのは『芹香だけ』だった……
ドスッ!!
「………………えっ?」
体に走る激痛よりも、目の前で起こっていることに疑問を持つ芹香。目の前には、体からもう一本の腕を生やして、その腕にある聖剣で、自分を貫いている颯真がいた
頭が回らなかったのだろうか。目には困惑だけしかなく、貫かれた腹を押さえて血を止めている。少しずつ服を赤く染めていく血を見て、芹香はさらに困惑する
「……少しは感じられたか? 最愛だと思っていた自分の息子の温もりを……」
その時の颯真の眼は、話を真剣に聞いていた時とは違い、残酷な目つきに戻っていた