現在時刻20:15
主街区から出発してかれこれ2時間ほどが経過したことになる。
地平線の向こうの日は沈み辺りは暗いが幸い1層の天井―――または2層の底辺―――がぼんやりと光ってくれているので月明かり差す夜くらいの視界は確保されておりこれといった弊害はない。
また道中のモンスターは進むにつれて狼、巨大蜂と姿を変えていったが流石にレベル6にも達していると敵ではなく下位ソードスキルと通常攻撃を1発ほど与えれば結晶片へと散っていく。
(張り合いがないわね)
【まだまだ序盤だし製作者の情けじゃない?】
(もともと殺し合いしに来るつもりじゃなかった人向けだし今は仕方ないか
・・・)
【お、そうこういっているうちに門が見えてきたよ。あれは・・・村かな?】
龍神の言う通り遠くの方で左右を守衛とかがり火で挟まれた門が見えている。
おそらく外観は小さくとも人が居住している(という設定な)ので宿泊施設はあるだろうが他のプレイヤーが押しかけてくる前にクエストをなるべくこなして次の拠点に移りたいので利用することはないだろう。
***
ひととおり見て回ったここ、ペイル村の印象は「整っている綺麗で小さな村」だ。
決して規模は大きくないが立ち並ぶ美しい異国風の建築物と、鍛冶屋、道具屋、武器屋といった最低限の施設が用意されているそんな場所。
拠点として活動するにも悪くない環境だが少なくとも現時点でそのつもりはない。
ただクエストを受注して達成するだけだ。
そしてその要肝心のクエストは合計6個見つけられた、のだが。
これが面倒なことに一度に受けられるのは4つまでなようでまとめて消化することはできないようだ。
「この仕様はどういうことなのかしら」
【うーんどういうことだろうね?僕も分かんないや】
「あら?そう」
一応龍神でもわからないことはあるらしい。
そのことに少し驚きと解決しないもやもやを抱えつつメニューのクエスト画面を開いてこなす順番を再度確認する。
ちなみに今4つの受注済みのラインナップは
《商業人を悩ますブルートルウルフ20匹の討伐》
《鈴と赤い首輪をつけた猫を追走して確保、飼い主に届ける》
《鍛冶屋の主人に巨大蜂の毒針を30本届ける》
《老人が若かった頃の武勇伝を2時間聞く》
ざっとこんなものである。
最後だけ明らかに異質なのだがこれは仮眠用に使うつもりだ。
つまり聞いてるふりをしてその間にまどろんでおく。
するとあら不思議、クエストこなせて疲労も軽減できるという一石二鳥の嬉しい効果が。
・・・少しずつこの世界の生き方がわかってきたかもしれない。
「よーし、そうと決まれば早速クエストこなしていきますか!」
まずは街の外に関わる依頼を達成すべく再び圏外へと通じる門に向かって走り出した。
ここはよほどの障害がない限り他の者が来るまで猶予はあるので別に歩いたって構わないのだが自分は一刻も早くクエストを達成してレベルを上げたかった。
もちろん、そうする第一の理由は少しでも強くなって誰よりも上の困難に立ち向かうことだ。
だが、それと同時にステータスが上がったりポイントを振ったりするあの瞬間の、あまり減らなかった敵のHPバーが見るからに減るようになったあの時の・・・あの時の快感にどうやら私は魅入られてしまったらしい。
【まさか霊夢にゲーマーの気があったとは】
(・・・ええ、”ゲーマー”ね)
意味は分からないがなんとなく分かる。
幻想郷を救ったあとは紫にゲームを融通してもらうのも悪くないかもしれない。
「・・・ッ。何考えてるの、流石にそれは気が抜けすぎているわ」
思わず楽観的になってしまい無駄で不確定な先の妄想までしてしまった。
そもそもその未来をたぐり寄せるためにも私がしっかりしなければならないというのに。
・・・気を引き締める。遅れを取るとは思えずとも相手は殺しに来ている。ならばそれ相応の覚悟で行かなければ倒れるのはこちらだ。
「相手はただの経験値。
―――――――狩る」
気を引き締めたことによりルート「静かな修羅」にまた一歩近づきました(鬼畜)