心を閉ざす者 完結   作:サイトメガロ

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恐怖の化身

俺は魔力の塊を背に、そのまま敵全員を見据える。只、冷静に……敵との距離を測る。だが、相手側にはそれ以上の疑問があった

それは当然、俺の後ろにある物の事だろう。大きさを見るだけでも目を奪われるが、あれから放たれるオーラは、魔王のそれを遥かに超えている

いや……おそらくは、オーフィスをも超えているだろう

 

「何なの……あれは……」

 

リアス・グレモリーが全員の言葉をかわりに言う。誰もが圧倒されるほどの存在感を放つそれは、青白い波動を放っている

 

「……そうだな。貴様らに話しておいてやる。あれの名は『星核』。星の形を維持する核は、星の生命力と形の維持をしている。こいつは……星核は星の記憶そのもの。この星で何が起こり、何が生まれ、何を成したのか……この星で起きたこと全てが蓄積された物体。星の核を『心臓』と言うのなら、これは星の『脳』と言える」

 

「星全体の記憶が……此処に……」

 

「そうだ。俺が起こした小学校の虐殺、両親殺し、悪魔殲滅も……此処に記憶されている。お前らの罪である転生悪魔の強制眷属化、聖剣計画、人間からの神器強制奪取…………その他の物、全てが蓄積されているんだ。この世から資料を消したとしても……此処にある星核は、その全てを覚えている」

 

世界ではない…………星の規模での記憶……あの青白い球体……星核がオーフィス以上の力を感じた訳が、今の彼らにはよく分かるだろう

赤龍神帝ですらも、この星が生まれてから次元の狭間を飛んでいると言うのに、目の前の物体は星が作られる過程から存在した物体という事だ

 

つまり……まだ、マグマの塊のような状態の時から存在していたという事になる

 

「記憶とは情報…………それは時に、どんな武器よりも強大な力を持つことになる。お前らの所の上層部の爺共は、この存在を隠す又は……破壊したがるだろうな。己が犯した罪……それが世間にばれるかもしれない。それを恐れるだろうな」

 

上層部の屑共ほど、己のしでかしたことを隠している奴等はいない。四大魔王などは、それに気づけていないだけだ。つまり、罪のほとんどは奴らにある

それを知られれば、自分達は今の地位から落とされる。そんな事はあってはならないと、相手側は思うはずだ。だから、奴らはそれを守るために、破壊しようとする

現に今も、目の前に居る物たちは……星核を破壊しようと眼光をこちらに向けている……実に愚かだ……そんな事をすれば、どうなるのかくらいわからないのか

 

「止めて置け……星核を破壊したところで、お前らの罪が消えるわけじゃない。当然、俺の罪もな……お前らは分かっているのか? この星核を破壊した先にある世界の末路を……」

 

「破壊した先にある末路……? 魔帝、それはどういう意味だ」

 

「そんなことも分からないのか、アザゼル。お前はまだ賢いと思っていたのだがな…………星の核が破壊されれば、星は超爆発を起こして破滅する。それは全員が把握しているだろう……なら、星の記憶である星核を破壊すればどうなると思う? 星の記憶とは、星そのものを支える土台。それが消えれば、その星の情報をもとに生まれた存在はすべて消え失せる」

 

「なっ……!! じゃあ、そいつを破壊すれば……」

 

「ああ。大陸も……海も……空も……生物も皆……星から消える。星は生まれたての状態になる」

 

星が破壊されるわけでは無い。言わばこれは……星の再生……年老いた星が起こす、若返りの方法だ。だが、そんな事をすれば、生物は皆死ぬ

この世の全てがなかったことになる現象……名を付けるなら世界消去(ワールド・デリート)とでも言うべき出来事が起こる

 

生物は皆、世界に自分と言う存在を刻むからこそ生きていける。死ねば皆は忘れるが、世界はその者が存在したことを忘れはしない

だが、その世界が……例を出すなら、海を忘れたとしよう。そうすればどうなる……? 世界から海が『消える』……否、『無かった事』になる

 

マリンブルーに輝くあの海が、陸しかない世界へと変わるのだ。それがどれほど異常な事か、誰も分かりはしないだろう

何せ、その者達も…………海を知らない……忘れさせられているのだから。その世界の人間や生物にとって、海と言う単語は何か、分からないのだから……

 

だが、その場に居るアザゼルは気づいているんじゃないか? 海が消えるという事、海を忘れるという事……それは『生命』が『消える』という事に他ならない事を……

声明は海から始まったとされている。神が生み出したのが人間なのではない……進化を遂げて、人間が生まれたのだ。その祖先が消えればどうなる?

 

人は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消える……居なかったことになる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレートレッドやオーフィスは知らないが、人間は生まれなくなってしまうだろう。そうなれば……目の前に居る転生した悪魔どもは全員消える

悪魔がどう生まれたかはしないが、少なくとも人間は死ぬ

 

「(おそらく、魔帝はあの星核を使って悪魔を消すつもりだな。だが、あれほどの生命力や魔力の塊であるあれに強い物は干渉できるが……操りきれないはずだ)」

 

アザゼルの推理は間違っていない。いくら颯真と言えど、世界の記憶を簡単に操りきれはしない。だからこそ、何故あれを選んだのか、それが分からなかった

そんなアザゼルを見て、颯真は呟く

 

「考え込むのはいいが、よそ見をしていては……的になるだけだぞ」

 

「っ!!?」

 

バッと、その場を全員が飛び退く。ギャリンっ!! という音が地面から聞こえ、先程まで立っていた場所には、多くの聖剣が生えていた

少なくとも一人は仕留める気でいた颯真も、全員が避けたことに感心した。だが、それも一瞬……生えている聖剣を浮かせ、敵に向けて撃ち放つ

 

「くっ!!」

 

だが、木場裕香の判断により、聖魔剣と俺の聖剣が相殺された。それも予想済み……と、思い込んでいれば、後ろから聖剣が振り下ろされる

俺も創造した聖剣でそれを受け止める。聖剣を受け止めつつ、敵の顔に視線を向ける。メガネをした知的美少年の顔には、俺も見覚えがあった

 

「……禍の一団に、英雄の子孫が居ていいのか? アーサー」

 

「それは僕が判断する事です。貴方に判断されるいわれはありません。魔帝」

 

聖王剣・コールブランドの使い手にして、英雄の末裔……アーサー・ペンドラゴン。かつてブリテンと呼ばれる国を治めたアルトリア・ペンドラゴンの末裔

 

「そうだな。これから死ぬ存在に言う事もない」

 

「っ!!」

 

咄嗟にアーサーはしゃがむ。先程まで頭のあった部分を、黒い聖剣が通り過ぎる。漆黒と言わざるをえないほど、禍々しい刀身

それを見て、アーサーは思い出したように呟く

 

「それがヴァーリを斬り裂いた、黒い斬撃ですね……?」

 

「そうだと言って置こう。良い勘を持っている……気づかないままならば今頃……貴様の頭は、この空間から消えていたぞ」

 

ゾワリと背中に悪寒が走る。だが、姿勢と表情を変えはしない。此処で少しでも怯んだ姿勢などを見せれば、そこで殺されてしまう

そこへ……オーディンのグングニルが迫る

 

「須佐能乎」

 

「判断が早いのぅ」

 

黒い骨が俺を包み、グングニルから撃ち出された波動を打ち消す。戦闘経験と強さ……この中での一番の実力者は、やる事も慣れているな

真っ正面からしか戦闘を行う事が出来ないグレモリーとは違い、しっかり殺せる時に殺そうとする姿勢。素晴らしい物だな

 

「この距離なら……!!」

 

「外さんっ!!!」

 

「………………」

 

背後からの奇襲……オーディンをも陽動に使うその意気はいいが、人選ミスだな。弱者の攻撃おいくら放とうとも、俺には届きはしない

背後から姫島朱乃とバラキエルの雷光の一撃を喰らうが、俺には一切届いていない。グングニルで須佐能乎の骨が何本か砕かれたが、その程度なら問題はない

近くに寄って来た姫島を修羅道で作った腕で引き寄せ、聖剣で斬り裂こうとするが……それを青い刀身をした剣が阻んだ

 

「ぐ、ぐぐ……!!」

 

「大した力だ……デュランダルの力もあるんだろうが、な」

 

「がっ!!?」

 

「ああっ!!?」

 

ゼノヴィアが横から入り、俺の一撃を受け止めていた。だが、戦闘経験と何より力の差が大きく、ゼノヴィアは姫島と共に吹き飛ばされる

それを感じた瞬間、頬に赤い籠手での打撃が入る。ドガァッ!!! と音を立てるが、ダメージと言うにはほど遠い威力だった

 

「颯真……!!!」

 

「………………何をそこまで怒るんだ、赤龍帝。俺がやっていることが……そこまで許されない事か……?」

 

「当り前だっ!!!! 何の罪もない存在を殺して、自分の自己満足の為にそれを行うのは、駄目に決まってんだろ!!! お前こそなんで分からないんだっ!!! 話し合えば分かりあえるはずなのに……!! 人間も悪魔も平等だろ!!!! 同じ世界を生きる者だろ!!!」

 

「……平等……? 同じ世界を生きる……?」

 

その言葉に俺は少しばかり怒りを覚えた。久々だ……自分の感情を表に出すのは……俺は赤龍帝を殴り飛ばし、俺は赤龍帝を見つめる

 

「……お前はまだ分からないのか? この世界に平等という飾り事などありはしない。この世界で本当に分かりあうことなどできはしない……闇を直視できず、醜さを覆い隠そうとする行動こそが平等だという事だ。誰も傷つかない世界などありはしない……人間同士の争いはいい……そうやって人間は生きてきた、進化してきた。だが、悪魔は違うっ!!!! お前らは人間の世界に踏みは入り、勝手に人間を悪魔に変える道具を創り出し、あまつさえそれを強制するようにしてきたっ!!!! そこのどこに平等があるんだ!! 兵藤一誠!!!!」

 

「それは……!!」

 

「それは不可抗力? 俺達のような考えを持つことの出来な奴らがしたこと? そんな事は関係ない……人間が悪魔と分かりあえることなどできはしない。何故なら……悪魔にとって人間は種族を存続させるための道具であり、人間にとって悪魔は恐怖と憎悪の対象であるからだ。同じ世界で等生きられはしない。人間を汚物の様に見る悪魔の世界と、いつもと同じ日常を送るだけの人間が同じ世界で生きられる可能性は0だ……」

 

俺は手を上に向け、詠唱を始める

 

「その身は絶望で、その心は憎悪で作られし者。幾たびもの死をその身に受け入れ、恐怖の化身としてその力を振るえ……来い、魔像」

 

いつもの聖獣の創造……そんな生易しい物ではない。絶望と破壊の象徴とでも言うべきその姿は、目の前に居る存在全てを冥府の門へと誘う

 

「俺がかき集めたデータの全てをつぎ込んで作り上げた最高傑作だ。もっと時間があれば、さらに強い物を作れただろうがな……」

 

魔像と呼ばれた巨像は、こちらをゆっくりと見下ろしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何なのよ……あ、あれは……」

 

その顔に映るのは恐怖。目の前に居る圧倒的存在を前に、その場に居る者すべてが固まっていた。少なくとも、俺にはそう見える

阿修羅と同じ姿の六本腕と三つの顔、三つの顔それぞれの額に三つ目の眼を持ち、名も知らぬ鉱物で作り上げたような色をした体、俺の完成形態の須佐能乎ほどの巨体

そして何よりも、その強大な強さが……目の前に居る者の動きを止めていた……いや、やはり奴だけは止まらないようだな

 

「ほっほっほっ……大きいのぅ。しかも、デカさだけでなく実力も相当な物じゃ……」

 

「この日の為に俺が手に入れた物すべて、この魔像に叩きこんだ。あんたと言えども、手こずるだろう」

 

「そうじゃな、流石にこの魔像と言うのを相手にするには……全力で行こうとも、勝てるか分からんのぅ」

 

俺が創造した聖獣をベースに、そこからさまざまな生物などを参考に作り上げた化け物。それに対抗する事の出来るオーディン

 

「さぁ、行きな。お前の得物は……目の前にる」

 

「グオォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 

その手にかけられていた巨大な手錠を強引に引き千切り、雄たけびをあげてその瞳を開ける。三つの勾玉模様が敵をギロリと睨み付ける

額にある眼も開き、そこからは俺と同じ紫色の眼が覗きこんでいる。雄叫びで大気は揺れ、周りの岩にひびが入り始めている

 

「化け物目が……少し静まらんか」

 

オーディンはグングニルを振り回し、光の波動で上半身を攻撃する。だが、その身には特殊な岩石などで作り上げた強固な皮膚がある

煙こそ出ているものの、その身には傷一つついていない。魔像は腕を振り、オーディンを攻撃しようとするが、デカさ故に捕まえられない

 

「堅いな……ならば、これでどうじゃっ!!」

 

さらに光の波動を強め、それを斬撃にして飛ばしてきた。それは魔像の腕を直撃、そして腕を吹き飛ばした。腕からは血は出ず、ボロボロ岩が崩れ落ちていく

 

「ほっほっほっ……意外とすんなり行けたのぅ」

 

「流石だな、オーディン。だが、貴様の考えはまだ甘い…………俺がその程度の事を、想定していないとでも思っているのか?」

 

「む……?」

 

俺の言葉に首を傾げるオーディン。その瞬間…………魔像の腕から炎が噴き出してくる。その場に居る者……特にグレモリー眷属には見覚えのある炎だった

 

「あれは……!! フェニックスの炎……!!」

 

そう……グレモリーの婚約パーティーでライザー・フェニックスから手に入れた不死鳥の血を入れた。それをコイツに適合させたんだ

只、他の物との混合物体である魔像に適合させるには、かなりの時間が掛かったがな……

 

「通常のフェニックス共よりも回復スピードは遅いが……それでも、圧倒的な回復力であることに代わりはない。一分もすれば、その腕は回復しきるだろうさ」

 

既に半分まで回復した腕。二本だけの腕ならば、他の対処方法を考えたが……阿修羅のようにすればいいと考えたんだ。結果は上々……回復している間に、他の五本でカバーする

俺が経験し、集め、身に着けてきた物を出来る限りの上で蓄積したんだ……そう簡単に殺されてはたまらないんだよ…………

 

魔像はその腕を振るい、飛んでいない者たち全員を攻撃する。全員が飛び上がり、魔像の腕が通り過ぎた後には、大きいクレーターが出来上がっている

眼に仕込んである写輪眼と輪廻眼。写輪眼の先読み、輪廻眼の共有視界。これにより、防御もまた強固になっている魔像

 

打撃での攻撃を腕を早く動かすことで防ぎきっている。サーゼクスが居ればコイツを殺すことも容易だったが、ミリキャスの事で既にいない

今の赤龍帝たちだけならば、俺が『戦争』に負ける事は万に一つもない

 

「……まずは一人……だな」

 

「っ!!?」

 

「アーシアっ!!?」

 

魔像の目標はアーシア・アルジェント。その場をすぐに動く事の出来ない回復担当であるアルジェント。木場や赤龍帝が走るが……

ドゴォォォォォォォォォ!!!! それは虚しくも…………一歩及ばなかった

 

「っ!!? アーシアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「……そうだ……今お前が感じている物こそ……俺が昔感じた物だ……赤龍帝」

 

アーシア・アルジェントは魔像の手によって叩き潰され、その手から撃ち出された紫色の閃光により……この世から去った……

最後に赤龍帝に見せた表情は、聖女そのものだと俺は感じた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは何の音だったのか……偶然にもその場に居る全員に聞こえる音だったが……それを気にすることの出来る者は一人としていなかった

だが、それが一つのキッカケとなる




そろそろラストスパートに入ります

これからも読んでください
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