トカゲの護衛はドラゴン   作:ボンサイ

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――や・・・・・・の表示の仕方が分かりました。
これからは、この二つと段落も多用して文章を書いていってみます。
小説っぽい見た目になるよう頑張ります。



第八話 ドラゴンは肉、ドクロも肉

 辺りは一面、夜更けの闇に染まっている。

 元の世界とは違って街灯すらない異世界では、夜道を歩くのも一苦労だろう。

 

――しかし、一切の明かりが無いからこそ、星空がより美しく見えるのだ

 

 オクトは――ザリュースの家の――屋根の上に寝そべり、そんな美しい夜空を眺めていた。

 だが、オクトは夜空を楽しむのではなく物思いにふけっている。またしても疑問を抱く事態に出会ってしまったのだ。

 

 

「――なんで職業レベル上がったんだろうなぁ・・・・・・普通に考えたらおかしいだろ・・・・・・」

 

 ――事の起こりは数時間前。司祭頭の家を出てすぐの出来事である。

 

 司祭頭の家の周りに数十人の戦士階級の蜥蜴人(リザードマン)達が待機していたのだ。

 どうやら一部の過激な戦士階級達が、オクトに対して武力交渉と呼ぶべき脅しをかけてきたらしい。色々な事を喚いていたが要約すると――今すぐ自主的に出て行くなら見逃してやる――という内容だ。

 もちろん、その武力交渉を利用してザリュースと戦う事になったのだが・・・・・・ザリュースを倒して職業レベルが上がってしまったようなのだ。

 

(現実でレベルアップとか変だろ・・・・・・ってかザリュースじゃなくてロスト・メリュジーヌ倒した時点で上がるだろフツー・・・・・・)

 

オクトはまたしても仮設に埋もれていた。ザリュースとの戦いを思い出しながら・・・・・・

 

 

 

―――数時間前

 

 

 

「――ザリュース。お前を殺すわけにはいかねぇから素手でやっていいだろ?コイツ――ホラディラ使ったんじゃ余裕で殺しちまうぜ?」

 

 オクトはホラディラを指差しながら、ハンデを付けることを申し出た。そもそも戦うという次元の実力差ではない。指だけで戦ったとしても十二分に殺してしまう実力差があるのだ。

 だが、その発言は集まった戦士階級達を煽る発言でしかない。オクトに対する様々な罵声が飛び交っていた。

 

 

 対峙するオクトとザリュースを取り囲むように、蜥蜴人(リザードマン)が集まっている。その人数は既に百人は超えているだろう。大半が屈強な肉体をしており、戦士階級の蜥蜴人(リザードマン)だと思われる。

 

「ああ、素手でやっても構わないぞオクト。――だが、万が一お前を殺したとしても許してくれよ?お前相手に手加減をする余裕は無いからな・・・・・・まず無傷(・・)では済まないぞ?」

 

 周りの罵声を否定するかのようにザリュースは淡々と呟いた。

 

 この戦いには元から条件がついている。

 オクトが強いのは戦士階級達も理解しているのだ。――そのため、普通に一対一で戦ってザリュースに勝ったとしても、戦士階級の脅しは収まらない可能性がある。

 だが、オクトは無傷で勝つことを条件にこの村に滞在することを要求した。そして、その要求を戦士階級達は呑んだのである。

 

 そこまでの話の流れは全てザリュースが作っていた――おそらく、計画通りと言うことだろう。あとは打ち合わせどおり、適度な力を示して勝てば良いのだ。

 

 

「ハハハッ殺れるもんなら殺ってイイぜザリュース。――その方がお前の心配事も減るだろ?」

 

「・・・・・・そうだな。――出来ることなら、それが望ましいさ。」

 

 ザリュースは声のトーンを落として返答した。

 おそらく、ザリュースはオクトを殺すつもりで挑んでくるだろう。戦士階級に疑われないように、という意味もあるが狙いは別だ。

 ザリュースは取引をすることが最善だと理解している。――しかし、オクトを殺せるなら殺した方が良いと思っている。この戦いはそういった意味でも良い機会なのだ。圧倒的強者が武器を手放し、明らかに驕っているのだから・・・・・・

 

「ちなみに開始の合図はどうするんだ?石ころでも投げて、落ちたら開始とかそういう――」

 

「――いや、もう始まっている」

 

 

 武器を構えたザリュースからは、すでに凄まじい殺気が放たれているらしい。百名以上の戦士階級達は息を呑んで佇んでいる。オクトには何も感じられないのだが、流石はフロスト・ペインの持ち主と言うことだろう。

 

 蜥蜴人(リザードマン)達に四至宝と称される武器――<凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)>

 前所有者は”鋭剣(シャープ・エッジ)”族の族長だとザリュースに聞かされた。複数部族を巻き込んだ戦争の最中――その蜥蜴人(リザードマン)の首を討ち取り、ザリュースはフロスト・ペインの所有者となったのだ。

 族長を倒すほどの強さということは、この村の中でも一、二位を争う実力者。少し腕が立つ程度の蜥蜴人(リザードマン)――戦士階級とは格が違うのだ。

 

 

(やっぱ強いんだよな?ザリュース一人にこの人数が緊張してるし・・・・・・やっぱりこの世界の戦士は全員雑魚だな。)

 

 ロスト・メリュジーヌに遥かに劣る戦士――ザリュースを物差しに考えると、この世界の強さには失笑するしかない。

 こんな程度の殺意には体が反応さえしない。こんなものに緊張を覚えるなど戦う対象ではない――虐殺する対象だ。そして、その程度の殺意しか放てないザリュースも同じだ。

 

 

(・・・・・・来ないな。)

 

 ザリュースが武器を構え既に十数秒。一向に攻撃してくる気配が無い。武器を構えたままジリジリと左右に動いてはいるものの、飛び掛るきっかけが掴めないらしい。

 オクトはその光景に溜息をついた。――そして、笑みを浮かべながらザリュースに話しかける。とても戦いとは思えない明るい声だった。

 

「んじゃ、行くぞザリュース。」

 

 まるで散歩に出かけるかのように一声を掛けて――同じく散歩に出かけるかのように、一歩ずつ、無造作に間合いを詰めて行った。

 ザリュースはその行動に一瞬、唖然としたが、その瞬間――ザリュースはオクトに肉薄する。

 

 

 ザリュースの間合いは素手のオクトより広い。フロスト・ペインはリーチの長い武器ではないが、それでもその分、間合いは伸びる。隙をついた攻撃は如何にも有利である。

 

 

 ――しかし、それでもなお警戒するのがザリュースだ。

 相手は大怪物――オクト・パス。決して勝てない相手だ。そんな化物を殺すなら出し惜しみは最大の悪手である。

 

 ザリュースはオクトが間合いに入る直前に武技を同時発動させる。

 

「<能力向上><流水加速>!!」

 

 武技を使用して可能な限り速度を上げる。最初から使わなかったのは目を慣れさせないためだ。突如として加速すれば、相手はその速度変化に対応できない。

 

 ――そして、間合いに入ると同時にフロスト・ペインの真の力を解放する。

 

 

 一日に三度しか使えない大技。範囲内の対象を瞬時に凍結させる凍牙の苦痛――

 

 

「――氷結爆散(アイシー・バースト)ッ!!」

 

 

 オクトとザリュースの間に強烈な冷気が発生した。――そして、それによって生じた霧氷の白い渦が、オクトの視界を一瞬にして遮断した。

 ドラゴニュートの視野はかなり広い。おそらく前方、三百度以上の視野を持っているだろう。その全てを白一色に染め上げたのだ。

 

 ――しかし、これはダメージを狙ったものではない・・・・・・ただの目くらましである。

 

 どれだけ無防備を装っても――実際に無防備だとしても、相手は圧倒的強者。圧倒的弱者は可能な限りの小細工を弄するしか勝機は無い。最大の大技でさえ小細工として扱えるからこそのザリュース――フロスト・ペインを持つ英雄なのだ。

 

 

 これが正しい。これが最善。これが最初で最後の攻撃を当てられる機会。

 

 

「――武技<斬撃>ッ!」

 

 

 狙うは最も細く、殺傷率が最も高い部位。

 

 ザリュース渾身の<斬撃>はオクトの左前方から雲を斬るように放たれ――その長い首を切断する。

 

 

 

―――はずだった。

 

 

 

キン

 

 

 

――そんな拍子抜けする音が響いた。

 

「――やっぱ戦いでも頭使うんだな。少しは参考になったぜザリュース。」

 

 オクトは笑顔でザリュースを賞賛した。本心から出た賞賛だ。

 大技でさえ囮として使う。ロスト・メリュジーヌから学んだ事ではあるが、完璧にダメージを無視――目くらましだけに使うという行為は初体験だったからだ。ここまで囮に徹されたことは実験では無かったのだ。

 

 ――実際には強烈な冷気によってダメージを狙える囮なのだが、オクトにダメージは無い。そのため、囮のみの攻撃と勘違いしている・・・・・・

 

 

 その賞賛を受けた本人――ザリュースの表情は氷結していた。

 

 

 振るわれたフロスト・ペイン――ザリュースの全身全霊を込めた<斬撃>が、ただの素手に優しく受け止められたのだ。その手からは一滴の血さえ滴っていない。完全な無傷である。

 おそらく過去最高のタイミングと威力の<斬撃>だ。それを素手で――しかも無傷で掴まれるなど全ての想定を上回っていた。

 

 

<要塞>等の防御武技を使われたら悔しいが無傷だろう――

あの巨体を護る堅牢な防具に弾かれたなら仕方がない――

稲妻の様な速度で避けられるイメージも頭を過ぎった――

 

 

 ――だが、攻撃が無防備な体に当たりさえすれば・・・・・・最低でも傷を負わせることは出来ると思っていた。

 

 ・・・・・・どれほど愚かな想定(・・・・・)だったことか。

 

(――ここまで差があったのか)

 

 ザリュースはオクトを圧倒的強者と認識していた。しかし、その認識でさえ圧倒的過小評価だった。――その事実に絶望が頭を埋め尽くす。

 

 

「んじゃ、攻撃するぞ?右手で顔面を殴るからしっかりガードしろよ?」

 

 絶望に打ちひしがれるザリュースに追い討ちを掛けるかの如く、オクトは朗らかに呟いた。その言葉を受け、ザリュースは絶望から即座に帰還した。

 

 ここで折れている場合ではない。勝てないなら可能な限り全力で戦い――負ける。この化物と戦士階級が衝突するのだけは絶対に避けなければならないのだ。必死に戦い、少しでも多くオクトの力を見せ付けなければならない。

 

 

緑爪(グリーン・クロー)”族の――蜥蜴人(リザードマン)の存亡がこの一戦に懸かっている!

 

 

 ザリュースは武技を発動して応戦する。オクトにしては限りなく遅い――緩やかな右フックがザリュースの顔面に向かっていたからだ。

 

「<要塞>!」

 

 自らの左腕に<要塞>を発動するザリュース。オクトにとって”限りなく遅い”というのはザリュースにとっての一瞬だ。ギリギリのところで左腕を――ザリュースの顔とオクトの拳の間に――滑り込ませた。

 

 

――そして、骨の砕ける鈍い音と共にザリュースは五メートルほど湿地を転がった。

 

「ぐぁ・・・・・・!」

 

 四、五回転ほどして泥まみれとなったザリュースは、苦痛に顔を歪め左腕を押さえた。腕の骨はもちろん砕け散っているが、左側の牙も十本はへし折られている。――おそらく、頭蓋骨にもヒビが入っているはずだ。頭が割れたかのような激痛が走る。

 頚椎も殴られた衝撃で捻挫――もしくは骨折しているかもしれない。首の腱も古びた輪ゴムの様に千切れたはずだ。動かすだけで雷が通過する

 

 ――だが、いつまでも寝ているわけには行かない。ほんの一瞬の硬直の後、即座に立ち上がりオクトを正面に捉えた。

 

 オクトの手にはフロスト・ペインが握られている。殴られた衝撃でザリュースの手からすっぽ抜けてしまったのだ。

 オクトは刃、ザリュースは握りを掴んでいたのだが――大した有利にはならなかったらしい。

 

 

「――さっきの霧はフロスト・ペインの能力か?」

 

 オクトはしげしげとフロスト・ペインを眺め言葉を続けた。相変わらず戦いの最中とは思えない態度と声――いや、オクトにとっては戦いではないのだろう。

 

「氷属性の武器・・・・・・この程度の属性攻撃じゃオレには傷がつかねぇからな。――勝負は最初から決まってたのか。」

 

 オクトは申し訳無さそうに頭を掻く。

 ――そして、左手に持ったフロスト・ペインを大きく振りかぶった。まるで槍投げの選手が投擲する直前のような姿勢だ。

 

「でもまぁ――勝負は勝負。これで決着だ。足一本で済ませるから安心しろザリュース。」

 

 

 ――次の瞬間

 

 ザリュースの右足は大腿部から地面に落ちた。オクトが投げ飛ばした――と思われるフロスト・ペインによって綺麗に切断されたのだ。放たれたフロスト・ペインはザリュースの後方十メートル付近――柄頭の部分を除いて、全て地面にめり込んでいる。

 

「があぁぁぁああ!!」

 

 ザリュースはそのまま倒れこみ苦悶する。

 

 

 言葉を失った――戦慄の表情を浮かべる――戦士階級達のおかげで、その声はより一層大きく響いていた。ほんの数十秒の攻防だったが、これで決着は付いたのだ。

 ザリュースの立てる音以外が存在しない世界で、オクトは悠々と歩き敗者――ザリュースの目の前でしゃがみ込む。

 

「すぐに回復してやるから待ってろ――<メジャー・ヒーリング>。」

 

 オクトが回復魔法を発動し、ザリュースの体を緑色の光が覆った。そして、右足は元通りに再生し、腕の骨折や折れた歯に千切れた首の腱――頭蓋骨の亀裂骨折や頚椎の骨折も全快した。

 回復魔法の効果が高かったのか、もしくはオクトが回復魔法を使えると思って居なかったのか――ザリュースからは驚きの声が上がっている。

 

「オクト・・・・・・お前は回復魔法まで――」

 

「まぁ、こんぐらいは普通だぜ。――ここだけの話、蘇生魔法も使えるぜザリュース。」

 

 最後の一言は軽口を叩くように言ったのだが、あまりの驚愕からザリュースは言葉を失っている。奇しくもインテリジェンス・アイテムに驚いた司祭頭の顔にそっくりだった。

 

(――とりあえず、これで一安心か。戦士階級は黙るし、戦士頭や長老会も黙る。厄介事とはしばらく向き合わなくて良いな。)

 

 オクトは安心から息を吐き出した。そして、空を見上げ――

 

 

 

ドクンッ

 

 

「――な!」

 

 突然のことだった。自らの心臓が大きく跳ね上がったのだ。思わず左胸を押さえ背中を丸める。この不可解な行動に驚いたのか、ザリュースの顔が別の驚きに染まる。

 

「――オクト?どうした?」

 

「何でもねぇ・・・・・・」

 

 

 ――何でもない訳が無い。

 咄嗟に口をついた言葉だが明らかな嘘だ。この時、オクトの頭の中はパニック状態だった。頭の中に流れ込んできた情報――そして、それに関する考察でパンク寸前だったのだ。

 

 オクトの頭の中に突如として入ってきた情報はスキル名とその仕様だ。

 もちろん、知っているスキルであり、早く使いたいと一ヶ月前から思っていたスキルだ。

 

自らの顔を巨大な竜に変化させ、ブレス系スキルを強化する―――ネタスキル

 

 

職業ドラゴン、LV100で習得するスキル

 

 

そのスキル名は――<巨竜の顎(ドラゴン・ヘッド)>

 

 

(――レベルが上がった!?ザリュースで!?)

 

 オクトは心の中で絶叫していた。

 

 

 

そして深夜―――

 

 

 

「半分現実、半分ゲームみたいになってんのかねぇ・・・・・・いや、だとしたら実験でレベル上がってるし・・・・・・いや――」

 

 一向に纏まらない仮説を立て続けていた。

 

 本来なら喜ぶべきことだがレベルが上がってしまった。――しかし、その理由が全く分からない。現実に経験値なんて概念があるのだろうか?レベルが上がったことに気が付くものなのだろうか?

 さらに、レベルの上がったタイミングが意味不明だ。ザリュースを倒した時ではなく、倒したザリュースを回復した後にレベルが上がっているのだ。経験値に関してゲームと同じ扱いなら敵を倒した時――ザリュースを倒した時にレベルが上がるはずなのだが・・・・・・

 

 あーでもない、こーでもない、と呟いていると下から声を掛けられた。

 

 

「――まだ居たのかオクト。早く家に入って寝たらどうだ?お前が相手なら寝首を掻くなんて事はしないぞ?・・・・・・無意味だと痛感させられたからな。」

 

 諦めを呟きつつザリュースが屋根によじ登って来た。切断された足は綺麗にくっ付いており、もう行動に支障はないらしい。

 

「ん・・・・・・?オレはもう寝たぜ?オレは――ドラゴニュートは睡眠時間が短いんだよ。」

 

 ザリュースを寝そべったまま一瞥し、平然と嘘を付いた。

 オクトの睡眠時間は二十分程度である。これは異世界に来た時からだ。もちろん、ドラゴニュートの種族特性などではない――職業『ドラゴン』の特性だ。

 

 職業『ドラゴン』は非常に高い耐性を持ち、全ての状態異常を無効化する。しかし、睡眠だけは非常に高い耐性を持つ、という耐性しか持たないのだ。

 つまり――低確率で睡眠魔法に掛かり、すぐに目が覚めるという事だ。これはアイテムやスキルを使用しても補うことが出来ない――『ドラゴン』唯一の弱点だ。

 この耐性が通常の睡眠にも効果を発揮しているのだろう。睡眠時間は極端に短くなり、浅い睡眠――物音一つで目が覚める状態になってしまったのだ。

 

 

「――そうなのか?活動できる時間が長いとは便利な種族だな。」

 

 肩を竦めながらザリュースはオクトの横に腰を下ろした。

 男二人――オス二人というシチュエーションで無ければ非常に美しい光景である。この状況に気持ち悪さを覚えたオクトは悪態を付く。

 

「野郎二人で星空の下とか気持ち悪りぃんだよ。用が無ぇなら部屋に戻って寝てろザリュース。・・・・・・まさか、戦士階級の連中とまだ何かやれってのか?」

 

「いや、あれだけやれば十分だ。――むしろ予想以上のことをやってしまったな。」

 

 オクトの悪態に溜息を漏らすと、ザリュースは説明する。

 

「オクトが圧倒的な力を見せ過ぎたせいで、戦士階級の者は皆、戦意喪失――夜逃げしかねないくらい恐怖を覚えてしまった。もう少し上手くやって欲しかったな。お前の力なら出来ただろう?」

 

 

 ザリュースとの一戦の後、戦士階級達は戦慄の表情を浮かべ――黙り込んだままだった。オクトとしては上手くいった、と思っていた。これで戦士頭や長老会まで黙らせることができる、ゆっくり情報収集が出来る、と。

 ――だが、ザリュースの言葉から戦い方が不味かったのかもしれない。その不安からザリュースに意見を求めた。

 

「んじゃどうすりゃいいんだ?今度は細かく教えてくれよ。その通りやるからさぁ・・・・・・」

 

「いや、特に何もする事は無いぞ?戦士階級はそんなザマだが、一般階級の評判は上々だからな。――これ以上、力を見せ付けなければ大丈夫だと思うぞ?オクトが望む――友好的な取引が出来るはずだ。」

 

 やる事が無い――問題が無いなら、なぜ説教をされなければならないのか。少しイラついたオクトは唸るように聞き返す。

 

「んじゃ何で説教じみた言い方すんだよ・・・・・・喧嘩売ってんのか?」

 

「そう怒るな。――今回は上手くいった、と言いたかったのさ。また不測の事態が起こったら、もう少し上手く行動してくれ。お前をフォローするのには限界がある。・・・・・・情報が欲しいんだろ?」

 

「・・・・・・なんか脅す立場が逆転してねぇか?」

 

「唯一残った武器が情報だからな。有効的に――友好的(・・・)に活用させてもらうさ。」

 

(――ギャグのセンスは無ぇなザリュース・・・・・・)

 

 

 やや自慢げに見えるザリュースにフンと鼻息を漏らし、オクトは再び星空を見上げた。

 ――そして、仮説に埋もれていった。

 

 

 経験値を入手したと思われるタイミングは二つ。

 ロスト・メリュジーヌを倒した時とザリュースを倒した時だ。

 

 しかし、ザリュースを倒して経験値が入るというのは考えにくい。なぜなら、デーモンオンラインとは全く関係の無い人物――敵だからだ。さらに、倒した後にではなく回復した後に経験値が入るのもおかしな話だ。そもそも、殺していないではないか。

 

 ――よって、経験値を入手できるタイミングとしてはロスト・メリュジーヌが最も適当だと思われる。だが、合計で八十体程度を倒した――実験したにも関わらずレベルが上がらないのは不自然だ。

 レベルが上がるか上がらないかの瀬戸際で、オクトは異世界に転移したはずだ。ならば、ロスト・メリュジーヌを数匹――いや、一匹倒すだけでもレベルが上がりそうな状態だったはずだ。しかし、レベルは上がっていない。

 そう考えると経験値は入っていないのではないだろうか・・・・・・?実験の時にレベルが上がっていないのならそう判断するしかない。

 

 

(経験値が入るタイミングか・・・・・・まさか――)

 

 

 その時――ふと思った。

 もしかするとこの森の中を彷徨ってるロスト・メリュジーヌが、倒されたのではないだろうか――と。

 

 ゲームから転移する瀬戸際、オクトはそのロスト・メリュジーヌの尻尾の一部を斬り落とした。ゲームとして考えるなら極僅かの損傷を与えた――ダメージを与えたのだ。

 デーモンオンラインでは対象にダメージを与えれば、その分の経験値は第三者が対象を倒しても得ることが出来る。

 ダメージを与えたのがゲーム内だと異世界に判断されたとしたら・・・・・・そのロスト・メリュジーヌが倒された場合、経験値が入るのではないだろうか?

 

(――いや、まさかな。流石に仮説が飛躍し過ぎだ。)

 

 

 この世界の住人ではロスト・メリュジーヌを倒せる可能性は、まず無いだろう。さらに尻尾の一部しか斬り飛ばしていない――得られる経験値は極小だ。それだけでレベルが上がると言うのも怪しいじゃないか。

 

 あまりに非常識な日常に、仮説がエスカレートしてしまった。自らの仮説――暴論を即座に否定する。

 そして、再び仮説を立て続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――同日同刻某所。

 

 

 オクトとは別の仮説を立て続け無ければならない人物が存在していた。

 その人物は早足で、水晶で作られた王座に向かって歩いている。その王座の置かれている部屋は非常に豪華な作りだ。

 

 数百人が軽々と入れるような広さ。壁は白を基調として金の細工が施され、それぞれ違った紋様の大きい旗も掲げられている。

 天井は見上げるほどに高い。そこには複数の美しいシャンデリア。――幾つかの宝石を使っているのか幻想的な光を放っている。

 最奥部の王座は見事だ。十数段の低い階段の上に設置された玉座。高い背もたれの付いた豪華な王座だ。その背後には真紅の巨大な布――これにも何かの紋様が描かれている。

 

 

――これこそが某所。ナザリック地下大墳墓最奥。王座の間である。

 

 王座へ向かう人物――この墳墓の主人は人間ではない。金と紫で縁取られた豪華なアカデミックガウンを纏うのは骸骨――眼窩には赤黒い光を宿している。一見するとスケルトンに見えるが――断じて違う。

 

究極の魔法を求めアンデッドと化した魔法詠唱者(マジック・キャスター)――死者の大魔道士(エルダーリッチ)の最上位

 

 

―――死の支配者(オーバーロード)、アインズ・ウール・ゴウン

 

 

 主人の現在の名である。このナザリックを築いたとされるギルド名を、異世界では本名として名乗っているのだ。かつての仲間――ユグドラシルのギルドメンバー達に気が付いて貰える様に・・・・・・

 

 骸骨であるがゆえに表情は窺い知れないが、笑顔でないことは確かだろう。どちらかと言えば険しい表情をしていそうだ。

 

 当然だ――頭の中に怒りや自責の念といったものが渦巻いているのだから。

 

 ――アインズは強い。おそらく、無防備なオクトを殺せる数少ない人物の一人だ。それほどの人物が何に怒りと自責の念を感じるのだろうか?それほど切迫する状態など想像しがたいのだが・・・・・

 

 

 アインズの後ろには純白ドレスを纏った美女――サキュバスが付き従っている。黒髪に黄色い瞳、そして、こめかみの左右からは角――明らかに人間ではない。それを肯定するかのように、腰から漆黒の翼も広がっている。

 

 ナザリック地下大墳墓守護者統括――アルベドだ。

 

 単純な序列でいうとナザリックの第二位に付ける人物だろう。強さにしてもアインズと大差は無い。

 彼女も急ぎ足ではあるが、表情は穏やかだ。微笑を湛え、アインズに付かず離れずの絶妙な位置を維持している。本心は別なのかも知れないが――

 

 

 アインズとアルベドは足が沈むほどフカフカな真紅の絨毯の上を歩き、王座へ向かっている。その王座の下にも二人の人物――子供が佇む。階段の下に控えていることからアインズの部下ということだろう。

 

 金の髪に褐色の肌、そして長い耳――ダークエルフの子供達だ。

 赤い軽装鎧の上に白地のベスト、そして白地の長ズボンを履いているのが姉――アウラ・ベラ・フィオーラ。

 もう一人は藍色の胴鎧の上にアウラと同じような白地の服を纏っている。最大の違いはスカートを履いている所だろう。彼女――彼が弟、マーレ・ベロ・フィオーレ。

 双子の姉弟であり、両名ともナザリック地下大墳墓第六階層守護者である。この二人もアインズやアルベドに匹敵する強者だ。

 

 

 そんなアウラの表情は重たい。緊張や恐怖――そして怒りといったものが滲み出ている。それを象徴するように拳は硬く握られている。普段の彼女を知る者からすれば、明らかに不自然だ。

 マーレも似た様な表情である。しかし、普段からおどおどしているため、アウラほど違和感は感じられない。

 

 この二人の表情はアインズの早足に何か関係があるのだろう。それを報告するためにここに待機しているのだ。

 

 

 アインズは横目でチラリとアウラを確認するが、立ち止まることなく王座へ向かう。

 本来ならば直ぐにでも事の詳細を聞き出したい。しかし、上に立つ者としての威厳も必要なのだ。王座に腰を下ろし、そこで聞かなければならないのだ。

 どれほどの怒りを感じていようとも――

 

 アインズは王座に腰を下ろした。アルベドは静かにアインズの横に佇む。

 ――そして、アインズの質問が開始される。

 

 

「――両名とも表を上げよ。」

 

 威厳に溢れる声が王座の間に広がった。普段と比べるとやや怒気が混じっているように感じられる。この怒気はアウラやマーレに向けての物ではないが、――当人達はそう思わなかったのだろう。明らかに緊張の色が増している。

 ――しかし、俯いたまま主人と話すわけにはいかない。重たい顔を上げ、主人と目を合わせた。

 

「アルベドから簡単な報告は聞いている。――だが、アウラ。当事者であるお前から直接話を聞きたいのだ。・・・・・・確認する。お前の使役する魔獣――レベル八十台後半の魔獣、三体が殺されたのは本当か?そして――お前が負けたのも事実か?」

 

 

 その瞬間――場の空気は一気に重たくなる。それはアウラの緊張によるものだ。

 自らの主人に問われた内容は守護者として有るまじき内容だ。晒すことの出来ない醜態と言っても良い。

 

 ――そして、それを肯定しなければならないのだ。緊張しない訳が無い。

 

 アインズの問いかけに数秒の沈黙――アルベドが殺意を抱くに十分な時間が経過し、アウラは答えた。

 

「――はい、アインズ様。私の使役する魔獣、三体が殺されました。・・・・・・私もマーレが居なければ確実に――」

 

 段々と声は小さくなっていき、最後には言葉が途切れた。アインズは一切の変化無くその言葉を聞いていたが、アルベドは別だった。

 ナザリック地下大墳墓の主――アインズ・ウール・ゴウンの問いかけに答えられないなど、許せない。――反逆に等しい行為と認識しているのだ。凄まじい殺気をアウラに向け一歩踏み出す。そして、激昂した声を上げる。

 

「アインズ様に対して――」

 

「アルベド・・・・・・余計な口を出すな。私がアウラと話している。」

 

 アインズはアルベドの刃のような声を、それ以上の刃を持って止めた。無駄な話をしたく無いのだ。

 守護者が――最弱のアウラとはいえ――敗北する化物(・・)。その話を聞くことは何よりも優先される。先日、洗脳されたシャルティアとの関連性もあるかもしれないのだ。

 アインズを愛する――敬愛するが故の行動であっても、今のアルベドの発言は邪魔でしかない。

 

「はっ、申し訳ありません、アインズ様。」

 

 深く頭を下げ、アルベドは元の位置へ戻った。未だ殺気は感じられるが、矛は収めたようだ。

 それを確認したアインズは化物への怒りを押し殺し、アウラへ優しく言葉をかける。アウラの緊張――恐怖を取り除くかのように。

 

 

「アウラよ。此度の件でお前を責めるつもりは無い。――元を正せば戦闘行為を許した私の責任だ。シャルティアの件があったにも関わらず・・・・・・許せ。」

 

 アインズの言葉に驚愕したアウラは、身を乗り出して謝罪を否定する。硬く握られた拳からは血が滴っているように見える。

 

「ち、違います!アインズ様は何も悪くありません!全部――弱い私が・・・・・・!」

 

「――ならば、全てを話してくれないか?私は真実を知りたいのだ・・・・・・アウラ。」

 

 アインズはアウラの言葉を遮り、優しく問い直した。支配者が部下に対するような声ではなく、――親が我が子を包み込むような温かい声だ。

 その声に一筋の涙を流したアウラは、詳細を語りだした。守護者としては屈辱とも言える内容を・・・・・・

 

 

 

――事の起こりは数時間前に遡る。

 

 アウラにはトブの大森林の調査、という役目がある。そのため、数体の魔獣を森へ放ち、強者の存在はもちろん――今は蜥蜴人(リザードマン)周辺の調査も行っている。

 そんな時、一体の――レベル八十台後半の――魔獣が行方不明になった。所定の時刻を過ぎても戻ってこないのだ。

 今までの調査から、アウラの使役する魔獣が倒されるというのは考えにくい。――しかし、その可能性も考慮してアインズへ連絡を取り、指示を仰いだ。

 

その結果――

 

「マーレを向かわせる。共に詳細を調べろ。もし、魔獣が殺されており――その相手が共に居るなら捕縛しろ。捕縛が難しければ殺して構わない。――だが、手に負えない相手と判断したら即座に撤退だ。身の安全を最優先に考えろ。」

 

 

 アインズからの指示は概ね以上である。もちろん、調査に関してはマーレのみならず、アウラの使役する魔獣を、無制限に使用する許可も得ている。さらに、調査に関する裁量は全てアウラに委ねられた。

 

 アウラはマーレと共に十体の――レベル八十代後半の――魔獣を呼び寄せた。過剰戦力だと思われるが、万が一を考慮してのことだ。

 自らの友を洗脳した相手――”絶対に自分の手で葬りたい対象”が居るならこのくらいは当然だ。もちろん、その確証は全く無いが・・・・・・それを想定した。

 

 行方不明となった魔獣が調査していた範囲を、二手に分かれて捜索することを考え二つのチームを作った。アウラと五体の魔獣、マーレと五体の魔獣の二チームだ。

 行方不明の魔獣を発見した段階で、連絡を取ることにし捜索を開始する。

 

 

 ――そして、アウラは蜥蜴人(リザードマン)の集落から数キロの地点で魔獣の死骸を発見する。

 

 その骸は化物(・・)よって食い荒らされている最中だった。

 化物には皮膚と呼べるものが無い――肉だけの怪物に見える。魔獣を殺したのかどうかは不明だが、そう判断して行動するのが正しいだろう。この森で――今までに見たことの無い生物なのだから。

 

 マーレに連絡を取り、即座に化物に接近した。マーレが合流するまで待機するのが正解なのだが、自らの魔獣が食い荒らされている――極めて不快だ。それを観ながら待機するなど出来るはずが無い。

 見た限り知性を感じられないため、友を洗脳した者とは違うだろう、という憶測もありこの行動を決断した。

 

 気配を絶ったまま化物に近づき――アウラと魔獣で六方向から襲い掛かった。

 

 

―――この接触により戦闘が開始されたのだ。

 

 

 結果、新たに魔獣二体を殺され――アウラも右腕を喰い千切られる、という大打撃を被った。その後、駆けつけたマーレ達の加勢により形勢は逆転。捕縛することは出来なかったものの、殺すことに成功した。

 

 ――だが、アウラからすれば完膚なきまでの敗北だ。マーレが一分でも遅れていれば、逃げることも出来ずに殺されていただろう。

 

 アウラから滲み出ていた怒りは、不甲斐ない自分に対する物だったのだ・・・・・・

 

 

 

(――単純な戦力なら守護者を上回る存在。そんなモンスターが何故、今まで発見出来なかったんだ?冒険者組合やハムスケからも、森にそんな強大な化物が居る、なんて聞いたことが無いぞ・・・・・・?)

 

 アインズはアウラの話を聞いて化物の正体を考察していた。

 しかし、全くもって思い当たる事がない。化物の外見にしても見た事が無いのだ。その疑問が、化物に対する怒りを忘れさせた。

 

「化物の映像は確認したが・・・・・・見た事の無いモンスターだな。まるで――ラミアを剥き身にしたような・・・・・・今は第六階層に居るんだったな?」

 

 アインズはアルベドに顔を向け、化物の所在を問いかける。

 

「はい、現在は第六階層――円形闘技場(コロッセウム)に死体を保管しております。マーレが魔法を掛け腐敗が進まないように施しましたので、外見もそのままです。」

 

「そうか・・・・・・後で見に行こう。――そして、アウラ。今一度、確認する。化物は蜥蜴人(リザードマン)の集落の近くで発見したんだったな?」

 

 

 アルベドの返答を確認すると、アウラに問いかけた。本当に蜥蜴人(リザードマン)の近くに、化物が存在していたのかを確認したかったのだ。

 

「はい、アインズ様。蜥蜴人(リザードマン)の集落、南西五キロの地点です。」

 

「・・・・・・蜥蜴人(リザードマン)と何か関係があると思うか?」

 

「――絶対に無いとは言い切れませんが、まず関係無いと思います。あの化物は・・・・・・蜥蜴人(リザードマン)とは桁が違います。」

 

 悔しそうにアウラが蜥蜴人(リザードマン)との関連性を否定する。

 アインズとしても蜥蜴人(リザードマン)との関連性は殆ど無いと思っている。外見も強さも桁違いにかけ離れているのだ。関係を疑える材料は距離以外には無い。

 

 

 蜥蜴人(リザードマン)は化物に対して、有効な手段を持っているかもしれない。倒せないにしても化物を近づけないための、魔法や技術を持っているのかもしれない。その程度の仮説は頭を過ぎった。

 もちろん、蜥蜴人(リザードマン)を調査した限りでは在り得ない話だ。これでも行き過ぎた仮説とも言えるだろう。だが、少しは蜥蜴人(リザードマン)を警戒しておくべきだ。

 

 

「――アルベド。下げた食屍鬼(グール)千体はどうなっている?」

 

「御命令とあれば今すぐにでも動かせるよう、待機させております。」

 

 用意されたかのように答えが返ってくる。食屍鬼(グール)蜥蜴人(リザードマン)には厳しいだろうと思い、下げたモンスター達だ。

 これは準備の初期段階で直ぐに取り止めた些細な内容だ。アインズにしても忘れかけていたほど小さな出来事である。知っているのは――せいぜいアルベドくらいではないだろうか?

 

 アインズはアルベドの返答の後、しばらく思考を巡らせた。そして、指示を出す。

 

「先触れを送るのが四日後――いや、もう三日後か。アルベドよ、蜥蜴人(リザードマン)との接触は映像に記録するよう準備しておけ・・・・・・もし、先触れが敗れるようなことがあれば、すぐに知らせろ。」

 

「お心のままに。」

 

 アルベドは一礼してアインズに微笑みかける。

 

「――アウラは森の調査を今以上に慎重に行え。もし、あの怪物を発見しても決して戦わず、情報だけを持ち帰れ。――お前が傷つく姿など・・・・・・私に想像もさせるな。いいな?」

 

「はい――二度とこの様な失態は犯しません。必ずやご期待に添う働きをお見せいたします・・・・・・!」

 

 アウラは床に跪いてアインズに返答する。醜態を晒した自分に罰を与えるどころか心配する。――主人はどれほど慈悲深いというのか。跪かずには居られなかった。

 それを見たアルベドとマーレも跪いていた。自分に対してではないが、主人の慈悲を前に自然と体が動いたのだ。

 

 

「う、うむ――」

 

 ――しかし、アインズからすればどうにもむず痒い。当たり前の心配をしただけなのだ。ここまで忠義を尽くされると、調子が狂ってしまう。毎度の事ではあるのだが・・・・・・

 

 

(忠義深さは相変わらずか・・・・・・さて、化物の確認に行かないとな。プレイヤー・・・・・・とは関係ないだろうが、警戒すべき存在だ。他にも居るとすれば厄介な相手だからな。)

 

 アインズは化物に関する考察を始める。

 守護者に匹敵する強者。それだけを考慮すればプレイヤーを疑うのが自然だ。しかし、相手は言葉さえ発せないモンスターという話だ。プレイヤーと考えるのは難しい。

 

 ――ではいったい何なのか?

 

トブの大森林に住んでいたハムスケやピニスンから聞いた覚えは無い――

冒険者組合の話でもまるで出てきたことが無い化物だ――

今までのアウラの報告には思い当たる存在は居ない――

ユグドラシルには存在しなかったモンスターでもある――

 

今は化物に関しての情報が全く無い。突然この世界に現れたかの様に・・・・・・

 

 

(突然・・・・・・か――)

 

 

 その時――ふと思った。

 化物も自分と同じように、この世界へ転移してきたのではないか――と。

 

 今まで考えたことも無かったが、ユグドラシル以外からも転移してくる存在があるのではないだろうか?それなら見たことの無いモンスターが現れても不思議ではない。そんなモンスターなら情報網に引っかからず、突如として現れることも出来るではないか。

 

 

 

(――いや、まさかな。流石に仮説が飛躍し過ぎだ。)

 

 頭に浮かんだ突拍子も無い考えを即座に否定する。絶対に無いとは言い切れないが、暴論もいいところの仮説である。この世界に転移してから色々な事があり過ぎた――想像力があらぬ方向へ向かってしまったのだ。

 

「――アウラ、マーレ。第六階層へ向かうぞ。化物――『ラミア』を確認する。付いて来い。」

 

「「はい!」」

 

 仮説を吹き飛ばすような二人の子供達の声を聞き、アインズの頭からその考えは消えていった。

 

 

 

(蘇生が出来るなら一度くらい戦ってみるのも良いな。――チームとしての戦いの実験台に最適じゃないか。)




ようやくナザリック勢が出せました。
ものすごく書くのが難しいです。
ナザリックの雰囲気と違う気がします・・・これから頑張ります。
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