更新速度は一定ではありませんが、たぶん遅いほうだと思います。
ですがその分1話1話に力を入れていきたいので、どうかよろしくお願いいたします!
昔々、とある国に無類の活躍を誇る二人の戦士がいました。
彼らは『双竜の指輪』というまったく同じ形状をした不思議な力が秘められた指輪を身に付けていました。
それは身に付けた者に常人を寄せ付けず、いとも容易く葬れる程の力を与える超自然のもので、騎士たちは互いを信頼しあい力を合わせて立ち塞がる数々の敵やどんな窮地もことごとく破っていきました。
時に大地を揺るがす猛牛を、時に大海を支配する海の王者を、時に天を駆ける狂鳥を、時には膨大な魔の力を駆使する悪魔を、その神秘の力をもって打ち破り華々しい活躍を残しました。
そして彼らはいつしか人々から『双竜の騎士』と呼ばれる英雄として、その名を世界中に轟かせたのです。
世界が危機に瀕したとしても必ず彼らが手を取り合い、希望の光を照らしてくれるはず……誰もがそう信じていました
しかしそんな彼らの願いも虚しく、悲劇は起こってしまいました。
一方の騎士が指輪の魔力に魅入られ、二つの指輪を自分のものにするため、長年背中を預け合い苦楽を共にしてきたパートナーとも言うべきもう一人の騎士をその手で殺めてしまったのです。
こうして指輪を二つ手にした騎士は、人智を超えた力を得ようと指輪を両方の指にはめました。
するとどうしたことでしょうか
騎士の体は指輪の持つ強大な魔力に耐えきることができず、粒子となって跡形もなく消え去り、跡に残ったのは2人の強さと絆の証であった2つのペアリングだけ…‥
-更なる力を、今よりもっと強大な力を
そんな愚かしい我欲に飲まれ唯一無二の友にも等しい
自らの身に余る力を手にすれば待っているのは破滅……そんな教訓が込められたこの昔話『双竜の騎士』は時を経た今も吟遊詩人らにより、人々の間に語り継がれている。
☆
聖なる巫女が住まう神殿がある牙竜山から少しばかり離れた場所に位置する山々。
その中の1つの中腹では夜天に静かに佇むくっきりと丸みを帯びた月の下、パチバチと音をたてて木造の家が燃えている。
瞬く間に侵食していく火の手に飲まれつつあるそれを、目に焼き付けながら宙に浮遊する一つの影があった。
その影は何とも例えがたい面妖な格好をしていた。
体を包み込む黒衣を風に靡かせ何物にも形容しがたい漆黒の仮面で顔は隠しており、夜の薄暗さも相まってその薄気味悪さが際立っていた。
見ようによっては魔術師のようにも見えた
「ふふふふふふ、あはははは!」
黒衣の魔術師は高らかに声を上げ笑う。
その声色は満足げな様子とは違って、冷たく尖った刃を連想させるぐらいに低い。
「やったぞ。これで私の願いへ一気に歩を進めることができた」
--ようやく自由に行動できる肉体を手に入れた。
それもついていることに、この世界では右に出る者がいないであろうと謳われている膨大な魔力の持ち主の
--これから
「っ!……何だ?この意識の底にまで影響する不快な感覚は………」
歓喜に酔いしれている魔術師の肉体にふと何か電流に似た衝撃が走り出す。
だがそれは奇妙にも物理的な
もっと濃く己の内に入り込んでくる危険信号のような
「確かめる必要があるな」
そう低く呟いた魔術師がその場を離れると、木造の住宅は支柱が燃え尽き轟音をたてて倒壊した。
☆
緑豊かな平原。
朝方か昼間ならば数多くの行商人や大陸を旅する旅人が行き来するであろうこの場所は、今はその面影を残してはいない。
焼け焦げた草花、深く抉られた大地、その上を横切る火炎弾。
まさに戦の場と化していた。
そして最高に被害が集中している場の中心には…1人の剣士と1人の魔術師、2つの影が交錯している。
「うおおおおおおおおお!」
雄叫びとともに月光で刀身を光らせる片手剣を握り締め男は魔術師へと走り出す。
そんな彼を近付けまいと魔術師は片腕でより火炎弾を立て続けに放つも、それらは全て当たらずかわされる。
よもや全てを回避するとは予想していなかったのか、影は一見しただけでは分からない程度ではあるものの驚く。
その動揺により動きが止まり火魔法の発射が止んだ数秒の隙を突いて、魔術師の胴を振り切るように剣閃の軌跡を描く。だが-
「く……!」
刃が柔らかい肌に食い込む寸前で展開された防壁により防がれ、その歩みを止めてしまう。
男は柄本に添えている手に更に力を込め薄い水晶のようなバリアを砕こうとするが、彼の視界に紅蓮の輝きがちらつき始める。
その正体を察しどうにか離脱を試みようと筋肉を動かすも、考えてから行動に移るまでが遅すぎた
両者の間で甲高い爆発が音を立てて炸裂。
防壁を張り巡らしていた魔術師のダメージは微々たるものだが男は直撃を免れず、身体中から黒煙を引き何度も地面に叩きつけられるように大きく吹き飛ばされた。
「うう……何なんだ…これは」
胸が訴える火傷に顔をしかめるがなおも男は、草花もろとも土砂を握り締めながら立ち上がろうとする。
突然のことだった。
前触れもなく自分の前に現れ有無も言わさず攻撃を仕掛け、今も凄まじい魔法で苦しめている。
火魔法の火力や全身から醸し出す悪意の塊のような邪気に思わず体の底から震え上がってしまいそうだ。
しかも繰り出す魔法もそんじょそこらの魔法使いの比ではない。
こちらを十中八九殺しにきている。
逃れようにもこんな奴を引き連れて下手にどこかの街中に入り込めば、無差別に関係ない者まで巻き添えにしてでも自分を亡き者にするだろう…それをしないという可能性が魔術師の異質な雰囲気から一片たりとも感じられないのだから身震いしてしまう。
(これだけの魔力と悪意の持ち主はここで止めなければならない。絶対に!)
そう自身の足に言い聞かせ沸き上がる痛みを堪えて剣士は立ち上がろうとする。
だが魔術師はその様を嘲笑うかのように次なる魔法を発動させ追い詰めにかかった。
「が、ああああああああ!」
夜空から降り注いだ落雷が男にまとわりつき、電流が肢体の隅々まで行き渡る。
暗い空間に煌めく黄色の光が収まる頃には至るところから血を流し膝を付く。
「大分この体にも慣れてきた……そろそろ終いにしようか」
淡々と意味深な言葉を吐く魔術師。
うっすらと離れかけていく意識の中男が辛うじて聞き取れた言葉であったが、それが何を示唆しているのか彼には全く分からない。
「先の指輪の子はともかく貴様の存在は
そう言う魔術師の胸のまえでつき出された掌に赤い炎が生じ時間が経過する度にその大きさは何倍にも膨れ上がっていく。
-これは不味い
肝が冷え気色悪い汗が頬に伝わるが、今の状態ではどうにもならないのは皮肉にも現状最も濃厚に思えた。
(…ここで…死ぬのか………)
視界が揺らめく橙の光で塗り潰されるまで彼は一切の抵抗を諦めたようすで、向かって来る火球を呆然と見つめていた。
今この時から新たな光と闇
秩序と混沌の闘いの序章が幕を開けた。
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