おかげで更新が早くなりました。
あれは四年前・・・いや、五年前だったか・・・?
・・・とにかく、数年前だ
『YGGDRASIL二週間無料!フリートライアル!』
Web広告にそんな言葉を見つけた・・・気がする・・・
曰くDMMO-RPGの代名詞。曰く史上最高の自由度。曰くデーモンオンラインがパクッたゲームetc...
少し興味があった
アバターは人間、職業はウィザード
デーモンオンラインとは真逆の選択・・・遊びだからな・・・
やってみた感想は・・・
デーモンオンラインのパクリじゃん
真実は逆だけど、そんな感想だったなぁ・・・
短いプレイ期間中はソロでひたすらモンスター討伐
最終的に三十種類程度の魔法を覚えた・・・と思う・・・
よく使っていた魔法は・・・
第三位階魔法<
「ここはユグドラシルか!?」
オクトは驚愕の顔で声を張り上げ、そのまま思考を巡らせる。ザリュースと司祭頭はオクトの行動に目をパチクリさせているが、オクトはそれに気が付く余裕も無い。
(ここは異世界ではなくユグドラシルの世界だった・・・?)
見たことの無いマップ、ユグドラシルと同じ階位魔法があるということはそれで納得できる。リザードマンの外見が違うのも、ここに居るのはユグドラシルの
(いや、じゃあ何で武技が使えるんだ?ユグドラシルには・・・ってかデーモンオンライン以外じゃ武技なんてないだろ。)
確かにユグドラシルに武技は存在していない。そもそも武技はデーモンオンラインだけの技だ。しかし、ユグドラシルと思われるこの世界で武技を使用できている。武技が存在しないはずのゲームの世界で武技が使えると言うのは違和感しかない。
だが、武技やスキルの仕様が一部変更されていたのも事実だ。そのため、ユグドラシルの世界で使えるように様々な仕様が変ったとも考えられる。釈然としないものは残るが、そのおかげでオクトが武技を使用することが出来るのかもしれない。
(やっぱりここはユグドラシルの世界か・・・?いや、まだ結論は早い。もし、ここがユグドラシルの世界なら武技を使えるのはオレ一人。少なくとも同じようにデーモンオンラインから来たヤツだけだ。この世界・・・ユグドラシルの
ユグドラシルに武技が無いなら、ユグドラシルのキャラクターは武技を使用できないはずだ。習得する手段どころか武技という概念が存在しないのだから。オクトは顔をザリュースに向け、質問した。
「ザリュース、後で礼はやるから答えろ。武技という技を使えるか?」
ザリュースは突然の質問とオクトの真顔に驚いたが、真剣さを感じたため即答した。
「もちろん、武技は使えるぞ?俺だけでなく、戦士であれば使えるのが当然だ。」
「マジで使えるのか・・・!?・・・じゃあ、どんな武技を使える?」
「・・・全ては言えないが、<斬撃>や<要塞>は使える。」
「<斬撃>と<要塞>・・・だと!?なんで・・・いや・・・」
思わず口ごもってしまった。
<斬撃>と<要塞>はオクトも使用できる。なぜなら、デーモンオンラインの武技だからだ。
なぜデーモンオンラインのリザードマンでないザリュースが同じ武技を使えるのだろうか?ここがユグドラシルだとすると変ではないだろうか?武技という存在が無い世界のはずだ・・・
(どうなってる・・・?ユグドラシルの
「ザリュース、武技は誰に教えてもらったんだ?ってかどのぐらい昔から存在してるんだ?」
ザリュースは訝しげな顔を見せるが、淡々と答えてくれた。
「兄者から教わったこともあるが、先々代の戦士頭から主に教わった。武技そのものは正確にいつから存在したのかは分からない・・・ただ、数百年以上前から存在してるぞ?」
「数百年・・・前・・・?」
ザリュースの答えに開いた口が塞がらない。
ザリュースが武技を使用できることから、存在を伝えた人物・・・デーモンオンラインのプレイヤーが居る可能性は十分にあった。しかし、数百年前に来ていたなど、スケールが大きすぎた。もちろん、オクトがこの世界に来ていること自体が有り得ない話なので、数百年前に他のプレイヤーが来ていてもおかしくはない。
そう、何が起きていてもおかしくない状況に置かれている。
(そうだ・・・何が起きててもおかしくない。・・・それならここがユグドラシルだとは限らないんじゃないか?別の可能性もある!)
デーモンオンラインの武技とユグドラシルの魔法が同時に存在する世界。それを実現するとしたら三通りの方法がある。
一つ目はデーモンオンラインの世界にユグドラシルのプレイヤーが転移した場合。二つ目はユグドラシルの世界にデーモンオンラインのプレイヤーが転移した場合だ。
この二つなら転移したプレイヤーがその世界で、魔法や武技を教えれば良い。仮に習得できなくても、同時に存在することは可能と言える。
しかし、ここはデーモンオンラインの世界ではないので一つ目は有り得ない。二つ目にしてもTPの無いユグドラシルで、そのキャラクターが武技の使うのは違和感が残る。
以上から導き出したのが三つ目。異世界にデーモンオンラインとユグドラシルのプレイヤーが転移してきた場合だ。これなら全てに説明は付けられる。
見たことの無いマップやリザードマンなのは当然。この世界にMPやTPに相当するものがあれば双方の魔法や武技を使用できても不思議じゃない。習得に関してはそれぞれのプレイヤーから教われば良いだけだ。
この仮説ならこの世界に階位魔法しか存在しないというのも説明できる。
デーモンオンラインからは魔法をあまり使えない戦士系のプレイヤーが転移してきた。逆にユグドラシルからはキャスター系のプレイヤーが転移してきた。DMMO-RPGであれば偏ったキャラクター育成になるのが一般的。そのため、十分に有り得る話だ。これならデーモンオンラインの魔法が無くてもおかしくない。
そして、この三つ目の仮説を証明するのは簡単だ。
元々、この世界に階位魔法や武技が存在しないと仮定すると、プレイヤーが階位魔法や武技を伝えたはずだ。そうなると、そのプレイヤーは有名になっている可能性が高い。
そんな人物の有無を確認すれば良いのだ。存在すればここは異世界で、ゲームのプレイヤーが転移してきたと言えるだろう。
オクトは視線を司祭頭に移すと同じように質問した。
「ババァ、この世界の魔法・・・階位魔法はいつからこの世界にあったんだ?広めたのは誰だ?それとも元からこの世界にあったのか?」
ザリュースと同じく訝しげな表情を浮かべ、司祭頭は返答する。
「今から五百年ほど前”八欲王”と呼ばれる強大な力を持った者達が、突如として現れたそうじゃ。階位魔法を広めたのはその”八欲王”だと言われておるのぅ。それ以前には階位魔法は存在せず、”始原の魔法”と呼ばれるものがあったそうな・・・詳しくは知らぬがな。」
(なるほど・・・”八欲王”か。そいつ等が
オクトは自らの仮説が正しいと確信する。
この異世界にはデーモンオンラインとユグドラシルのプレイヤーが居た。少なくとも五百年前にユグドラシルのプレイヤーが転移している。では他に居ないのか?
「ババァそれからザリュース・・・”八欲王”みたいに有名なヤツは他にいるか?悪人だろが善人だろうが構わねぇ。知ってるだけ教えろ。ついでに武技を広めたヤツが居たらそいつもだ。」
この世界に対して良い意味でも悪い意味でも大きな影響を与えた人物がいれば、それもプレイヤーである可能性が高い。
司祭頭から聞いた限り、第六位階魔法というユグドラシルの中間程度の魔法を使えるだけで伝説や神話なのだ。第十位階魔法を使った人物が百年前に存在しただとか、その人物と互角に戦った存在が居たとなれば、それはプレイヤーではないだろうか?プレイヤーなら最高位の第十位階魔法くらい使えて当然だろうし、そんな人物とも互角に戦えるはずだ。
そんな考えから、司祭頭とザリュースにプレイヤーの存在を尋ねた。すると面白いようにプレイヤーと思しき人物が出てきたのだ。
六百年前に現れ、現在では人間に神として信仰される”六大神”
五百年前に”八欲王”と戦い、そのほとんどが滅びたらしい”竜王”
二百年前に世界を荒らしまわったとされる複数の”魔神”
”魔神”と戦った多数の種族からなる一団”英雄”
一国を滅ぼしたものの、”英雄”達に打倒された吸血鬼”国堕とし”
“八欲王”と合わせて六つの、プレイヤーと思われる者達の物語や伝説を聞かされた。もちろん、この全てがプレイヤーとは限らないだろうが、大多数はプレイヤーだろう。非常にレベルの低いこの世界において、伝説と呼ぶべき力の持ち主なのだから。
それぞれがどのゲームから転移してきたのかは不明だが、階位魔法の描写が多いことからほとんどがユグドラシルのプレイヤーだと思われる。
武技を広めた有名人は居ないようだが、”英雄”の話の中に武技を使う戦士も出てきた。そのため、少しはデーモンオンラインのプレイヤーも混じっていそうだ。
(だいぶ分かってきたぞ・・・あとは個々の魔法や武技の名称を聞いてやれば裏づけは取れるな。)
オクトはこれらの話から、過去に複数のゲームからプレイヤーが転移してきたと予想している。しかし、まだ完全にそうだとは思っていない。第三位階魔法<ファイヤー・ボール>や武技<斬撃>にしてもたまたま同じ名前だった可能性もある。そのため、伝わっている魔法と武技を細かく聞いていくことにしたのだ。
「ババァ、いくつか魔法の名前を教えろ。なるべく第三位階魔法以下にしてくれ。」
(そのくらいの魔法なら幾つか覚えてるしな・・・)
ユグドラシルでの記憶は少し曖昧だが、第三位階魔法<
「突然言われると難しいのぅ・・・。ううむ・・・攻撃魔法なら<
(とわいんぷらんと?は知らないが、他は知ってる・・・やっぱユグドラシルじゃん・・・)
一つ知らない魔法が混じってるが、概ねユグドラシルで使ったことのある魔法だ。はやりユグドラシルの階位魔法がこの世界では広まっているようだ。
司祭頭が答えにくそうだったので、次は範囲を絞って聞いてみることにした。
「じゃあババァ、第0位階魔法を幾つか見せてくれ。食材を作ったり出来るか?」
「食物を作る魔法は第一位階魔法じゃ。果実を作ることも出来れば砂糖も作れるぞ。まぁ、見ておれ。」
司祭頭は手を前にかざすと魔法を発動させた。
「<
(・・・どっちもデーモンオンラインじゃん。もしかして戦闘系以外はデーモンオンラインの魔法なのか?)
目の前にはりんごと思しき果実と少量の砂糖が出来上がっていた。どちらもデーモンオンラインと同じ名前で同じ効果である。この結果から仮説を考えていると、司祭頭が続けて魔法を使用した。
司祭頭が立てた人差し指に小さな炎が灯ったのだ。その炎で果実と砂糖を照らしオクトに説明する。
「第0位階魔法はこのように名も無き魔法じゃ。一概に何があるとも言えん。魔力は無駄に消耗するが、生活においてはこのように便利な魔法じゃ。・・・戦いでは役に立たんものじゃがな。」
それだけ言うと指を折りたたんで炎を消した。その動作と司祭頭の発言からオクトの仮説は現実味を帯びてきた。
(<
その後も魔法に付いてあれこれ聞いてみたが、概ねこの仮説どおりに魔法が存在しているようだ。司祭頭から聞く限りではデーモンオンラインの戦闘系魔法は存在せず、非戦闘系魔法でしか存在を確認することは出来なかった。もっと言うなら第一位階魔法以下の非戦闘系魔法でしか存在していない。
なんとも不思議な話だが、伝わり方に偏りがあるらしい。
それについて様々な仮説を考えてみたのだが、しっくりするものが思いつかなかった。そのため、救いを求める意味でも武技の質問を開始することにした。武技にも何らかの偏りがあるなら、それを切り口に疑問を解消できるかもしれない。
「んじゃ、次は武技について聞きてぇんだが・・・ザリュース、いいか?」
「もちろんだ。武技については俺の方が詳しいからな。」
「先に礼を渡しとくか?後で揉めても面倒だしよ。」
「いや、俺への対価は無くていいさ。その代わり司祭頭への対価に色を付けてやってくれ。司祭頭がどれか一つを選ぶまでに、夜が明けそうだからな・・・」
ザリュースは肩を竦めて司祭頭へ視線を移した。
おそらく、対価のアクセサリーを一つと言わず、複数渡して早く済ませろというメッセージだろう。ザリュースの言う通り、司祭頭に任せると今日はここに泊まる事になる。
「これからもババァには魔法を聞きに来るだろうしな・・・いちいち礼を考えるのもメンドイから全部やるぜババァ。その代わり今後はただで質問させてくれよ?」
「おお!それはありがたいのぅ!こんな素晴らしい物を全て貰えるとは・・・!!魔法に関する質問なら何でも任せるのじゃ!いつでも答えてやるわい!」
オクトの提案を聞いた司祭頭は快く了承し、積極的な協力を申し出る。その表情は実に恐ろしい笑顔であり、今にも食い殺されるのではないかと思うほどだ。
(インテリジェンス・アイテムとか渡したら発狂しそうだな・・・)
ちょっとした興味からインテリジェンス・アイテム・・・”生きているアイテム”を渡そうと思ったが、話が進まなくなる予感がしたのでぐっと堪えた。最後に渡せば良いだろう。
「よし・・・んじゃザリュース、武技について教えろ。さっき<斬撃>と<要塞>は聞いたけど他には何がある?いくつか上位のヤツを教えろ。それから奥義は無いのか?」
「奥義・・・?複数の武技を使った技か?秘技や秘剣、奥義など様々呼び方はあるが・・・」
「いや、武技の連続発動じゃなくて武技の上にある技だ。第一位階魔法と第六位階魔法くらいの差があると思えばいい。そんくらい強い技だ・・・知らないのか?」
ザリュースはコクリと頷き、問いかけを肯定する。どうやらこの世界に奥義は伝わっていないようだ。
奥義はデーモンオンラインの魔法で言うところの禁断魔法に相当するものだ。武技は低位魔法、中位魔法、高位魔法に相当する。見た目にハッキリとした違いは無いが、全体的に武技より強く、TP消費が激しい傾向にある。
(奥義は無しか・・・デーモンオンラインからは強いヤツが来てないのか?サービス終了まで残ってた奴等は準廃以上だと思うが・・・)
また新しい疑問が生まれてしまった。
戦士系のプレイヤーが来ていたとすると、大した魔法が伝わっていないのは当然だ。その代わりに奥義や強力な武技が伝わっているということだろう。そう考えていた。
しかし、奥義など知らないとザリュースは答えた。奥義を使えない戦士系プレイヤーなどサービス最終日にはまず居ないはずなのだが・・・
(このまま考えてもしょうがないか・・・もしかしたら奥義が武技として伝わってる可能性もある。)
一先ず疑問をそのままにし、武技について質問を再開した。
「とりあえず、奥義は置いとこう。強力な武技を教えてくれや。」
「ああ、分かった。そうだな・・・<要塞>を極めたものが到達できる<不落要塞>。<斬撃>に炎属性を付加した<火炎斬>。<能力向上>をさらに超えた<能力超向上>。いずれも天才と呼ばれる者が習得出来る武技だ。」
「え・・・?<能力超向上>以外はマジで”強力な武技”なのか?」
「ああ、全て使いこなせるとすれば、英雄の域に達しているだろうな。」
この時オクトは失笑を通り越して呆れていた。
確かに<能力超向上>は強力な武技だが、能力を上昇させる武技が少ないので強力と表現されるだけだ。<不落要塞>や<火炎斬>に関してはお世辞にも強力とは言えない。むしろ弱い武技だ。
そんな物を使えるだけで英雄とは・・・武技も大したものが伝わっていないのだろうか?そうなってくると転移してきたプレイヤーのイメージが出来ない。どんなプレイヤーが転移してきたというのか・・・
「・・・ザリュース。最初にどんな武技を使えるかは教えられないって言ってたけど、少しだけ教えてくれ。<要塞>系統はどこまで使える?<不落要塞>が英雄ってんなら<鉄壁要塞>ぐらいは使えるんだろ?」
都合よく<要塞>の話が出ていたので、それでザリュースの強さを測ることにした。考えが詰まったら切り替える。まずは情報を集めてそれからだ。
<要塞>系統の武技は全部で5種類ある。<要塞>、<鉄壁要塞>、<不落要塞>、<牙城要塞>、<神域要塞>と順に習得していく代物だ。
この世界で<不落要塞>が最高だとしても、手前の<鉄壁要塞>くらい使えるはずだ。ザリュースは
「<鉄壁要塞>だと・・・?悪いがそんな武技は聞いたことすらないな。
「え・・・?」
(なんで<不落要塞>知ってて<鉄壁要塞>知らないんだよ・・・ってかなんだよオリジナルって・・・)
もはや意味が分からなかった。
その後、同じような問答を繰り返したところ、ようやく武技の全容が掴めて来た。
まず、武技も大したものが伝わっていない。
ハッキリと言ってザリュースの言う英雄達でさえ雑魚だ。この世界の戦士が相手なら眠っていても殺される心配は無い。そのくらい弱い武技しかこの世界には存在していないのだ。奥義の存在などは期待も出来ないだろう。
次に、オリジナルの武技と言う名の既知の武技がある。
とある人間が数十年前に開発したというオリジナル武技<竜牙突き>。様々な属性を付加した派生武技も豊富にあるらしい。
しかし、名称から効果まで全て完璧にデーモンオンラインと同じだ。どうやら、この世界に伝わっていない武技を誰かが習得してしまうと、自然と正しい名前で広まってしまうようだ。どこかで聞いた台詞だが世界の修正力とやらだろうか・・・
最後に、武技の伝わり方がおかしい。
この世界にデーモンオンラインのプレイヤーが来て武技を教えたとすると、腑に落ちないことがある。なぜ<鉄壁要塞>を知らないのかということだ。
<不落要塞>を伝えたとプレイヤーが居るなら、それは<要塞>と<鉄壁要塞>は確実に習得しているプレイヤーだ。しかし、<鉄壁要塞>の存在だけ伝わっていない。なぜか間が飛んでいる。これは他の武技にもちらほら見受けられ、最下位の武技が抜けている物まであったのだ。
ここまでの魔法の偏りと武技の偏りを考慮して仮説を立てると、一つだけしっくり来るものがある。それは「デーモンオンラインからはプレイヤーではなく、NPCが転移している」というものだ。オクトがロスト・メリュジーヌと共に転移してることから、NPCが転移することは不自然ではない。
デーモンオンラインのNPCはレベル1の村人から、レベル1000以上のレイドボスまで様々存在している。唯一の共通点は習得している魔法や武技の順番がデタラメと言うことだ。
例を挙げると、<神域要塞>を習得しているレイドボスが、それ以前の四つの武技は習得していないといった具合だ。
つまり、<要塞>を使えるNPCと<不落要塞>を使えるNPCしか転移していないため、<鉄壁要塞>が伝わっていない。そして、複数の武技で同じような現象が起こり、武技の偏りが生じてしまったのだろう。
こう考えると階位魔法が広まった理由も頷ける。
転移してきたのがNPCだったため、扱える魔法の種類がメチャクチャだったデーモンオンラインの魔法。
転移してきたのがプレイヤーであり、第一位階魔法から第十位階魔法まで綺麗に整っていたユグドラシルの魔法。
どちらが受け入れやすいのかは明白だ。唯一、デーモンオンラインが受け入れられたのは非戦闘系魔法だ。おそらく階位魔法には生活に密着する魔法がほとんど無かったのだろう。そのため、そこだけにデーモンオンラインの魔法が残り、現在では階位魔法として認識されているのだ。
(まぁ、その方が納得できるな・・・プレイヤーだったらこんな変な伝わり方じゃないだろ。)
うんうんと頷きつつ、自らの意見に納得した。そして、もう一つ気になることを問いかけることにした。デーモンオンラインにおいて、武技以上に危険かもしれない存在についてだ。
「武技に関してはそんだけ分かれば十分だ。他に聞きたいことがあれば追々聞いていくさ。・・・だが、最後に確認しておきたいことがある。”タレント”って知ってるか?」
それはタレントの存在だ。
デーモンオンラインでは種族を選択する際に、同じく選択することが出来るパッシブスキルのようなものだ。”他種族の専用装備を装備できる”だとか”魔法等の習得レベルを引き下げる”といった便利なものから、”相手の使用できる魔法の上限を知る”、”水中でも地上と同じように行動できる”といった微妙なものまで揃っている。もちろん、チートと呼ばれるタレントも存在している。
オクトのタレントは”武技上限撤廃”。武技は同時使用する際に上限が九個と決まっている。”武技上限撤廃”はそれを無制限にするタレントである。
しかし、これはネタやロマンと呼ばれるものだ。通常の戦闘では武技は五、六個ぐらいの同時使用が一般的だ。なぜなら、それ以上の武技を使う時間的な余裕が無いのだ。
したがって、実戦で猛威を振るう事はほとんど無い。可能な限りの武技を重ねて雑魚モンスターを攻撃し、一発のダメージの大きさをツールで測定するためのタレントだ。まさにロマンである。
「
「ザリュース・・・その話は本当か?本当に人間にしかタレントは存在しないのか?」
「ああ、人間・・・正確には人間種にしか
この世界にも同じように
人間種に
亜人種や異形種達に
(ザリュースもタレントについては殆ど知らないみたいだな。・・・タレントは人間と接触するまでお預けか。ま、ここでの情報収集が優先だ。それに、その前の厄介ごとも片付けないとな。)
オクトは座ったままひと伸びするとスクっと立ち上がった。
「よし、今日はこの辺で終わりにして、戦士階級って奴等の所に行こうぜザリュース。」
本来は魔法に関する質問をもっと投げ掛けたいのだが、戦士頭や長老会への対策を打っておかなければならない。下手をすると滞在すら出来ないかも知れないからだ。早めにザリュースと戦うのも大切な仕事である。
「そうだな。もう夕方になってしまったし、そろそろ向かうとしよう。」
ザリュースもオクトに同意し、立ち上がる。
「また来るが良い怪物よ。魔法についてはまだまだ語るべき事は沢山あるでな・・・」
「そのつもりだババァ。近いうちにまた来るぜ・・・っと忘れるとこだった。ババァ、もう一つ礼をやっとく。」
「おお・・・まだ貰えると言うのか・・・!」
オクトは所持品ボックスから一つのネックレスを取り出した。青い宝石をあしらった白金のネックレス。見た目も非常に美しいものだが、本当の価値はそこではない。これこそがインテリジェンス・アイテムだ。
「こいつは魔法アイテムの作成を補助する魔法が込められたネックレス”カシミール”。インテリジェンス・アイテムってヤツでな・・・まぁ、平たく言うと”生きてるアイテム”だ。」
「生きている・・・アイテムだと・・・?」
「なん・・・じゃと・・・」
二人の
「ああ、生きてるぜ。性格も従順だからイラつくことはねぇだろ。装備すれば”ご主人様”って呼んでくれるぜ。」
軽く笑いながら、”カシミール”を司祭頭にポイっと投げ渡した。
司祭頭は猛禽類が獲物を掴むかのように受け取ると即座に装備し・・・狂った笑みを顔に浮かべた。目も血走っており、非常に危険な輝きを宿して見える。おそらく”カシミール”から挨拶でもされているのだろう。数秒の沈黙の後、狂喜の声が上がった。
「おおお!!喋っておる!!直接、頭の中に声が響いておるぞ!!素晴らしい!!スバラシイッ!!ハハハハハハハッ!!生きている!!アイテムが!!ハハハハハハハッ!!」
おそらく元の世界での人生を含めて、初めて見た狂人だ。
まさかここまで発狂するとは思っておらず、オクトは恐怖を覚えていた。ほとんどのことに恐怖を覚えなくなったのだが、狂人を見たときには未だ恐怖を覚えるらしい。ザリュースもオクトの時とは別の戦慄を覚えているようだ。
「おお!!そうかそうか!!わしを主人として敬うと言うのか!!ハハハハハッ!!良いか”カシミール”よく聞くが良い!!お主の主人の名は」
恐ろしい顔で”カシミール”と会話している司祭頭の邪魔をしないように・・・いや、気付かれないように、オクトとザリュースはそっと部屋から退散した。
「オクト・・・相手が誰であれ、からかうのは程々にしておけ。あの調子じゃ司祭頭は廃人になってしまうぞ・・・」
「悪いザリュース・・・マジで気を付けるわ。」
ザリュースの注意を真剣に受け止め、オクトは司祭頭の家を出た。
あとがき
今回は捏造設定回でした。分かりにくかったかもしれないので、簡単に設定等を書いておきます。
この小説は書籍版の設定を基本設定としてます。その上で色々な設定を大幅に捏造しています。
※長いので興味の無い方は戻るをクリックしてください。
以下捏造設定
1.デーモンオンラインから転移してきた人達
プレイヤーはオクト以外に居ません。もしくは早い段階で八欲王なんかに出くわして死んでます。
基本的には人間のNPCが数百年前に転移してきていました。異世界の人間の中にはその子孫が沢山います。
亜人種や異形種も来てますが、弱く数も少なかったので子孫も残せず死んでます。一部、生き残ったモンスターもおり、それがザイトルクワエやジャンガリアンハムスターです。
デーモンオンラインのNPCは覚えている魔法や武技がバラバラです。そのため、非常に偏ったものがこの世界に伝わっています。
例)もしドラ○エ3のゾ○マが来たとしたら
マヒャド使えます。でもヒャド使えません。だから教えられるのはマヒャドだけです。
2.武技
デーモンオンラインの技として扱います。
異世界にも伝わっていますが、NPCが転移して伝えたため、内容がメチャクチャになっています。転移したNPCのレベルが低いため強いものが伝わってません。原作に出てきた武技は半分近く弱い武技としてこの小説では扱います。
この世界の住人がオリジナル武技と言っている物もありますが、実際はデーモンオンラインに存在する物を作ってしまっただけです。名前や効果も全く同じに作ってしまうように仕組まれています。
2.1奥義
武技の上位版。格付けとしては超位魔法みたいな物と理解していただいて大丈夫です。
異世界には伝わっていません。習得した状態で異世界に来たのはオクトが初めての人物です。
3.魔法
基本的にモモンガさんが知らない魔法は全部デーモンオンラインの魔法です。
しかし、この世界にはデーモンオンラインの魔法はあまり残っていません。
武技と同じく、NPC達によって断片的に伝わったので強さも使用難易度もメチャクチャでした。そこに第一位階魔法から第十位階魔法まで綺麗に整った階位魔法があります。わざわざデーモンオンラインの不便な魔法を覚えようとはしなかったという事です。
階位魔法に存在しなかった生産魔法や生活魔法と呼ばれるジャンルだけは残っています。
3.1低位魔法、中位魔法、高位魔法
第0位階魔法は全てデーモンオンラインの低位魔法です。食料や香辛料の生産魔法も低位魔法になります。
この世界にあるオリジナル魔法も一部はデーモンオンラインの魔法です。イビルアイの<ヴァーミンペイン>なんかが中位魔法です。
高位魔法は階位魔法の第十位階以上の強さです。
3.2禁断魔法
デーモンオンライン版、超位魔法です。
しかし、効果はピンキリです。オクトの使用した<リザレクション>も禁断魔法に含まれています。
色々と書いてますが、デーモンオンラインの魔法に関してはこれから殆ど出てきません。
4.タレント
デーモンオンラインのキャラ作成時に選ぶパッシブスキルです。
デーモンオンラインから伝わったものであり、異世界には存在しないものでした。
転移してきたNPC達の子孫であれば発現します。異世界の住人との混血でも発現しますが、血が薄くなっているため先祖返り的にタレントが発現するようになってしまいました。
タレントの変更は基本的に出来ませんが、課金アイテムなら可能です。オクトがロマンタレントなのはそのためです。
5.アイテム
デーモンオンラインの物は殆どこの世界に残っていません。
せいぜい、インテリジェンス・アイテムが少し残っているぐらいです。デーモンオンラインでも大したアイテムではありませんでした。いろんな性格のアイテムがあるので、コレクターに人気だった程度です。
6.ザリュース
旅人なので何でも知ってます。
きっと人間の話にも興味があったのでしょう。存在する神話や伝説、武技は全部知ってます。タレントも旅先で聞いたんだと思います。この世界のことをほぼ全て答えてくれる人物です。
以上、今回出てきた部分を書いています。