僕と契約と一つの願い   作:萃夢想天

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どうも皆様、二週間ほど空けてしまいましたね。
その代わりと言っては何ですが、題名をご覧ください。

どうでしょう、これ以上分かりやすい題名がありますかね?
分かりやす過ぎて泣き笑いが止まりませんぜ。


それでは、どうぞ!


問12「僕と駆け引きと解き放たれた蛇」

 

 

 

 

 

Bクラスとの負けられない試験召喚戦争が始まって既に一時間を過ぎた。

しかし僕らは今、絶望と言う名の現実を見ている。

 

 

『Bクラス 野中長男__________総合 1943点』

VS

『Fクラス 近藤吉宗__________総合 564点』

 

圧倒的かつ絶望的なまでの戦力差だ、まさに桁が違う。

戦場のあちこちに目を向ければ、その全てに敗北が映り込んでいた。

 

 

『Bクラス 金田一祐子_________数学 158点』

VS

『Fクラス 武藤啓太__________数学 66点』

 

もはや比較するのもバカらしい敵との差に、前線がことごとく討ち取られていく。

何とか戦死させまいとフォローに出ようとしたその時、

 

 

「お、遅れ、ました、すみ、ません……………」

 

流れるような桃色の髪をそのままに、走った影響で乱れた呼吸を整えつつ姫路さんがやってきた。

一番最後に教室を出た僕より後に来るってことは、彼女は相当足が遅いんだろうか。

なんて失礼な疑問を抱きつつも彼女に近付いた僕は戦線への参加を要請した。

 

 

「姫路さん、ちょうどいいところに! 早速で悪いんだけど」

 

「は、ハイ。行って、きます!」

 

ヨタヨタとおぼつかない足取りで戦場へ向かう彼女を見ると、何とかして守って

あげたくなる衝動にかられるけれどそれをどうにか堪えて後方で待機する。

すると彼女の存在に気付いたBクラスの人たちも一様に警戒し始める。

やっぱりDクラス戦でのFクラスデビューを他のクラスも既に知っていたんだろう。

姫路さんの参戦に対して、彼らの中から二人の女子が行く手を遮るように現れた。

 

 

「長谷川先生、Bクラス岩下律子が姫路さんに勝負を申し込みます‼」

 

「律子、私も手伝うわ! 先生、同じく菊入真由美も申し込みます‼」

 

『『『試験召喚(サモン)‼』』』

 

 

三人が教師の立会いの下に形成された召喚フィールドの中で声を張り上げ、

彼女らの呼び声に応じておなじみの魔法陣が展開されて召喚獣が姿を現す。

デフォルメされた三人の召喚獣が、それぞれ装備を着こなして出陣する。

相手は細身の剣と普通の槍を持っているが、姫路さんは彼女らとは別格で、

重厚な鎧と身の丈の二倍はありそうな大剣を振りかざして肩に担いでいる。

しかしそれ以外にも姫路さんと二人との違いがもう一つあった。

 

 

「アレ、姫路さんの召喚獣って"腕輪"なんてしてたっけ?」

 

「え? ハイ、数学はかなり出来たので」

 

「へー、点数が良いとオシャレ出来るんだ。知らなかったよ」

 

「う、腕輪ってまさか⁉」

「嘘でしょ、そんなの勝てっこないじゃない‼」

 

 

僕が気付いた違いとは、召喚獣の左腕に備わった金色の腕輪の事だ。

相手二人の腕には無い輝きが姫路さんの召喚獣の腕には宿っている。

ただ僕が今言った「オシャレ」という点については、すぐに誤りだと知った。

異様なまでに怯え始めた二人を無視して、姫路さんの召喚獣が左腕を掲げる。

 

そして次の瞬間、僕らの目の前が閃光に包まれた。

 

「きゃああぁぁぁ‼」

「いやぁああぁぁ‼」

 

 

目を閉じずにはいられないほどの光と衝撃の向こう側からBクラス女子二人の

悲鳴が聞こえてきたが、あまりの明るさにどんな状況なのか把握出来ない。

ただしばらくして閃光が収まり、姫路さんの召喚獣の姿を目視出来た直後に

僕らFクラスの部隊は、驚きの光景を目にした。

 

『Fクラス 姫路瑞希__________数学 412点』

VS

『Bクラス 岩下律子&菊入真由美__________DEAD』

 

 

召喚フィールド内に仁王立ちしていた姫路さんの召喚獣の前には何も無い。

先ほどまで対峙していたはずの二体の召喚獣は、一瞬で討ち取られたらしい。

ただよく目を凝らしてみると、召喚獣だったらしきものは発見出来た。

一体は全身を完全に炭化させられ、もう一体は上半身を消し飛ばされ下半身が残っていた。

正直言って、ここまでリアルに再現する必要があったのかと言いたくなるほどに

悲劇的な光景が広がっていた。

この凄惨な殺戮現場を見せられてから、僕はこの試験召喚システムのもう一つのルールを

忘れていたことを思い出した。

そのルールとは、『試験で取った点数が400点を超えた場合の特殊装備』について。

本来召喚獣は召喚者がテストで取った点数を攻撃力としてフィールド内のみで召喚可能であり、

相手への攻撃、または相手からの攻撃によって点数を徐々に失っていくシステムになっている。

攻撃であれば武器の摩耗、防御であれば装備や盾の劣化などの減少に点数が関わってくるのだが

詳しい補正値やダメージ値なんかについては素人の僕らには理解出来る領域にはない。

まぁ簡単に言えば、攻撃したり攻撃を受けたりすれば点数が減っていくって訳だね。

 

しかし、普通の高校で出されるテストには必ず、『上限(まんてん)』が設定される。

だがこの文月学園の試験召喚システムにそんなものがあっては、戦争自体の意味が無くなる。

仮にテストの点が強さと比例するこのシステムに強さの上限である100点が設定されてみろ、

間違いなくAクラスやBクラスの生徒は一騎当千の豪傑集団と化すだろう。

そうさせないためにこの学園のテストには上限が無く、時間の限り点数を獲得出来るのだ。

そして極稀(ごくまれ)に、テストで優秀過ぎる成績を収める天才なんてのが現れる。

学園はそういった学習能力の高い者への才能として、先ほども言ったルールを加えたのだ。

単一科目、つまり総合科目以外のどれか一つでも400点以上の点数を取得した者に限り、

絶大な特殊能力を発動させることの出来る『腕輪』の装備が許可されるのだ。

各生徒ごとに個別の能力があるかどうかは知らないけど、先輩達の話を聞いてみたうえでは

それぞれ違った能力を持ち、同一の能力を持った敵と対決したことは無いらしい。

 

要約すると、『400点を超えたら超能力を発動できる装備が解禁される』ってことだ。

僕とは無縁の世界の話だったから完全に忘れてたけど、そんな制度もあったんだっけ。

 

 

「岩下と菊入が戦死した‼」

 

「そんな馬鹿な⁉」

 

「姫路さん、予想以上に厄介よ!」

 

 

目の前で訳も分からず仲間を蒸発させられたBクラスの面々はそろって怖気づき、

少しずつ後退したかと思ったら背を向けて一気に逃走を図った。

文月学園の試験召喚戦争ルールとして、こういうものがある。

『相手が召喚獣を召喚したにも関わらず召喚をしなかった場合、

その者を敵前逃亡、あるいは戦闘放棄したものと見なし、戦死者同様の扱いとする』

この場合は一応の決着は着いているから、彼らが姫路さんから逃げたとしてもルールに

抵触することは無いのだろうと秀吉が教えてくれたけど意味がさっぱり分からない。

 

 

「とにかく、姫路さんのおかげで息を吹き返した!

このまま一気に進軍して敵を教室内に押し込もう‼」

 

「ハイ! み、皆さん、援護は任せてください!」

 

「「「っしゃぁあああぁぁあ‼‼」」」

 

 

敵の出鼻を挫いた形になった渡り廊下戦、このまま畳みかけよう。

そう思って逃げた相手の追撃を開始しようとした僕を秀吉が捕まえて呟いた。

 

 

「明久よ、ワシらは一度退却するぞ」

 

「え? なんで、どうして?」

 

「仮にも相手はBクラス、格上じゃぞ。

それに今回の相手の大将は、あの根本恭二じゃ」

 

「……………確かに。ここは様子見が賢明かな?」

 

「じゃな。姫路よ、ワシらの部隊から新田(にった)嵐山(あらしやま)八嶋(やしま)以外の全員を

そちらの部隊に組み込ませて以後の行動を共にさせる。好きに使ってくれい」

 

「分かりました!」

 

「という訳じゃ、新田、嵐山、八嶋。

お主らはワシと明久と共に退却して補充試験を受けるのじゃ」

 

「了解!」

 

「分かった!」

 

「行くぜ、吉井!」

 

「うん!」

 

 

秀吉の口から根本君の名前が出た直後から、僕の頭の中に友香さんの事が浮かんできた。

戦争の真っ最中なのに僕はそんな事を考えられるほど余裕なんだろうか。

そうこうしている内に秀吉が部隊の再編成を終え、姫路さんに前線を託して僕ら五人は

一度本陣であるFクラスへと帰還の一路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、見つけた! おい吉井、秀吉‼」

 

僕ら五人がFクラスへと帰還している最中、新校舎二階へ続く廊下から僕たちを

呼ぶ声が聞こえて周囲を見回すと、斥候部隊副長の須川君がこちらに向かっていた。

 

 

「む、なんじゃ須川か。驚かせよって」

 

「全くだ、そんでどうした須川?」

 

敵の奇襲を警戒した僕らの緊張の糸は解れたが、当の須川君はそのままで

焦りと危機を感じさせる表情のまま僕らに助けを求めてきた。

 

 

「かなりマズイことになった!

新校舎三階廊下での戦闘で、島田が敵に捕まった‼」

 

「何だって⁉」

 

須川君の口から飛び出してきたのは、卑怯の王道とも言える『人質』。

彼の言葉のおかげで今さっき緩んだ僕らの緊張の糸が再びきつく結わえられる。

 

「相手はたった一人なのに、島田を盾にされて手が出せねぇ!」

 

「クソ、どうする秀吉?」

 

「むぅ…………ワシらが退却するには支障は無いのじゃが、もしも島田を盾にした者が

捨て身覚悟でワシらの後を追ってFクラスに突っ込めば、隙が生まれてしまうぞ」

 

「…………だったら本陣に気付かれてない今のうちに潰しておこう!」

 

「そうだな。須川、案内頼めるか?」

 

「分かった、こっちだ‼」

 

思いがけない敵の出現に少し戸惑った僕らだが、秀吉の的確な戦況分析と

念の為と言って引き連れていた護衛部隊の戦力もあって、孤立した生き残りを

全員で包囲して一気に潰す作戦が立案された。

須川君の案内の元、僕らは進路を変更して島田さんが捕らえられた現場に急行した。

 

 

「いた、島田!」

「島田さん!」

 

「吉井! 木下! お願い、何とかして‼」

 

 

案内された場所で僕らを待ち受けていたのは、補習担当の教員とBクラス一名。

そして点数が一桁にまで削られて戦死寸前となってしまっている島田さんだった。

この場面を言い換えるなら、人質を取られた警官と犯人の逮捕劇みたいだな。

 

 

「それ以上近寄るな! もし来たらこいつの召喚獣に止めを刺して

補習室への道連れにしてやるからな‼」

 

 

訂正、逮捕劇っていうよりもドラマの方が近いや。

なんてふざけてる場合じゃない、とにかく現状を整理しなくては。

 

まず相手はBクラスの男子。しかし、既に召喚獣も瀕死の状態。

さらに彼は僕らの切り込み隊長たる島田さんを人質に取っている。

彼女もまた瀕死で、一撃加えられれば戦死、補習室送りとなるだろう。

もしもこのまま僕らが攻撃を仕掛けようとすれば、その瞬間島田さんの召喚獣の

首と胴体がお別れを言い合って二度と出会うことは無くなってしまう。

……………アレ、でも待てよ?

 

逆に島田さん一人を見捨てれば、Bクラスの戦力を一人分削れる?

だとしたら彼女は無駄死にではなく、名誉ある殉死という事に?

 

 

「このままでは手が出せん、どうすれば…………」

 

「クソッ、卑怯な連中だ! 何とかして島田だけでも‼」

 

 

とある重大な事実に気付いた僕の隣で秀吉と八嶋君が何か言ってるけど

そんな事よりももっと重大な案件を考えている僕の耳には届かない。

もう一度整理しよう。相手は瀕死だが、味方を人質に時間を稼いでいる。

相手が時間を稼げば、異常に気付いた敵が援軍を送ってくるかもしれない。

元々補充の為に帰還しようとしていた僕らだ、絶対に勝ち目なんて無い。

つまり、今目の前にいる敵は必ず(くちふうじ)しておかなきゃならないんだ。

 

僕は頭の中で状況を完璧に把握し、打開策を練り上げた。

大丈夫。大義名分はこちらにある、味方殺しの忌み名は降り掛からない。

だったらさっさと殺ってしまおう、そうしよう。

 

 

「問題無いね、総員突撃ィィィ‼」

「おまっ、何言ってんだ吉井⁉」

 

 

僕は声を張り上げると同時に新田君と嵐山君に召喚獣を出させる。

だがちょうど真横にいた八嶋君だけが僕にツッコミを入れてきた。

 

 

「お前隊長なのにそれでいいのか、仲間を見殺しにしていいのか⁉」

 

「…………………八嶋君」

 

 

熱血漢らしい彼の漢気溢れる言葉が戦場を駆け巡り、わずかな静寂が生まれる。

でもね八嶋君、君はここがどこだか分かっているのかい?

 

 

「八嶋君、ここは戦場だ。弱肉強食、弱さが死に直結する場所なんだよ‼

相手は瀕死、されど味方も瀕死。ならば隊長である僕が出せる命令はただ一つ、

『首を跳ね飛ばされようが決して敵を逃がすな』、ただそれだけだよ‼」

 

「お主はどこまで人の道から外れれば気が済むのじゃ⁉」

 

 

僕の冷酷で、されど現実味を帯びた言葉に秀吉が暴言を浴びせるが構わない。

さっき僕が言った言葉は、自分自身が身に染みて理解できた世の摂理でもある。

ライダーになって闘って、モンスターを倒したり倒されかけたり。

そこには慈悲も温情なんてものもありはしない、ただただ強さがものを言う。

だからこそ僕は戦いの非情さを知っている。故に僕は間違っていないんだ。

…………決して一年の頃からいじめられてたからとか、そんなんじゃない。

 

 

「ま、待て!」

 

「命乞い? 見苦しいよ、言葉が話せる内に胴体にお別れを言わなくていいの?」

 

「お主、その言葉がどれだけ恐ろし気なものか分かっておるのか?」

 

「分かっているからこそだよ、さあ観念しなよ!」

 

「待て、聞いてくれよ!

コイツがどうして俺に捕まったのか、知りたくないか?」

 

「……………島田、何があったんだ‼」

 

 

敵の言葉に釣られた八嶋君が文字通り相手の術中にハマってしまった。

アイツは多分、こうして時間を稼いで援軍が来るのを待ってるんだ。

だとしたら猶予は無い、チンタラするのは元々性に合わないんだよ‼

 

 

「どうでもいい、殺せぇ‼」

 

「ま、待て、話を____________あああぁぁ‼」

 

「吉井ッ、アンタ、覚えてなさいよぉぉおお‼」

 

 

新田君と嵐山君の二人の召喚獣が僕の号令と共に突貫し、

死にかけのボロ雑巾二体を手持ちの武器でいとも容易く引き裂いて討ち取った。

最後に敵と味方の断末魔が混じり合っていたような気がするけど、気のせいだ。

そんな事より僕らは早く点数の補充に戻らないといけないんだった。

 

「さ、行こう皆!」

「う、うむ。何か釈然とせんが致し方あるまい」

 

「…………助けられた気がするんだがなぁ」

 

未だに帰らぬ人となった島田さんの最期を嘆く二人を引き連れて、

須川君を含めた僕ら六人は、そろってFクラスに帰還して補充試験を受けた。

 

 

ちなみに後で知った話だと、島田さんが捕まったのは

『吉井が姫路さんのパンツを見て鼻血が止まらなくなって戦線離脱したから、

心配になった隙を突かれて敵の猛攻を喰らってしまったから』らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「休戦協定を結んだ‼⁉」」」

 

 

教室に戻った僕らが補充試験を終えた直後に、六限目のチャイムが鳴り響いた。

試験召喚戦争は一応、授業の枠組みとして扱われている。

だから他のクラスの授業が終わると同時に戦争も終えなければならない。

ただ、絶対に一日で戦争に決着がつくとは限らない訳で。

そういう特殊な状況の場合のみ、試験召喚戦争は『休戦』することが許可されている。

例えば今みたいな、今日の残りの授業がもう無い場合とか。

 

 

「やかましいぞ馬鹿共。授業が無いからまた明日、そういう事だ」

 

「だからって明日になったら戦況はリセットされちゃうんだよ⁉」

 

 

そう、この休戦というシステムにもデメリットはある。

翌日に戦争を延期した場合、再び本陣からの再スタートとなる。

ただし、本人の点数は当日最初の戦闘で点数を削らないと試験は受けられない制度がある。

要するに、帰って勉強して一時限目に補充試験を受けて強化スタートは不可能って事だ。

このルールは下位クラスが上位クラスと戦争をした時に戦力バランスが大きく崩れないように

するための措置らしいんだけど、現状それはあんまり意味は無い。

「うむ、島田も他の者も戦死スタートじゃ。不利に変わりは無いぞ」

 

「…………絶望的状況」

 

「言われなくても分かってるっつの。だからこその休戦"協定"だ」

 

「「「?」」」

 

「今説明してやるから座れ」

 

 

我らが大将の雄二の言葉通りに座った僕らFクラスの面々。

残存戦力の全員が座ったのを確認してから、雄二は語りだした。

 

 

「いいか、お前らが試験を受けている時にBクラスと休戦協定を結んだ。

それはただ単に今日の授業が終わったからって訳でもねぇ。

根本との協定内容で今回最も重要な部分をお前らに伝える」

 

「…………重要な部分?」

 

「そうだ、この協定で俺が提示して認めさせたのは、

『休戦中の他クラスへの一切の干渉を禁止とする』ってルールだ」

 

「む? 何故他のクラスとの接触を禁止するのじゃ?」

 

「一応根元対策でな、奴が自分で手を下さない性格なのは知ってるし、

もしかしたらEクラス辺りでも口車に乗せて横槍を入れさせるかもしれんしな」

 

「なるほどのぉ」

 

「そういう事だ。んでムッツリーニ、頼んでいた件はどうなってる?」

 

「…………良くも悪くも」

 

 

話を区切った雄二は、ムッツリーニを呼んで何かを聞いた。

呼ばれたムッツリーニは微妙そうな表情を浮かべて彼に報告した。

 

「…………Cクラスの様子がおかしい」

 

「Cクラスだと?」

 

「…………明らかに戦力を整える動き方をしていた」

 

「そんな、何で友香さんのクラスがそんな事を⁉」

 

「落ち着け明久、ムッツリーニ、他は?」

 

「…………他のクラスに動きは無し。あるのはCクラスのみ」

 

「チッ、陰険な連中だ。漁夫の利でも狙いに来たか?」

 

 

どうやら雄二はムッツリーニに密偵を頼んでいたらしい。

ただ問題なのは、どうしてこの局面でCクラスが出てくるのか。

Cクラスの代表は僕がよく知る女子の、友香さんだ。

確かに僕らが出会ったのは昨日今日の話だけど、それでも彼女はそんな卑怯な手を使う

人間には見えなかったし、何より信じたくなかった。

 

 

「待ってよ、どうしてCクラスが戦争準備なんて」

「…………雄二、説明を」

 

「分かってる、いいかお前ら。

Cクラスの代表は知っての通り根本の彼女…………今は違うんだっけか?

まあとにかく、クールビューティーで知られる小山だ。

アイツは勉強の方はBクラスに劣るが、世が世なら名が知れ渡ってた切れ者だぜ」

 

「どういう事じゃ?」

 

「つまりだ、現代日本じゃ役に立たねぇ『戦争指揮の才能』があるんだよ。

的確な指示と対応、そして時には冷酷な判断に大胆な作戦の実行なんかもする。

一年の頃から試験召喚戦争の計画も練ってたみたいだし、相当の難敵かもな」

 

「…………だが問題は、そこじゃない」

 

「え?」

 

「そう、今ムッツリーニも言ったが問題はそこじゃねぇ。

本当に厄介なのは、Bクラスよりワンランク下のクラスが戦争準備をしてるって事だ。

今の言葉だと伝わりにくいかもしれんが、よく考えてみろ。

一人一人が下手すりゃ200点届きそうな連中にあと少しで仲間入りしてたかもしれん

連中の集まりが、戦争後に消耗した俺らを待ち構えてるって事なんだぜ?」

 

 

雄二の理解しやすくも把握したくなかった事実を前にFクラス全員が閉口した。

誰一人として現状を嘆くような真似はしないが、待ち受ける未来には絶望しかない。

教室中を見渡せば誰もが俯いて、教卓で話す雄二の顔を見ようとはしていない。

ただ、僕だけは違う。何故なら、雄二の言葉をよく聞いていたからだ。

クラス中に漂う絶望を払拭するように出来るだけ大きく明るい声を作って僕は語る。

 

「ねぇ皆、今の話をちゃんと聞いてた?

だったら顔を上げて真っ直ぐ前を向いて、これからの作戦に集中しようよ‼」

 

「何言ってんだ吉井、今の聞いてたろ?」

 

「そーだそーだ!」

「状況も理解出来んバカは引っ込んでろ!」

 

「バカは君達だよ。さっきの雄二の言葉をよく思い返しなよ。

さっき雄二は『戦争後に消耗した俺らを待ち構えている』って言ったんだよ」

 

「…………それが?」

 

「つまり、雄二が心配してるのは現状じゃなくて未来。

Bクラス戦じゃなくって、その先にあるCクラス戦を心配してるんだよ‼」

 

 

僕の自信に満ちた言葉に、次第にFクラスメンバーの顔が上がっていく。

しかしまだ数人は僕の言葉をバカの戯言だと聞き流してい俯いている。

ここまで言っても分からないなんて、一体どっちが状況も理解出来ない馬鹿だよ。

 

 

「そうか、そういう事か!」

「なるほどのぉ、まだ勝機はあるという事じゃな!」

 

「そうさ、雄二は一言も『Bクラス戦に負ける』なんて言ってない。

むしろ、Bクラスに勝って、その先に待つCクラス戦について心配してたんだ!」

「よくぞ同じことを無駄に二回も言葉にしてくれたな明久」

 

「それ褒めてる? けなしてる?」

「好きに解釈しろ間抜け面。さてお前ら、これから作戦を決行する!

文句なんざ後から聞いてやるから今はとにかく話を頭に叩き込め‼」

 

 

ようやく士気を取り戻した面々を待っていたのは我らが大将からの厳命。

しかし本当にコイツは人へのものの頼み方ってヤツを知らなさすぎるな。

そう思いつつも雄二の言葉に耳と意識を傾け、内容を覚えることに努める。

 

 

「これからこのクラスを工作部隊と本隊との二つに分けて行動させる。

まずは工作部隊、明久を隊長として五、六人程度の小隊で活動しろ。

お前らへの指令は一つ、今からCクラスに行って協定を結んでこい」

 

「え、僕が行くの?」

 

「当然だろ、お前は朝一番に根本からマークされてんだ。

さっさと帰るフリでもさせれば釣られてあのマッシュ頭も出てくだろ」

「そうかな?」

 

「ま、本当はCクラスの代表と良い感じのお前を向かわせれば

相手からの待遇や態度も軟化して収まるとこに収まるかもしれねぇという

思惑もあるにはあるんだがな」

 

「それが本音か‼」

 

 

雄二の無遠慮なぶっちゃけに思わず声量が増すが仕方ない。

彼はもう少し発言に気を使うべきだ、でないと今さっき一瞬で制服から怪しげな

カルト集団の服装にメタモルフォーゼしたFクラス男子からの熱烈な殺意を全身に、

しかも物理的に浴びせられてしまうかもしれないじゃないか。

猛烈なまでの視線に耐え抜き、僕は指示通りに数名を引き連れて教室を出る。

ただ去り際、僕の視界の端に姫路さんが何か言いたげな表情でこちらを見ていたのに

気付いたけれど、僕はそのままCクラスへと向かって行った。

 

下校し始めた生徒に紛れてコソコソとCクラスへと向かう僕ら工作部隊。

メンバーは六人。僕、新田君、嵐山君、君島君、須川君、そして八嶋君だ。

男六人が集まって新校舎へ向かうさまは決して美しいとは言えないけれど

なりふり構っていられないし、戦争で綺麗も汚いもありはしない。

 

 

「ん? アレ、ちょっと待って?」

 

「どうした吉井」

「今気付いちゃったんだけどさ……………コレって協定違反だよね」

 

「「「「「あっ」」」」」

 

 

新校舎、廊下で気付く、バカ六人。

 

そんな現代風の一句が浮かんでくるほどの羞恥が僕らに襲い掛かる。

逆にこれだけいたのに誰一人としてそのことに気付かないのが異常だよね。

なんて思ったのも数秒、僕はすぐに気持ちを切り替えてヤツの真意を探った。

 

 

「…………もしかして、分かっててやらせた?」

 

「どういうことだ吉井?」

 

「雄二があれだけおおっぴらに協定内容を伝えた挙句に違反するなんて

いくらアイツが馬鹿でもそんな矛盾だらけの行動はしないはずだよ。

だから多分、この作戦には裏があるんじゃないかな」

「裏ねぇ、何考えてんだろうな」

 

「そこまでは流石に分からないけど、大丈夫だよ」

「何でそこまで余裕かましてられるんだ?」

「だって、雄二はこの戦争に負けることは考えてないんだよ?

大将が勝ち戦を想定してるのに、僕らが弱腰のままじゃ勝てっこないさ」

 

「…………それもそうだな」

 

もうすぐ三年生になる男子高校生六人が廊下の真ん中で緊急会議。

知らない人が見ればかなり危ない人達に見えるだろうけど、当人は必死そのものだ。

隊長である僕が部下を信頼しないでどうやって戦うって言うんだ。

きっとそれは、雄二も同じことを考えているんだろう。

そう信じて進むしかない。そう告げて僕らはCクラスへと急行した。

そして目的地であるCクラスの教室に辿り着き、扉に手をかけて中に入る。

 

 

「_________ダメだろぉ、お前らぁ。協定破ったらさぁ‼」

 

「根本、恭二⁉」

 

 

だが、その先で待っていたのは、最悪の光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらです、どうぞ」

 

「はいはい、お勤めごくろーさん」

 

「いえいえ、先生ほどではありませんよ。

それでは、面会時間は十分間ですので何かあれば私どもに」

 

「どーせ今回も三分で終わるからダイジョブだって」

 

 

国民の安全を守る義務を責任から繕われた青い警官服の男と軽口を交わし、

スーツをバッチリ着こなした爽やかな印象を持つ男が扉を開け放つ。

男の目に最初に留まったのは、あまりにも質素で暗く、惨めな部屋。

部屋の中にあるのは、パイプ椅子と部屋を分断する強化ガラスのみ。

緊張した感じも無く入るにはあまりに場違いな男はそのまま歩を進めて

部屋の中央に鎮座するこの部屋の『住人』と対話すべくパイプ椅子に腰かける。

 

 

「よぉ、気分はどうだ、『浅倉(あさくら) (たけし)』」

 

「………………ハッ、最悪だ」

 

 

入ってきた男とは違い、その部屋の『住人』はあまりにも部屋に似合っていた。

その男はあまりに恐ろしく、不気味で、粗悪で、凶暴な視線で射貫くように睨むが

スーツの男はまるで気にしていないように軽口を続ける。

 

 

「あのさぁ、お前本当に俺という人材の貴重さを理解してんの?

俺は引く手数多のイケメン敏腕スーパー弁護士、『北岡(きたおか) 秀一(しゅういち)』なのよ?」

 

「…………知るか、んな事より俺を出せ」

「釈放? お前を? 冗談じゃないね、大金積まれてもお断りだバーカ」

 

「…………ぉオイ、俺をイラつかせるなァ………」

 

「わざわざお前と顔を合わせなきゃいけない俺の方がイラついてくるよ。

あーあ、こんな事なら弁護士で優秀になり過ぎなきゃよかったかなぁ」

 

「…………北岡ァ、ここから出たらお前を真っ先に潰してやるよぉ」

「言ってろ、どーせ無理だっての。お前懲役何年くらってると思ってんの?

本来なら禁固刑だって良かったのに、それを仕方なく十五年よ、十五年!」

 

「………お前なら本気出せば五年で済んだろぉ?」

 

「お前みたいな生きる価値も無いクズを何年で出しても結果は一緒さ。

分かるんだよ。ほら、俺ってスーパー弁護士だから」

 

「……………あぁああ‼」

 

 

スーツの男、北岡と粗悪な部屋の住人、浅倉は言葉を数回交わすとすぐこうなる。

部屋の外で待機していた警官もこうなると分かっていたから彼の言葉に頷いたのだ。

暴れだした浅倉を抑え込もうと部屋の反対側の扉からも警官が三人ほど入ってきて、

警棒で浅倉の首や腹部を滅多打ちしてやっと動きを鎮静化させる。

打って変わって対岸の火事でもみるかのような冷ややかな視線で浅倉を見下ろす北岡は

パイプ椅子から立ち上がって面会終了を告げて部屋から立ち去ろうとした。

だが彼は出口で立ち止まり、取り押さえられた浅倉を一瞥して嘲笑う。

 

 

「ホント、お前って何のために生まれてきたんだろうね」

 

 

北岡はそう言い残してその部屋__________刑務所の面会室を後にする。

数人の警察官に抑えられた浅倉は北岡の最後の言葉に対して、ただ笑っていた。

しかし、その笑いは純粋な笑みからはかけ離れた、凶悪で邪険な笑みだった。

 

「…………ぁあー、ああー」

 

 

北岡との面会後、浅倉は警官に本来の独房に移された。

独房で再び孤独となった彼は無気力にただ部屋の鉄格子に頭突きをかます。

ゴツッ、ゴツッ、と鈍い音が響くが警官は誰一人相手にしようとはしない。

何故なら彼が、浅倉という男が異常な行動をとるのは当たり前と認識しているからだ。

時には窓を蹴り破り、時には拳で壁を殴り続けたり、今のように頭突きをしたりと。

 

だからこそ警官たちは、この時浅倉の身に起きた『異常』に気付かなかった。

 

 

「________あン?」

 

 

普通のより耳障りな耳鳴りが聞こえる。

浅倉が最初に感じたのは、その程度の異変だった。

気のせいだろうと鉄格子に頭突きを当てる自傷行為を再開させた浅倉だったが、

次第に、しかし確実に先程聞こえた耳鳴りが大きく正確になってきたのを感じた。

ついには頭痛だと錯覚するほど強烈な耳鳴りに、彼の怒りのボルテージが数段上がる。

元々薄かった理性を引き千切るほどの暴虐を周囲にまき散らそうとしたその時。

 

 

『___________何を、欲するか?』

 

 

強烈な光が窓から差し込んだかと思いきや、聞いたことのない男の声が響いてきた。

慌てて周囲を見回す浅倉だったが、独房の中にも外にも人の気配は全く無かった。

にも関わらず耳鳴りは止み、代わりのように男の声が語り掛けてくる。

 

 

『___________願いは、あるか?』

 

「誰だ、お前?」

 

『___________何が、望みだ?』

 

「………ぉオイ、俺をイラつかせるなァ、あぁ⁉」

 

苛立ちを隠そうともせずに暴れまわる浅倉だったが、ある一点を見た後から動きが止まった。

彼の視線の先にあったのは、夕日が差し込んでいる影響でオレンジ色に染まった窓ガラス。

単なる遮蔽物であるはずのそれに、浅倉はある『異常な光景』を目にした。

 

春先なのにロングコートを着た、痩せこけた印象の男が映っていた。

だが自分の周囲には誰もおらず、また窓ガラスの向こうにも人なんていない。

気でも狂ったのかと冷静になりかけた浅倉に、またしても男が語り掛ける。

 

 

『__________そうか。願いの為に戦うのではなく、闘いを望んでいるのか(・・・・・・・・・・)

 

「おォ!」

 

 

窓に映った男の呟きに、浅倉が違った反応を見せる。

その反応を吉と受け取ったのか、窓に映る男がさらに続ける。

 

 

『_________いいだろう、多少趣旨が違えど願いは願いだ』

 

「あァ? なんだよ」

 

『_________お前に与えよう。好きなだけ暴れられる最高の力を』

 

そう言って窓に映る男は浅倉にそっと何かを渡そうと手を伸ばす。

窓に映っているのにものなんか貰えるのかと浅倉が考えるよりも早く、

男が持っていた物体が窓から浅倉のいる独房の固い床に落下してきた。

マジックでしか見ない光景を前に浅倉は少し固まるが、男は気にせず語る。

 

 

『_________使え、その力でお前は好きなように暴れろ』

 

「……………コレは?」

 

『_________言っただろう。お前の、望んだ、力だ』

 

「…………ハッ、訳の分からんことを」

 

『_________今日からお前は、【ベノスネーク】の契約者となる』

 

「あァ…………さっきからゴチャゴチャと、何が言いたい?」

 

男が落とした紫色の手のひら大の物体を掴んだ浅倉は単刀直入に尋ねる。

浅倉からの問いかけに、窓に映る男は後ろへ振り向きながらただ告げた。

 

 

『________ライダーとなり、お前の望むがままに、闘え‼』

 

「闘う…………闘う、か。なら誰と闘えるんだ?」

 

『_______お前と同じ力を持った、十二人のライダーと闘え』

 

「あァ? 十二人? それしかいねぇのか!」

 

『________鏡の世界で、契約したモンスターと共に、存分に闘え』

 

「…………チッ、それで? そのライダーってのはどこにいるんだ?」

 

 

窓に差し込む光が強くなり、浅倉は思わず顔を腕で覆って隠す。

直後、一瞬の閃光と共に窓に差し込んでいた光が消え、同時に男も消えていた。

自分の問いに答えず逃げたとわずかに苛立つが、また頭に男の声が微かに響いた。

 

『________北岡 秀一。あの男もまた、ライダーの一人だ』

 

「ほォ! そうか、ヤツがライダーなのか! ハハッ、ちょうどいい‼」

 

『________そうだ、ここから抜け出して、奴と闘え』

 

「あァ、言われなくてもアイツと闘ってやるさ‼』

 

『________いいだろう。さぁ、闘え。最後の一人になるまで‼』

 

不可思議な現象は鳴りを潜め、また普段通りの退屈な独房となったこの場所で、

浅倉は未だかつてないほどに興奮しきって凶悪を超越した悪の笑みを浮かべる。

 

男から手渡されたものの使い方が分からなかった浅倉だったが、

表面に刻まれたコブラのような刻印を睨んだ瞬間、頭が冴え渡った。

今まで一度も見たことが無いはずのこの物体の、使い道と役割を把握した。

普通なら常軌を逸した出来事に恐怖するはずなのだが、浅倉は違う。

むしろ、この物体が『闘うための道具』であることを知ってさらに昂る。

手にした物体の全てを理解した浅倉は窓ガラスにその物体を掲げ、

この世の全てに対して己の存在を刻み付けるかのように荒々しく吠えた。

 

「いいぜ、こういうのを待ってたんだァ…………変身‼」

 

そしてその日、浅倉のいた刑務所に緊急事態のサイレンが鳴り響き、

翌日のニュースで浅倉 威の脱獄が報道された。

 

 

 

 








いかがだったでしょうか?

ライダーバトルに新たな戦士が誕生!
誰もが願いをかける闘いに、闘う事が願いの戦士が参戦‼

仮面ライダー龍騎を知らない方の為にお伝えしておきますが、
このライダーは本当に仮面ライダーの歴史を覆した上に
塗り替えてしまった史上最『悪の仮面ライダー』なのです。


果たして明久はBクラス戦に勝利出来るのか!
Cクラスの不穏な動きに隠された秘密とは!
そして、新たなライダーがバトルをどう左右するのか‼

闘わなければ生き残れない次回を、お楽しみに‼
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