「これが……聖剣か……」
折れた聖剣エクスカリバーを見て、その存在感に少し期待外れと言う思いが出る。元々の目的はコイツの奪取。だとしても、此処までの劣化したものだとは思わなかった
聖剣エクスカリバーは、伝説級の一本。欠けた程度でここまで威力が消えるのか。一部の能力を向上させるだけの聖剣。そこらの聖剣よりは上だが、これでは持たせても意味はない
「だが、それよりも良い物が手に入った。コイツがあれば、聖剣の創造には事欠かないだろう」
連れ帰った雑魚から得た
聖剣を奪った意味はなかっただろうが、あの場所へと足を運んだのは間違いではなかったようだな。手に入れられるものは手に入れた
「聖剣の一日の創造量は最悪でも100本。最高でも500本はやる。多少時間が掛かり、修行もできにくくなるが……何の問題もない……」
既にその行動には移っている。連れ帰ってすぐに抜き取り、自分の聖剣作りに取り掛かった。聖剣の質は出来るだけ上の物を作り出しておいた。既に200本は創り出せている。その分の少しだけを、監視している天使に持たせている
能力向上は抜群だった。前衛で戦う天使にとっては素晴らしい武器となりえた
「さて、結果としてはプラスになったが……この聖剣をずっと持っている意味もない。だとすれば……相手に返すべきだな。これを返す代わりに……いや、教会から得られるものもないだろう。なら、俺を殺しに来るやつらから奪うだけか……」
教会への通知。俺が聖剣を数本持っていることを伝え、俺に刺客が来るように仕向けた。教会の上層部は愚かな人間ばかりだ。天使でも出てこない限り、俺には対抗できないと言うのに……
暗い廃墟の中……俺は眼を瞑りながら、相手が来ることを待っている。静かに心を落ち着かせ、それでもなお警戒心だけは解かないように……
数分経った。奥の方から足音が聞こえてくる。森を抜けてきた教会の刺客……だが、俺はその存在を見た瞬間、失望した。俺が見た者は、自分と変わらない歳の女一人。他の気配は何処からもしないし、外れだと直ぐに思った
俺の年齢は13歳。相手もその位だが、俺との経験の差や強さが違い過ぎる。何も得られないだろうと、落胆していた
「貴様、聖剣を持っている魔狩りで間違いないな?」
「ああ、そうだ。とっとともって帰れ。俺には必要のないガラクタだ……」
俺はそう言い、その場に置いてある数本の聖剣を少女に向かって投げつける。足元に投げつけられた聖剣を見て、ローブを被りながらも、怒っていることが分かるほど、相手の感情は読み取れた
だが、俺に知った事ではない。既に必要のない代物をどう大切にしろというのだろう。価値のない物ほど存在が怪しい物はない
あの程度の聖剣のどこが大事なのか……そんなの俺に解るはずもない
「貴様……!! 我々の聖剣を手荒く扱うか!!!」
「黙れ、教会の犬。期待はずれな存在をここに送り込みやがって……こんな雑魚を送るだけで、俺を殺せると本気で思ったのか……? だとしたら、勘違いにもほどがある」
「この期に及んで上の者達も侮辱するか!!!」
「侮辱だと? いまさら何を言う。自分たちに救いの手を伸ばす事すらしない神に祈っているような馬鹿共を、雑魚と呼んで何が悪い。神を信用していない者は罪。そうやって、人間どもを殺しているお前らが、自分を正義だと言い張る姿は滑稽だ。何が正義、何が信仰、何が神様だ……夢見る世界に生きてるような塵が、正しくもない言葉を並べるな……不愉快だ」
「貴様……!!」
「俺が憎いか? だったら殺してみろ……お前らの言う、偽善の刃で……」
「言われなくとも、この場で斬り裂いてくれる!!!」
少女は何かの呪文を唱え始め、ある空間から剣を取り出した。青い刀身とその大きさから、通常の聖剣ではないことが分かる
送りつけてきたのは、何の対策もなかったわけでないのか……
「デュランダル!!」
「はっ! 伝説級の聖剣……お前程度の実力では、使いこなす事も出来やしない」
俺もデュランダルを同じ聖剣で受け止める。威力に特化しているだろうその形の割に、その威力は低い
「その程度か……?」
「舐めるな!!」
少女はデュランダルを振り上げ、俺に振り下ろすが……只力任せに振り回しているだけ。いや……この場合、彼女がデュランダルに振り回されていると言ったところか
ガキンッと言う音が響く。デュランダルの力を引き出せてもいない奴の攻撃を受けきることは造作もない。少女はそのまま斬りかかるが、俺は瞬時に彼女の肩を斬り裂く
「うぐっ!?」
肩からは血が流れおち、ポタポタと音を立てながら地面へと落ちる血を見ながら、俺は相手の観察を怠らない
「どうした? さっきまでの威勢は……」
「ぐっ……だま、れ……!! この程度……痛くも痒くも……!!」
「奴らの送り込んできた刺客もこの程度……もういい。貴様とじゃれ合うのは時間の無駄だ……」
「なんだと……!! 逃げるつもりか……!!」
「逃げるだと……? はははははは……!! 冗談も程々にしてくれよ…………見逃されたの間違いだろ……」
俺は少女の事を冷酷な眼差しで見る
「貴様の本来の目的は聖剣の回収だろ? 俺を殺すのはあくまでできればの話……元々、貴様程度の実力では俺には及ばないくらい分かっているだろう……?…………ああ、そうか。貴様らは自分のプライド……誇りを守りたいだけなんだな……負けている自分を認めたくないから言い訳をし……自分が弱いから口先だけでも抵抗しようとする……愚かだな……実に愚かだ」
「……くっ」
「俺はお前らにとっては醜い存在であり、悪の塊のような男だろう……だが、それでいいんだ」
この世に認められることなどあってはならない。俺はすべての存在に否定される存在であり続ける事が、俺の生き方なんだから
「俺の事を恨め、呪え、憎め……感謝など俺にとって、塵ほどの価値もない」
俺は冷酷な表情で相手を見下し、そのままその場を去った。デュランダルの性質、強度、聖のオーラ量、その他のデータ回収も済んだ
ここらで引いた方がいいだろう。後で雑魚を大量に送られるのも面倒だ
さらに二年。俺は戦闘能力、知識、戦力、その他すべてのものをほとんど得た。戦争への発展へはまだ時間が掛かるが、もう少しで奴らを殲滅できる
集まった聖獣や天使、そいつらに持たせている聖剣もかなりの量が創造できた。あと数年、それだけの時間をかければ、準備はすべて整う
最上級聖獣や最上級天使を作り出すことにも成功した。まだ、大量創造に至れはしないが……二年も掛ければ、10は行くだろう
「………………」
作戦などを立てている途中、妙な気配を感じた。今までとは違うが、人間であることは確かなはずだ……神器使いの手練れか……もしくは、魔術師として長けている者
「どちらであろうと興味はないが……この場に来ない所を見ると、交渉でもする気でいるのか……あるいは只の馬鹿なのか……」
どちらでもいい。だが、この場を立ち回られるのも不愉快だ。仕方ない、出るか……
俺はその場で神威を使い、相手が立っているだろう辺りへと移動する。そこへと着けば、ある男が一人だけ立っていた。制服のような恰好の上から漢服を着ている
「君が魔狩りと言われる人間かな?」
「答える意味があるのか? それを知っているから、お前は此処に来たのだろう? ここら一帯には何も望めるような物はない。だとすれば、目的は俺に絞られる」
「そうだね、俺は君が目的でこの場に来た……話を聞いてもらっても?」
「聞くだけならな……」
「そうか……単刀直入に言わせてもらうよ。
「……なんだ、その集団は……」
「簡単に言えば、俺達の英雄派は人間がどこまでやって行けるかを試すために結成された派閣だ。当然、俺達人間だけじゃそんな事は出来ない。だから、ある者目的と一致させて、この集団を作り上げた」
「ある者……」
「君も知らない訳ではないだろう? 世界2位の実力を持つ無限龍のオーフィス。あいつが俺達の統括のようなものだ」
「人形の間違いだろう……?……奴が望むのは静寂だと聞いている。だが、お前らがオーフィスに静寂なんざ渡す事が出来ないのは、考えればわかる事だ。奴が元々住んでいたのは、何もありはしない次元の狭間。そこは何もなく、何の音も聞こえず、何も感じるものがない場所。そこを飛び回っている世界最強の龍……
「何もかもお見通しと言うわけかい?」
「お前らがどうしようと勝手だが、オーフィスも落ちたものだな。こんな雑魚をいくら集めようと、グレートレッドには勝てないと言うのに……」
「雑魚、か……まぁいいさ。それでどうだろうか。英雄派に来ないか……?」
「断らせてもらおう。俺にメリットが一つもない……俺は人間の限界など知りたくもない……用件が済んだならさっさと失せろ。俺はお前らに構っていられるほど、暇じゃない」
「この集団が、三大勢力へ戦争を仕掛けると聞いてもか?」
……何……三大勢力へ戦争を仕掛ける? お前らのような雑魚共が、喧嘩を売るとでも言うつもりなのか? 無駄な足掻きにもほどがある
「貴様らが勝てるとでも?」
「その為の戦力集めだ。君は悪魔に戦争を仕掛けるのだろう? 利害は一致している」
つまり、自分達と協力して悪魔を倒さないかというわけか………………
「断る」
「………………何故だ?」
「俺はお前らの事を信用してないし、信頼もしてない。今も、そしてこれからもな……それに、俺の悪魔への戦争は、俺だけの物だ……他人と共に得た物に、俺は興味がないんでな」
そうだ。自分で手に入れるから、それに価値が生まれる……
「そうか……なら、敵になるかもしれない可能性のある君を……俺は此処で殺すことにするよ」
「当然の行為だな。やれるものならやると言い、そして後で反省しろ……何で自分が負けたのかってな」
「一応、名乗っておくよ。俺は曹操……英雄派のリーダーだ」
「名乗る気は無い。魔狩りと呼べ」
俺は
「お前の
「ああ、最強の
最強の
「悪魔やドラゴンを倒すのは、何時だって人間だ。だとすれば、俺はその逆だな」
「何……?」
「いつだって悪に染まるのは、人間だ。人間とは元々、白いキャンパスの様な物だ。何も書かれておらず、何も知らないような存在。そこから様々な物を得て、様々な色へと変化していく……人の色は人それぞれ……だが、決まって人間の中には、ある色が存在する……それが『黒』だ
人間とは必ず、心のどこかに闇を持つ……むかつくことがあれば『憤怒』し、自分よりも優れた者がいれば『嫉妬』し、欲しい物があれば奪おうと『強欲』になり、面倒なことがあれば『怠惰』を起こし、自分よりも小さい存在を見下す『傲慢』さがあり、男女間の性的な欲望たる『色欲』を曝け出し、むやみに食料を食い漁る『暴食』をする
……これは悪魔が生み出した物か? いや、違う。これは、生きている生物全てが起こすものだ。悪魔も人間も……他の観点から見れば、どんな物よりも醜い生物だ」
俺は曹操に上段から切りかかり、曹操はそれを受け止める。ギギギギッと言う音が続く中、俺はまだ言葉を止めない
「英雄と言ったな。ならば、何故英雄は英雄と言われている………………誰かを助けたからか? 世界を救ったからか? 確かにその通りかもしれない。だが、逆に言えばそいつらの周りは戦いが絶えない場所だったという事だろう? 英雄とは助けた者であり、戦争を肯定する存在でもある。英雄がいれば、そこは戦争の中心であるんだ」
ぞわっ!!
曹操は体にそう感じていた。嫌な存在を目の前にしているような感覚……相手の剣を弾き飛ばしてなお、自分の首には死神の鎌があるような気がしてならない
それほどまでに、相手のその眼差しから出てきている殺気……人間の悪と言う……いや、世界全ての悪の化身とまでは行かずとも、それほどまでにこの男は、世界の『黒』という部分を知っているような感じがしてならなかった。奴のキャンパスにしみ込んだ黒い絵の具は、二度と取れることの無い物へと変化していると、そう感じる他なかった。もう二度と、他の色には染まらない……
「恐ろしいか……? 目の前に居る存在が、自分の言っていた言葉をすべて否定したことが……英雄には分からない世界がこの世にはある……世界の綺麗な部分しか見てこなかった温室育ちの餓鬼に……俺は負ける事なんかないぞ」
人は言う。悪とは正義に負けるものだと。じゃあ、悪とはなんだ……? 誰にもわからない。悪とはどうやって生まれる……?
俺はそれを簡単に答える
悪とはもう一つの正義であると……
戦争が起こるのは、自分の正義と相手の正義がぶつかり合うからだ。相手と自分の事を理解しているのなら、そんな事なんざ起こりはしない
相手の正義の事を悪と呼び、そうやって自分を動かすのだ
それこそが悪の正体。世界で言われている悪とは、人を殺す事だろう。なら、殺された人間が殺した人間の家族を殺していたら? それはどちらが悪だと言える? そんな物、家族を殺した者に決まっている
世間は殺した人間すべてを悪と言い、自分の都合のいいように解釈をして、自分と言う正義を保って生きている
「世界の言う通り、俺は悪に堕ちた存在だろう。だが、俺を否定した世界が、俺を悪と言うならそれでいい。世界が望まない存在になる事……正義なんて偽りの称号は俺には必要ない」
背筋に流れる汗が止まらない。戦えば負けないかもしれない……だが、曹操にはそれが問題だった
『負けないかもしれない』……逆に言えば、『勝てないかもしれない』という事だ。実力的には相手が少し上に感じるだけ。だとしても、勝てる見込みはあった
だが、先程の言葉を聞いて、勝てる確率が先程よりも大きく減った
「……ここは退かせてもらう」
曹操はその言葉と同時に、霧に包まれて消えた。霧が出た瞬間、一瞬だが人の気配を感じた。曹操の仲間だろう。現在のモチベーションで俺には勝てないと判断した辺り、英雄と言うのも伊達ではないのだろうか
「……この先、世界が荒れるな」
禍を引き起こす一団と、三大勢力……俺も少し、急いだ方がいいかもしれないな……
次回から原作に突入します
次回も見て下さい