あのステージのさらに奥にある神殿……ある程度暴れても、壊れない作りになっていることは見ればわかる。ある意味本当にゲームの様だと、一般人なら思うだろう
RPGなどでよくある場所。定番であり、ゲーマーの中では面白くないと言われる可能性が高いのは、お姫様が攫われてそれを助けに行く勇者……少なくとも、定番ではある
そんなものに近い神殿。しかも、現状は聖女のアルジェントを助けにグレモリー眷属がここまで来ようとしている。似て非なる物
助けに来るのは悪魔であり、助けられる者もまた悪魔。矛盾があるという物だ
俺はそんなゲーム等は知らないが、少し気になる事があった。アルジェントの事でも、ガルダ・パイモンでもなく……あの時聞いた声……
芹香に会う前に聞こえてきた声……あれが何だったのか……襲ってくる機会はあったはずだが……それでも、俺のとこに来なかった
「ダメだな……考えてしまう……今は俺のするべきことをしよう」
もしかしたら……あのアルジェントに何かあれば、あの赤龍帝はどうなるのか……感情を爆発させやすい兵藤一誠は、その時どうするのか……
それがもしかしたら、今回見れるかもしれない……
そう思いながら、俺はディオドラのいる部屋へと来る。完全に縛られ、捕まえられているアルジェント絵を見た後、俺の存在に気付くディオドラ
その傍へと、俺は一瞬で動く。その行動を時が止まったかのように見るディオドラ……このレベルでは、赤龍帝を倒すには程遠いだろう
「なっ!!?…………貴様は!!」
「俺の動きを見て、自分の防衛に入るまでに2秒。最低15回以上は死んでるぞ」
俺はディオドラの首に剣を突きつける。寸前で止められた聖剣に、腰が引けているディオドラ。自分ほどゲスな理由で誰かを殺している
そんな存在を前にしていると思うと、少し苛立ちが来る。こんな奴らと同じような扱いを受けているのかと、今すぐこの首を落としたくなる
「いくつかの質問に答えろ……お前はこの聖女を騙したのは知っている。それがお前の趣味だという事もな。お前に渡されて、いきりなり強くなったものの正体は何だ?」
「そ、それは『オーフィスの蛇』だ。こいつをつかって……僕は強くなった……」
オーフィスの蛇……なるほど……己の力を相手に渡し、その者の強さを高める道具。リーダーに、いや……人形として使われているオーフィス
その者から力を借りてまで、貴様らはどう種族での争いを望むのか…………哀れな生き物だ
「次だ……この結界を張っているのは誰だ?」
「え、英雄派のゲオルクだ……
チッ、また英雄派か……奴らの情報が少ない事には本当にイラつく。曹操の
そして何よりも、英雄という存在であった者の子孫などである事
「そうか…………もういい。お前に聞きたい事は全部聞けた」
「そ、そうかい……なら、見逃し……」
「もうお前は用済みだ……この場で消えてなくなれ……」
俺は首に突きつけていた聖剣を振るい、ディオドラの首を斬り落とした。外道の血が巻き散り、それを俺は光でディオドラの死体ごと消し去った
俺は直ぐに、アルジェントの方へと歩み寄る
意識を失っていたアルジェントは直ぐに意識を回復、そのまま俺を虚ろな目で見た後、意識が覚醒した
「……あの人は……」
「ディオドラなら消した。この手でな……どうせ、あの塵から聞いてるだろ? お前が悪魔になった本当の理由は……それが、現実だったって事だ」
「それは……」
「お前は愚かだ、実に愚かだ。俺と初めて出会った時、お前は『自分よりも他人が大切なのは偽善だと分かっていてなお、そう生きたいと思った』……その癖に、自分でその守りたい何か……今でいえば赤龍帝か……? あいつらを危険にさらしているんだ。馬鹿だな、お前…………自分が目指し、望んだ道を歩んできて……その道の先は、自分が目指した場所からもっとも遠い場所だったと…………そんな簡単な答えにも辿りつけなかった」
俺の言葉に顔を俯かせることしかできない。当然だ……それが事実なんだから……アルジェントに関して言えば、それが分かっているからこそ、反論はしない
俺はアルジェントの拘束器具をある技で破壊する
「
俺はそう言い、アルジェントの拘束器具を破壊した。地面へと足が付き、ふらふらと腰を落とすアルジェント
赤龍帝の
「な、なんで私を……」
「お前の拘束器具にある物が仕掛けてあった。お前の
助ける為じゃなく、俺が助かるための行動
「とことん利用されているな……お前」
俺は数人の足音が来る感じを感知し、そのまま俺はアルジェントに言った
「……お前の偽善の所為で、こんなとこまで来るはめになった奴らが来たな」
正直、今のあいつらには何を言おうと意味はないだろうな
「行けよ、アルジェント……お前の偽善を必ず、俺は否定しきる。お前がその想いを、どこまで貫き通せるか……見ものだ」
そう言い終えれば、ゆっくりとその部屋から出て行くアルジェント……俺はそれを見ながら、自分の聖剣を片付ける
「……簡単に終わればいいんだがな…………シャルバがこの場で戦う時点で、お前らが怪我なしで帰れる訳じゃない……あいつも、塵に等しいが力はある……」
旧魔王派のシャルバ・ベルゼブブ。奴がこの時に動かない手はない、直ぐに行動に出るだろうさ。その時、赤龍帝……お前はどうする……
その瞬間……神殿に赤いオーラが充満した
俺は赤いオーラの発生源を見つけ、それを観察する。その正体は、赤龍帝の兵藤一誠。どうせ、アルジェントがやられたんだろう
あの場に気配がないところを見ると、その可能性が一番高い
未だにわからない。目の前で悪魔一人が消えた所で、何故そこまで怒り狂い……そして、力が湧きあがってくるのだろうかと……
「我、目覚めるわ—————」
〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉
その存在は、何時でもその姿へと成り果てた。天龍と呼ばれ、その力に慢心した愚かな存在のなれの果て
「覇の理を神より奪いし二天龍なり—————」
〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉
力の塊であるドラゴンの力……その中でも、上位にある二天龍の赤龍帝・ドライグの力……それに溺れた者達の声が聞こえてくる
馬鹿みたいに力だけを求めてきた。そんな愚かな人間どもの声が……
「無限を嗤い、夢幻を憂う—————」
〈世界が求めるのは—————〉〈世界が否定するのは—————〉
だが、俺もある意味溺れている。自分の力にではなく、世界の狂気にのまれ、そして世界へと溺れた。そう言う点で言えば、似ているのかもしれない
その赤き鎧の龍は、目の前に居る得物をすべて破壊し、そして神を超える龍となる
兵藤一誠は確かに弱い。力もなく、魔力もなく、才能もなく、頭も良くない。だが、それ以上に龍としての資質はあると思っている
誰かの為に泣き、怒れる感情的な存在であり、可能性の塊でもあるアイツは、今までのどの赤龍帝よりも危険であり、最高だと……
昔の俺も、あんな風に想いを貫き通していたのだろうか。もう、それを思い出す気もなくなってしまった。俺から見れば、今のお前は眩しい
誰かの為に泣くことの出来るお前は眩しい。だから、俺はお前を否定する。世界に望まれて生きているお前を、俺は好きになる事は出来ない
「我、赤き龍の覇王となりて—————」
〈いつだって—————力でした〉〈いつだって—————愛だった〉
だが、今のお前は先程のアルジェントと同じように……お前の望んだ道から……最も遠い場所に居るぞ。そして、いつだって人間や悪魔が選ぶのは……
「滅びの道なんだよ」
その結果が、あの姿と言うわけだ
《何度でもお前達は滅びを選択するのだな!!!》
「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう—————!!!」」」」」」
「『「『
龍……それは太古より生まれてきた存在。飛龍・古龍・魔龍・聖龍・天龍・地龍・海龍・龍神など、様々な階級や種類が存在する
その全てが、強さの証でもある
天を貫き、海を割り、地を砕く。そして、自分の力を誇示するように天へと咆哮を放つ。それは強さの象徴であり、絶望を刻む行動
今でいえば、赤龍神帝・無限の龍神・二天龍・五大龍王。この辺りが一番強いだろう
「だが、これ程までとはな……」
目の前に繰り広げられる戦闘。シャルバを蹂躙する赤龍帝の覇龍……あれで未完成とは、恐ろしい物だな。勝てないという事ではないが……
覇龍……使用者の強さにも関係しているんだろうが……あれから兵藤一誠の力は上がっても、あれほどまでに強化されるとは思えない
シャルバの両腕は既に死んでいる。あの赤龍帝の巨大な姿とスピード、そしてなによりもパワーに押されている時点で、あいつが勝てる要素はゼロ
本来ならばそう言いたいが、ある意味赤龍帝はこの後死ぬかもな。体の中に入った怨念の力……それと覇龍の副作用の一つ、寿命……
不完全な状態でそれをしたのなら、命が消えるまであの状態で暴れまわる。つまり、シャルバは時間を稼げれば勝ちなんだよな
だが、そんな行動は奴のプライドが許さない。相手を自分の力で叩きのめそうとする。そんな奴にはもう、勝てる見込みもないか……
シャルバは追い込まれ、そのままブレスを喰らった。それは周りの神殿の残骸を吹き飛ばし、辺り一帯を赤い閃光で塗りつぶした
光と風が収まれば、そこにはシャルバは居ない。つまり、消し飛ばされたのか、もしくは寸前で転移したのか。どちらかなど、今になればどうでもいい
俺は少し違和感を感じ、空を見上げる。次元の狭間から、何かを感じる……そう考えていた時……
「ごほっ!!!?」
後ろから凄まじい衝撃が来る。それに耐えきれず、そのまま俺は地面へと激突。大きい砂埃を上げながら、俺はゆっくりと立ち上がる
目の前に居るだろう、俺を吹き飛ばした張本人を……睨み付けながら
「随分と態度が悪くなったな……赤龍帝」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! アーシアぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「お探しの聖女は何処に居るか知らねぇ……知りたきゃ他を当たってほしいが……そう聞き分けよくないよな……?」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は突進してくる赤龍帝を須佐能乎で受け止める。力は凄まじい……!! 第一形態では止められないか……!!
「チッ!!」
俺は須佐能乎を解除し、神威で攻撃を避ける。勢いをそのままにしたのか、神殿の残骸に激突する。俺はそれを見届け、戦闘態勢に入る
「お前らに見せてやるよ……これが完成形態の須佐能乎だ」
俺の体から黒い骨が飛び出してくる。それは段々と形を変えていく。いや、それだけではない。その大きさも段々と大きくなっていく
それが完成した時、それは赤龍帝よりも大きく、顔は天狗に近い姿をして、侍のような状態になっていた
「お前が初めてだよ……俺を全力にさせたのはな……やはり、貴様の可能性は凄まじかったな」
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「この声も…………もう既に届いていないだろう……」
俺は只一つの行動をとる……それは須佐能乎の刀を一気に引き抜く事……相手を斬り裂くつもりで……そのたった一つの行動で……
ズガァァァァァァァァァ!!!!
その神殿と大地……遠くの山が割れた……
誰もが驚く出来事だともうだろうか? いや、そんな事は無い。何せ、悪魔は生身の状態の最上級悪魔ならば、山を消し飛ばすことも可能
相手が信じられないとすれば、その現象を人間が起こしたと言う点だ。人間が山を真っ二つに出来るはずがないと、声を荒げて言うだろう
それは事実だ。だが、真実ではない。悪魔のレベルの話だ。俺では次元が異なる
「さぁ、来な……お前の寿命が尽きるまで、遊んでやる」
デカさだけで言うなら、俺の方が上だが……力だけで言うなら話は別だ。いくら俺とはいえ、神を超えるだろう技の一つである
今みたいに暴走に入っているのなら……だけどな。理性がある奴の場合、俺は普通に倒せる。それだけの力がるからな
「暴走とは面倒だな。力を隠しておきたい分……須佐能乎と神威以外はやめておいた方がいいな……」
俺は突進してくる赤龍帝を止める。圧倒的な実力差……須佐能乎で受け止めた赤龍帝を、俺は何度も地面へと叩き付ける。首に噛みついて来るが、俺の体ではないのだからダメージは一切ない
刀を抜き、斬りかかる。体を斬り裂きはするが、俺の刀の動きを一瞬だけ止め、軌道をズラした。時間停止の力……面倒な物を使ってくれる
血は出ているみたいだが、思ったよりも深くない傷。攻撃の手を緩めず、俺は斬りかかる。それをまた、時間停止で止める。時間停止をするのはいいが……
「見えない所からの攻撃にも、注意は向けるべきだ」
ザシュッ
赤龍帝の後ろから、巨大な聖剣が現れ、そのまま斬り裂いた。脇腹からは、通常よりも多くの血があふれ出ている
「聖剣の一撃は痛いだろう? 大きさを重視して作ったから、威力は保証できないが……悪魔の体を蝕むには丁度良い」
さらにその聖剣の数を増やす。1、5、10、100と増やし。そして、それら全てを空へと浮かばせる
聖剣の雨に耐えられるかどうか……見ものだな……
俺は手を振り上げ……そして振り下ろした。それを合図に、すべての聖剣が雨のように降り注ぐ。鳴り止まない金属音が、崩壊した神殿によく響く
段々と立ち昇ってくる砂煙と、音を立てながら崩れる残骸……そして、段々と消えていく赤龍帝の赤いオーラ
しばらくして、聖剣の雨は止み。俺は須佐能乎を解除した。砂埃が晴れれば、そこにはボロボロで横になっている赤龍帝の姿があった
「思ったよりも早く終わったな。お前の体力が持たなかったか…………少し時間が経てば、俺も傷が一つくらい出来ていたかもしれないな」
体のいたるところに小さい聖剣が突き刺さっている姿を見る。黒い斬られたところからは、血と共に黒い煙の様な物が立ち昇っている
「寿命のほとんどを失ったな。だが、良いデータが取れた……これでまた、俺は一つ強くなれる」
俺は用がなくなったその場を神威で去った