僕と契約と一つの願い   作:萃夢想天

13 / 38


近頃立て込んでおりまして、ハイ。
言い訳するつもりなどございませんが、一応はと。

それと『仮面ライダーゴースト』で最近出てきた新ライダー
『仮面ライダーネクロム』なる者がめちゃんこかっこ良過ぎてハゲますわ。
元々将来的なハゲだと診断されてるのに……………悩ましや毛根。

加えて今回はネタが大量に注入されております。
どうかご容赦ください


それでは、どうぞ!


問11「僕と白昼夢と開戦」

 

 

 

 

 

これは夢だ、これは絶対に夢だ。

悪い夢だ、文字通りの悪夢なんだ、いつかは覚めるはずなんだ。

 

「ゆ、雄二…………目を覚ましてよ雄二!」

 

「い、イカン。完全に白目を剥いておるぞ‼」

 

「………黄泉の世界との境目」

 

 

僕の目の前に広がるのは、まさしく終焉の具現。

今まさに僕らの全てを終わらせんとする災厄が舞い降りていた。

 

雄二は既にこの世からタッチダウンをかまし、残るは秀吉とムッツリーニのみ。

その片割れのムッツリーニですら、気を抜けば雄二と同じ場所へ旅立ってしまうかも

しれない危うい状況に変わりは無い。

一体どうしてこんなことになってしまったのか。

原因を究明しようと試みた僕の頭脳は、ほんの十数分前に遡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぁー、づがれだ~……………」

 

四時限目の授業が終わって、精根尽き果てた僕は卓袱台に突っ伏した。

ハッキリ言おう、朝から四時間ぶっ続けで点数補給テストなんて拷問でしかない。

僕らは昨日Dクラスとの試召戦争を終えたばかりで消費した点数の補充が済んで

いなかったから、Bクラスが戦争を仕掛けてきた今日の午前中に何とかそれらを

済ませておかないといけなかった。にしてもこれはハードワーク過ぎると思うけど。

昼休みを告げるチャイムを聞きながらそう思っていると、後ろから肩を叩かれた。

 

 

「あ、雄二。どしたの?」

 

「テストで頭使ったからな、飯にしようぜ。今日は学食で済ませようと思ってんだ。

お前らはどうする? 一緒に行くか?」

 

「うむ、同行しよう」

 

「………午後に備えて栄養補給」

 

「だな。明久、お前はどうすんだ?」

 

「皆が行くなら僕も行くよ」

 

「決まりだな。んじゃ俺はラーメンとカツ丼とチャーハンとカレーでも食うかな」

 

 

四次元ポケットか、コイツの胃袋は。

 

などというごく普通のボケが浮かんでくるほど疲弊した脳みそで考えながら

僕ら四人はそのまま学食のある新校舎一階へと向かおうとした時、

後ろから遠慮しがちな声色である人物が声をかけてきた。

 

 

「あ、あの……………皆さん」

 

「姫路さん、どうしたの?」

 

「どうかしたのか?」

 

やって来たのは桃色の髪をフワリと流した長髪の美少女、姫路さんだった。

でも少しおかしい。別に彼女が僕らに声をかけてきたってことではない。

彼女は昼食を取る時はいつも数少ないFクラス女子の島田さんと一緒のはずだ。

完璧美少女の秀吉は僕らと一緒に昼休みを過ごしてくれるけど、今姫路さんの近くに

島田さんの姿は無い。その辺りが少し気になった。

するとモジモジしていた彼女が意を決したかのように大きめの声量で言った。

 

 

「え、えっと…………もしよければ、お昼にお弁当を作って来たので皆さんで」

 

「弁当? 姫路が? マジか!」

 

「………天からの贈り物」

 

「おお、女子(おなご)の手製の弁当か! さぞ愛情で味付けが良くなっておるのだろう!」

 

「え⁉ あ、愛情って……………はぅ………」

 

 

秀吉の一言で顔を真っ赤に染め上げて恥ずかしがる姫路さん。

でも驚いたな、彼女が弁当を作ってきたうえに僕らに振る舞ってくれるなんて。

そこが気になった僕は彼女に直接尋ねてみることにした。

 

 

「でも姫路さん、急に僕らに弁当なんてどうしたの?」

 

「え……………えと、実はその」

 

「何?」

 

「昨日お昼休みの時に吉井君と坂本君が、手製の弁当が食べたいって言ってたのを聞いて

もしかしたら私のお弁当でも喜んでくれるんじゃないかって思って……………忘れてください!」

 

 

そう言い終えてさっきよりもさらに顔を紅く染め上げた姫路さんを見て、

いつの間にか僕らの周りを取り囲んでいたモテないFクラス男子勢から怨嗟の声が上がる。

その気持ちはよく分かる。何せあの姫路さんからの食事のお誘い、しかも彼女の手料理。

これだけの好条件を添えられて飛びつかない男がいたら、そいつは絶対に同性愛者だろう。

 

 

「あん時の話聞いてたのか。んじゃ、姫路のせっかくの弁当だしいただくか!」

 

「そうじゃな。儂らは学食代が浮いて万々歳じゃ」

 

「………心踊る」

 

「だね。姫路さん、どこで食べようか。流石にここだと色々マズいよね」

 

主に衛生面(二重の意味で)とかね。

 

そんな諸々の事情を考慮した僕らは、空気と見晴らしがいい屋上へとやって来た。

この文月学園は他の学校と違って屋上への立ち入りを禁止してはいない。

といっても普段の授業中は基本的にカギがかけられていて、昼休みや放課後などに

事務員の人がカギを開けてくれているって話らしいけど。

 

 

「む? そう言えば雄二はどこに行ったんじゃ?」

 

「あれ、ホントだ。ムッツリーニ、何か聞いてる?」

 

「………午後のBクラス戦への景気付けに飲み物買ってくると」

 

「へー、あの雄二が。気前良いもんだね」

 

 

悪友のらしくない行動に感心しながらも屋上についた僕らは、

姫路さんが持ってきたランチシートをそこに敷いて座り込んだ。

雄二が戻るまで待つのもどうかと思って、僕らで先に食べ始めていようと彼女を

言いくるめて彼女手製の弁当とやらを拝むことにした。

 

 

「あ、あんまり自信無いんですけど………………どうぞ」

 

「「「おおぉ!」」」

 

 

未だに恥ずかしがっている姫路さんが開けた弁当箱の中身を見て僕らは歓声を上げた。

狐色の衣をまとったから揚げやエビフライ、形のいいおにぎりやアスパラの肉巻きなど。

もちろんレタスやトマトを盛ったサラダなんかもついていて、彩りも当然華やか。

定番のメニューが詰まったその箱を見て、僕ら三人の腹の虫が一斉に騒ぎ出した。

 

「それじゃ、雄二の分を残しつつ皆で先に_____________」

 

「………いいや、限界だ(パクッ)」

 

「あ、ずるいぞムッツリーニ! しかもそのセリフは起爆ボタン押すヤツだろ!」

 

「お主は何を言っておるのじゃ……………しかしムッツリーニよ、お主も抜け駆けは」

 

 

四人で手を合わせて姫路さんの弁当に手を出そうとした時、ムッツリーニが我慢

出来ずに勝手に食べ始め、最初にエビフライを摘まんで口の中に放り込んだ。

僕と秀吉はその行動に文句を付けたが、そこで秀吉が彼の違和感を感じ取った。

 

 

「む? 何じゃ、どうかしたのかムッツリーニ」

 

「………………(バタッ)」

 

「ムッツリーニ⁉」

 

エビフライを一息に食べようとした彼がそのまま後頭部から屋上の床にダイブした。

しかも仕切りに体をビクンビクンと小刻みに震えさせながら。何かがヤバい。

 

 

「………………秀吉?」

 

「………………何じゃ明久」

 

「………………コレ、もしかして」

 

「………………それしかあるまいて」

 

「つ、土屋君? どうしちゃったんですか⁉」

 

 

姫路さんが突然倒れたムッツリーニに驚いて持っていた割り箸を落としてしまう。

だが今それどころじゃない。今問題なのは、ムッツリーニが昏倒した原因についてだ。

秀吉と二人でそのことを相談しようとしたら、倒れたムッツリーニが起き上がった。

僕らはすぐに彼の容態を心配したが、彼は姫路さんを見てゆっくりとサムズアップした。

おそらく、『最高に美味かったぜベイベー』って意味なんだろうけど、違う気しかしない。

何て言うか、KO寸前のボクサーとか、風で今にも散りそうな枯れ葉みたいな。

そんな弱々しい印象しか抱くことが出来ない今の彼を見て、僕らはさらに震え上がった。

 

 

「ひ、秀吉。ムッツリーニのアレ、悪乗りに見える?」

「い、いや。アレが演技だとはどうしても思えんのじゃ」

 

「だよね、アレは完全にガチのヤツだよね」

 

「うむぅ…………そうじゃ、お主腹の方は丈夫かの?」

 

「うーーん、どうだろ。最近はまともな食生活遅れてないからね」

 

 

安心する姫路さんをよそに、僕と秀吉の秘密の対談が開始された。

本当ならムッツリーニも交えて実体験談を聞きたかったけど、そんな余裕は無さそうだ。

それに僕ら二人が彼女のお手製の料理を拒否しているのも感付かれてはマズい。

故に今の僕と秀吉の表情は、完全なる笑顔のままで固定されている。

そんな能面状態の僕らは彼女に気付かれないようにそのまま対談を続ける。

 

 

「ならば、ここは儂が往こう」

 

「そんな、無茶だよ秀吉! ムッツリーニの死に様を見たろ⁉」

 

「まだ死んではおらぬ……………と明言出来ぬのが怖いが、まあさほど心配せんでもよい。

こう見えても儂は存外丈夫な胃袋になっておってな、日切れもジャガイモの芽も、

ある程度であれば食ってもびくともせん程なのじゃ」

 

張り付いた笑顔のまま語る秀吉が、どこまでも頼もしく見えた。

でも待てよ、確かジャガイモの芽って毒性の強い有害食材じゃなかったっけ?

 

 

「でも、でも秀吉にそんなこと!」

 

「安心せい、儂の自慢の胃袋を信じておれ。この鉄の胃袋を」

 

誰よりも美少女な秀吉が誰よりも男らしいセリフを決めようとした時、

屋上へと続く扉が派手に開いて短く逆立った赤髪の男が飲み物を抱えてやって来た。

 

「おっす、遅れたぜ___________ってオイ、何だよ先に食ってたのかよ」

 

「あ、坂本君。皆さんが待ちきれないようだったので」

 

「ほー、お! こりゃ美味そうだ! 確かに待ちきれなくてもしょうがねぇな!」

 

僕ら五人分の飲み物を携えてやって来た雄二がはにかみながら弁当箱を覗き込む。

そのままシートの空いてる場所に座り込んで飲み物を配ってから流れるような

動きで手を伸ばし、僕と秀吉が忠告する暇すらなくアスパラの肉巻きを口に入れ。

 

 

パクッ

 

 

バタン

 

ガタガタガタガタ

 

 

そのまま流れるようにしてムッツリーニと同じ運命を辿った。

 

「坂本君もですか⁉ え、えっと、どうしたんですか⁉」

 

倒れ伏して小刻みに震える雄二を見て、僕と秀吉は確信した。

間違いない、コイツは本物だ。マジでヤバいものだコレ、と。

すると雄二はムッツリーニよりも早く回復し、真っ先に僕を睨んできた。

そして彼の瞳が、僕にこう訴えかけてくる。

 

 

『毒を盛ったな』と。

 

 

とんでもない、見当違いもいいところだと首を振るが信じてもらえない。

仕方ないから僕は隣にいる秀吉に視線を送って誤解を解いてもらえるよう頼み込んだ。

その視線だけで全てを察してくれた秀吉は、僕の代わりに雄二との密談を始めた。

 

 

『雄二よ、儂らは本当に何もしておらぬ。全て姫路の実力なのじゃ』

 

『冗談だろ⁉ 優等生の姫路が作った料理が劇物レベルとか笑えねぇぞ‼』

 

『………経験者は語る、どころか経験した者は皆既に解脱済み』

 

『ほら、今にもテイクオフしそうな被害者(ムッツリーニ)が言ってるんだから』

 

視線と瞬きだけで意思を疎通し終えた僕らはそのまま何事も無かったように振る舞う。

どうでもいいけど、たった一年でここまでのアイコンタクトが出来るようになるなんて

どう考えても普通じゃないはずなんだけどなぁ……………ま、今更どうでもいいか。

倒れた姫路さんが雄二に駆け寄ろうとするけど、そのまま雄二は起き上がって呟く。

 

 

「い、いや、何でもない。今しがた走って来たから足が攣ってな」

 

「足が、ですか?」

 

「そう、足だ足。近頃運動不足でな、気にするな」

 

「そうですか……………気を付けてくださいね」

 

 

出来るだけ違和感が無いように演技しながら姫路さんに心配をかけさせまいと

雄二が珍しく気遣いを見せていた。正直、ここまでやるヤツだとは思わなかったけど。

でも問題はそこじゃない。本当にマズいのはここからなんだ。

 

さて問題、今僕らの目の前には食したら一発で現世とグッバイ出来る手料理がある。

しかし、その料理を作ったのは我らがFクラスに咲く二輪の高根の花である姫路さん。

食べねばならないという男の使命感と、食べたらヤバいという人間の生存本能。

そこへさらに条件が加わってくる。

あの劇物の犠牲者は二人、ムッツリーニと雄二という野郎二人だ。

つまり残る生存者は同じく二人、僕と完璧美少女の秀吉というコンビ。

姫路さんの作った料理はまだそれなりの量がある。つまり犠牲者は必要不可欠。

 

さぁ、改めて現在直面している問題の何がマズいのかを考えよう。

既に姫路さんの手料理によって満腹(さいきふのう)になったのが野郎二人で、

残っている生存者は完璧健全美少女の秀吉と僕という人選。

(どう転んでも食わ(サクリファイス)されるのは僕になる‼)

 

 

死ぬのが分かっていながら食べさせられる運命が見えている。

これを上回る恐怖なんて、この地球上にあっていいはずが無い。

僕は死ねない、死にたくない。

ライダーとして戦って、絶対に明奈を蘇らせると心に誓ったんだ。

こんなふざけた理由であの世になんて行きたくはない。

 

 

(考えろ! 知恵を絞り切れ‼ 午後のBクラス戦なんてどうでもいいから‼)

 

 

人間というのは、死が目前に迫った時に想像を絶するほど力を発揮するらしい。

まあその事に関しては、ライダーとして戦うようになってより実感が湧いたけど。

考えるんだ、生き残る方法を。

秀吉を殺さず、かつ僕も生きていられる最高の結末(ハッピーエンド)を。

そうして考えあぐねること数舜、僕の頭脳が高らかに勝利宣言を発した。

 

 

(そうか、そうだよ。ハハ、なんだ簡単なことじゃないか)

 

 

自分の辿り着いた答えを改めて考えてみて、随分簡単だったことに気付く。

どうして真っ先にこの答えが出なかったんだろう、自分の頭脳が少し恥ずかしい。

あるじゃないか、秀吉も僕も巻き込まない答えが。

それでいて姫路さんの名誉も笑顔も守れる最上級の結末が。

結論を出した僕はムッツリーニと雄二の殺気の混じった視線を一身に受けながら

軽く息を吸い込みつつ右手を明後日の方向に、右手を弁当の中身に向けて叫んだ。

 

 

「あっ、姫路さん! アレは何だろ‼ (ガシッ)」

 

「え? どれですか? (クルッ)」

 

(そこだ必殺弁当(ファイナルベント)ォォオォォ‼)

 

(もごぉぁあぁっ‼⁉)

 

 

『必ず』『殺す』と書いて『必殺』。

僕は躊躇無く掴んだおにぎりを雄二の口の中に無理矢理ねじ込んだ。

済まなかったね雄二、君の役目はもう終わったよ。

安らかに眠るといい。後は万事僕らが上手くやっておくから。

 

雄二の隣で僕のした一部始終を見ていた犠牲者の片割れであるムッツリーニが

僕を人以外のおぞましい何かを見るような目で見つめてくる。

そんな彼には姫路さんに気取られないよう、アイコンタクトでこう告げた。

 

 

『僕の(がわ)につけ、そうすれば止めは刺さないでおくよ』

 

『………我が身は御心のままに』

 

『お主ら、存外どころか普通に畜生以下じゃな』

 

 

秀吉がジト目で僕らを見つめてくるけど気にしない。

さて、いくら姫路さんの料理と言ってもコイツはかなりタフな方だ。

そろそろ起き上がっても不思議じゃない。

ならばどうするか、答えは簡単だ。

 

 

「う、ごぉぉ…………………」

 

「ゴメンゴメン、僕の見間違いだったみたい」

 

「なーんだ、見間違いですか!」

 

「そうそう、見間違いだったんだ。アレ、雄二どうしたの?(チラッ)」

 

「(コクリ)………どうかしたのか?」

 

「(コクリ)急いで食いすぎたんじゃろう。ほれ、姫路の飯は逃げも隠れもせんぞ?」

 

「そうだよ。別に誰も横取りしようなんて考えないんだからさ!」

 

「………そんなに気に入ったなら、あせらずゆっくりと食べればいい」

 

「喉でも詰まらせたんじゃろう。どれ、儂が飲み物を飲ませてやるか」

 

 

有無を言わさぬ連携で雄二の逃げ場を着実に削いで身動きを封じる。

美少女の秀吉に飲み物を飲ませてもらうなんて贅沢だけど、冥土への土産と考えれば

不思議と釣り合うような気がした。

僕らの言葉のままに秀吉が雄二に飲み物を飲ませ、開いた口に僕とムッツリーニの二人で

姫路さんの料理を次々と投下していく。

料理の名を騙った対人兵器の数が減っていくのに比例して雄二の顔色も徐々に悪くなる。

正直に言えば、ここまでいったら蘇生はほぼ不可能だろう。

だが安心しろ、雄二の犠牲のおかげで姫路さんの世間体は守ることが出来た。

あとはコイツの死体ごと事実を僕ら三人で隠蔽するだけ。

 

「わーすごいやー雄二ってばそんなに気に入ったのー?(グイグイ)」

 

「………食いつきが半端じゃない(グイグイ)」

 

「やれやれ、このままでは儂らの分も食われてしまうな(ドバドバ)」

 

「あ、あの…………皆さん何をしてるんですか?」

 

「やだなー姫路さん。どこからどうみても楽しい昼食だよ」

「………心温まるフレンドリーな光景」

 

「全くじゃ。男たる者、食事の時も仲良くするのが当然じゃろうて」

 

「そうなんですか…………」

 

 

少しいぶかしむような視線を投げかけてくるが、まだ誤魔化せる範囲だ。

ここから先は根気勝負だ。どちらが先に負けを認めるか、勝負と行こう。

雄二の消化分解能力が勝つか、姫路さんの安楽直行(ハッピーターン)の威力が勝つのか。

勝敗を決するために、弁当箱の中に残っていた全ての食べ物を雄二に集中させる。

すると弁当箱が空になるのと同時に、雄二が口から泡を吹いて倒れこんだ。

慌て(たフリをし)て駆け寄った僕らは雄二の体を揺さぶって喉の劇物を胃に送り込む。

 

「ゆ、雄二…………目を覚ましてよ雄二!」

 

「い、イカン、完全に白目を剥いておるぞ‼」

 

「………黄泉の世界との境目」

 

喉に詰まっていた全ての劇物を雄二の胃袋に流し込んだ僕らはその場で十字を切る。

キリスト教を信仰したことはない僕らだけど、救いを求めればきっと来てくれる。

せめて殺した側の僕らだけでも、犠牲となった彼の魂の安眠を祈ろう。

そう思った僕らはしばらく、白目で気絶している雄二に心中でハレルヤを賛美した。

こうして僕らの忘れられないお昼休みが過ぎ去っていったのだった。

 

 

ちなみにこの後、復活出来た雄二にボコボコにされたのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてお前ら、午前の総合科目補充テスト、ご苦労だったな」

 

 

激動の昼休みを終えた僕らは、朝にやって来た根本君との密約通りに

こちら側から宣戦布告をしたという形で試験召喚戦争を開始した。

そしてBクラスへ向かった使者がボコされて帰って来たのを確認してから、

雄二は全員に聞こえるように教卓の前に立ってこれからの事を説明し出した。

 

 

「これからBクラスとの試召戦争が開始されるが、殺る気は充分か?」

 

『『『ウオオォォォオオォォッ‼‼』』』

 

「大変よろしい。さて、一旦沸いた脳ミソ冷やして俺の話をよく聞け。

今回は敵を教室に押し込めておく事が重要だ。だからこそ開戦直後の渡り廊下の

争奪戦には絶対に負けるわけにはいかない。ここまではいいな?」

 

一人一人からの視線に応えるように自分の目線を動かして誘導する雄二の

手練手管には毎度毎度驚かされるが、アイツはどこでそんな技覚えるんだろう。

なんてくだらないことばっかり考える余裕なんて今回は全く無いんだった、集中しよう。

 

 

「んで、渡り廊下戦での指揮権は姫路に委ねる。野郎共、キッチリ死んでこい」

 

『『『いよっしゃあぁぁああぁぁぁっ‼‼』』』

 

「よ、よろしくお願いします」

 

渡り廊下戦での中心戦力となる姫路隊総勢二十名の男子が雄叫びを上げる。

男のノリについていけない姫路さんは若干引き気味に決意表明していた。

そうして大体の人選と配置場所の確認を済ませた直後に、授業開始のチャイムが鳴った。

 

さぁ、ここから先は戦争だ。学び舎が先に引き金を引いた方が勝つ戦場と化す。

途端にクラス代表の雄二の命令を受けている先攻部隊が教室から飛び出した。

後に続くように、各々が与えられた命令を思い返しつつ座布団から立ち上がる。

 

 

「さぁ逝け、人生の敗残兵共! 目指すはBクラスのシステムデスクだ‼」

 

『『『サー、イエッサー‼』』』

 

 

雄二の味方に掛けるとは思えない激励を受けた彼らは脱兎の如く教室を出る。

今回の作戦の要は、『いかに敵を教室内に押し留めておく事が出来るか』だ。

求められるのは迅速な行動と対処、つまり今回の僕らの戦術は電撃攻城戦(ブリッツガロン)が主体。

その為にわざわざ雄二は序盤の戦いを有利にするために(・・・・・・・・・・・・・・)屋上なんて人目に付きやすい

場所でDクラス戦以来どのクラスにも存在が知れ渡った姫路さんと一緒にいたのだ。

その間に警戒されていない他の生徒が指令通りに動いてくれたおかげで、この戦争は雄二が

想定していた通りの展開で幕を上げることが出来た。

 

 

「明久、お前も行け。人数(コマ)ってのは多ければ多いほどいいからな」

 

「全く、雄二は人に対して何かをさせようって気はあるの?」

 

「させるも何も、やらなきゃ死ぬんだ。だから俺は言うんだ、『やれ』ってな」

「このキチクマめ、いやゴリラか」

 

「さっさと行けチキンヘッド。お前程度でもいないよりかはマシだからな」

 

「ハイハイ分かったよ、行ってきます!」

 

 

最後に教室に残っていた僕は雄二と軽口を言い合う。

本当は『もし勝てなかったら』って聞きたかったんだけど、

そんな事聞いてる暇があったら黙って戦えって言われそうだから止めておいた。

それに、普段は粗野で乱暴でも、一度スイッチが入るとアイツは誰よりも頼りになる。

昔の話だとしても、『神童』と呼ばれた天才児だった男なんだ。

ご大層な名前で呼ばれていた男が『お前も行け』って言うんだ、行くしか無いだろ。

言葉の裏に隠された期待を読み取った僕は、そのまま教室を飛び出した。

 

 

「いたぞ、Bクラスだ!」

 

「高橋先生がいる! どうすんだオイ⁉」

 

 

Fクラスから出てしばらく走ったところにいたのは、Bクラス生徒と学年主任の高橋先生。

高橋先生の受け持つ科目は確か総合科目。国社数理英の五科目の総計が点数になる。

今回僕らは数学を戦力の中心としておいていたから、彼女の登場は想定外だった。

一科目勝負ならまだ抵抗出来たけど、元の学力が違う僕らじゃ総合で勝ち目は無い。

 

それでも僕らに後退は許されない。あるのはただ、前進あるのみ。

意気込みを見せる僕だったが、前方を走る部隊の中の一人が急に振り返った。

 

「なあ、吉井」

 

「何、どうしたの? 八嶋君?」

 

 

走りながら振り返って僕に話しかけてきたのは、八嶋君だった。

彼はそのまま少し走る速度を落として僕と並んでまた話しかけてきた。

 

 

「今回の戦争なんだけどよ。俺はもちろん勝つつもりだぜ」

 

「そりゃ僕だってそうだし、皆だってそうだよ」

 

「それもそうだけど、俺は他のみんなとは違う。

この戦いだけには絶対に負けられない理由がある」

 

「え、理由?」

 

「ああ、この戦いには俺の大切なモンが掛かってるんだ」

 

「大切な、もの?」

 

「……………なあ吉井、お前がBクラスの根本と何があったのかは知らん。

聞く必要も無いと思ってるが、一応これだけは言っといてやるぞ」

 

並走しながら話す八嶋君の眼に決意の炎が灯り、僕を見据えた。

 

 

「何があろうと、お前をこの学園から追い出させはしない」

 

「八嶋、君…………」

 

「楽しい学園生活はこれからだ。それに、お前にまだ借りを返してない(・・・・・・・・・・・・・)しな!」

 

「えっ、借りって?」

 

 

前方で待ち構える敵に近付きながら八嶋君に尋ねるが、彼は答えない。

だが今度は僕らよりも前で走っていた他の皆が一斉に振り向いて口々に語った。

 

 

「俺もだ吉井。まだお前に退学になられちゃ困る」

 

「俺も俺も。Fクラスにはお前が必要なんだよ」

 

「行かせねぇ、お前を退学なんかにさせるか」

 

「み……………みんな……………」

 

 

振り返ったみんなの口から語られる僕への思いを、今心に刻み付け

 

 

『『『まだリア充への恨み辛みを晴らせてないからなぁ‼‼』』』

 

____________ようとして思い留まった。

 

 

「何というか、みんな正直だね」

 

「正直過ぎるが、まあおおむね良いクラスだろ!」

 

「そう、かもね。うん、きっとそうだ」

 

「ああ、だから吉井。この戦争、必ず勝つぞ‼」

 

「うん‼」

 

 

狂気的なまでに固執した執念が伝わってくる中、僕と八嶋君は笑い合っていた。

前方には太刀打ち出来ないほどの格差のある敵が待ち構えているというのに。

勝てないという現実を直視しているのに、自然と笑みがこぼれる。

それに、眼前の敵に対して恐怖心が一切沸いてこない。

これも、負けられない理由があるからなんだろうか。

もしかしたらもっと別の_____________って、今考えても始まらないか。

 

そうこうしているうちに、FクラスとBクラスの生徒同士が戦場で激突した。

今は悩んでいる時間も、無駄な事を考える時間も余裕も無さそうだ。

だから、僕もこの戦いに交じるために指揮官としての一声を張り上げる。

 

 

「全員生かして帰すな‼ この場で全員殺しきれ‼」

 

 

物騒なセリフを皮切りに、負けられない戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 














いかがだったでしょうか?

ええ、ネタの件に関しましてはやり過ぎたとしか。
それとしばらくは早く更新できるかもしれません。
あくまで"かもしれない"なので、期待は避けてください。


それでは次回をお楽しみに。
ご意見ご感想、お待ちしております。


戦わなければ生き残れない‼
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。