頬を爽やかな風が撫でていく。
眩しい日差しに耐えてゆっくり目を開けるとそこには異国風の光景が広がっていた。
周りを見渡すと革の防具を身につけた男女が同じようにキョロキョロとしている。だが全員が全員キラキラと、まるでこれからの未来に希望を馳せているような輝かんばかりの笑顔にあふれていていてそれが自分に違和感を生じさせた。
(なんで連中は全員笑っているのかしら)
【それは今日が待ちに待ったSAOの開始日だからさ】
(あぁなるほどそういうことね)
【・・・そうだ。この世界もゲームだからクリアとそれまでの流れがあるんだけどそれも今のうちに説明しとくね。というわけでまずはその説明を記録するためのメモ機能の説明だ!】
(はいはい)
童女説明中・・・
【こんな感じかな】
(ありがとう。でもこうしてみてみると異変を思い出すわね。道中の敵を倒して最終的に親分のところまでたどり着くって部分が似てるし)
【だね】
話しながらメモに記録した内容を読み返す。
どうやら舞台は《アインクラッド》という100層から成る巨大浮遊城でその一層一層が《ステージ》と呼ばれおり最終的な目標はそのてっぺんにいるラスボスとやらを倒すことなのだそうだ。ちなみそこにたどり着くには層と層をつなぐ《迷宮区》を通りそこの最上階で待ち構える《フロアボス》を倒さなければならないのだとか。つまりは頂上のやつを除けば99匹も叩かなければならないことになる。
気が遠くなる話だがふと思い返してみれば楽な修行など生まれて以来一度もなかった。
むしろ強くなれるのだから喜々として歓迎すべきだろう。
「スモールソードを装備してと・・・じゃあ早速レベル上げとやらに向かいますか」
たどたどしい手つきで地図のウィンドウを開いて街の外、《圏外》へと走り出す。
・・・しかしこの世界は体が重い。
龍神いわくゲームという性質上公平さを保つために最初は全員成人した男女を合わせた平均身体能力に固定されるらしい。
これも縛りの一つだと思うと幾分受け入れる気にもなるがそれでもやはり調子が狂ってしまう。
もともとそのつもりであったがレベルアップしたら速度に補正のつくAGIに成長ポイントを絶対振ろう。
そう固く誓った。
***
気が付けば空は夕焼けに染まっている。
メニューの時刻を見ると17:30と表示されていた。
思えば出発したのは13時すぎだったためかれこれ4時間ちょっと青猪を狩っていた事になる。
そのおかげもあってかレベルは既に6に達しておりスキル、成長ポイントも共に獲得することができた。
ちなみにスキル枠は投剣と索敵で埋めてある。前者は幻想郷にいた頃に封魔針を使ってた影響で、後者はスキルツリーに取得経験値を増加させる内容のものがありそれが自分のスタイルに合っていると感じたからである。というのも実は攻撃力増加といった感じのステータスを直に引き上げるスキルは自分は取得する気がない。
それをとってしまうと必要以上の恩恵によって修行の意味が薄れてしまうという弊害がある。
その点レベルアップによるステータスの上昇は”修行”と”生存”を鑑みて妥当なラインだと考えてたのでそれに繋がる経験値上昇は自分にピッタリということになる。
「さてと、武器もボロボロになってきたしここの狩場も経験値しょぼくなってきたし・・・一旦戻って準備をしてから次の街にいくか」
もうここに用はないと私は剣を納めて主街区に向けて歩き出した。
その時。
ふと鐘の音が遠くから重く、重く鳴り響いてきた。
そう、まるで惨劇の始まりを告げるように重く、重く―――。
スキルのシステムは「SAOホロウフラグメント」を参考にしています。