シャイニング・ティアーズ 緑風の行く先   作:光陽03

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お待たせしました。

久しぶりにps2を引っ張り出してティアーズでこのステージをプレイしていたら、弓兵に遠距離からなぶり殺しにされました。アドバンスは基本どのステージも難易度が鬼畜過ぎる…



episode 9 交戦開始

「やはり遅かった。ルーンベールとシルディアの戦端が開かれ両国共に引けぬところまできてしまっている、ベスティアも動く気配はない」

 

「薄々予想できた事態ではあるが…しかし腑に落ちない話だ。シルディアに一国の軍と渡り合うだけの兵力があるなどとは聞いた覚えはない、あの国の兵は兵本来の意味を成していないと耳にしていたが」

 

「情報が誤りであったかあるいは秘策があるのか…いずれにせよ長引けば長引くだけ双方に犠牲が出るのは事実だ。どうにか最小限に抑えたいが」

 

「両国の争いに介入する気か?我々だけではたかが知れているぞ。仮に介入したところでこちらの言葉に耳を貸すとは思えん……もっともこう言ってもお前は考えを変えぬのは百も承知なのだが」

 

「苦労をかけるな」

 

「今に始まったことでもなかろう。むしろ自覚が芽生えているのなら譲歩してもらいたいなお前の破天荒に付き合う身にもなってみろ」

 

「破天荒とは人聞きの悪い言い回しをするな。ただ俺にはこのような大それたやり方しか思いつかんだけの話だ」

 

「なら尚更破天荒だ…しかしそれに付き合う私も同じ穴のむじなだ」

 

「そういうことだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者亭の地下部屋。そこは元々空き部屋で倉庫代わりに使われていた一室であり、長机や果実などを詰めた木箱がぎっしり詰まっていた。

だがせっかく長机がある地下部屋なのにほったらかしにして活用しないのは勿体ないというピオスの一声により、ヴォルグはここを作戦室にすることを思いつき実行に移した。

常日頃より倉庫として使用されていたおかげで埃も充満しておらず一日がかりで清掃し、次の日の朝方からは作戦室に変えることができた。

 

マオという新しい仲間を迎え、巨人族と協力関係を結び気分上々のヴァイスリッターの元にある情報がもたらされた。

 

 

「いよいよ本隊が動きだしたか」

 

 

お庭番の役柄を買って偵察と情報収集の仕事を任命したマオが入手した情報にヴォルグは机上の地図を睨む。

百人近いルーンガイストの本隊が旧街道方面の道を進軍中であるとのこと。

 

 

「想定していたより意外と早く兵力を揃えて来ましたね。さてどのように作戦を練るか…」

 

「やっぱり、強いんだよね?」

 

「寝惚けたことを改めて言うな。寄せ集めの私たちに対してあちらは正規の軍隊こないだのようにはいかんぞ、真っ向から刃を交えれば私たちなどものの十数分で制圧される」

 

 

五十にも満たない先遣隊とはわけが違う。

物量も腕前も先遣隊を優に越えた兵士が編隊を組んで迫って来ている。

その上今度はシルディアからの反撃、及びこちらの兵力の乏しさを前提に動いているだろう。

数で劣る敵が道中に奇襲を仕掛ける可能性を危惧していないはずがないされることを、視野に入れているに違いない。

 

 

「ブランネージュの言うとおり正々堂々なんてのを貫いてたら俺たちはあっという間に全滅だ。ピオス、旧街道はたしか山岳にあるはずだろう」

 

「ええ仰る通りです。山岳の入り組んでいて歩行しづらい道で貿易に適していないために今のカリナ街道が貿易や通行の主要となっています」

 

「つまり現状の戦力で今回俺たちがとるべき最善の策は」

 

「ルーンガイスト軍の隊列の頭上から岩石を落とし初期段階での敵戦力の減少を狙うのが最良かと、しかし、これにはひとつ問題が…」

 

「岩を落とす役割を誰に任せるかだな」

 

 

ヴォルグの返しにピオスは肯定し更に続けて言う。

 

 

「岩を落とせるだけの腕力も必要ですがそれなりの人数も用意しておかなければなりません。奇襲を仕掛けるわけですから数は多い方が後々楽に事を運べます」

 

「どのくらい入ればいいのピオスさん?」

 

「そうですね、最低でも六人は欲しいところですね。それでやっと全体の半分程度を削れるぐらいでしょうし」

 

 

そうは言うが実際問題楽に通過できる課題ではない。

敵に大打撃を与えるためにも石つぶて程度の大きさでは話にならず、人間を押し潰すぐらいの大きさが目安と言ったところ。

当然それだけの大きさの岩を敵の頭上に落ちるよう仕込むのも、それらを落とすのも生半可な腕力ではいけないのだ。

だが

 

 

「けどあたしたちでそれだけの力を持った人っていないわよね」

 

 

まさに全員の心中を代弁するようにエルウィンが告げた。

ピオスも誰かしらその反応をするであろうと計算済みであったようで、ずれ落ちた眼鏡を指先で定位置に戻しながら彼女の指摘に付け加える。

 

 

「問題はそこなんです。敵の兵士になるべく甚大な被害を与えこちらのリスクを減らすためにも岩を落とせる腕力を持った人が必要なのですが…私たちにはその条件を満たした人材がいないのです」

 

「ラザラスあたりならできなくはないと思うんだけど…やっぱり数がネックになってくるな…」

 

「エイルの言うとおり今の私たちに必要なのは岩を落とせるだけの腕力を備えた大人数の人材なのです」

 

「…だそうだ、お前らで何か意見はあるか?遠慮なく言ってくれ」

 

 

ヴォルグに促され考え込むシオンたち。

だがそう急かされても浮かばないものは浮かばないと言うかのように誰一人として口を閉ざし、頭を捻らせていた。

そんな中不安そうな挙動で恐る恐る上がる細やかで華奢な腕があった。

 

 

「あの、巨人族の方々にお願いしてみてはいかがでしょうか」

 

 

控え目に発言したリュウナに一同は急速に視線を引き寄せられる。

そしてヴォルグがしたりがおで彼女の案に賛同し話が進む。

 

 

「それだ。巨人族だ。あいつらならそれなりに大人の数は多いし力も申し分ない」

 

「こないだ協力してくれるって言ってくれてたし事情を説明すれば手を貸してくれそうだよ」

 

「決まりましたね。速急に巨人族の集落に人手を手配しましょう」

 

 

そうと決まればすぐさま動くしかない。

全員の承諾を得て案を即時採用したヴォルグは巨人族への情報伝達の役目をマオに任せ、てきぱきと指示を飛ばす。

 

「よしマオ。集落に行って何人か旧街道に向かわせてくれるように言ってくれ、頼めるか?」

 

「りょーかい、ぱっぱって行ってくるよ」

 

「他の奴らは今から準備して旧街道に先行。網を張ってルーンガイストの連中を待ち伏せるぞ、マオが連れて来た巨人族が岩を落としたのを確認した後各自追撃に出ろ。それとピオス、悪いがお前は今回前線に出てもらうお前にしか任せられん役目だ。巨人族に同行して岩を連中に落とすタイミングを指示してくれ」

 

「了解しました団長。その大役是非ともお任せください」

 

 

ピオスもその旨を快諾し、エルウィンやリュウナたちも各自の武器の点検や作戦の段取りを互いに確認しあっている。

その一方で無言でぼうっとしたように立ち尽くす少年がいた。

 

 

(始まるんだ…また戦いが)

 

 

いよいよ本格的な戦いが始まるとあってシオンの手の平は緊張と不安とでベッタリと汗で滲む。

また戦う前からこんなになるとは我ながら情けないと自覚しているのだが、一向に胸に湧いた思いは消えず膨れ上がっているような気がする。

 

いくら双竜の指輪があるとは言えども自分自身はまだまだ剣士としても、戦士としても経験が薄い未熟な半人前でしかない。

ラザラスやエイルに試合をしてもらってブランネージュやピオスからは魔法の基礎概念を教わったり、できる限りのことは尽くしてきたつもりだ。

だがその成果が実戦で敵を前にして発揮できるのか、果たして通用するのかと不安が渦巻いている。

 

 

「できるのかな僕に」

 

 

思わず不安を口にしてしまったシオンは誰かに背中をポンと軽く叩かれ、ふと背後に首を動かす。

そこにいたのはエイルで強ばった顔色であるもののシオンに温和な声色で言う。

 

 

「今からそう卑屈になることはない。これまで自分なりにやってきたんだ」

 

「でも」

 

「どうしても危なくなったら周りを頼ればいい。あくまでも重要なのは勝つことじゃない。生き残ることだ、それ以外はあんまり考えない方がいい」

 

 

どうしてこんなにも落ち着いていられるのだろう。

これから戦いに赴くのにもしかしたら死んでしまう危険性に溢れている場か待っているにも関わらず、冷静さを保っていられるのか、シオンは彼の神経を疑ってしまう。

前にも同じことがあった。

ブランネージュに戦う覚悟を問われ自分がどうすればいいのか悩み、初陣となる戦いに臆していた時同じように彼は面倒を見てくれた。

 

しかし彼には恐怖がないのか、はたまた彼はそんなことさえ気にならない程に図太い性格の持ち主なのか答えを知りたくて訊ねようとするが、この思案の間にエイルは何処かへ去ってしまっていた。

 

 

「生き残ることが大事…か」

 

 

シオンはそう不安がる自分に言い聞かせると仲間たちと同じく戦いの準備に入る。

 

 

(僕にどれだけのことが出来るだけかわからない。けど自分のことぐらいは満足に守ってみせる)

 

 

仲間たちに迷惑をかけないように自分の身は自分で守る。

それぐらいの度胸はなくてはこれから始まる戦いの土を踏む資格はない。

丹精込めて磨きあげられた大剣に映したシオンの眼は強固な意志が片鱗を垣間見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

旧街道は酷く入り組み標高が高い山脈だ。

横幅がなく横一列の編隊を組めずルーンガイストの軍勢は縱一列での行軍を余儀なくされていた。

足並みを揃えシルディアの平原への山道を進む中、ルーンガイスト兵士隊長の証である青銅の甲冑を纏う男にそのすぐ背後に付き添う一人の兵士が不安混じりに声をかける。

 

 

「隊長、よろしいのでしょうか?いくら敵の戦力が少数と言っても抵抗がないとも限りません、もう少し警戒して進んだ方がよろしいのでは?」

 

「何案ずることもない。わかってはいるだろうがシルディアの兵どもは最早兵士としての機能を失っている。あの国にはもう使い物にならない人間ばかり、仮に抵抗があるとしてもこの軍勢の前では何もできんよ。全く恥さらしもいいところだ…兵のない小国の一つまともに落とせんとは」

 

数日前に先見隊にしてはそれも防衛面がまともに機能していない小国には充分過ぎる数の戦力が、シルディアに派兵されたにも関わらず惨敗。

その上命からがら逃げ帰った兵士の証言では敵は10人にも満たない少数であったとの話だ。

これではとんだ間抜けな連中だ

 

 

「今に見ているがいいシルディアの愚か者たちよ。我々ルーンガイストに牙を向いた狼藉、その愚かさを悔いたままくたばるがいいわ」

 

 

-浮き足立ち付け上がったシルディアの連中にルーンガイストの本当の実力を知らしめてやる。

そんな彼の元に雷の轟音にも似た奇妙な音と兵たちのものとおぼしき上擦った悲鳴が伝わってきた。

 

 

「うわあああああああ!」

 

「どうした、うわあああああああ!」

 

 

兵の叫びに動揺を露にする隊長格の兵士。

原因を突き止めるより前に岩肌に乗って滑り落ちる岩に頭上を取られ、彼もまた指揮を取る部下と同じ末路を辿る。

 

 

「半分弱削れたか…後は俺たちで片付けるぞ」

 

「任せとけって団長。行くぞ、エルウィン」

 

「ちょっと先に行き過ぎ!もう一人で勝手に突っ走らないでよ!」

 

 

混乱に陥いり退き出したルーンガイストの兵にシオンと今回彼のパートナーに任命されたエルウィンが、追撃に入る。

紫電の剣閃と精霊の霊力を宿した矢が敵が密集するど真ん中を襲い、兵士たちの血潮が撒き散っていく。

 

 

「敵襲だと!」

 

「落ち着け!相手の数は少ない、態勢を整えれば勝てない相手ではない!」

 

「隊列を乱すな!」

 

「遅い」

 

 

襲撃と知覚した残存の兵士は逃げ惑いつつ態勢を建て直そうと発破をかけるも、武器を強く握り締める間もなく空中より降り注いだ氷刃に他の兵士もろとも片足を貫かれていた。

 

 

「ここは片付いたようだがこれだけではないだろう?」

 

「そ、まだ奥の方にたくさんいる。岩を落とした音のせいで気付かれたかもだけど」

 

「関係ねぇよ。残さず潰してやりゃあいいだけだ」

 

 

ブランネージュの魔法で山道上の兵士は一掃できたようだが、マオによればまだ奥の出口の側に敵がいるようだ。

シオンとエルウィン、ヴォルグは道なりに沿って駆け足で下って行きリュウナとラザラスも続く。

 

 

「アタシたちも行こう、エイルくん、ブランネージュ」

 

「……」

 

「?…どうかしたか?」

 

 

マオの呼びかけに上の空な様子のエイル。

そんな彼にブランネージュがマオに代わって声をかけると、エイルは反応しぎこちない苦笑混じりに二人に詫びを入れてきた。

 

 

「大丈夫エイルくん?」

 

「ごめん何でもない。行こうか」

 

 

たったそれだけ言ってエイルはマオとブランネージュの間を抜けて行く。

どこか異質な感じを匂わせるエイルにブランネージュは不審めいたものを抱くものの、マオを連れ添ってその後ろへと走った。

 

 

 

 

 

 

戦闘開始から間もなく一時間が経とうとしていた。

エイル・ブランネージュ・マオの三人は仲間と分断してしまった。

だがルーンガイストを二手に分散して叩くという捉え方をすれば、結果的には成功と取れるだけの戦果は上げていた。

並み居る兵士を剣術で切り捨て、魔力で構成された氷刃で貫き、クナイや爆薬のような飛び道具を用い攪乱しながら仲間との合流を目指すエイルたち。

 

 

「もういないよね?」

 

「そう願いたいが団長たちと合流するまでは気を抜けないな。伏兵が忍び期を伺っている可能性もある。このあたりは緑に囲まれているからな、身を隠すには持ってこいの環境だろう」

 

「警戒心を緩めなければさほど問題ないと思う。ブランネージュの言うように団長やシオンと合流するまでは安心はできない」

 

 

ブランネージュの言葉に同意した時エイルは目の色を変え、バッと身構えた。

嗅覚でも聴覚でも視覚でもない自分の一部のどこかが何者かが、接近してくることを告げているのだ。

上手く言い表せないが気のせいの一言では捨てきれようのない信号が警鐘のように、発生している。

当然ながらブランネージュとマオは同じ感覚を共有できていないがエイルの雰囲気からただならぬ何かを見抜き、いつ襲われてもよいよう臨時態勢をとった。

静けさが場を支配し、時間と共に穏やかな風が過ぎた。

 

 

「-来る」

 

 

脇の茂みから一筋の銀が走り、その描いた道筋がエイルの髪先を掠める。

瞬時に回避行動に徹したエイルの目の先には、見た目二十程の青年がこちらを凝視する。

夜空を彷彿とさせる紺の短髪に反した焔のような力強さをたぎらせる紅の碧眼、軽装ながらも質感の良い上等な鎧を覆う朱色のマント。

そして何よりも磨きあげられた太刀が彼-ゼーレ・トランバーの闘志に呼応するように、射し込む陽光をギラリと反射していた。

 

 

「悪いがここより先へは私の許可なしに立ち入ることは断じて許さん」

 

 

 

 

 

 

 




どうでもいい話ですが、メインキャラの誰がどの台詞なのか分かりやすくするために話し方だけでなく一人称でも判別しやすいようにしてます。

僕→シオン・エイル・ガラハッド
俺→ヴォルグ・カイネル
オレ→ラザラス
私→リュウナ・ブランネージュ・ピオス・ゼーレ・ケイロン
あたし→エルウィン
アタシ→マオ

見事なまでの「私」率の多さ…

次回は丸々戦闘回にするつもりです。
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