心を閉ざす者 完結   作:サイトメガロ

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愚かな王

洋服を破壊すると言う、誰もが想像しなかった技に、流石の俺も絶句してシトリーを現実へと引き戻した時、戦場もある意味では変わってきていた

先程の魔法を見て、赤龍帝のあの技を喰らうのはいけないと感じたのだろうか、最後に残った四人目は、炎を体に宿した拳法で、赤龍帝と闘っていた

 

悪戦苦闘しながらも、相手の攻撃をかわしているそのさまは、最近悪魔になったとは思えないほどにまで、素晴らしい物だった

 

「だが……避けてばかりでは、何一つ現状は変わらない……服を破壊された者達も、リタイヤされるまでに至らない所を見ると、攻撃力ではなく……行動制限が限界……いや、あれはあいつの欲望の技だったな。そんな事を、あのような奴が考えられるはずもない」

 

「どうやら……動くようですよ」

 

その言葉を聞き、俺はモニターを先程よりもよく見る。赤龍帝は何かが聞こえたのか、その場から出て行く……それを追いかけるように、相手は出て行こうとするが……

 

そこへ突如として、ドデカい雷が落ちてくる……

 

ズガァァァァァァァァっ!! という音がフィールド全体に響き、そこにあったはずの体育館がボロボロに崩れ落ち、見る影もなくなっていた

上の方からは巫女の服装をした女王(クイーン)の姫島が下りてきて、こう言った

 

撃破(テイク)

 

なるほど……重要拠点である部分をあえて破壊することで、そこを押さえる意味を無くしたのか……人数で負けているグレモリーが勝つには、質と作戦で相手を上回る必要がある

今回の体育館破壊は、まだいい方の作戦だった。相手を倒しつつ、そのまま拠点を破壊すると言う大胆な攻撃は良い物だ

 

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)三名、戦車(ルーク)一名、リタイヤ』

 

その言葉に、赤龍帝は喜び、姫島に声をかける。俺はその行動を見て………………呆れた

 

「だからと言って……よそ見や安心は感心しないな」

 

俺がそう言うと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガァァァァァァァァァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫島が爆炎に包まれた

 

『っ!!? 朱乃さんっ!!!』

 

これは戦闘ではない……これはいわば戦争……敵がすべて倒されていない状況で、自分たちの勝利に酔ってはならない。気を抜いたアイツらの負けだ……

 

『フフフ、撃破(テイク)

 

上からは、ライザーにディープキスをされていた悪魔……あの様子から見るに、女王(クイーン)だろう……質で言うならば、姫島の方が少し上だが……状況を利用するのは相手が上だったようだな

爆炎を起こした本人を見つけた赤龍帝は、そのまま相手に向かって吠える

 

『てめぇ!! よくも朱乃さんを!!!』

 

一瞬だが、コイツは馬鹿なのだろうかと思ってしまった。レーティングゲームで一番危険なのは王の実力でもあるが、女王(クイーン)も警戒の一つだ。その一つを『倒されそう』になっただけで、そこまでなぜ怒るのだろうかと……これは相手を倒すゲーム、そんな事が出来ないのなら……やる意味はないだろう

だが、感情を一気にあらわにする赤龍帝を見ると、それがすぐに変わる。あいつは傷つけられた事に関して怒っている。ある意味、赤龍帝は倒されるのが普通のゲームで怒る理不尽な奴だが、その行動は赤龍帝としてはかなり良い事だ

ドラゴンとの相性が良い者は、感情的に爆発する人間だ……神器(セイクリッド・ギア)は思いによって進化する物……感情が露わになりやすいという事は、それだけ神器(セイクリッド・ギア)が進化しやすいという事に他ならない

 

そして、龍とは怒りによって力が増す生き物でもある。その怒りが高ければ高いほど、それだけ絶大な力を引き出す事が出来る。兵藤一誠……今まで調べてきた赤龍帝の中でも、誰よりもドラゴンとの相性がいい奴だろうと、俺は心の中で思った

だが、先程思った通り、『倒されそう』になっただけだ

 

『あらあら、おいたが過ぎますわね』

 

そう、瞬間的に魔法陣を張った姫島は無事だった……犠牲(サクリファイス)による攻撃は良かったが、スペックで劣っている相手の攻撃を防ぐのは、まだ簡単だったようだな

 

『朱乃さん!!』

 

『イッセー君、此処は私に任せてください。裕香ちゃんと一緒に、グラウンドへ……』

 

『分かりました!!』

 

赤龍帝を木場と合流させるつもりか……ライザーの眷属はほとんどが雑魚……そこまで強さを持っていない。赤龍帝と木場で倒せるだろう

だが、可能性は最後まで潰しておくのが鉄則だ……女王ユーベルーナが奴を追わないのは、追っても無意味だからだろう。赤龍帝の実力は増したが、だとしてもユーベルーナから見れば、雑魚と言っても過言ではない。後で追いかけて倒すのが良いだろうと言う考えだろうな

それに、奴らは『フェニックス』の眷属だ……その意味が理解できなければ、奴らに勝てることなど気はしない

 

「さて、そろそろ終盤だ……どう出る? グレモリーとフェニックスは……」

 

映像が変わり、赤龍帝と木場、そしてライザーの残りの眷属達の戦闘。木場の魔剣創造(ソード・バース)による地面からの攻撃により、敵はすべて倒されていった……その途中に、赤龍帝の砲撃が出たが、下級にしては威力のある一撃だった

だが、あの程度では下級を倒す事しかできない。それも、命中精度が荒い……使いこなせていないのがよく分かる

 

『リアス・グレモリー様の女王(クイーン)……リタイヤ』

 

グレモリー陣営は驚きに包まれた。グレモリー陣営で王の次の実力者である姫島がやられたのだ……驚かない方がおかしいという物……だが、俺はそれに驚きはしなかった

横に居るシトリーと椿姫は驚きに包まれているようだが……

 

「どうやって……姫島さんが負けるはず……」

 

「いいや、負けるだろうさ。この戦いには、強さは関係ない」

 

「どういう、意味ですか……?」

 

「これは元々わかっていたことだが、ライザー陣営は女王(クイーン)以外の実力者がいない。いうなれば、犠牲(サクリファイス)の為の駒だ……そして、奴らはフェニックス……これで思い当たることがある筈だ。相手がフェニックスであるならな……」

 

「…………っ!! フェニックスの涙……!!」

 

「その通りだ。ライザーにとって犠牲(サクリファイス)はいつもの作戦。ならば、一番最後まで残り、役立つ実力を持った女王(クイーン)のユーベルーナに渡すのが当然。相手に一番近い実力を持っていて、回復する道具を持っていた。傷は全回復……後は攻撃すれば終わり……少し考えればわかる事だ……何も驚く事じゃ無い……フェニックスの涙は別に、使用してはいけない物ではない。フェニックスが相手なら、それが使われるのは想定内……そして、ライザーならばユーベルーナに持たせるのが普通……完全にグレモリーの読み間違いだな」

 

フェニックスの悪魔社会への貢献は、それがほとんどである……危険な任務であろうと、フェニックスの涙があれば、楽々と仕事をこなせる。そうやって今までやって来たのだ

 

『っ!! イッセー君!!?』

 

木場は叫び、その場からイッセーを突き放す。すると、爆発が起こり……そのまま木場もリタイヤした。残るはグレモリーと回復役のアルジェント……そして兵藤一誠のみ

戦力的には絶望的だ……グレモリーの消滅の魔法は、サーゼクスに遠く及ばない。しかも、赤龍帝は切り札ですらない状況……無意味な戦いだったと、俺はそう感じた

 

「……終わりだな」

 

グレモリーは血迷ったのか、ライザーとの一騎打ちを申し出て、それをライザーは受けた。質と経験が違う相手に勝てるはずもなく、グレモリーはやられていく

そこへ、助けに来たのか赤龍帝が出てきた……あんな奴に何もできやしないのに、それでも向かって行くさまは、飛んで火に居る夏の虫

 

『もうやめて……!!』

 

戦意喪失もいい所、兵藤一誠がやられる様を見て、グレモリーは心がおられていくようだった。その様子を見ながら、俺は言った

 

「……さて、お前はどう出る……サーゼクス」

 

その言葉の意味は、誰にもわからなかった

 

戦いは続き、そのまま兵藤一誠はボコボコになった。そのまま投げ捨てられて、もう一度頭を鷲掴みにされるが……奴の目はまだ死んでいなかった

 

「……誰かの為に、そこまでして戦うか……」

 

愚かだと、そう感じざるを得ない。貴様が得でもするのか? あの屑な輩に大切な王を奪われるのは嫌だろうが、それでもそこまでするほどに、お前は大切なのか?

貴様の死は知っている……貴様はアルジェントが死んだ原因である堕天使レイナーレによって殺されたのだという事を……

 

だが、そうやって死ぬことになったのは、ある意味グレモリーの責任である。奴は堕天使が自分の管理する土地に居る事を知って、お前が殺されるかもしれないという事を知って……

それでもなお、お前をそのままにしていた。それは、憎むべき行動ではないのか? 貴様は結果的に悪魔となって生き返ったが、それは結果論だ

 

貴様が死ぬ前にグレモリーが動いていれば、貴様は死ぬ事は無かったし、アーシア・アルジェントも死ななかったかもしれないのに、それでもなお、何故奴の為にそこまで必死になる?

理解が及ばない……自分を見殺しにして、しかも有無を言わせない状況で眷属化されて……自分の大切なアルジェントを見捨てるような事までした奴を……お前は何故信じる事が出来る

 

そんな事を考えていると、俺は聞き違いかと思うような言葉を聞いた……

 

『……リザインします』

 

……は? 何言ってんだコイツは……リザイン……つまりお前は、この戦いを放棄すると言うのか……? 自分の為に戦って来てくれた仲間の想いを、踏みにじって……!!

なら何で、貴様は赤龍帝がそこまでなるまで何もしなかった……? 貴様が手伝っていれば、まだ勝機はあったんじゃないのか?

 

アルジェントの回復で、お前はまだ動けるようになれたはずだ……

俺はその場を立ちあがり、そのまま生徒会室を後にしようとする……それを見て、シトリーは聞いてくる

 

「……どう思いますか?」

 

「……グレモリーの事なら、もう言う事は無いが……屑にもほどがある……奴がリタイヤしたのは、仲間……この場合は眷属だが、そのためだろう? だが、リタイヤするなら他にも言う時はあったはずだ……こうなる事を最初から予期できず、修行してまで戦いに挑み……自分を信じ闘って来てくれた眷属の想いを……あいつはあの場で踏みにじったんだ……それが仲間の為……? 笑わせんな」

 

悪魔の事をどうこう言うつもりはないが、ああいう奴を見ると俺が殺した小学校の奴を見てるみたいで気に食わない。何故無意味な行動をしたのか

こうなるなら、最初から戦う意味なんてなかったんだから……

 

「……まぁいい。俺は当初の目的は果たせた……赤龍帝も見れたことだし……後は……」

 

俺はそう言って、その場を去った……居心地の悪い、この場所を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセー side

 

負けた……それだけもう、胸がいっぱいになった。悔しい、悔しい悔しい!! 俺は……俺は部長を守れなかった……情けない……情けない……!!

 

「ちくしょう……!!」

 

ライザーに負けてボロボロになった数日後、イッセーは目覚めていた。起きた時に自分が負けたことを知り、そのまま動けないでいた

 

「………………」

 

「……そんなに悔しいか? 兵藤一誠……」

 

「っ!! お、お前……何時からそこに……い、いや……そもそもお前は誰……!!」

 

「質問が多いな……何時からと言われればそうだな、お前がちくしょうと言った辺りに入ってきた……名前は、そうだな……颯真と呼べ」

 

悔しがってベットに入っているイッセーの質問に、軽く答えつつ壁から背中を離してそのまま近づいて行く颯真。イッセーは、颯真から出てくる人間離れしているだろうオーラに気圧されつつも、そのまま質問の答えを聞き取り、次の質問をする

 

「お前は何者なんだ……」

 

「貴様らと同じように、裏の世界を知る者だ……質問はもういいか? なら、今度は俺の質問に答えてくれよ……赤龍帝・兵藤一誠……」

 

有無を言わせないその威圧により、イッセーはうなずく事しかできなかった……

 

「貴様は先のレーティングゲームで負けた。だが、それで聞きたいことがあったんだ。お前はどうしてそこまでボロボロになってまで、グレモリーの為に戦った?」

 

「……ど、どうしてって……」

 

「通常、人間は大切な者であろうと、見捨てる事が多い。だが、貴様は異例過ぎる……貴様、意識を失ってなお、グレモリーの為に戦おうとした……何故だ」

 

颯真の言う事に対して、俺は答えを探した。何で俺は部長の為にそこまでして戦ったのか?……それは……

 

「部長が大切だから……」

 

「いいや、違うな。そんなもの、眷属全員が思っていることだ。なのに、意識を失ってまで戦ったのはお前だけ……そこが知りたい」

 

「……命を助けてもらった……俺は元々死ぬはずだったんだけど、それを部長に救われて……その後、部長が嫌う相手と婚約するって聞いて、恩返しのつもりで戦って……」

 

「それは間違いだ」

 

えっ? という疑問を持った俺は、別に悪くなかったと思う。颯真はそのまま、俺の机の椅子に座り、俺の方向を見てこういってくる

 

「お前、さっき自分が死ぬはずだったと言ったな……」

 

「あ、ああ……裏の事を知ってるし、赤龍帝って呼んでたからわかるだろうけど、俺には規格外の力がある……それを堕天使が狙って……」

 

「ああ、そうだ。それだけでいうなら、堕天使が悪い様に聞こえるだろうが……それが間違いだ……貴様はあの時、死ぬはずがなかったんだからな……」

 

「……ちょ、ちょっと待てよ!! 死ぬはずがなかったって、どういう意味だよ!!」

 

「そのままの意味だが、あの日あの夜あの場所で、お前は天野夕痲……堕天使レイナーレに殺されるはずがなかったと言ってるんだ……」

 

「どういうことだよ、俺の中に神器(セイクリッド・ギア)が……赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)があったから、俺は死んだんじゃないのか!!?」

 

「確かに、お前が死んだ原因の一つは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)だ……だが、その他にも死んだ理由はある……お前は疑問に思わなかったのか……? 何故堕天使が自分の中にそれがあると分かっていたのに、お前の主、グレモリーは気づいていなかったのか……」

 

っ!! た、確かにそうかもしれねぇ……レイナーレが気付いていたのに、部長が気付けない訳がない……

 

「奴はお前が狙われていることを知っていた……だが、お前を泳がせていたんだ。堕天使の目的を知るためにな……そして、お前が殺された……神器(セイクリッド・ギア)を持っている事を知り、しかも堕天使は神器(セイクリッド・ギア)を抜き取る技術を持っている。それを知っていて、お前をそのままにしたから、そうなったんだ」

 

「だ、だけど……部長はそんな事……!!」

 

「だな。グレモリーは愛情にあふれる悪魔、他とは違いお前を大切にしているだろうが……問題点は他にもある……」

 

他にも……!! だけど、それ以外に何が……!!

 

「グレモリーがしっかりと、この土地を管理していないからだ……」

 

「っ!!! 違う!! それは絶対に違う!! だって、俺は部長がしっかり悪魔の仕事をしている所を……!!」

 

「12人」

 

……えっ? なんだよ、なんだよその人数は……何の事だよ……

 

「この人数は、お前が悪魔になる前に死んだ人間の数だ。それも、この土地のはぐれ悪魔がやったな……」

 

っ!!?……………………そんな……そんな事が……

 

「その後、はぐれ悪魔はすべて退治されているが、奴らが侵入して数日後に人間が殺されている。これが指す意味が分かるか……? その間、グレモリーははぐれ悪魔を放置してたんだよ」

 

嘘だ……だって、部長がそんな事を……

 

「大方、魔王の妹である自分の所に、はぐれ悪魔が来るなんて思ってなかっただろうな。その後の対応で、死者はいないが……完全な失態だ。今回に限ってもそうだ……お前が殺される前に、堕天使を始末する事だって出来たはずだ。少なくとも、俺ならそうしてる……お前が神器(セイクリッド・ギア)を持っている事を知るのに、少しの間時間があった。その間に、堕天使を消すことは容易だ。ましてや、あの消滅の魔法を受け継ぐ者が、下級堕天使を蹴散らせない訳がない」

 

聞いているうちに、それが本当だという事は分かってきた。部長にそれが出来た事なんて、一番近くで見てきた俺が分かっている

部長の実力は、今回のレーティングゲームでも見る事が出来たし……それが出来なかったなんて、嘘だという事は、今の俺には分かる

 

「さて、ここまで話しておいてなんだが、答えを聞かせてもらおうか……お前は何故、グレモリーの為にあんなにボロボロになって……意識を失ってなお、奴を助けようと思ったんだ?」

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