口調に違和感があれば教えていただけると助かります。
次回もザリュース視点が続くと思いますので・・・
空は晴天。
柔らかい太陽の光がのびのびと世界を照らしている。遠くに見える白い山脈も心なしか温かみを帯びて見える。オスは
オスの名はザリュース・シャシャ。
頂点に位置するのは一族最強の
無論、これに属さない立場の者も存在する。魔法を使用し部族の生活を補佐する司祭。漁猟と木々の伐採を担う狩猟班。彼らは独自の判断と行動を許されているが、族長の命令には従うことを求められる。
それに対して旅人は族長の指揮からも完全に外れた存在である。
基本的に
旅人は”部族を離れた”ということから煙たがられる存在だが、”外の知識”という価値を持って一目置かれる存在でもある。
だが、ザリュースが一目置かれるのはそれだけの理由ではない。
腰に光る武器。ブーメランのように刃先の曲がったシミターだ。三つ叉に分かれた刀身から巨大な鉤爪のように見えなくも無い。それは湖周辺に点在する全ての部族の
(なんだ・・・?少し騒がしい?)
階段を下りたザリュースは村の異変に気が付く。本来はペットのロロロにエサを与えるために、村のはずれへ行く予定だった。
しかし、
正門方向からこちらへ来た・・・おそらく族長へ知らせに行く途中であろう数名のリザードマンに尋ねたところ、見慣れない生物が一匹この村に向かってきているらしい。外見は「翼の生えた赤い
(翼の生えた
自らの知識に一致する生物が居ないため、警戒心を一段上げる。単純に奇形の
(一匹でこの森の中を抜けてきたとするなら強敵だ。もしもの時は兄者が来るまで俺が押さえなければ・・・)
気を引き締めつつ足早に正門へと向かった。
正門にはすでに数十人の
集団の中には狩猟班や戦士階級の
ザリュースも訪問者を確認しようと戦士階級の
「俺にも確認させてくれないか?何か分かるかもしれない。」
「ザリュースか!よくぞ来てくれた!皆、あの化物が何なのか分からないのだ・・・すぐに確認してくれ!」
待っていたとばかりに声を弾ませる戦士階級の
フロスト・ペインの所有者ということで戦士階級の
反対に長老会の
ザリュースも目の端でその表情を確認するが、それ以上に怪物の確認を優先したい。すぐに集団の最前列に向かうと視線を外に向けた。
「なんだ・・・あれは・・・」
開口一番にそんな言葉が出てしまった。見たことの無い生物が村へ向かって歩いていたのだ。
(翼の生えた
確かに一見すると翼の生えた赤い
そして、驚くべきは装備だ。
しかし、目の前の怪物は金属のグレートソードと金属の鎧を身に纏っているのだ。魔法効果の有無は流石に分からないが、装備の質という点で
(ただの化物じゃない・・・剣や防具を扱えるだけの知識と経験がある戦士だ。それに・・・気配を感じない。)
この時点でザリュースは恐怖を抱き始めた。
“
あの怪物を見ても
敵意や殺意、威圧感、さらには強者独特の雰囲気、そういったものをまるで感じない。ただの
狩猟班が気配を消す、薄くするといったことができるがそれとは少し違う。気配を消すというより気配を周りと同化させているのだ。僅かな感情の揺らぎさえも周りと同化させ一切感じさせない。そんな気味の悪いものに対して恐怖したのだ。
意図的にそんなことが出来るとするなら、戦士としての格は今まで出会った中でダントツの一位だろう。一対一では勝ち目は無いに等しい。
(あれには勝てない・・・兄者と俺の二人掛りで時間稼ぎ程度か?)
正確な実力差は分からない。その位の実力差があるという憶測に過ぎない。しかし、なるべく最悪の想像をしたつもりだった。
“
この時はそんな”楽観的な最悪”を想像をしていた。
「オレは遭難者だ!助けてくれねぇかー!?」
これから取るべき行動を思案していると、怪物から言葉が放たれた。正門から20mほど離れた位置立ち止まり、棒読みの大声を上げている。さらに大きく息を吸い込み二言目を放つ。
「水と食料を恵んでほしい!んでもって数日ここで休ませてくれー!それなりの礼はするからよー!」
棒読みである点には警戒を残しているが、ザリュースはこの時、他の
対照的に他の
装備を身に纏っていることから知能を持つ亜人種だろうとザリュースは予想していたが、周りの
ザリュースは怪物の発言について考えを巡らせていた。
単純に怪物の発言を信じるなら願っても無いことだ。水と食料、そしてしばらくの間の寝床。それさえ用意してくれれば”礼”を用意する。そんなことを自分以上の強者である怪物が言っている・・・”礼”の内容次第だが、対等の取引をしようと持ちかけているのだ。
ザリュースも戦士であり、強者との戦いに興味が無いわけではない。
しかし、明らかな強者との戦いは避けるべきだし、友好的に接することができるならそのほうが良い。旅の経験から勇気と無謀が別物だとはっきり分かっているのだ。
問題になるのはどうやってその取引を成立させるかだ。
仮に怪物の強さを目の前で分かりやすく示せたとして、
そのため、
正確に言えばそれを族長である兄だけにでも理解させれば成功だ。族長が立ち入りを認めるなら、他の
(俺が飛び出して交渉をしに行ったほうが良いな・・・他の者が出向けば恐らく戦いになる。)
長老会の面々からはさらに嫌われることになるが、自ら交渉役になることをザリュースは決意した。本来なら族長が到着するまで待つべき事なのだが、それでは遅いと思ったのだ。
怪物が棒読みをしていたため、
(すぐに他の者に待つように伝え・・・)
「おーい!どうだー!?助けてくれんのかー!?返事してくれー!」
ザリュースの考えを遮るように怪物の声が耳に届く。先ほどまでの棒読みとは違い、多少の苛立ちを感じる声色だ。ザリュースは内心”不味い”と直感する。怪物が苛立っていることに対してもそうだが、最も”不味い”と直感したのはこの声を聞いた
そして、その直感は現実のものとなる。
ヒュッ
そんな音と共に狩猟班の一人が怪物めがけて投石した。自然とザリュースの目は投石された石を追った。本来なら頭の中に狩猟班と怪物に対する怒りが渦巻き、投石を眺めるほど暇ではないはずだった。
狩猟班には「なぜ強者である怪物に投石して怒らせようとするのか」、怪物には「なぜもう少し苛立ちを抑えられなかったのか」と本来なら思っているはずだった。おそらく、その先にある恐怖も頭を巡っていただろう。
しかし、あまりに完璧なタイミングの投石だったため、反射的に石を見てしまった。未だ頭の理性が反応できない程度の時間しか経過していない。そして視界が怪物と石、両者を捕らえたとき理性が覚醒する。
(ば、馬鹿な・・・)
石は正門と怪物の中間に位置している。そんな時、怪物の姿が目に入る。そこで驚愕の事実を見る。
怪物の目は石ころなど眼中に無いと言わんばかりに、集まった
その目は左側から右側へゆっくりと動いていき、一度ザリュースを通り過ぎ・・・再び戻る。明らかにザリュースで視線が止まっている。捕食者が狙った獲物を見つけた瞬間だ。そんな視線と一連の怪物の観察がザリュースを恐怖させた。
一瞬の内に数十人を一人一人観察するというのは、どれほどの力の差があればできるというのか。これは怪物が圧倒的強者である事を示す何よりの証拠だ。先ほどの”楽観的な最悪”を考えていた自分を殴り飛ばしたくなるほどの圧倒的な差。戦うどころか時間稼ぎさえ無謀・・・今すぐにでも逃げ出すべき怪物を前にしているのだ。
そして、何の因果かその怪物に目をつけられる・・・ザリュースほどの戦士でさえ臓腑に滴る冷や汗を止めることはできなかった。
コッ
完全に頭の中から消えていた石が怪物に命中する。当然ながら怪物は無反応・・・それに対し
「なぁ・・・返事してくれよぉ!」
ドクン、と自分の心臓が大きく鳴ったのをザリュースは感じ取った。怪物が明らかにザリュースを見ながら言葉を発したのだ。棒読みでも苛立った声でもない。強者が弱者をいたぶる時のような余裕に満ちた声だ。この声はザリュースの心と体を戦慄に染め上げた。
理解したのだ。これが
「早く返事をしろ。今なら取引で済ませてやる。」
そんな意味を込めた言葉なのだと。
同時になぜ自分が選ばれたのかも理解した。全
(まだ取引で済む・・・もう一刻の猶予も無い!)
戦慄に染まった顔を使命感で即座に立て直す。
まだ取引で済むのだ。ここで自分が出て行けば戦いを回避できるかもしれない。そんな思いがザリュースを突き動かした。
「俺があの怪物と話す!道を空けろ!」
ザリュースはフロスト・ペインを手に持つと、集まった
「旅人風情が何を言う!戦いに行くならいざ知らず話すなどと・・・!それは族長が来るまで待つべきあろう!」
ザリュースの声にいち早く反論したのは長老会の老いた
「あの怪物は俺より強い!俺が戻るまで誰もあの怪物に近づくな!」
ザリュースはそのまま怪物に向かって駆け出していた。後ろではザリュースに対する長老会の怒りの声やその他の
「俺は”
ザリュースは怪物にフロスト・ペインを突きつけ、声を張り上げた。これには二つの狙いがあった。
一つは自らを鼓舞するため。心情を吐露するなら圧倒的強者の間合いに入るなど怖くて仕方が無いのだ。そんな中で心が折れないようにと声を張り上げ、”緑爪”族の代表であるという己の立場を自らに言い聞かせたのだ。
二つ目は取引を成功させるためだ。自分勝手にとはいえ、村を代表することになった者が”よそ者に怯えている”と認識されるのは非常に不味い。自分の評価が落ちるだけなら良いのだが、その矛先が怪物に向いてしまったら目も当てられない。出来る限り毅然とした態度を取り、立場として
そして、発言の内容にも意味がある。
自らを一族の代表として怪物に紹介している。これは怪物が他の者へ標的を移さないようにするためだ。
また、この考えは”最初に会話した”という既成事実にも大きく関係する。
“最初に会話した”ということで今後の取引の際にもザリュースが間に入りやすくなるだろう。怪物の思考は掴めていないとはいえ毎回、別人と交渉をするのは煩わしいはずだ。特定の誰かを交渉役に据えたくなる。そうなれば最初に目が行くのは自分と言うわけだ。
さらには交渉役と言う名の
つまりザリュースは、今からの怪物との交渉に向けての準備、”
しかし、それ故に緊張していた。短時間にこれほど大量のことを考える事を強要されるなど生まれて初めてなのだ。何処かに綻びがないか、既に間違ってるのではないか、といった不安がその緊張を増長させていた。
そんな緊張感の中、交渉が始まった。
「とりあえず、出て来てくれてありがとよ。オレの要求はさっきのとおり・・・」
「その前に名を教えてほしいのだが?」
「そりゃごもっとも。」
緊張感などまるで無い怪物はおどけるように肩をすくめた。
こちらが自己紹介をしたのだからそちらも名乗るのが常識。この辺りは取引相手として当然のことだと思い、怪物の言葉を中断させてまで発言した。これは普通なら非常に危険な発言であることは間違いない。
しかし、
したがって、ある程度の筋は通してくれるはずだ。こんなことで戦いになるのなら取引や脅迫など仕掛けてくるはずが無い。
怪物は一呼吸置くと、真っ直ぐとザリュースを見据えて名前を告げた。
「オレはドラゴニュートのオクト・パスだ。オクトと呼んでくれや。」
名乗った際に居心地の悪そうな表情を一瞬だけ見せた。確かに
考えても理由は分からないうえに、話が進まないので別の疑問を投げかける。怪物の要求を聞くだけではなく、なるべく怪物自身の情報も引き出したいからだ。
「なるほど・・・オクトだな。要求を聞く前に質問をしたいのだが、”ドラゴニュート”とはオクトの種族名か?俺は聞いたことが無い種族だ。」
「ああ、オレの種族名だぜザリュース。ドラゴニュート・・・まぁ、人間型のドラゴンって感じだな。ってかお前らは”リザードマン”でいいんだよな?オレが知ってるのとは随分と姿が違うんでな。」
「もちろん、我等は
「あ~・・・出身ね・・・」
そこまで言うとオクトは頭をポリポリとかきながら言葉に詰まる。数秒の沈黙の後、衝撃の返答が返ってきた。
「最初に”遭難者”って言ったけど、実は”異世界からの遭難者”なんだわ。ぶっちゃけた話。」
「い、異世界・・・!?」
それから簡単な経緯を説明された。
元の世界では傭兵として名を上げ戦場を駆けていた。『フェアリー・ウッドの森』という所で寝ていたらいつの間にかこの”トブの大森林”で寝ていた。水と食料が尽きたのでたまたま見かけたこの村に来た。
そんな荒唐無稽な話を聞かされた。ちなみにオクトの世界の”リザードマン”についても訪ねてみたが、どう解釈しても化物にしか聞こえない生物だった。
「そんな話を信じろ・・・と?いささか無理のある話に聞こえるな。」
「ま、信じようが信じまいがお前らの勝手だ。でも、真実には変わりねーけどな。だから蹂躙なんてせずにメンドクセェ交渉してやってんじゃねぇか。お前なら脅してるのぐらい分かってるだろ?」
「・・・なるほど。それで水、食料、寝床、そして
「理解が早くて助かるぜ。正確には”この世界の情報”だけどな。」
惜しいっと言いながら人差し指を突きつけてきた。
異世界の話を本当に信じたわけではないが、そういう事であるならオクトの行動と要求は理にかなっている。
まずは生活必需品としての水と食料を手に入れる取引を持ちかける。さらに、しばらく滞在することで取引を重ね信用や信頼・・・引いては友好的な関係を築く。そして、最も欲しい情報という品を手に入れる。
精神操作系の魔法を使えるなら話は別だが、村を蹂躙するよりは友好的に接したほうが情報は得やすいはずだ。
蹂躙して無理やり情報を吐かせることは可能ではあるが、それでは自分の思いついた情報だけしか引き出すことは出来ない。さらに、
ならば多少遠回りになってでも、友好的に接して情報を聞き出すほうが量も質も良い。異世界に来たのだと仮定すれば、情報は何よりも欲しい物・・・だからこそ情報がより多く得られる方を取るのが利口だ。
また、ザリュースを脅迫したことも上手い。交渉役として利用できる。オクトを真の意味で恐怖する交渉役・・・これ以上の人材は居ないだろう。可能な限り手足として動いてくれる駒だ。奇しくもザリュースの思惑と被る部分があるので、より好都合だろう。
「脅しの意味と要求の大半は理解した。だが、それに見合った対価は何を用意してくれるつもりだ?見たところ武器と防具しか持っていないようだが・・・。それとも力で俺をさらに脅すつもりか?」
「安心しろってザリュース。脅すのは友好関係を築くためだけだって。ちゃんと要求のものをくれるならそれなりの”礼”をやる。見た目は手ぶらだが・・・まぁ、”いくらでもアイテムを収納できる魔法の箱”みたいな魔法アイテムを持っててな。その中に魔法の力の宿った武器や防具、さらには家具なんかもある。お嬢さん方が要るってんなら宝石なんかもあるぜ。」
そういってオクトは手を空間の中にめり込ませた。ギョっとする光景なのだが、今更慌ててもしょうがない・・・ここは既に死地なのだから。しばらくすると、人間の頭ほどの大きさのある赤く透き通った宝石がその手に掴まれていた。
「手始めにコイツをやる。これでなんとか
ポイっと石ころを子供が投げ渡すかのようにしてザリュースに宝石を投げる。
慌てて左手で受け止め宝石を確認する。宝石に詳しいわけではないが、これはルビーと呼ばれるものではないだろうか?形状からしてまだ原石のようだが、これほどの大きさならば、外の世界ではかなりの価値があるはずだ。そんな物を手始めで渡すとは・・・価値観が随分と違っていそうだ。
「これほどの宝石ならどうにか説得は出来そうだが・・・少し時間がかかるぞ?しばらくここで待ってもらうが構わないか?」
「ん~・・・まぁ、しょうがねーか。だが、なるべく早く頼むぜ。今日は何も食べて無いんでな。」
「そうか。食事の準備も含め、可能な限り急ぐとしよう。そして、もう一つ頼みがあるのだが・・・」
言い淀んでいるザリュースを不思議に思ったのかオクトが首を傾げている。
これまでの話から要求さえ通るなら、オクトはある程度のことを許容してくれるとザリュースは感じている。しかし、今から言うことはもしかすると逆鱗に触れるかも知れないのだ。オクトの言う元の世界で傭兵をしていた点からも難しいかもしれない。
だが、この頼みが通ればおおよそザリュースの目論見どおりにことが運ぶはずなのだ。
オクトの言う友好的な関係が築け、
「非常に言い難い事だが、その武器を預からせてもらえないか?オクトに敵意が無いことの証明として村の者たちに見せたい。そうすればより早く話が纏まるはずだ。」
なるべくオクトを刺激しないように頼みを伝えた。
単純な話だが、武器を他人どころか初対面の人物に預けるなど普通ではない。しかし、”武器を預ける”ということ以上に”敵意が無い”ことを示す行動も無いのだ。これで
オクトも交渉の成立を望んでいるなら悪くない話のはずだ。圧倒的弱者から言われても”悪くない”と思ってくれるのかが問題ではあるのだが・・・
「フツーは断る所なんだがな・・・ま、お前らなら素手でもぶっ殺せるから構わねぇか。ってか持てるか?結構重いぞ?」
「あ、ああ・・・受け取ろう。」
意外とあっさり預けることに応じた。圧倒的な実力差があるためか、武器程度ではオクトの警戒心が刺激されないようだ。それどころか持てるかどうかの心配までされることになろうとは・・・それほどまでに弱者に見られているのだろうか?
オクトは背中の剣を右手で軽やかに抜き取ると、峰の部分をザリュースに向け、ズイっと目の前に差し出してきた。少し躊躇したがフロスト・ペインを仕舞い、同じく右手で受け取った。
「なっ!」
「おいおい・・・やっぱ持てねぇんじゃねーか?」
大きさにして2m程のグレートソードだ。重たい事は理解しているが、想像を超える重さだったのだ。危うく落としてしまうところをオクトによって支えられ事なきを得ている。オクトの手伝いを得て何とか肩に担ぐようにして持つことに成功したが、まるで大柄な
(こんな物を片手で軽々と・・・やはり敵対できる相手ではないな。)
「では俺は村へ戻る。武器は交渉が終わり次第、返却することを約束する。」
オクトへの警戒心を新たにしつつ、ザリュースは最低限の礼を尽くす。本来は戦士が剣を預けるなどそう簡単なことではない。脅される立場であり、埋めがたい実力差もあるとはいえ剣を預けてくれたことには戦士として礼を尽くすべきなのだ。
「ああ、それでいいぜ。ただ、地面には落とさないでくれよ。泥で汚れるのは流石に御免だからな・・・」
オクトは冗談ではなく本気で剣が泥で汚れることを嫌がっているらしく、忌々しいものを見るかのように地面を一瞥した。本来は違う心配をすべきだと思うのだが、その辺りはオクトにとっては心配する事柄ではないらしい。
ザリュースは最初の交渉に成功したことに対して安堵したいところだったが、重りのようなグレートソードを落とさずに運ぶという重圧にそれが許されなかった。
ヨタヨタと踵を返すと正門へ向かって歩き出した。今度は肉体的な意味でも鉛のように重い足を動かしながら・・・
(次は兄者達との交渉か・・・問題ないと思うが気を引き締めなければ。)
ザリュースは新たな交渉の事を思い溜息をついた。そして、すぐに表情と姿勢を正し村への帰路を急いだ。
これから更新ペースが週1になる予定です。
気長に待って頂けると幸いです。