僕と契約と一つの願い   作:萃夢想天

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大変長らくお待たせしてしまいました‼
さっさと書ければよかったんですが、スランプってやつでして。
その影響がまだ残っているのかどうか定かではありませんが、
今回はいつもより少しだけ短くなっていると思います。

多くの読者の方々にご迷惑と多大なる期待を、
これからはそれらをキチンと受け止めて邁進いたします!


それでは、どうぞ!


問14「僕と激怒と戦争終結」

 

 

 

 

 

僕は未だかつて、こんなにも怒りを覚えた経験は無かったかもしれない。

そう思えるほどに今の僕は怒りという炎で自分自身を焼き焦がしそうになっている。

無意識の内に歯を噛み締め、両手を拳へと変え、一歩ずつ踏みしめる足に力がこもる。

 

FクラスとBクラスの誰もが校舎内で互いの点数(いのち)を削り合う戦場の真っ只中で僕は、

見てはならないものを見た。いや、見てしまったというほうが正しいのかもしれない。

何故ならそれは本来、一対一で本人の意思の元にやり取りされるべきものだったのに、

それを悪用し、悪用される現場をこの目で見てしまったのだからそう思っても仕方ない。

 

あの男、Bクラス代表 根本 恭二。

 

奴だけは絶対に許すことは出来ない。

彼は僕のような非道徳的な人間にも分かる、『最低の行為』を働いたんだ。

自分の目的のために他人の純粋な思いを踏みにじる、人間以下のクズ野郎。

そんな奴に対して、僕は今怒りの炎を燃え上がらせているんだ!

 

 

「雄二ッ‼」

 

「あん? どした明久、脱走か? そんならチョキで眼球シバくぞ」

 

 

溢れ出る怒りをそのままに僕は大事な前線から本陣であるFクラス教室へと戻って来て、

作戦の遂行状況や戦況などの情報をまとめ上げている総大将の雄二の名を叫ぶように呼んだ。

名を呼ばれた彼は真っ先に物騒な単語を吐き出して茶化してきたけど、生憎今はそんなことに

付き合っていられるほど余裕のある精神状態じゃないんだ。

 

 

「話があるんだ」

 

「…………分かった、とりあえず聞こうか」

 

 

雄二も僕の様子の違いに気付いて何かを察してくれたのか、

手に付けていた作業を中断して僕の方へと向き直って話を聞く体勢をとってくれた。

その行動に素直にありがたさを感じて、僕も顔つきを真面目なものへと変えて話す。

 

 

「雄二、今回の戦争の終結についてなんだけど」

 

「終結? それは終わった後の話か? それとも終わらせ方そのものか?」

 

「………流石、やっぱり分かっちゃうんだね」

 

「当たり前だろ。んで、今の終わらせ方に不満でもあるのか?」

 

 

雄二の頭の回転の速さに舌を巻くように驚きはしたけどすぐに意識を戻して

僕自身の考えていることを彼に伝えようとする。

 

「ううん。不満とかは無いんだけど、提案………というかお願いがあるんだ」

 

「お願い、ねぇ。まあ昨日の失態もあるし、一つか二つ程度なら可能な範囲内でのみ

聞いてやるとしよう。それで、お前は何がお望みなんだ明久」

 

「……………根本を、どうにか暗殺出来ないかな」

 

「暗殺だと? なんでまたそんな回りくどい手なんか」

 

「そこを何とか‼ 理由は詳しく言えないんだけど、コレは僕一人の問題じゃなくて、

もしも根本を多くの人の目の前で殺れたとしても、困る人がいるんだよ‼」

 

「…………………………」

 

 

本当ならここまで僕なんかの話を真摯に聞いてくれている雄二にだけでも話すべきじゃ

ないかとは思ったけど、この件に関してだけはどうしても、誰にも言えない。

だってこれは僕のワガママでしかないんだから。

昔好きだった女の子の、姫路さんの想いを利用する根本が許せないという個人的な理由で

クラス全体を指揮する立場の男に無理やりこちらの意見を強要する、僕がしてるのはそれだ。

 

この世界は残酷で、救いなんて無いのかもしれない。

でも、もしそうだとしても、彼女には幸せになってもらいたいと切に思う。

人を殺すことでしか自分の願いを叶えられない僕とは違って、彼女は自分の意思で願いや夢を

叶えることができるかもしれない可能性を秘めているんだから。

 

 

「お願いだよ雄二!」

 

「……………………」

 

 

険しい顔つきでひたすら考えを巡らせている雄二に再度頼み込む。

どうしても、彼女の想いを踏みにじって利用している奴だけは許せない。

個人的な理由なのは分かってるけど、それでも、僕は見て見ぬふりは出来ないんだ。

しばらく思案していた雄二はやがてゆっくりと顔を上げて僕と目線を合わせて語った。

 

 

「分かった、いいだろう。その件は俺の方で何とかしてやる」

 

「本当⁉」

 

「ああ。昨日の件もあるし、何よりお前が無茶を言う時は大概他人の為だしな」

 

「うぇ⁉」

 

「ほれみろ、大当たりじゃねえか。まあ深入りしてほしくねえから詳しいことも

何も言わないんだろうけどな。それでもお前の考えることぐらい分かるっつの」

 

本当にコイツは。なんて頼りになる男なんだ、雄二のくせに。

悔しいことにこの男は僕に無い物をたくさん持っている。

冷静な判断力も、優秀な体格も、明晰な頭脳も、堂々たる態度も、何もかも。

その上こうして他人を思いやれる優しさまで備わってるんだから手に負えないよ。

でも、今度ばかりはそのスペックに感謝しなくちゃだね。

 

「ありがとう、雄二」

 

「礼ならBクラスに勝ってからほざけバーカ。んで、まだ何かあるか?」

 

 

僕の心からの感謝の言葉を再び茶化すようにしてけなして話を再開しようとする雄二。

若干照れくさそうに見えたのは多分気のせいじゃないんだろうけど、それは後だ。

今はとにかくただでさえ厳しいこの現状に僕が無理やり加えた足枷をどうにかする

方法と、それを上手く利用して彼女の想いを奪い返す算段を立てないと。

必死になって考えた僕は雄二の言葉の続きから話を返す。

 

「それともう一つだけ。姫路さんを今回の戦闘から外してあげてほしい」

 

「理由と、メリットを言ってみろ」

 

「理由は言えない。メリットの方は、その、ゴメン」

 

「……………まあ普通に考えりゃメリットなんざあるわけねぇよな」

 

 

二人して目線を下げてFクラスの小汚い腐りかけた木製の床を見つめてため息をつく。

そりゃそうさ、ウチの最高戦力の姫路さんを戦線から下げて得られるメリットなんて

おそらく無いに等しいのだろう。それは雄二でなくても誰にでも分かる事だよ。

それでも今回は、メリットや勝算うんぬんの話じゃないんだ。これは僕のワガママで、

そのせいでこのクラスにいるみんなのこれからを大きく左右してしまう事になりかねない。

だとしても、こればっかりは譲れない。

再び熱くなっていく頭をどうにか冷ましながら話を続ける。

するともう一度深い溜め息をついた雄二が右手の人差し指を立てて僕に見せながら呟いた。

 

 

「一つ、条件がある」

 

「条件?」

 

 

顔を上げながら雄二が見せたのは、もはや僕にとってはお馴染みの表情だった。

 

 

「条件って言うより、命令だよね」

 

「似たようなもんだ。いいか、姫路をお前の要望通り戦線から下げさせてやる。

だが代わりに姫路が果たすはずだった役割をお前が成し遂げろ。何をしても構わん」

 

「僕が、姫路さんの代わりを?」

 

「当たり前だろうが。コッチは勝ち目をわざわざ戦線から外すんだぞ。

そのふざけた発案をした奴が責任を取るのはむしろ当然の事だと思うが?」

 

「…………いいよ、やってみせる!」

 

「よく言った」

 

 

雄二から提唱された代案(もとい命令)に僕は乗った。

Fクラス唯一の勝機といっても過言じゃないほどの戦力の代役が僕なんかに

勤まるのかどうかという不安は残るけれど、ここまできたならやるしかない!

 

 

「それで、僕は具体的に何したらいいの?」

 

「タイミングを見計らって根本を殺れ。科目は何でもいい」

 

「他の皆のフォローとかは?」

 

「皆無だ。加えて言うなら、Bクラスの教室の出入り口の状況は変わってない」

 

 

聞くべき話と情報を聞き終えて僕の額に冷や汗が浮き上がって来る。

これは予想していたよりもハードな展開になるかもしれない。

現在の状況は、Bクラスの二つある出入り口の二カ所で戦闘が行われていて、

場所的な問題から、戦闘は常に一対一の実力勝負に持ち込まれているらしい。

そんな中で教室の奥に陣取っている根本の首を狩るには、圧倒的な個の火力が必要不可欠だ。

そう、それこそ、姫路さんのような圧倒的かつ絶対的な火力が。

 

 

「もしも失敗したら?」

 

「失敗はするな。何が何でも成功させろ」

 

いつも以上に力のこもった声に少しだけ恐れが生じる。

間違いなく、ここで負けたらそのまま戦争は僕らの敗北で幕が下りる結果になるだろう。

本当に僕なんかがそんな作戦の中核を担って大丈夫なんだろうか。

自分で言い出したこととはいえ、僕は『観察処分者』。学園お墨付きの大馬鹿なのに。

なんて事を考えていると雄二がダルそうに立ち上がって教室の扉を開けて出ていこうとした。

 

 

「雄二、どこ行くの?」

 

「Dクラスに指示を出しに行く。例の件でな」

 

「例の件…………ああ、エアコンの室外機か」

 

「おう。そろそろあの子羊ちゃんを生贄の祭壇に祭り上げる頃だと踏んでな」

 

言い方はかなりアレだけど、雄二はそう言い残して僕を置いて行ってしまう。

あの室外機を使って本当にBクラス戦で優位を得ることが出来るんだろうか。

 

「…………そんな事、僕が考えても仕方ないか」

 

 

自嘲気味に笑ってから僕は目の前の事に集中する。

僕がいくら考えても分からない事は、考えて分かる奴に任せておけばいい。

それよりも今は、僕にしか出来ない仕事を成し遂げることが先決だと言い聞かせる。

 

 

「でも、どうしたらいいのかな」

 

 

圧倒的に火力が足りてない中で、なおかつ僕が求めるのは一対一。

どれほど雄二や他の皆が上手くセッティングしてくれたとしても勝てる見込みなんて

見当たらないし、そもそも僕が望んだ暗殺すら決行出来るかも不明瞭なのに。

 

それでも、やるしかない。

僕のワガママで動き始めた話だ、僕自身が責任を持って決着を着ける!

 

「___________あ」

 

 

決着を着ける、というところまで考えた直後、僕の脳内に電流が迸った。

土壇場になって頭に浮かんできた急造の作戦。もちろん成功する試しなんかない。

むしろデメリットの方が簡単に見つかるくらいの杜撰な作戦だけど、賭けるしかない。

 

覚悟が必要だ。文字通りに、あの男の喉元へと続く『道を切り開く覚悟』が。

 

 

「やってやる、絶対に勝って姫路さんの想いを取り戻してみせる‼」

 

 

穴だらけでも方法は見つけた。限りなく薄く小さい勝算もあることが分かった。

気合と根性さえあればどうにかなる問題なら、やらない理由はどこにもない。

今の僕が持つ全力を賭して、今の僕にやれる精いっぱいの行動をするだけだ!

 

 

「武藤君、飯田君! それと八嶋君も! 悪いけど協力してほしいことがある‼」

 

 

思い立った僕はすぐにFクラスを飛び出して戦線の中を駆け抜ける。

その途中で出会った軽傷の三人に声をかけて同行してくれるように頼み込む。

三人は最初こそいきなりの僕の言葉に戸惑ったものの、断る事無く承諾してくれた。

時間がないから感謝の言葉を省きつつ、僕たちは一路、目的の場所へと急いだ。

 

この戦争のカギを握る、新たな戦いの区域(ステージ)を進むために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃ一体何の冗談だよ吉井!」

 

「Bクラスから出てくる敵兵を全員押し返せだと⁉」

 

「うん。僕が作戦を完了させるほんの数分の間だけでいいんだ」

 

「…………何をする気だ、吉井」

 

「詳しくは話せない。それでも、やってもらいたいんだ」

 

「「「………………」」」

 

 

Fクラスを飛び出した僕と同行した三人がやって来たのは、Dクラスの教室。

Bクラス前での戦線の中を掻い潜ってどうにか辿り着いた僕らはすぐさま作戦を

決行するために、着いて来てもらった三人にしてほしい役割を語る。

僕が三人に求めたのは、数分間のこの教室の護衛だった。

無論教室内にDクラス生徒の姿は見受けられない。というのも、それには理由があった。

 

 

「ゴメンね平賀君、無理言っちゃって」

 

「仕方ないさ吉井。俺たちはお前たちに負けたんだ、言う事は聞かなきゃならない」

 

「本当にありがとう。助かるよ!」

 

「いいって。ただまぁ、一つだけ言うとしたら…………派手にやり過ぎるなよ?」

 

 

Fクラスの四人のそばで計算高い笑みを浮かべてサムズアップをしているのは、

このDクラスの代表であり、僕らの初めての試験召喚戦争の相手でもあった平賀君だ。

僕は彼に頼み込んで『ある事をする了承』を得て、作戦の決行を皆に伝えていた。

本当ならこんな事頼めないのに、彼は本当に良い人柄というか性格してるというか。

とにかく、これで必要な条件は全て整えた事になる。後は行動に移すのみ。

 

 

「善処するよ。それじゃあ皆、お願いね!」

 

 

平賀君からの忠告を受け取った後で作戦の開始を仲間たちに告げる。

そしてこれからすることは危ないから避難していた方がいいと真実味を帯びさせた話を

して、平賀君にも教室から出て行ってもらった。

他人の目はどこにもない。今ならば、やれる!

 

 

「本当ならこんな事に使いたくなかったけど、しょうがない‼」

 

誰もが自分の持てる『知識』を使って戦う戦場に、こんな場違いな力なんて持ち込みたく

なかったんだけど、この際下手なプライドはかなぐり捨てて勝利をもぎ取る!

僕は普段からカバンの中に忍ばせている布でくるんだ大きなガラスの破片を手に取り、

それをDクラスの机の上に置いて、そこに同じくカバンから一緒に持ってきたカードデッキを

かざして、他人に見せない僕のもう一つの姿を呼び出す儀式を始める。

 

鏡にかざされたカードデッキが一瞬光り、鏡の中に映っている僕の腰辺りに無骨な鈍色の

ベルトが独りでに装着され、それがいつの間にか現実の僕自身にも反映される。

出現したベルトの感触を確かめ、僕は一度息を吐き切ってから思いっきり息を吸いこんだ。

そしてデッキをかざした左手を腰元に、右手を左肩の前まで持ってきて素早く突き出して叫ぶ。

 

「変身‼」

 

 

掛け声と同時にデッキをベルト中央のくぼみに装填して工程を完了し、両手を握りしめる。

直後に鏡の中から龍騎の鎧が出現して回転しながら僕の体に張り付き、装着を一瞬で終える。

わずかな閃光の後にDクラス内に現れたのは、僕のもう一つの姿こと、赤い騎士であった。

 

 

「っしゃあ‼」

 

 

変身と同時に左手に装着されたドラグバイザーを仮面の前まで持ってきて再度強く握り直す。

もはやクセのようになってしまったポーズを終えてからすぐさまデッキからカードを一枚

取り出してドラグバイザーの機構を動かして読み込み口に挿入してカードを読み込ませる。

瞬間、僕の左手の龍から聞き慣れた電子音声が流れ出た。

 

 

【STRIKE VENT】

 

 

電子音声が流れるのとほぼ同時にどこからともなくやって来たもう一つの龍の頭部が

僕の右手に装着され、即座にその口内に超高温の炎を生成させて溜め込む。

アレ、でも待てよ?

ミラーモンスターとの戦闘ならともかく、学校でのコレはかなりマズいはずだ。

それなら威力を可能な限り弱めて何回かに分けて撃ちこめばいいんじゃないだろうか?

そうだ、それでいこう!

 

 

「はぁぁ……………」

 

 

右手に召喚したドラグクローの内部に充填している炎の圧力を少し調節して威力を下げて

せいぜい二発か三発で壊せるんじゃないかくらいの大きさまで手加減してみる。

すると僕の意思が伝わったのか、大きく膨れ上がるだけだった炎の塊が徐々に揺らいで

小さくなり、普段の半分程度の火炎球になってドラグクローの中で安定し始めた。

 

よし、これなら多分_________いける‼

 

燃え盛る火炎球を右手に備え、僕はいつもの工程を慣れたように済ませる。

右手と一緒に右足を大きく後ろに下げて、左手で目標を捉えて狙いを定める。

そしてそこから雄叫びと共に右手を大きく突き出して溜めた火炎球を一気に放つ!

 

 

「おぉぉ…………りゃあぁぁっ‼」

 

 

放たれた火炎球は一直線にDクラスの黒板へと突き進み、見事に直撃した。

威力を抑えたにも関わらず、盛大な炎と煙、さらには派手な爆砕音を巻き上げて

黒板の中央に大きな円形の焼け跡を刻みつけることに成功した。

 

けれど、まだ足りない。

 

再度先程と全く同じ工程を繰り返して右手に炎を溜めて射出する。

二度目の火炎球も全く同じ速度でほぼ同じ場所に着弾し、より大きな爪痕を残す。

けどまだ、もう少し足りない。

 

 

「らぁぁ‼」

 

 

二度でダメなら三度やるまで!

 

再び同じ工程を繰り返し、三発目の火炎球を黒板に向けて放つ。

火の粉を噴き上げながら猛進する弾丸はそれまでと全く同じ軌道を描きながら

前方にある黒板へと進んでいき___________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らいい加減諦めろっての。昨日からバカの一つ覚えみてぇに出入り口に

集まって無駄な抵抗続けやがって。暑苦しくて仕方ねぇぜ」

 

「どうした、貧弱なBクラス代表様はもうギブアップ宣言か?」

 

「はァ? ギブアップすんのはお前らだろうが」

 

「生憎と無用な心配だな」

 

「へーそうかい、何やら頼みの綱の姫路さんの調子が悪いらしいじゃねぇか?

今回の戦争で唯一勝てる勝機をわざわざ下げなきゃならんほどになぁ」

 

「……………そうか、そういうことか」

 

「あぁ?」

 

「いや、何でもねーよ。お前ら相手じゃ姫路を出すほどでもないって事だ」

 

「抜かせFクラス如きが! 口だけはいつも達者だよなぁ、負け組代表!」

 

「負け組? ソレがもしFクラスの事を言ってるんなら、時代遅れだな」

 

「何を言って…………チッ、さっきからドンドンとうるせぇな。

Dクラスの連中か? いったい何をやってんだアイツら」

 

「さぁな。人望と度胸と理性と知性の足りないご自慢のキノコ頭で考えてみろよ」

 

「コイツッ…………まあいいさ、テメェらはもうじき終わりだ。

オイお前ら! さっさとこのバカ共を一気に廊下まで押し出せ‼」

 

「………そろそろか。お前ら、一旦下がって体勢を立て直す! 後退だ‼」

 

「ハッ! 言うだけ言って結局撤退か! ざまぁないな坂本‼」

 

「まあ見てろ根本。戦争の素晴らしい幕引きを飾る最高のキャスティングだ。

もうすぐ主賓の登場だぜ? お前の首でも差し出して待ってなくていいのかよ?」

 

「ほざけFクラスが‼ 撤退なんかさせるな、廊下で全員討ち取れ‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっさり引っかかりやがって___________後は任せたぞ、明久!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁぁーーっしゃぁーー‼」

 

豪快な音を立てながら僕の目の前にあったDクラスの黒板が後ろの壁ごと

粉々に砕け散り、その向こう側にある景色が鮮明に広がりつつあった。

そう、僕が建てた作戦は、Bクラスへと続く新たな道を開通することだった。

 

他の誰でもない、学園最高峰の大馬鹿(かんさつしょぶんしゃ)の僕にしか編み出せない、究極の解答。

普通に考えればBクラスに行きたいのなら廊下から教室に入るしかない。

けれど僕はこの学園の教室の見取り図を思い出して今回の作戦を思いついたんだ。

 

誰にも出来ない方法で、僕にしか出来ないやり方で、突破口をブチ破る。

 

 

「ハァァッ⁉」

 

崩れた壁の向こう側から埃と煙に紛れて根本の引き攣った声が聞こえてきた。

僕はすぐさま腰のベルトからカードデッキを取り外して変身を解除して元の僕の

姿に戻って、開通した穴を身軽に通って一人になったBクラスの総大将と向かい合う。

 

 

「くたばれ腐れ外道ォォオ‼」

 

 

即座に教室の後ろの出入り口で周りと同じように呆気にとられて立ち尽くしていた

英語の遠藤先生を見つけて、先生の召喚フィールドがまだ生きていることを確認し、

僕は僕自身の手で決着を着けようと召喚獣を喚び出した。

 

 

試験召喚(サモン)‼」

 

「くっ、こ、コイツ‼」

「下がれ根本、俺がやる! 遠藤先生、Bクラス山本が受けます!」

召喚された僕の改造学ランと木刀装備の召喚獣が根本の喉元へと突貫しようとした直後、

どこからともなく現れたBクラスの近衛部隊の援護が間に入って邪魔をしてきた。

あと一歩のところで、こんなところで!

 

 

「は、はは! 驚かせやがって! 残念だったな、ここまでだ吉井‼」

 

呆然と立ち尽くしていた醜態を取り繕うように笑い始めた根本。

彼は自分の目の前に現れた一人の近衛のおかげで随分といい気になっているようだ。

でも、本当に僕だけを見てていいのかな?

まだこの戦争の『本当の主賓』は、これからやってくるというのに。

 

 

 

 

突然だけど、ここで各教科の特性について話しておこうと思う。

 

 

 

各教科にはもちろん、それぞれに担当の教師がいて、その先生によってテストの

結果にも様々な特徴が現れたりすることがある。

 

例えば、数学の木内先生は採点が早い。

例えば、世界史の田中先生は採点の仕方が甘い。

例えば、今この場にいる英語の遠藤先生はある程度の事は寛容に受け取ってくれる。

 

では、保健体育についてはどうだろうか。

 

保健体育は採点が早いわけでも、採点の仕方が甘いわけでもない。

召喚した召喚獣が遠距離攻撃することが出来たりとか、騙しやすい先生だとか、

そういうわけでもない。ならば、保健体育の特性とは何なのか。

 

それは、教師が保健体育であるが故の__________圧倒的機動力。

 

 

出入口を多くの人で埋め尽くされ、四月上旬にしては暖かくなり過ぎた教室。

そこに唐突にガラスの破砕音が響き渡り、二人分の着地音が重なり合って聞こえた。

理由は不明だが、動かなくなったエアコンの代わりに(・・・・・・・・・・・・・・・・)涼を得るために開け放たれた窓。

そこへ屋上からロープを垂らしてさながらクライディングのように二人の人影が飛び込み、

再び呆然と立ち尽くしてしまっている根本の眼前へと降り立った。

 

「………Fクラス、土屋 康太」

 

 

窓からダイナミックに参戦したのは、我らが補習担当兼保健体育教諭の鉄人を

引き連れたFクラスきっての保健体育の申し子、寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だった。

 

 

「キ、キサマぁ………!」

 

「………Bクラス根本 恭二に、保健体育勝負を申し込む」

 

「ムッツリィニーーーッ‼‼」

 

「………試験召喚」

 

 

『Fクラス 土屋 康太_______保健体育 441点』

VS

『Bクラス 根本 恭二_______保健体育 203点』

 

幾何学的な紋様から出現した二体の召喚獣が、互いを睨み合う。

 

ムッツリーニの召喚獣は手にした小太刀を人間の目では追い切れぬ速度で一閃し、

たったの一瞬、たったの一撃で根本の召喚獣の首を切断し、血飛沫を上げさせた。

 

 

 

今ここに、Bクラス戦は終結した。

 

 

 














いかがだったでしょうか?
やっぱり締めはムッツリーニが持っていきました。

さぁ、ここからが皆さんお待ちかねのキノコ制裁タイムの始まりです。
一体次回はどんな事になっちゃうんでしょうかねぇ?


それでは皆様、戦わなければ生き残れない次回をお楽しみに‼
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