僕と契約と一つの願い   作:萃夢想天

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どうも皆様、先々週と先週と投稿できなかった萃夢想天です!
もう何も言いませんとも! 己の無計画さは重々理解していますから!

前回まではやたら不調で一話を分割して書かざるを得ませんでしたが、
今回からはかなり原作よりなので幾らかマシになるかと思います!

それと、本当に久々に書くのでかなり文がひどくなっております故、
そこのところをご了承ください(元から酷かったには酷かったんですが)


それでは、どうぞ!





問32「僕と祭と召喚大会/その1」

 

 

 

 

 

 

白衣を着た謎の男性、香川 英行こと『オルタナティブ・ゼロ』を名乗る仮面ライダーと遭遇し、

僕の妹の秘密についての話を持ち出された日の翌日、すなわち今日というこの日。

文月学園所属の生徒が待ちに待ったイベント、清涼祭の幕が上がる日になった。

 

新たなライダーとの邂逅、そして六年前に死んだ妹の死の真相について。

昨日はあまりに多くの出来事が起こりすぎて、僕の脳内容量がかなり圧迫されている。

一緒に下校して家の前まで送り届けた友香さんと僕は、互いに自宅で一心地ついてからメールで

いろいろな情報を共有し合い、割と遅くまで意見交換に明け暮れてしまい寝付けなくなった。

 

けど、やっぱり自分より頭がよく回る人に相談できるというのは、本当に心強い。

友香さんが僕に遅くまで付き合ってくれたおかげで、自分一人では絶対に考えられないような

思考を知ることができたし、何よりこんな僕の手助けをしてくれたことが嬉しくて仕方ない。

 

「ふぅ」

 

 

翌朝、つまり今日の朝食であるパンの耳(塩・砂糖付け合わせ)を胃袋に押し込んで一息吐き、

昨日の夜に彼女と出し合ってまとめた様々な情報を、今一度冷静になった頭で思い出してみる。

 

まず一つ、あの時の僕は今になって思えば冷静さなど微塵もなかった。だからこそ、あの場で

香川さんのいう言葉を真に受けて、妹についての話を聞かなかったことが功を奏したこと。

冷静な判断力に駆けている相手であれば、どんな嘘やハッタリでも信じ込ませることが可能

だろうし、信じようと信じまいと大きな隙を生むことには変わりない。むしろ最悪の場合は、

こちら側の弱点や弱みを露呈してしまい、相手にそれを掴まれて良い様に操られてしまう事。

 

もちろん友香さんが言っていたことだけど、昨日の夜このメールを読んで僕は納得した。

弱みを握られて良い様に操られる。僕が仮面ライダーである以上、ライダーバトルにかける

願いは必ずあると向こうも分かっているだろう。そこを突かれたりすれば、まだまだ心理戦で

未熟どころかイロハすら知らない僕なんか、容易く自在に操られること間違いなし、らしい。

この文面を読んだ時はそんなことあるもんかとも思ったけど、友香さんが言うなら間違いない。

 

とにかく、あの時は彼の話を聞けなかったことこそ、僕にとっては良かったということ。

 

そして二つ、香川さん__________もといオルタナティブ・ゼロには、学園か学園関係者の

援助が少なからず存在しているということ。これも僕一人では知れなかった重要な問題だ。

 

友香さん曰く、生徒の誰もが下校し始めている時間帯に、いくら学園の召喚システムに携わる

エンジニアと言えど、修繕が完了しているはずの教室に鏡を設置しておくなどの小細工が、

個人で行えるとは考えにくい。教室の鍵は職員室でまとめて管理しているし、あそこにあった

鏡だって生徒が気付かないはずないから、間違いなく放課後に設置されたものである。

これらを加味して考えると、香川さんにはシステムエンジニアとしてのアンダーカバー以外に、

教室の鍵を拝借できる信頼と鏡を持ち運びしても怪しまれないという事実が確かに在るのだ。

僕には完全に理解することはできなかったけど、要するに香川さんには学園ないし関係者の

バックが存在し、嘘か真か僕の妹の情報を得る事が可能かもしれない情報収集能力があるの

だという。そこまでメールで教えてくれた友香さんへの感謝もしたけど、何よりもまず僕は

あの時の彼の話に乗らなくてよかったと、心から安堵した。

 

友香さんがこうして教えてくれなかったら、僕は今頃どうなっていたか定かではないのだ。

本当に頼れる存在である彼女には感謝しなくてはならない。そして、何を企んでいるのか

現状では全く不明な香川さんに対して、僕の警戒心はこれまでの何十倍にも膨れ上がった。

 

 

「____________さて!」

 

 

洗面所の蛇口から流れる水で顔を洗い、若干の爽快感と共に顔を叩き、気持ちを切り替える。

ふと今月の水道代はどうしようかという疑問も浮かんだけど、それはこの際置いておこう。

今日から始まる清涼祭、そこで僕らには、僕にはやらなきゃならない事が二つある。

一つは言わずもがな、Fクラスの清涼剤たる姫路さんの転校を阻止すべく、クラスの出し物

である中華喫茶で高い売り上げを叩き出すこと。そのお金で教室の環境を改善することだ。

そしてもう一つの方は、僕と雄二にだけ依頼された案件であり、極秘扱いの汚れ掃除。

清涼祭の目玉として行われる召喚大会に参加し、優勝賞品として授与されるペアチケットを

奪還、(雄二としては存在そのものを)白紙に戻してその分の恩賞を得ねばならないこと。

 

どちらも無視することのできない重要な任務だけど、やり切る以外に道は無い。

売り上げが低ければ最低ランクの教室設備を整えられず、我らが姫路さんは学園を去り、

チケット奪還をしくじれば、学園長直々の勅命を仕損じたとして相応の罰を受けるだろう。

「いってきます!」

 

 

やりがいがありすぎて八方塞がり気味だけど、万里の長城も一歩からって言うからね。

まずはやれるだけやってみようと結論付けて、僕は明奈の仏壇に向けて外出を告げる。

 

さぁて、最弱最悪最下層である僕らFクラスの本気、見せてやろうじゃないか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつもはただのバカにしか見えないけど、坂本の統率力ってすごいわね」

 

「まったくじゃな」

 

「ホントホント」

 

 

そんなわけで僕らは現在、清涼祭で行う出し物のために様変わりした教室内で休憩していた。

本人のいないところで酷い言われようだと思うけど、実際その通りなんだし、ねぇ?

しかし改めて見回してみると、一か月を過ごしてなお「酷い」が絶えなかったFクラスの教室が、

よくぞここまで華麗に転身したものだと目を疑う。そこらの喫茶店と見分けがつかないほどだ。

 

ガラスが割れていて隙間風が入るセルフクールビズ仕様の窓は、ビニールを外側内側の両方から

三重にして貼り付けて固め、小さいフリルのついた布を窓枠から垂らして可愛らしさを付与。

傷んだ茣蓙の上には、みんなで一生懸命手洗いして汚れを落とした大き目のカーペットを敷き、

各所に設置されているテーブルは、普段使っているみかん箱に小奇麗なクロスをかけて代用。

 

ここまででかかった費用は当初予定されていた支出の四割程度。まさしくエコロジー。

 

 

「このテーブルなんて、パッと見じゃ汚いみかん箱の積み重ねだなんて気付かないよね」

 

「それは木下君が作ってくれたんです! どこからか持ってきたクロスで、テキパキと!」

 

「見かけばかりはそれなりじゃが、クロスをめくれば御覧の通りじゃ」

 

 

想像以上の低出費と出来栄えに改めて驚いていると、すごく嬉しそうに姫路さんが秀吉の

手際の良さを称え、逆に秀吉はクロスの端をつまんで綺麗の内側にある凄惨な現実を見せる。

僕らはあらかじめ作られる過程を知っているからまだいいけど、全く知らないお客様がこの

事実を知ったらと思うと、店の評判はどこまで落ちるのか予想できない。想像したくない。

 

「ま、まぁ店内の装飾はほぼ完璧だし、これくらいまでやればもう大丈夫だよ!」

 

 

少しだけ空気が重くなったのを察した僕は、縁起が悪くなりそうな思考を打ち払うように

普段より高めの声でそう言い放つと、姫路さんと美波、秀吉の美少女三人組は頷いてくれた。

 

 

「…………飲茶も完璧」

 

「おお、ムッツリーニ。厨房の方もオッケー?」

 

「…………問題ない。これは味見用の試作品」

 

 

美少女たちと話していた僕の背後に、いきなり片手に何かを持ったムッツリーニが現れる。

普通に話しかけたらいいんじゃないかと思うけど、日常的に気配を消すことで使命である

覗き行為の際に、発見される確率を下げる訓練をしているのだろうか。何か致命的に変だが。

 

さて、そんな業の深い忍が片手に持って差し出してきたのは、いたって簡素な木製のお盆。

何かと思ってのぞき込んでみれば、盆の上にはティーセットと美味しそうな胡麻団子が三つ。

 

「お、美味しそうですね………!」

 

「土屋、これ貰っちゃってもイイの?」

 

「…………(コクリ)」

 

「では遠慮なくいただこうかの」

 

 

瞬く間に食の色香に誘われた三人がムッツリーニ(というより胡麻団子)を取り囲み、

先端が二つに分かれているタイプの小串で刺して、美少女たちが魔性の茶菓子を実食する。

途端に彼女たちの瞳がとろんと垂れて、口の中に充満しているだろう旨味の虜となった。

 

 

「美味ひぃですぅ~!」

 

「表面はカリカリ、中はモチモチ! もう最高!」

 

「甘過ぎるというわけでもないのが、また絶妙じゃの」

 

 

三者三様の反応とコメントで、如何にムッツリーニの本気がすごいのかが一目瞭然となる。

ことエロが一ミクロでも介在する余地あれば、あの男は不可能ですらも可能にできるのだ。

しかしアレだね、やっぱりみんな年頃の女の子だし、甘いものには目がないんだね。

 

これだけの反応を見せられちゃうと、いくら男の僕でも欲しいと思ってしまうのは必然。

朝ごはんだってまともなものじゃあなかったわけだし、午前十時前のおやつってことで。

 

 

「僕も貰っていいかな」

 

「…………明久のはこっち」

 

 

盆の上には三つしかなかったからまさかとは思ってたけど、流石は仕事人ムッツリーニ、

顧客のニーズを理解しているうえに待たせない。これが出来る男の気配りってヤツなのか。

にしても、まるであらかじめ僕に食べさせるべく取っておいたかのように出された団子だ。

設置や装飾の仕事で疲れた僕を癒そうとキープしてくれてたのかも、これはラッキーだね。

 

というわけで待ちきれるはずもなく、小串で刺して二つある団子の一つを口へ放り込む。

 

 

「んむんむ、表面はゴリゴリで中はネバネバ。甘くなく、辛さ過ぎる味わいがンゴぱっ」

 

 

おそらく人体の構造上、出てはいけない音が喉から絞り出された。

 

「………明久、それは先程姫路がおぬしのためにと作っておった代物じゃ」

 

「…………まだまだたくさんある(グイグイ)」

 

「ムッツリーニ‼ 何故そんなに生まれたての小鹿みたいに震えながら盆を差し出すの⁉

む、無理だよ! いくら食に飢えている僕でも、異に劇物を押し込むほど飢えてないよ‼」

 

「…………まだまだ、たくさん、ある……!」

 

「話を聞いてよムッツリーニ! 人は毒に耐性があるらしいけど、致死量って言葉知ってる⁉

度を越した毒はもう死と同義なんだ! だから無理やり団子を食べさせようとしないでぇ‼」

 

異様に震えたままのムッツリーニが、いつの間にか増やされた団子を僕の口の中へと強引に

押し込もうと手を突きだしてくる。よせ、止めるんだ。素人が劇物処理を試みたりしたら、

かえってより酷い結末が待っているに違いないから。だからその劇物を僕に近付けるなッ!

 

 

「うーっす、最後の打ち合わせが長引いちまった________おお、悪くねぇ出来だな」

 

男子高校生の腕二つ分の距離で繰り広げられる生存競争の真っただ中、彼は帰ってきた。

ああ、本当に君って奴は、なんて間の良い男なんだろう。君のおかげで僕は生きられる。

 

 

「あ、雄二。お疲れ様、これ試作品だって。すごく美味しかったよ!」

 

「ん? おー、こりゃ良い出来栄えだな。どれどれ」

 

「…………‼(悪魔を見る眼で明久を見つめる)」

 

 

雄二に僕たちの激しい攻防を見られなかったのが幸いか、僕はムッツリーニの手から

素早く団子を刺した串を奪い取り、クラス代表を気遣う友情を以て、彼に死を送り届けた。

さっきからムッツリーニがおぞましいものを見る目で僕を見てるけど、知ったことじゃない。

君が僕にやろうとしたことを僕が雄二にしただけだ、どこに問題があるのか分からないな。

 

「雄二、おぬしは………たいした男じゃった」

 

「最高に輝いているよ、雄二。まるで線香花火みたいだ」

 

何言ってんだお前ら(はひふぃっへんはほはへあ)。んむんむ、表面はゴリゴリで 中はネバネバ。

甘さなど微塵もなく、辛さが味覚を蹂躙する味わいが不快感しか感じさせンゴぱっ」

 

 

さらばだ友よ、君のことは一週間程度まで忘れない。

 

 

「ねぇ雄二、それは姫路さんお手製らしいけど、お味のほどは?」

 

 

僕の身代わりで散った勇敢なる男の最期だ、せめて最後の言葉と骨くらいは拾わなければ。

そんなことを考えて返事も期待せずに尋ねると、倒れ伏して動かない彼が言葉を発した。

 

 

「何の問題も見当たらねぇ_____________あの川の向こう岸まで競争だな?」

 

 

いけない、思ってたより生死の境目にいる。

 

 

「その川はアウトだ雄二! 向こう側で親戚が手を振ってても渡っちゃダメだ!」

 

 

予想を遥かに超えた毒性と致死量だ、まさかたった一口であちら側へ引っ張り込むとは。

自分が死なないために雄二を差し出したけど、彼にはまだ成さねばならない大任がある以上、

僕としても死んでもらっては困るのだ。というわけで必死の延命措置の甲斐あり、見事復活。

おそらくこれで恨みは買ったこと間違いなしだけど、当面の協力関係があるから流石に奴も、

報復しに来るような馬鹿な真似はしないだろう。と、思いたいというのが正直な本音だけど。

 

「ところで、雄二は打ち合わせとか言っておったが、何を話しておったのじゃ?」

 

「ん、ああ、ちょっとした微調整だ」

 

 

閑話休題というほどじゃないけど、流石は秀吉、話を逸らすタイミングが完璧だよ。

それに対して雄二は、珍しく歯切れの悪い返事で適当に返していた。奴ほどの男が珍しい

なんて思ったけど、きっと学園長と召喚大会についての諸々を話し合っていたんだろう。

流石の悪逆非道を地で往く男でも、アンフェアな裏取引を公然と語るのは気が引けるのか。

 

「そうでしたか。お疲れさまでした、坂本君」

 

「気にすんな。さて、少しの間喫茶店を秀吉とムッツリーニ、お前たちに預ける。

俺と明久はこの後すぐに、召喚大会の一回戦に行かなきゃならないからな」

 

「え、アンタたちも大会に出るの⁉」

 

 

一応の連絡事項の確認を済ませた雄二は、秀吉とムッツリーニに喫茶店の切り盛りを

任せて、僕とともにもう一つの目的であるチケット奪取のための戦闘準備に入る。

すると急に態度を変えた美波が、背を向けて教室を出ようとする僕らに問いを投げた。

そう言えば、僕たちが大会に出るって明言したことないから、困惑するのも当然だよね。

 

 

「うん、その、色々あってさ」

 

 

でも、当然取引についての事は口外禁止だから、いくらクラスメイトでも話せない。

口止めされている以上誰にも話さないつもりだけど、そこまで神経質になるほどかな。

 

「も、もしかして………賞品が目当てなの?」

 

「うーん、そういう事になるのかな」

 

 

賞品が目当て、という言葉に少しだけ反応してしまったけど、まぁ概ねそういう事だ。

実際は賞品でどうこうするというわけじゃなくて、賞品を秘密裏に処理すべく学園側と

密約を交わしているんだけど、当然言えない。細かく言えば、賞品と設備の物々交換か。

 

ふと僕はここで、あることに気が付いた。もう一つの優勝賞品の事についてだ。

 

第一目標であるペアチケットともう一つ、『白金の腕輪』なるものも欄に記載されている

けれど、あれも回収した方がいいのかな。小耳に挟んだ噂によると、その腕輪は異なる

二つのものがあり、一つは使用者の召喚獣を二体同時に喚び出せるようになるものと、

教師(立会人)の代わりに召喚フィールドを形成できるものとがあるとのことらしい。

 

話を聞く限りすごそうだけど、旨い話には罠がある。力の裏には代償が必要ってね。

仮面ライダーとして闘争の世界を生きる僕は、こういった方面でも知恵を増やしている。

だから誘い文句には簡単に乗せられたりしない。その、昨日の話を除けば、だけどさ。

 

 

「___________誰と行くつもり?」

 

「吉井君、私も知りたいです。誰と行くつもりなんですか?」

 

「へ?」

 

 

なんてことをぼんやり考えていたら、攻撃的な視線で僕を射抜いてくる美波と、日頃の

ほんわかした雰囲気を取り払って真剣な面持ちで見つめてくる姫路さんが、そこにいた。

 

いったいどういう事なんだろうか。誰と行くってのはつまり、賞品を得た後の話?

 

 

「誰と行くって言われてもなぁ」

 

 

困ったな、どう返せばいいものか。正直な話、チケットは僕も雄二も使用せずに取引で

学園長に引き渡す事になってるから、誰かと行こうにも行けるはずがないんだけど。

話すに話せないこの状況で、僕の隣にいたその男が動けない僕の代わりに答えを出した。

 

 

「明久はな、俺と行くつもりらしい」

 

「そ、そんな………」

 

「アキ、坂本と二人で"幸せになりに"行くってこと?」

 

 

二人とも、そんなに驚かないでほしい。僕だって驚いてるんだから。

 

答えに詰まって押し黙っていたら、押し黙る分だけ不利になるという責め苦に早変わり。

こ、この男、さてはさっきの団子の仕返しか! 汚いぞ貴様、過ぎたことをネチネチと!

 

(なんてこと言いだしたんだバカ!)

 

(本当のこと話したらババアとの約束もパアだ、堪えろ明久)

 

(お前のせいで堪えなきゃならない状況になったんだろうが‼)

 

 

雄二が小言で呟いたメッセージの通り、ここで全てを明らかにしてしまったら何もかもが

水泡に帰してしまう。そうなれば、せっかくの苦労と努力が何の意味もなくなってしまう。

 

不本意だけど仕方ない。不本意極まるけど、仕方ない。今の話の流れだと僕だけじゃなく

雄二も"ソッチ"系の噂が流されることを我慢しなきぃけないし、最悪でも痛み分けになる。

女子生徒の目の色が色々と変わりそうだと嘆いていると、雄二が続けて口を開いた。

 

 

「俺は何度も断ってるんだがな」

 

 

あのまま三途の川で遊泳させておけばよかった。

 

 

「ア、アキ、あんたやっぱり…………」

 

「ちょっと美波! その"やっぱり"ってすごく心に刺さるからやめて!」

 

「でも、坂本だって了承してるみたいだし」

 

「雄二貴様! どう責任取るつもりだ⁉」

 

美波がどことなく察していたような面持ちで後ずさるのを見て、涙が出そうになった僕は

あふれでるソレを拭い去り、事の発端である悪友の襟を掴んで前後に揺すろうとする。

すると雄二はその手を面倒そうに払いのけてから、邪悪さがにじみ出る笑顔で続けた。

 

 

「ああ、済まん。俺を誘ったのはずっと前で、今は小山を誘ってたんだったな」

 

 

野郎、よほど人間離れした惨たらしい死に方がお望みとみえる。

 

 

「「………………小山(さん)と?」」

 

 

悪辣な笑顔を浮かべて機嫌良さそうにしているバカから視線を移すと、やたらと顔を

俯けた状態で淡々としゃべる二人が目に入った。ヤバい、ちょっとどころかかなり怖い。

くそったれ、こんな状況下で爆弾を投下してくれたな! 僕の心という名の地表が今の

爆撃で更地になりかけてる。おのれ雄二、貴様安らかに息を引き取れると思うなよ!

 

そうこういているうちに二人が下に向けていた顔を上げ、僕の目だけを見てくる。怖い。

 

 

「いや、その、まぁ、何と言いますか」

 

 

ダメだ、否定しなきゃいけないはずなのに、恐怖で舌も言葉を作る脳みそも回らない。

その場しのぎでもいいから否定するだけでも………いやダメだ、彼女たちには通じない。

何故かそういう変な方向での確信がある。嘘や誤魔化しでは、彼女らを欺けないだろう。

どうすれば良いのか分からず泣きそうになっていると、普段の授業日程に沿って校内の

チャイムが鳴り響き、召喚大会の予選一回戦の開始が近いことを放送で伝えていた。

 

 

「そろそろ時間だ、行くぞ明久」

 

「コイツ………! と、とにかく誤解だからね⁉」

 

 

三流の捨て台詞みたいなセリフしか絞り出せなかったけど、無いよりはマシだと信じ、

こんな状況を作り出した悪友の大きな背中を追いかけるように、僕は教室を後にした。

 

 

 

 








いかがだったでしょうか?
久々の投稿故、思ったよりも文字数が少なくて驚きました。
いやはや、継続は力なり。継続せねば衰える一方ですな。

さて、今後しばらくはタイトルがその1その2と続きそうです。
いえ、別に毎回タイトル考えるのダルイとか考えてませんよ?


それでは、戦わなければ生き残れない次回を、お楽しみに!


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