ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
魔法界は、「闇の帝王」ヴォルデモートと名乗る青年に支配されていた。
真っ赤な瞳、漆黒の髪、そして誰よりも整った容姿を持った残酷非道な闇の魔法使い。莫大な力と勢力を持っている割にはとても若く見える。
ヴォルデモートは、「愛」というものが理解出来なかった。
しかし、ある日に予言を信じてポッター夫妻を殺しにいった際に、目的の赤ん坊を殺そうとした時、闇の帝王の前には、一人の少女が立ちはだかった。
少女はヴォルデモートと同じ、赤い瞳と深い闇のような髪。
「この子には手を出さないで! 人殺し!」
「...」
ヴォルデモートは少女を殺そうとした。しかし、何かが彼の中でうずいた。何か、熱いものが。運命のようなものさえも感じるのだ。
彼はしばらく少女の顔を呆然と見つめていた。
少女は其れを見計らい、ベビーチェアの中で闇の帝王と同じく呆然とした、赤ん坊を抱き上げる。そして杖を持ち、今にも「姿くらまし」をしようとしていた。
「『クルーシオ! 苦しめ!』」
「あ゛...アァあッ!!」
少女は何と表現して良いか分からないほど激痛に襲われ、赤ん坊を抱きしめながら床に倒れ込む。
「アァあッ!! ...ゲホっケホッ」
激痛が収まるも、ヴォルデモートの心は、何だか苦しくなる。人を苦しめて、こんな気分になったのは初めてだったのだ。
「...お前は、生きる道を選ぶか」
ヴォルデモートは少女に問いた。感じた事のない感情を、この少女だけには感じた。
「この子を...ハリーを生かしてくれるのなら、私は死んでも構わない」
「...その子供を殺し、お前を生かす」
「命にかえてもこの子は守るわ」
「何故だ」
「大切な、弟だからよ...貴方には到底分からないのかもしれないけど...」
「...」
ヴォルデモートは、無言で少女の意識を奪った。服従ではない。あくまでも意識を奪ったまでだ。既に杖を落としてしまった少女には、もはや抵抗など不可能。
闇の帝王は少女を抱えた。普通なら魔法で浮かべる所だが、何故か自らの手で触れたかった。
気絶しても尚、赤ん坊を離そうとはしなかった。だがコイツは邪魔だ。
魔法で無理矢理赤ん坊を引きはがすと、ベビーチェアに放り込んだ。赤ん坊も気絶をしているのか、声一つ上げない。
滞在しているマルフォイの屋敷に戻った時には、勿論驚かれた。邪魔者は老若男女関係なく殺す闇の帝王が、一人の少女を抱きかかえているのだ。
「ご、ご主人様...その娘は...」
「ルシウス、そう言えばこの屋敷には地下牢があったな。この娘をそこへ連れて行け。鎖で繋ぎ、決して逃げられないようにするのだ」
「か、畏まりました...」
ルシウスと呼ばれた白髪の男性はお辞儀をする。そして少女は丁重に運ばれ、広い広い地下牢に繋がれた。
*
少女の名は、アイル・ポッター。ジェームズ、リリー・ポッターの娘で、ハリーの姉だ。ルシウスが調べた所、ホグワーツの六年生のようだった。
抵抗不可能な事を理解したアイルは、ヴォルデモートに素直に従った。まだ死ぬ事なんて出来ない。この男を殺すまでは、死ねない。
「アイル、僕の事をどう思う?」
「...分かりません、ご主人様」
ヴォルデモートは、魔法で自らの顔と体を若返らさせた。そちらの方が釣り合いが取れるともでも思ったのか、どうなのか。流石にあの第一印象はマズイ。明らかに若い彼の姿を見て困惑したアイルは、彼自身の説明によって全てを理解した。
「可愛いなぁ...ホント、全て壊してしまいたいくらいに」
「...」
ヴォルデモートの手が、アイルの頬に触れた。途端に彼女はビクッと震え上がる。
「怖いのかい? 大丈夫。アイルを壊したいだけだから。だから、何度も何度も壊して、何度も何度も直してあげるよ」
「っ...」
「アイルは僕だけを見ていれば良い...ほら、食事も用意してあげたよ。口を開けて」
ヴォルデモートの手元には、食事の入ったトレイが置かれていた。アイルは素直に従い、口を開ける。
彼は満足げに笑うと、コップに入った水を飲ましてくれた。
「ほら、美味しいだろう?」
「は...い」
アイルは彼に質問した。
「ハリーは?」
「殺してはいない。だが、あの家に置いて来た」
「...っ、ハリー...」
「...」
途端、ヴォルデモートは怒りを覚えた。
アイルは自分だけのものなのに、ハリー・ポッターなどという赤ん坊を心配している。自分だけを見ていれば良いのに...。
彼は考える。
そうだ、殺してしまえば良い。なに、殺した事がバレなければ良い話だ。
其の夜、ヴォルデモートは全てを失った。
ハリー・ポッターを殺そうとした事により、全てを失った。肉体は破壊され、赤ん坊には稲妻の傷が残された。
ヴォルデモートは霊魂だけの存在となった。しかし、まだ復活をもくろんでいる。魔法界だけでなく、アイルを再び支配するためにーー
何となく書きたかったんだ、こういうの。
ええー、プロローグだけでは分からんと思いますが本作は非常にカオスですので、ご覧の際にはマトモな人間はほとんどいないと考えてもらえると嬉しいです。