どうも皆様、最近「仮面ライダーW」を見直して泣いた萃夢想天です。
やっぱり平成2期のカウントダウン世代ライダーは良作ですよ!
中でもWは最高です。ライダーファンならばこの気持ちが分かるかと。
閑話休題
今回は前回短くなってしまった分も込みで、頑張るつもりです。
こちらもなるべく早めにストーリーを展開させないとですからね。
それでは、どうぞ!
「AクラスとFクラスの試験召喚戦争は、3対2でAクラスの勝利です」
雄二と霧島さんから遅れるようにAクラス教室に入ってきた高橋先生の、締めの台詞。
厳格な雰囲気さえ伝わってくる言い方が、その内容をより顕著に表しているように聞こえた。
学年主任の勝利宣言に、Aクラスの面々が打って変わって喜びの色を湛え始め、それとは逆に
僕たちFクラスのみんなは波一つない湖の水面のように静まり返ってしまう。
その中心で力なく膝を屈したFクラス大将に、勝戦の功労者がゆったり近付き、声をかける。
「………雄二、私の勝ち」
「……………殺せ」
Aクラスの総大将である霧島さんの言葉を受けて、雄二は顔を上げることなく呟いた。
こんな結果になってしまった以上、その言葉を聞いて冷静でいられる者は少なかった。
『上等だ! 言われなくても殺してやる‼』
『口先だけのペテン野郎が‼』
『しょうこたんとお話できるなんて羨ましいぞオラァ‼』
手にするはずだった栄光を奪われ、Fクラスの何名かはそのやるせなさを雄二にぶつけようと
拳をつくって殴りかかろうとする。そしてその行為を止められる者はこの場にいない。
そう思っていた。
『がっ!』
『うおおっ⁉』
『な、なんだ⁉』
「いけませんよ皆さん、自分たちの敗北を一人の責任だと押し付けては。
それに、君たちはここまで苦楽を共にした仲間を、友を本気で傷付けたいのですか?」
先行して雄二を殴ろうと駆け出した三人が、横合いから距離を詰めてきた初老の先生の
鮮やかな武術によって、成す術もなく教室の床に叩きつけられていた。何者だ、あの人。
「流石は元陸軍教官ですね、久保田先生」
「昔の事ですよ、高橋先生」
一連の出来事を見ていた高橋先生が、初老の先生を手放しで褒め称えると、評価を受けた
久保田先生はまるでそれが何でもない様なことだと言わんばかりの態度で佇まいを整える。
サラッと元陸軍とか聞こえたけど、この学校にはそんな出身の人材が流れているのか。
教師になるには必要のないはずの技能を備えたAクラス副担任の存在に愕然としていると、
ふいに教室のドアが丁寧に開かれて、その奥からスーツ姿の偉丈夫が現れた。
「いえ、流石は師範代。見事な御手前でした」
「西村君………いえ、西村先生。ここでは私も、一介の教師なんですから」
「ハッ! 失礼しました、久保田先生!」
Aクラスに足音を響かせてやってきたのは、まさかの鉄人こと西村先生だった。
保健体育教諭がなんでこんなところにいるんだろう。というか、師範代ってどゆこと?
あまりに突然な状況の変化に驚く僕らだったが、直後に更なる驚愕に見舞われた。
「さて、
『『『『『_____________え?』』』』』
「まずは業務連絡だ。お前らが今回戦争に負けた結果、当然ながら設備のランクが下げられる
ことになっていたんだが、元々Fクラスは最下層。これ以上の品質低下はモラルの問題等に
発展し、色々と教育関係上面倒が起こる。そこで、聡明な学園長はある結論に至った」
「……………………」
「教室設備の低下が出来ないのなら、担当教師自体を変更すれば万事解決できるとな!
おめでとう諸君! これから進級までの一年間、死に物狂いで俺が勉強をさせてやる‼」
『『『『『何だとぉッ‼⁉』』』』』
かくして、新学期早々に僕らが第2学年全体に巻き起こした波乱は、ひとまず幕を下ろす。
そして僕らはその代償に、この日から約一年もの間、鉄拳制裁に怯える日常を与えられた。
Aクラスとの試召戦争が最悪の結末に終わってから数時間後、時刻は放課後。
その日の授業日程が終了し、学生である僕らを学校に縛り付ける要因は全て無くなり、
それぞれ部活に勤しむなり自宅への帰路についたりと、各々の時間を見つけていた。
もちろんそれは僕も同じで、一週間と数日で慣れた二人での下校が僕を待っていた。
「あ、友香さん」
「もう、遅いじゃない明久君。放課後始まってから30分経ってるのよ?」
「ご、ゴメン。実はちょっと色々あったからさ」
学園の正門前で僕の事を待ってくれていた友香さんに、形だけの謝罪を告げる。
僕が遅れた理由は、単なる制裁だったので、流石にソレを口にするのは憚られたからだ。
手や袖口にあの男の返り血などが付いていないかを確かめ、赤い点を指でこすり消して、
ついでに背後からこの状況を誤解して殺害を図る者の有無も確認し、今度こそ安堵する。
今のところ尾行や監視の気配は感じられないから、このまま帰っても大丈夫だろう。
「色々って?」
「な、何でもないよ! 待たせちゃったし、早く行こう!」
「………ま、いいわ。明久君の隠し事が多いのは今更だしね」
何か言いたげだった友香さんも、最後に皮肉を一つ吐き出すだけに留めてくれた。
そこに込められているのはおそらく、というか間違いなく僕のもう一つの姿の事だろう。
ミラーワールドの事、ミラーモンスターの事。そして、仮面ライダーの事。
それら全部を含めての言葉であると感じて、苦笑いを浮かべる僕はぴったりと横に
張り付いている友香さんを連れ立って、通学路を朝とは逆向きで歩き出した。
「………ねぇ、明久君」
「ん? 何?」
僕ら二人が学園を出てから十分ほど後、人通りもまばらになった通り道に差し掛かると、
友香さんが横にいる僕に対してどこか、おそるおそるというような感じで話しかけてきた。
いつもと少し違う態度に気付いた僕だけど、特別どうこうすることもないので普段通りに
対応した。するとやはり予想が的中したのか、バツが悪そうに彼女が言葉を紡ぎだした。
「その、聞いたんだ、今日の事。Aクラスとの戦争の…………残念だったわね」
「…………うん」
彼女が口にしたのは、今日僕らが起こした戦争の結果について。
こちらを気遣うような話し方をしたのも、きっとそのことを知っていたからだろう。
そこでふと、僕はあることを思い出した。
今日の午前中にAクラスへと宣戦布告に出向いた際、話題に上がった"とある事"。
あの戦争と途中で現れたモンスターと謎のライダーのせいで忘れかけていたけど、
偶然ながら今思い出せて良かったと心から思った。友香さんが近くにいる、今で。
今度は忘れる前に口に出しておこうと、隣の彼女に顔を向けて疑問をぶつける。
「でもそれより、聞きたいことがあるんだ。いいよね、友香さん」
「え、ちょっと、いきなり何よ?」
「…………Aクラスが僕らと戦争する前に、Cクラスとも戦争してたって聞いたんだ」
「__________っ」
「教えてよ友香さん。どうして、Aクラスに戦争を仕掛けたの?」
僕の一言を聞いた友香さんの表情が、先程の浮かないものから緊張したものに変わった。
彼女のその反応を見た瞬間、僕自身が口にしたことが本当であると裏付けされた。
今日から数えて一昨日、つまり今日が水曜日だから月曜日の朝、彼女は自身の所属する
Cクラスの生徒を率いてAクラスへと乗り込み、宣戦布告をして戦争に臨んだという。
しかもその勝負の方式も彼女が考案した、教室内のみ行われるものへと変化した。
新旧二つの校舎を使う従来の戦争であれば、いくらCクラスでも勝ち目はあったはずだ。
それなのに、彼女は代表としてそれを捨ててまで、Aクラスの教室内で全てを決した。
僕はバカだけど、これがどういう意味を持つのか分からないほど、マヌケじゃない。
「もしかして、友香さんは」
自分の頭の中に浮かび上がった推理を語ろうとしたが、それは彼女の言葉に阻まれる。
「戦争を仕掛けた理由? そんなの、勝つ算段があったからに決まってるでしょ」
「えっ…………で、でも」
「でもも何も、あそこまで状況が整えられていたら、動かないわけないでしょう?
新学期開始と同時に最底辺のFクラスがDクラスを撃破して、Bクラスも呑み込んだ。
Aクラス以外に残っているのは、私たちCクラスと実力差が拮抗しているEクラスだけ。
明久君のクラスの代表……坂本君だっけ? 彼って実はAクラス入りできたんじゃない?」
すました顔で毅然と言い放つ友香さんに、僕はなぜだか奇妙なズレのようなものを感じた。
何というかこう、何かを隠そうとしているみたいな、虚勢を張っているかに思える態度を
無理矢理つくっているとでも言うような気がして、今度は足を止めて彼女を見つめる。
僕の足が止まったのを見て彼女もまた、同じく歩を止めて髪を手でいじりながら続けた。
「きっとDクラスとBクラスを狙って、私たちとEクラスを残しておいたのは作戦のため。
Fクラスが目指していた打倒Aクラスのために練っていた、別の方法ってところかしら」
「ど、どういうこと?」
「私たちを倒しておかなかったのは、いざという時にAクラスにぶつけるため。
そうしてAクラスを少しでも消耗させておいてから、切り込む策があったんでしょう。
逆にEクラスを倒しておかなかったのは、念のためにかけておいた保険だと思うわ。
Aクラスとの戦争が予定より早まった場合、裏で情報を操作してEクラスを挑発して、
向こうからこちらに宣戦布告をさせて戦争を始める。そうすればAクラスと戦うための策を
戦争中に考えられる。まぁこれをすると、Aクラスにも時間を与えることになるけどね」
僕にも分かるような懇切丁寧な解説を繰り広げた彼女は、毛先をいじる行為を中断して
視線を目の前にいる僕へと向け直し、強い意志を感じさせる瞳で締めくくった。
「そこまでお膳立てされてて、乗らないわけがないでしょう?」
一から十まで知り尽くしたかのような物言いに、僕は危うく納得しかけてしまう。
もちろん彼女の話には筋が通っていたし、雄二の策は彼女の読んだ通りだとも思った。
少なくとも友香さんがCクラスの代表として、動く理由は充分だったと理解はできた。
けど違う。彼女がAクラスと戦ったのは、そんな建前みたいな理由だからじゃない。
まるで確証はないけれど、僕の心は確かにそう叫んでいた。
友香さんの事を知ったのは、ここ数週間の話で、知らないことの方が多い。
でもきっと、今回の件は彼女自身が口にしたものとは違う理由によるものだと思った。
余計なことだと心の片隅で思いながらも、僕はそれを確かめずにはいられなくて口を出す。
「確かに友香さんの言うとおりだ。でも、それだけじゃないんでしょ?」
「な、なんで、そう思うのよ」
「べ、別に友香さんのことを信じてないわけじゃないんだけど………」
「けど、なに?」
「…………友香さん、僕よりも悔しそうな顔して話してたから」
「ッ!」
戦争を仕掛けた理由を語っていた彼女の顔は、ずっと不快気に歪んでいたをの見ていた。
しかも、彼女は僕たちFクラスがAクラスに勝つための策を語っている時に、自分たち
Cクラスもその策の一つとして利用されることを、何とも思っていない風に語ったのだ。
僕の知る友香さんなら、まずいいように使われることを好まない性格のはずなのに、
その陰りすらも見せない口調で話を進めていたから、あの違和感に気付けたんだろう。
表情を指摘された彼女は、即座に僕から顔を逸らして見せないようにした。
けどそれは今更過ぎる。夕暮れ時でも分かるくらい、紅潮した顔がハッキリと見えた。
もちろんそれを口にしたら彼女の機嫌を損ねる為、言わずに記憶の中に留めたけど。
「ねぇ、教えてよ友香さん。本当に、Aクラスに勝つためだけに、宣戦布告したの?」
「う…………うぅ……」
顔を僕から逸らしたままの彼女に再度問いかける。しかし彼女は言葉を返さない。
代わりに肩をわなわなと震わせて、何かを言いかけてはそれを止めてを繰り返した結果、
言葉にならない呻き声を発し続けるだけとなってしまい、話はそこで途切れた。
これ以上しつこくすると、本当に機嫌が悪くなると判断して、話題を打ち切ろうとして
何か別の事でも話そうかと思い始めた直後、予想だにしなかったことが起きた。
「うぐっ‼」
「ん……あ、明久君? ちょっと、ねぇ大丈夫⁉」
「頭が…………クソ! この感じは‼」
時刻は午後の17時をとっくに過ぎた頃、街並みに明かりが灯され始める時間帯。
西の空にゆっくりと陽が沈んでいくその反対側で、月が昇る前の暗闇が空を染める。
澄み渡るような青や燃えるような橙はそこにはなく、あるのは純粋で深い黒一色のみ。
まるでその奥には人を飲み込む化け物がいるかの如く、不気味な雰囲気を醸し出している。
そして僕は知っている。その闇に近い鏡写しの世界に、人を飲み込める化け物がいることを。
耳鳴りの音が脳内に直接響くような感覚に襲われ、直後にその残響が大きくなり始める。
ズキズキと痛みが増してくる感覚に苛立ちが募り、膨れ上がる反響の根源を睨みつける。
僕の敵意のこもった視線は、目の前にいる友香さんの後ろ、数百メートル先に居を構えた
24時間営業のコンビニエンスストア_______そのガラスによく似た自動ドアに突き刺さった。
(あそこから来る………でも、速い‼)
まるで警報機のように頭の中で鳴り続ける独特の警鐘が、敵の情報を細やかに伝えてくる。
ライダーになった人間は、契約したモンスターと一部感覚器官が同調するらしく、
エサを求め続けるモンスターの嗅覚などの感覚が、ダイレクトに契約者に反映するようだ。
今回もそれによってモンスターが付近にいることを知覚できたんだけど、何かがおかしい。
普通なら徐々に、距離が縮まるたびに大きくなる反響が、今は心拍数並の速度で返ってくる。
それはつまり、移動手段が歩行でも疾走でもなく、飛行に近い速度であるということだ。
「マズイ………友香さん! 今すぐ、反射物の少ないところへ逃げて!」
「え? あ、明久君?」
「早く! モンスターが、すぐそこまで来てる!」
「えっ」
恐ろしく速い敵が迫っているこの状況で、悠長に説明が出来るほど肝は据わっちゃいない。
とにかく目の前にいる彼女だけは助けようと、ここから逃げるようにだけ必死に伝える。
訳が分からないようだった彼女も、僕の言葉と体験した非日常からなる経験が活きたのか、
すぐさま僕の射貫くような視線とは逆方向、つまりは僕の後ろに向けて駆け出していった。
これで彼女の安全はひとまず確保できた、そう思ったのも束の間、反響が動きを変えた。
前から一直線に迫っていたモンスターの反響が、唐突に二手に分かれて左右に散り、
僕のいる場所を大きく迂回するようなルートを通って再び合流し、突き進んでいく。
この反応からして、モンスターの狙いが絶望的なまでに色濃く浮かび上がる。
「コイツら_________狙いは友香さんだったのか‼」
モンスターの求めるエサが彼女であると確信し、すぐに振り返ってアスファルトを蹴る。
何の前準備も無しに駆け出せば心肺機能が不調をきたすのは当然で、すぐに肺の上辺りと
左わき腹がじくじくと痛みを訴えだす。でも、そんな痛みに意を介する暇なんてない!
「友香さん‼」
「明久君!」
『クカカカッ‼』
『コカカカッ‼』
僕の呼ぶ声に反応した友香さんが首だけを後ろに向け、僕の名前を大声で叫ぶ。
それに呼応したかのように、近くにあった建物の窓から二体のモンスターが飛び出して、
道の左右から彼女を挟み込むようにして飛び掛かってきた。クソ、やらせるもんか!
「変身‼」
手にしていたカバンから見慣れたカードデッキを取り出して、全力で走りつつ道路に隣した
住宅の窓ガラスにソレを突きつけ、いつの間にか装着させられていたベルトに装填した。
途端に僕の全身をガラスの結晶体のような何かが覆い、一瞬の閃光の後に赤い鎧へと変わる。
白銀に煌めくボディアーマーと仮面以外を赤色に染めた、龍の炎をその身に宿す戦士へと
変身した僕は、強化された身体能力をフルに活かして前方の彼女へと詰め寄った。
『クカッ‼』
『コカカッ‼』
友香さんを標的と定めたらしい二体のモンスターが、走っていた彼女の行く手を遮り、
そこから先へは逃がさないとばかりにジリジリと詰め寄って、嬉しそうな声を上げる。
どうやらアイツらはライダーである僕を、眼中にもいれていないらしい。頭にきたぞ。
「友香さんに手を出すなぁッ‼」
『クカカッ‼』
『コカッ‼』
何とか追いついた僕は、走ってきた勢いを乗せた飛び蹴りを繰り出すが、回避される。
元々当てるつもりのない攻撃を避けられても悔しくはない。今はそれより彼女が優先だ。
「友香さん、僕のそばを離れないで!」
「え、ええ!」
『クカカカッ‼』
『コカカカッ‼』
走ったばかりで息の上がっている彼女を背に庇い、モンスターの手から遠ざけつつ、
どうにかこの状況を打開できないかと必死に頭を回す。けど、いい案は浮かんでこない。
狙っていた獲物を僕に掠め取られてご立腹なのか、二体のモンスターは全身を震わせて
やけに荒々しい鳴き声を上げ続けている。もしかしたら、相当腹が減ってるのかも。
もしそうだったらかなり危険だ。最悪の場合、彼女から狙いを変えて通りすがりの人を
襲いにかかるかもしれない。彼女一人を守るのにも精一杯なんだ、何とかしないと。
『クカッ、クカカッ‼』
『コカカッ、コカッ‼』
友香さんを後ろ手に守りながら迫る二体を睨みつけると、その内の片方がいきなり僕に
襲い掛かってきた。一対一ならそう簡単に負けないけど、今は友香さんもいる。
後ろで怯えている彼女に気を配りながら二体を相手取るのは、正直かなりキツイ。
一体が右拳を大振りで繰り出すのを見て、僕は背中で守る彼女を考慮しつつ受け止め、
そしてすぐさま左足を一歩踏み出しながら重心を移動させ、お返しの左拳をぶつける。
けどやはり二方向に気を割いている分だけ挙動が鈍り、片方にあっさりと躱されて、
逆に右足を軸に一回転しながら振り抜かれた回し蹴りを、モロに喰らって飛ばされた。
「うぐっ‼」
「明久君!」
真横に弾き飛ばされた僕に駆け寄る友香さんを、すぐに起き上がって背後へと隠す。
今の攻撃で大したことがないと判断したのか、二体はそろって
二体が目にも止まらぬ速さで距離を詰めて、そこから交互に回転や跳躍を交えた攻撃を
息を吐かせぬ連撃として繰り出してきた。しかし、今度はそれを受け切ることが出来なかった。
「ぐっ、ガハッ‼」
『クコココッ‼』
『カコココッ‼』
「んぎ、ガッ! ぐぅッ‼」
二体の内の一体が左右の拳を振るえば、もう片方がその合間を縫って正確に蹴りを放ち、
続いて蹴撃の嵐となって僕の体を一切の容赦なく撃ち抜いて、止めにまた拳を見舞わせる。
一体一体はさほど脅威ではない攻撃力でも、二体、しかも恐ろしいまでの連携が加わると、
凄まじい戦闘能力の高さを有した存在となって、決して無視できないものとなっていく。
ジワジワと龍騎の鎧の耐久度が削られていくのを実感させられるが、手も足も出せない。
このまま一方的に
そして、僕の背後で震えている友香さんも、殺され、食料にされる。
「そん、な、事………させるかぁッ‼」
想像したくない最悪を頭から振り払うように、大声を張り上げて二体の拳と蹴りを止める。
自分たちの攻撃を受け止められたことに驚いたのか、二体はそろって回避行動に移った。
拳と脚を捉えられた二体は僕の拘束を振りほどき、驚異の跳躍力で15メートルほど後退し、
今度は油断しないとばかりに構えを取り、不用意に近付こうとせずにジリジリと詰め寄る。
一度はしのいだとは言え、流石に受けたダメージがダメージだ。次は無いだろう。
奇跡的に攻撃を受けられたとしても、あれだけの連撃を叩き込まれたら今度こそ終わりだ。
迫りくる脅威と殺気を全身で受けつつ、背中にいる彼女だけは意識から外さず守り続ける。
『クココッ‼』
『カココッ‼』
睨み合いもさほど長くは続かず、痺れを切らした二体が大きく嘶いて同時に駆け出した。
彼ら二体の目標は、敵を認識した僕と、変わらず食料として狙い定めた友香さん。
互いに巧みなコンビネーションで、側転や空中前転を織り交ぜながら攻撃のタイミングを
絞らせない動きでまんまと5メートル以内に接近し、そのままドロップキックを放ってきた。
彼女が後ろにいる以上、避けることなどできない。
かと言って逃げなければ、直撃を受けて鎧が破壊され、ヤツらのエサになる。
どうしたらいいのかと判断に時間をかけ過ぎたその時、二発分の銃声が響いた。
『カココッ⁉』
『クココッ⁉』
直後に聞こえた炸裂音と、それを掻き消すほどの醜い悲鳴。
何が起きたのかと視線を向ければ、道路の上に転がった二体が痛みに苦しんでいた。
「おいおい、しっかりしろよ。おたくそれでもライダーかよ」
「えっ?」
呆然とその二体を見つめていると、ふいに僕らの背後に続く道路から声をかけられた。
もちろんそれにも驚いたけど、本当に驚いたのは、その声に聞き覚えがあったからだ。
常に他人を小馬鹿にしたような、不遜で横暴な態度の、僕の一時的な雇用主。
「北岡さん⁉」
「あのさぁ、今はライダーなんだから、本名はNGだろ?」
「あ、ああ、ゴメンナサイ」
振り向いた先には、やはり僕が予想した通りの人物、北岡秀一が立っていた。
しかしその姿は数日前に彼の事務所内で見た、人としてのものではなかったが。
その全身を覆い尽くすのは、龍騎の赤やナイトの黒紺でもなく、緑のパワードスーツ。
両肩と上半身には、まるで小型化された要塞の如き鋼色の分厚い重装甲が装着されていて、
やたらと角ばった部分の多いソレは、アメフト選手か等身大のロボットを思わせる。
頭部には小さな円柱型のアンテナが、額にV字状で備わっていて、その下にはまたしても
僕らとは異なる形状のアイカバーチックな仮面が無機質に視線を送り届けてくる。
そして極めつけは、緑色のライダーが右手に収めた、メチャクチャな構造の銃火器。
カードデッキに金色の闘牛の意匠をあしらった彼は、【仮面ライダーゾルダ】
自称天才弁護士である彼のもう一つの姿が、硝煙を上げる銃を片手にして歩み寄る。
「ははぁ~ん、【ギガゼール】に【メガゼール】ね。おたくも面倒に好かれるねぇ」
「冗談言ってる場合じゃないんですよ、きた………ゾルダ」
僕の横に並び立った緑色のライダーがモンスターの名を呼び、僕を茶化してきたため、
それを諫めようと強めの口調になった途端にNGワードを口にしかけ、踏み止まる。
幸いにもそれを見逃してくれたゾルダは、銃を肩の装甲に軽く当てて話しかけてきた。
「だろうねぇ。んで、おたくが大事そうに庇ってるその女子高生は?」
「…………このモンスターに、狙われてる同級生です」
「なるほど。んーじゃ、おたくにまた貸しでも作っておこうかな」
「え?」
語弊がないように彼女を「同級生」と呼んだのに、ゾルダは何かを思案するように左手を
仮面の
いきなり何を言い出すのかと彼の方へ視線を向けると、ゾルダは先程の体勢のままで
正面にいる二体のモンスターを油断なく見据えながら、唐突に大きな声で話し出した。
「おーい五郎ちゃん! ソイツの後ろの子、しっかり見ててやってよ!」
「ハイ、先生」
「えっ、五郎さん? 何でここに⁉」
「ちょうど仕事帰りに近くを通ってたのよ。そしたらおたくがいたってわけ」
ゾルダの言葉に反応して、彼のさらに後方に停めてあった高級車からガラの悪そうな男性、
天才弁護士を支える付き人の五郎さんが現れ、友香さんを連れて車の方へ戻っていった。
その事を疑問に思った僕に、ゾルダが付け加えとして事の経緯を軽く教えてくれた。
なんでもいいけど、今はとにかくありがたかった。
「お礼は後で言います。でも、今はコイツらを先に!」
「ハイハイ、分かった分かった。ホントーにおたくは熱いねぇ」
「茶化さないでください! 貸し、作るんでしょ?」
「………ガキのくせして、俺を急かすんじゃないよ、ったく」
人間性に問題が幾つかあるけど、ひとまずこの状況を打開できる人を味方につけられて、
心の奥から安心感が噴き出してくるのが分かった。流石に完全に信頼はできないけど。
横に並んで右手の銃をダルそうに構えたゾルダと共に、目の前の二体を見つめる。
「っしゃあ‼」
「さてと、いきますか」
状況の不利を悟って逃げ出した二体の背を睨みつけ、僕とゾルダは
龍騎とゾルダがミラーワールドへ消えた場所を、一人の男が見つめていた。
普通ならば異常である光景を、その男はそれが当たり前であるように眺めていた。
そして、鏡の中の反転した世界で始まった、ライダーとモンスターの戦いを無言で観賞する。
「…………さて、どっちの方が楽に
夕陽が西の空から姿を消した時、男の右手にある、カメレオンをあしらった金の意匠が輝いた。
いかがだったでしょうか?
今回で原作一巻の内容、Aクラスとの試験召喚戦争が終わりました!
しかし、龍騎との掛け合いの影響で、雄二と翔子のシーンがそれなりに
削らされることになってしまいました…………どこかで拾っておかなきゃ。
それでは、戦わなければ生き残れない次回を、お楽しみに!
ご意見ご感想、並びに批評も大歓迎です!