終焉始まる
静かな夜
一週間くらい経った頃、悪魔側で言えば……既にロキ戦が終わった辺りか……そのような時期に、颯真の勢力は動き出していた
そう……遂に動き出した……悪魔殲滅の勢力が……
「……ようやくか……敵戦力もだいぶ減った。兵器の量も十分。天使や聖獣の量産も問題なく進んだ。殲滅の時間だ、お前ら……」
目の前に居る者達すべてにその声は聞こえていた。一言一言聞き逃さないように、全員が颯真の声に耳を傾け、全神経を研ぎ澄ましている
颯真の横には、黒歌と白音が見守っている
「すでに実力だけで言うなら、中級の上位と言ってもいいほど、お前らの実力は増した。なら、後は暴れるだけだ。俺は俺の仕事をする……目標を達成するためにな。いいか……後悔しないようにしろ」
「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
さぁ……開戦だ
場所は変わり、そこは冥界の街……自身が死ぬことなどないと、そう信じきっている者達が、今もゆっくりと待ちを見て回っている
その上空には、颯真が経っていた
「派手に開戦と行くぞ」
俺は目を使い、自分の魔力を使う。それは今までの比ではないほど、多き魔力を使用して発動する術だからだ、天道の能力を使って……
「落ちてきな……隕石」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴっ!!!!
空とは言い難い紫色の空から、黒き異物…………隕石が降ってくる。その質量は、人間界で見るような物とは規模が違う……
それはゆっくりと空から落ちてくる。宇宙空間から取り寄せたそれは、冥界の街を滅ぼすには申し分ないほどの一撃となる物だった
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「誰か、誰かぁぁぁぁぁ!!!!」
ああ、無様だ。とても滑稽な姿だな、悪魔ども……そうやって逃げ惑え……逃げ切れたとしても、それは死が少し延期になっただけだ
貴様らが死ぬことに代わりはない。逃げるなら逃げろ、それだけお前らが絶望を知るだけの事
颯真は悪魔達を見て、自分が最初に起こした小学校の事件を思い出していた。あの時と同じように、目の前の存在は逃げ惑っている
いずれは捕まり、死ぬだけだと言うのにだ……無駄な足掻きをする存在を見ながら、颯真は失望の色に染まりきっていた……
颯真が落とした隕石はそのまま地面へと迫る。あと少しかと、あと少しかと。そう遅い時間だと感じるほど……隕石はゆっくりと落下し……
そして……地面へと……激突した
ドガァァァァァァァァァァ!!!!
街の中心部へと激突した隕石は、そのままデカい質量と共に、その場に大きく残った。突き刺さったその中心部分は、デカいクレーターを作っていた
大地は盛り上がり、そのまま隕石が傾いて倒れてくる。それが倒れ込むと、多くの悲鳴が聞こえる
子供の母親を求める声、青年の恋人の死を嘆く声、夫の妻の居所を探す声、老人の絶望に満ちた声、様々な生物たちの声が聞こえてくる
その全てが、悲しみ、憎しみ、怒りなどの類。だが、俺はそれがどうだろうと考えを変える気は無い。元々、こうなる事を予想できなかった悪魔
早めに俺を始末しなかった魔王の甘さ。その所為で、これだけの被害が出た。俺が悪くない訳じゃない、俺が原因であるのだから
だが、俺一人が悪いわけでもないのだ
俺はふと目を凝らす。目の前で、岩の下敷きになり、死にそうになっている母親と、それを助け出そうとしている子供を見つめる
逃げろと叫ぶ母親の声を無視して、子供は母親を助けようとする。涙を流しながら、手を血だらけにしながら、母親を助け出そうとする
俺はそれを見ても、何一つとして感じなかった。何せ、愛情という物を知らずに育ってきたような物、俺に理解のできない物だった
子供が助けようとするたびに揺れる小さくも、子供一人下敷きになれば死ぬだろうデカさの岩。それが、子供が岩を退けようと頑張っている瞬間
それは子供の上へと落下し、子供を無慈悲にも圧殺した。母親は、目の前で子供が死んだことを嘆き、涙を流し続ける。そして、数分経った時、母親も力尽きた
「……下らない」
血、岩、煙、その他の物で満たされた街を見てそう言い漏らす。母親を見捨てて、そのままその場を離れていれば、死なずに済んだ
自分の力で岩を動かす事も出来なくせに、意地を張って死んだ。愚かだ、到底理解することが出来ない。自分よりも誰かが大切だと言うその思考が
「黒歌、白音……聖獣共を解放しろ。さっさと目的を達成する……俺が戦争に勝とうが、負けようが……俺はどのみち、死ぬ運命だからな……良くてコキュートスいきだ」
「「わかったにゃん(わかりました)」」
「開戦の合図は出した。もう各地で、戦闘が行われているはずだ」
サーゼクス side
「行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
そう勢いよく声が聞こえてくる。僕ら四大魔王はすぐさま、先程の隕石での被害と、民の安全確保の為に動いている。私とセラフォル—は戦闘へと参加、他の二人は防衛と安全確保に動いている
だが、被害は甚大ではなかった。隕石のデカさもそうだが、転生悪魔のほとんどが我々へ反抗していることに、驚きしかなかった
「貴様ら……!! 転生悪魔の分際で……!! 我々に逆らうか!!!!」
「だからだ!!! こんなくそったれな世界で生きて行くくらいなら、命を捨ててでもお前らを多く殺してやる!!」
修羅の如き顔で、転生悪魔の者達は純血悪魔の者達を殺していく。その身がどれほど傷付けられようとも、足を止めずに、突き進んでくる
「どけぇぇ!!」
一人の上級悪魔が転生悪魔の裏切り者を攻撃。そして、その者の動きを止めた
「後でゆっくりと潰して……!!」
「この身は捨てたも同然……!! 死ぬなら……」
転生悪魔は男に抱きつき、そして呪文を唱え始める、それが唱え終えると……
ドガァァァァァァァ!!!!
爆発が起きた。
何っ!! まさか、自爆してまで相手を殺そうとした……!!! そんなまさか……僕らはそこまで、彼らに……!!
「ぐっ!!……死んでもなお、敵を殺したあいつを忘れるな!!! 行くぞ!!! あいつの分まで相手を殺すんだ!!!」
その死をも勢いに変えて、そのまま我々に突き進んでくる者達……そして、ついには……
「せ、聖獣だぁぁぁぁ!!!」
彼の生物たちまでもが、此処にやってきてしまった。前に現れた聖獣とは違い、レベルの高い聖獣達……それの出現により、より一層勢いが増した
「これほどまでに……僕たちは間違っていたのか……これほどの数の転生悪魔達を、苦しめていたのか……!!」
自分が間違っていた。だが、もう遅い。既に過去は変えられない……今それが、現実となっただけなのだ
「颯真っ!!!!」
「………………元には戻れたようだな、赤龍帝」
冥界の入り口、その近くで俺は待ち構えていた。あいつらが来ることを待ち構えていた。グレモリー眷属、シトリー眷属の全員を……
「……もう止められない。転生悪魔、はぐれ悪魔でさえ、この戦争に参加した。理由は至極当然の理由……己の家族の繋がりが消えたから。只……それだけ。自由を奪われていた者達の反逆……主に恵まれたお前らには分からない悩みなんだよ、赤龍帝」
「それでも……こんな事をする理由にはならないだろ!!!」
「それはお前が知らないから言える事だ。お前は知っているのか? あの悲鳴に満ちた世界で生きる者達の声を…………家族にも、友にも、社会にも、世界にすらも恵まれなかった俺や……家族の繋がりを失った者共の事を……お前は理解できないだろ」
「理解はできないかもしれない……!!! けど、分かち合う事は出来る!!!」
「それが愚かな行為だとまだ気づかないのか? 分かち合う事が出来る? そんな事が出来るはずがないだろ。同じ気持ちが分かる者などいない。だから今、反乱と共に戦争が起こっているんだ」
「家族を失う気持ちは分からない、俺は失ったことがないから……!! でも、それがどれほど温かい物かは、俺にだってわかる!!!! こんな俺を、どこまでも愛して育ててくれた親の大切さは、死ぬほどよく分かってる!!!」
「お前が分かるのはその程度だ。失ったこともない奴に、この反乱は止められねぇよ。反乱を起こしてる奴は、自分の命を捨ててでも、お前らの命を消そうとするだろう」
問答は此処までだ。これ以上話しても仕方がない……目的を果たすまで、ジッとしててもらわないといけないんでな
「匙っ!!!」
「はいっ!!! 会長!!!」
シトリーの素早い判断。ヴリトラは俺に一本の白い線を巻きつける。奴の神器のはずだ。能力も前と違いはない。だが、あの体にある者から察するに……
全てのヴリトラの武器を体に身に着けたな……中々の無茶をするものだ……
俺は線ごと、ヴリドラを引き寄せる。だが……
「背中ががら空きですわ」
後ろに回っていた姫島朱乃の雷光により、俺は背中にダメージを……受けかけた……
雷光は俺の体を通り過ぎて、そのままヴリトラへと直撃。光は悪魔にとって毒。それを直にうけたヴリトラは膝をついて倒れる
「匙っ!!」
「がぁ……!! ぐぅぅぅぅ……!!」
「相手の事を知らずに攻撃するからだ。観察から入らなかったのが、今のミスにつながった」
体から煙を出しながら、意識を失うヴリトラ。それを見て、シトリーはあいつに駆け寄る。やはり、シトリーにも、切り捨てると言う選択肢はないか
俺はそれを見て、そう決定づけた。もうシトリーを王と認める必要もない
「ドラゴンショットっ!!」
「ふん……」
「な……!!」
俺の後ろから……死角からの一撃。俺はそれを見もしないで、片手で握りつぶした。その行動に、赤龍帝は驚きしかない顔をする
「何を驚いている。この程度の技、避けるまでもない。タンニーンとの修行で、少しはましに育ったと思っていたのだが、勘違いだったようだな」
手を開ければ、赤い球の欠片がパラパラと散った。赤龍帝は、今ほど実力差がると思った事は無いだろう。魔王の場所には他の者達が居る
この場所に援軍に来るにはまだかかるだろう。来るとしても、アザゼルとタンニーン、バラキエルくらいだろう。いや……この場合、オーディンなんて選択肢もあるかもな
「魔帝……!!」
「ほう、オーディンの所のヴァルキリーか…………魔術に長けているように感じるが、格闘に剣術も使えそうに感じる。万能型……だが、いかんせん実力はまだまだだな」
俺はヴァルキリーの一撃を片手で受け止める。指の先から天照の細いレーザーを撃つ。それは、ヴァルキリーの腹を貫通し、そこから発火する
「っ!! あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヴァルキリーは発火した部分を押さえるが、それが手にも発火。段々と燃えつくされていく体。黒い炎が、奴の体を埋め尽くそうとするが……
「ロスヴァイセさんっ!!!」
アルジェントの行動により、その炎は段々と収まって行く。まだ黒い炎の勢いの方が大きいが、あの調子なら止められるだろう
「聖女……死んだわけでは無かったんだな」
「あの後、ヴァーリが連れて来てくれたわ。あなたの様な、外道と違ってね」
「ああ、俺は外道かもな。お前らかすればだが…………この反乱をしている者は、俺の事を尊敬しているらしい。何せ、自分の憎しみの対象を殺している存在だからな。そいつらから見れば、お前らの方がよっぽど外道だ」
「はぁっ!!」
俺とリアス・グレモリーが離している間に、後ろに回り込んでいた木場裕香。それを見て、相手は取ったと感じた。俺は神威を発動『しない』状態で、それを待つ
木場の攻撃は、俺の体へと向けられて、そのまま……俺の体を……
「………………」
「……それがお前の弱さだ、木場裕香」
斬り裂かなかった。剣は俺の頭の上で止められて、そのまま微動だにしないでいる。その行動を見て、眷属の全員が驚きに染まる
「裕香ちゃん!?」
「どうしたの裕香!!! 早く……!!」
「斬り裂けないよな。お前は優しい……優しすぎる。だからこそ、お前は俺を斬れはしない。昔の恩を忘れられず、和解できると信じ、その剣を振り下ろせないでいる」
「……颯真さん……お願いですから、降参してください……!!」
「まるで、自分が俺に勝てるみたいな言い方だな。この場面で、俺を殺せないのがお前の弱さだ」
俺は聖剣を握り、木場裕香の体を肩から斬り裂く。持っていた聖魔剣を地面に落として、そのまま膝をつく木場裕香。その眼はまだ、俺との和解を諦めていない
彼ならわかってくれるだろうと、自分達を信じてくれるだろうと、そう信じて疑わない。俺の体を貫く眼光。だが、俺にはそんな物は届かない
「元々、死んでいたこの身だ。今更仲間を得ようとも、信頼できる者がいたとしても、俺は元には戻れない。諦めているだけだと思うか? そんな訳がないだろう。俺が戻ったとしても、世界が俺を認めはしない。木場裕香……お前がどれほど頑張ろうとも、俺はお前らとは相容れない」
指先から先程の天照を撃ち出す。だが、それをシトリーの
「
「!!」
天照がこちらへと飛んできて、俺の頬をかすめた。そのかすめた部分から、黒い炎が発火する
「やった!!」
「貴方の黒炎は確かに強力です。前にも、それによる被害を他の悪魔から聞いています。なら、その黒炎があなたにとって危険な事だと、言えるはずですから」
「良い判断だ。直ぐにその行動に映る行動力と、冷静な分析力。流石は、俺が認めただけはある王の器だ、シトリー…………だが、俺がその対処法を知らない訳がないだろう?」
俺は黒炎を神羅天征で吹き飛ばす。効かない事が少しは分かっていたのか、相手側に驚きはない。聖剣の一撃をアルジェントに直してもらった木場
先程の俺の言葉により、その場で動けないでいる。俺の言った事は正論であり、悪魔の未来に関わっていることだ。見逃せるわけがない
夢物語。その言葉が合うほど、俺の命の保証とはでかい物だった。上層部にとっては、自分の命だけでなく、これから先の未来の命にもかかわるのだから
そんな木場に、シトリーは近づき、声をかける
「裕香さん……辛いかもしれませんが、戦ってください。そして、彼を止めるのです」
「……はい!!」
顔色を元に戻し、俺の前へと出てくる木場。俺はそれを見ながら、ため息を吐きつつ言葉を発する
「まだ解っていないのか……お前らが俺を捕えて、救おうとしても意味はない。上層部の存在は、俺の危険性を見逃さないだろう。俺はコキュートスに行くよりも、殺される方が可能性は高い。木場裕香がいくら頑張ろうと、俺を止められようとも、俺は生き残る道はそっちにはない」
「それは……!!」
「やってみなくちゃわからない? いいや、やらなくても分かる。俺の目的は悪魔の殲滅。そして、俺の持っている対悪魔武装……既にそちらに行って、生きていける可能性はない」
もっとも、そちら側に行く位なら……俺は死を選ぶがな。まだまだ、時間はあるんだ……もう少し、俺と遊んで行けよ……どうせ、お前らに勝ち目はない
この先の未来に、お前らが歩く道もない。既に踏み外した道に、お前らが戻れる訳がないんだからな
「まだまだこんな物ではないだろう、グレモリー眷属にシトリー眷属……いや、後ろに居るのは天使だな? 転生天使と言うべき存在もいる。貴様らはあのロキを協力してだが、倒せるまでの実力は持ってるんだ。神を殺せて……目の前に居る人間一人を殺せないなんて……馬鹿な事は言わないよな?」
「…………颯真さん」
「対極とはよく言ったもんだと、自分でそう思う。アルジェント…………やはりお前は、俺とは正反対だ」
神を信じる事を『諦めた』俺と……神の不在を知ってなお『諦めない』アルジェント……
人は『醜い』と思う俺と……人は『素晴らしい』と思うアルジェント……
ああ、本当に…………逆の生き方、存在であると思う
「悪魔が魔帝を殺す……魔帝が悪魔を滅ぼす……どちらに転ぼうとも、ふざけた末路しか通らないだろうな」