理解が及ばない。何で……? 何で颯真は私を聖剣で貫いたの……? 今さっきまで……私の事を受け入れようとしていたじゃない……
なのに、なんであの子は私を殺そうとしているの……? 分からない……分からないわよ……私は只……あの子の為だけに生きてきたのに……
「何で自分が、俺に殺されそうになっているのか分からないようだな」
当然の様にその言葉を口にする。颯真の眼をもう一度見れば、先程とは違い……冷酷かつ残酷な眼差しで、自分の母親を見下ろしていた
まるで、こうなる事が前提だったかのように……
「……何…で……わた…しを……殺そ…うと…してい…るの……?……そう…まは…私の……こ…とを……信じ…てくれ…たん…じゃな…いの……?」
「俺がお前を信じるだって? おいおい、寝言は寝てから言ってくれよ………………俺が『他人』を信じる訳がないだろう……」
他人? 違う………………私は貴方の母親なのよ。本物なの……家族なら、他人じゃないの……偽物じゃないのよ……お願い、目を覚まして……
そう言う思いの芹香は、颯真に目を向ける。だが、颯真をその意志を分かってこうしているのだ
「あの日……お前が俺を捨てた時点で、お前が俺の母親だという関係は終わったんだ。自分の息子を見捨ててまで、他の男と寝るような女が、俺の家族を名乗るな。まぁ、家族なんてその程度の価値しかないよな」
「…………それ…は……」
「あの時は確かに、俺の体じゃアンタに付いて行く事は出来なかったかもしれない。でも、そんな事は俺には関係ないんだよ。連れて行かれようがいかれまいが、もう既に終わったことだ。過去を変える事は出来ない……俺は俺以外を信じない事にしてる……今更お前を信じはしない」
「……おね…がいよ……」
それは命乞いではない。自分を信じてほしいと言う意味での願いだった。どこまで行こうと、芹香にとって颯真とは、愛すべき息子である
だが、そんな心からの願いですらも………………もう颯真には届かない……時が経ち過ぎ、そして行き違いになり、見捨てたことでこうなった
もう二度と元には戻れない。それが……俺達の運命だった……それだけの話だ
「最後に言って置いてやろう……俺はアンタが……母さんが好きだった。だが、それは過去の話だ……もう元には戻れない、戻る気もない………………アンタが悪魔に体を売ってまで守ろうとした息子の手で、死なせてやろう」
俺は聖剣を振り上げて、芹香の頭の上に振り下ろす。元家族と言う存在だとしても、俺は悪魔に慈悲はやらない。それが俺のやり方だからだ
その様子を見て、芹香はもう息子は戻れないのだと、ようやく気付いた……だからこそ、最後に……自分の想いだけでも言おうとした
「……最後に……会え…て……良かっ…た……」
「そうか。俺は最悪だったよ……お前の顔を見た所為でな」
俺は躊躇いもなく、その聖剣を振り下ろした。鮮血が巻き散り、その部屋を染め上げた。体にも血が付着し、顔にも少し血が付いた
聖剣についた血を振り払う……この世で唯一の……俺と同じ血を振り払う
「………………」
颯真は直ぐにその場にある封印術式をぶち壊し、外へと出て行く……血で滲んだ地面には……ほんの少しだけだが……血とは違う……透明な水が落ちていた……
芹香 side
私は…………きっと私は息子を……颯真の事を……愛しすぎていた…………
あの人との愛の結晶となり……あの子が生まれてきた……その瞬間から……
最初は……只、あの人とやっと……家族として生きていけると……そう思っていたの……
……あの子が生まれ、そして何日も愛情を注いでた……それを……あの人も望んでいたはずだ……
……それなのに……
あの人は……颯真が生まれて二年経てば……人が変わったようにおかしくなった……
……そんな子供を捨ててしまえとすら……一度言ったほどだった……そんなあの人の態度に……耐えられなくなった……
数日は、家に帰らない時さえあった……あの子を連れて……実家に一度戻った……
それでも……あの人は元には戻らない……
だから………………私は決めた……あの人の元を去ろうと……
本当なら……颯真も連れて行きたかった……!! でも、私にはあの子を守る事は出来ない……!!
苦虫を噛み締めて、あの子に力の事だけを教えて……私は自分と颯真を助けてくれる存在を見つけ出そうしていた……!!
何日も過ぎて……何年も経って……ようやく……そう、ようやく私達を受け入れてくれる人を見つけた……!!
嬉しくて涙があふれて……気づいたらもう、あの子の元へと走り出していた……!! 早く会いたい……!! 只、それだけを想って走った……!!
でも……あの子はいなかった…………あったのはあの人の死体だけ……
あの子は自分で動き出したんだと……私は間に合わなかったんだと……今度は悲しくなって……涙を流した……
でも……直ぐに颯真の事は知れた……あの子が犯罪者になってたことには驚いた……でも…私はそんなの関係なかった
愛情とは既に呼べない……そんな感情を……あの子に対して…抱いていただろう……
そんな調子だったから……私はあの子を見捨て……あの人の元を去ったのだろう……
見つけ出そうとしても……今はやめた方がいいと……助けてくれた人にそう言われた……悔しかった……
犯罪に手を染めてでも……自分らしく生きているあの子を見ると……心がはち切れそうになる……
また何年も経って……ようやくあの子と話をする事が出来た……
私の事を恨み、妬み、憎悪しているだろう……そんな眼をしていた……
最後の最後まで、あの子に心には……私の想いは届かなかった……!!
もう元には戻れない……でも……
最後に私を抱き止めてくれた……あの瞬間に一度だけ……母親という物を感じられた気がする……
だからもう……私は貴方を止めない……
だから……後悔しないように生きてほしい……そして私は……
あの子の……颯真の事をどこまでも愛していると……その心が壊れませんようにと……
自分の命が尽きる最後の瞬間まで…………それだけを想っていた……
俺らしくもない……そう思いながら、俺は自分の眼を拭う……もう振り切れたと思っていた。だが、それでも俺の心はまだ、人間らしさを失っていなかったようだ
「…………もう戻れない……」
そうだ。俺は立ち止まれない……このくそったれな世界に生まれ、そして塵に等しい人生を送ってきた俺には、立ち止まる事は許されない
俺は直ぐに外へと飛び出し、既に開始されている旧魔王派と三大勢力の戦闘に介入した
「さぁ、行け……聖獣共!!!」
「「「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
俺は聖獣達を悪魔どもに向かわせる。人間らしさは此処で捨てた……
「お前も参加か? 魔帝」
「ああ、面倒事に巻き込まれてしまったな。あの女を……俺に向かわせたのはお前らだな」
「ああ……あの女がどうしてもお前を説得したいって言いやがって……何でか聞いたら、お前の母親だっていうんだから驚いたぜ。それで……お前は殺したのか?」
「当然だ……俺を捨ててまで、他の男の所に行った女など……俺にとって塵でしかない……問答は終わりか? 俺は行かせてもらうぞ……」
「そうもいかねぇ……俺らだってめんどくさいが、やらなきゃいけない事があるんでな……」
そう言いながら、懐から見たことの無い小さい槍を取り出す。予想だが、あれがアザゼルの使う人工
「悪いが……お前の相手は他の奴にしてもらうとしよう……」
俺は空間からある存在を呼びだす。信仰深きものならば、見れば見取れるであろうその容姿は美しく……そして、その手に持たれている武器からは……言いようのないオーラを感じる
そして、それを持つ本人からも異様な力のオーラを感じ取ることの出来たアザゼルは、少し距離を開けて此方を見る
「なんだ……そいつは……」
「俺が創り出した最上級天使の一体……
「デュランダルって事は……」
「ああ、コイツに持たせている聖剣は……俺が改良を加えて、威力と聖のオーラ量を出来るだけ多くした特別性のデュランダルの偽物だ……だが、威力だけで言うなら本物以上だ」
何体も作れなかったのが悔しいがな……
「まだ何体かいるが……お前一人を相手にするには……コイツで十分だ」
俺は天使に命令を下し、アザゼルと戦闘を開始させる
「チッ!!!」
最上級天使はアザゼルと言えど、流石に笑いながら相手が出来る相手ではない。しかも、あいつが最上級なのは、デュランダルなしでだ
アザゼルがあの槍……なら、こっちはデュランダルだと思っただけだ……
だが、これも足止めにしかならないだろう。アザゼルを死なせるわけにはいかないのは、悪魔陣営なども同じだ。なら、サーゼクス辺りが出てくるだろう
さて……外は魔獣どもに任せればいい……後は……中で起こっていることの把握と、オーディンの実力の確認だな
中へと入るのに少し時間を割いたが、なんとかオーディンの居る所へは来れた……レーティングゲーム開始をしたのがさっきだ
なら、近くにグレモリー達が居るのも当然だな
すると、近くにアルジェントの姿がないことを確認して……ある程度の現状を理解する……そう感じた瞬間、オーディンが力を解放したのだろう
白く青いオーラが溢れ出し、襲い掛かって来た旧魔王派の悪魔どもを全て消し飛ばした。その力を目の当たりにして、やはり危険な存在だと再確認する
「ほっほっほ……どうやら、儂以外にも、この結界を通り抜ける事が出来る者が居ったようじゃのぅ」
「……主神オーディン。初めて会うが……なるほど……先程の一撃、中々の腕前でした……神話の神の力、名ばかりではないようですね」
「颯真っ!!! お前もあいつに関係してるのかっ!!!!」
「吠えるなよ、赤龍帝……あいつってのは、ディオドラ・アスタロトの事か? だったら、俺は関係していない」
「それが本当だと言える証拠は?」
「別に信頼してほしいなどと思っていない。貴様らに証拠を出す意味もない……言えることは、あいつの趣味を知ればわかるだろう。それに……俺はあんな
「どちらでも構わないわい。儂らの目的は只一つ……お主と
「流石は主神……あなたの考え方、俺からすれば素晴らしい物だ。相手に情を抱かず、しっかりと自分を持つことの出来る存在だ……だからこそ、俺には分からない……何故、悪魔の様な腐った連中と同盟などを組んだんだ?」
「お主には分からんだろう。儂らは平和を望んでおる……それを仇成す者ならば、どんな奴らであろうと許さん」
なるほど、只今の平和を保つための同盟。だが、それだけではないな……まぁいいさ……オーディンの実力は見られた……少し遊んでいこう
「俺はこの辺で失礼しよう……先に行かせてもらうぞ……グレモリー眷属」
「逃がすと思っておるのか?」
オーディンは自分の手に持っているグングニルで俺を貫こうとするが、俺は神威でそれを無効化。そのままグングニルは、俺の体を通り抜けた
少し距離を開けて、俺は神威を使用した
「一つ聞くぞ……お主、自分の母親はどうした」
「そんな解りきった答えを聞いてどうする? お前に何の意味もない筈だ」
「何、じじいの知的好奇心じゃ」
「……殺したさ……俺のこの手でな……俺は自分の家族を全て殺したことになるな……後は、死んででも殺さなきゃいけない存在である……ガルダ・パイモンのみ……」
「ガルダ・パイモン……なるほど、貴様気が付いておったのか……」
「当然だろ。俺の母親に手を出すんだ……奴位しか、俺を『殺そう』としないだろう」
俺は母親の助け人、ガルダ・パイモンが……自分を殺そうとした悪魔だという事は分かっていた。名前を知らなかったのだが、そいつくらいしかいない
母親を通じ、自分を信頼させ、そして俺の首を隠れながらに斬り落とすつもりだったのだろう
「そんな悪魔を野放しにする悪魔も、俺がこの手で葬り去る……」
「恐ろしい人間じゃ……悪に取りつかれ、自分を見失ってまで復讐をするとはな……その罪は、命で償うしかないのぅ」
「ほざけ、俺には関係のない事だ。俺は俺だ。悪と呼ばれようと構わない……それが俺だから……」
俺は神威でその場を立ち去った。捕まっているだろう、アルジェントの元へと……