「クソ・・・血の量がッ・・・おい霊夢!死ぬな!私の目を見るんだ!・・・霊、夢?霊夢!」
「・・・脈が途絶えたわ」
「ッッ!!!・・・クッソおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
この日、博麗の巫女は異変で命を落とした。
*****
うっすらと目を開けるとそこには草原が広がっていた。
ところどころ石造りの半壊した柱と後はアーチが立っている。
ここは一体どこなのだろうか。
「やあ霊夢」
「ッ!!」
後ろから声が聞こえたと認識する前に体を後ろに反転させつつその場を飛び退く。
そして視界に入ってきたのは木の枝のような角が二本生えた一人の童女。
「おっと、驚かせちゃったかな」
どうやら声の主は目の前の存在のようだ。
しかしこの凄まじい神力とその特徴的な外見、まさかとは思うが・・・。
「そのまさか、だよ」
「龍神・・・様・・・?」
「そう、僕が龍を統べる神の龍神。幻想郷では最高神に祀られてるね」
その言葉を聞いた瞬間に私は膝まづいていた。
特に敬うわけではなくとも幻想郷のいわば親分、天狗たちで言う鬼なのだ。
逆らえばどうなるかわかったものではない。
「おっと今回はそういうのは無しだ。何しろ緊急時だからね。怒ったりしないからラフに行こう」
「はあ・・・」
緊急時・・・?なにか引っかかるが頭がぼんやりとして思い出せない。
とりあえず立ち上がると龍神様は深刻な顔をして話し始めた。
「端的に言うと君は死んだんだ。幻想郷史上類を見ない大異変でね」
「異変・・・死・・・、ッ・・・!!!」
「思い出したかい?・・・それじゃ辛いだろうけど話を続けさせてもらう。博麗の巫女とはその強大な力と存在感で幻想郷の問題を未然に防ぐ、またその気を起こさせにくくする抑止力という一面があるんだけど・・・君が死んでしまったことによりその効果は失われついに敵対勢力のタガが外れてしまったんだ。はっきり言って今の残存するメンバーじゃ幻想郷は守りきれない」
「私が・・・私のせいで・・・」
「今の残存メンバー”じゃ”って言っただろう?つまりは僕が間接的に介入するというわけさ」
「・・・龍神様が?」
「ああ。直接手を下したい気持ちはやまやまなんだけど大結界を張った時の盟約で直接干渉することはできないんだ。ちなみにこの抜け道はこういう時のために、渋り気味な妖怪の賢者を黙らせて作ったものでね!いやぁあの時の彼女泣きそうな顔ったら―――っとすまないつい話がそれてしまった」
なかなか、非常に、とても興味深い昔話が出てきたような気がするがさっきも言われたとおり今はその場合ではないので流すことにする。
「とりあえず前置きはこんな感じだ。そして本題はここから」
「―――はい」
とたんに呼吸すら忘れる程の緊張感があたりを支配する。
「博麗の巫女。汝に我が送り出す異世界の、悪の討伐を命ず」
最強とも謳われる幻想種を統べる神の神命が今、言い渡された。
それは私の中の身を焦がすほどの怒り、後悔、悲しみと混ざり合い―――決意となった。
「は。必ずや」
「うむ・・・、うんいい返事だ。」
龍神様が表情を和らげるとあたりの張り詰めた空気が一転して元の雰囲気へと戻った。
「そして補足になるけど僕が送り出す世界の悪党を倒してもらうのは最終的に異変の主を倒せる力をつけてもらうための修行っていうのが目的っていうのとあとはここと比べて時間の流れが遅い場所を選ぶから滞在期間に関してはそこまで心配しなくてもいいよ」
「何から何まで工面していただき感謝します」
「別にいいんだよ。僕だって幻想郷を見守ってきた立場として思い入れがあるしね。あと、その・・・最後に、敬語は無しでこれから仲間として接してもらいたい」
「・・・それは」
「霊夢の気持ちもわかるよ。だ!だけどここからはより綿密な連携を取っていかなくちゃならないしその際その・・・上下関係は足枷になる!だから・・・お願いだ」
「・・・わかったわ。これからもよろしくね龍神」
「・・・うん!」
心なしか語った理由以上に嬉しそうにも見えるがそれは気のせいだろう。
さて、そろそろ話す内容も尽きただろう。
そうと決まれば、と後ろに反転して空洞部分が光っているアーチを見やる。
「これをくぐれば異世界に行けるって寸法なのかしら?」
「そういうこと」
「それじゃ・・・行ってきます」
「頑張ってね。最後の希望は君に託されたんだから、霊夢」
後ろから聞こえるその言葉を噛み締めながら今、光へと踏み出した。