ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
それから一ヶ月が過ぎた。ルシフは普段笑顔を見せないクールな教師だが、アイルの前だけデレるというギャップが女子からの絶大な人気を誇っていた。「闇の魔術師対する防衛術」の授業は中々分かりやすく楽しいらしく、教科自体も全校生徒から支持を得ていた。
この頃、長い髪を緑色のリボンで結んで上機嫌だった。実はアイルからのプレゼントだったりするのだ。
一ヶ月間過ごしてきたが、アイルはいつの間にかルシフの事が好きになっていた。最初はその感情がわからなかったが、彼に聞いてみたら、赤らめながら「それは恋だ」と教えてくれた。ヴォルデモートもこんな感覚だったのかな、と闇の帝王の気持ちも考えてしまう。アイルは、好きな人をどうにかして手に入れようとしようとは思わない。しかし、初めてのこの気持ちは大切にしたいと思っていた。
お付き合いも初めた。しかし、ある日夢の中で誰かがアイルに聞いた。
「先生は、マルフォイを恨んでいたんではないですか?」
と。ごもっともな意見だが、アイルは自分に正直に答えた。
「私が恨んでいたのは、結局ヴォルデモートただ一人。本当は彼らの事を恨んでなかったのよ。ただ嫌いだと決めつけて、自分が苦しい事への『言い訳』にしていただけ…本当、弱い人間よね」
仕方なかった、そんな事分かりきっていた。恨んでいたーーなんて、そんな事はなかった。ただ単に現実から逃げていただけだ。なんて自分は酷い人間なのだろう、と心の底から反省した。
「あらお三方、相変わらず仲良しですなぁ」
ハリー、ロン、ハーマイオニーは、あのハロウィーンの日に何やかんやあったらしく、何だか親友になっていた。びっくり。
アイルと散歩をしていた三人組は、立ち入り禁止になっていた4階の廊下に入ってしまったと聞いた。
「そうなの…仕方ないなぁ」
「先生、怒らないんですね」
「ん? だって間違えて入っちゃったんでしょう? 怒るなんて…理不尽じゃない。迷いやすいしね」
「っ…ありがとうございます!」
栗毛女子のハーマイオニーは、とにかくアイルにその話をすべきか悩んだようだ。成績優秀の彼女は、それを落としたくないのだ。しかし、ハリーの姉だから良いだろって話す事にしたらしい。
「ただ、他の先生には言っちゃダメだよ? 罰則じゃ済まなくなるかもしれないから…」
「あそこには、三頭犬がいたんです。な? ハリー」
「あ、うん」
ロンにそう言われ、ハリーも大きく頷いた。
「三頭犬…フラッフィーの事ね」
「フラッフィー?」
「ハグリットのペットよ」
「ぺ、ペットにあんなモノを?!」
「『禁じられた森』に入ってみなさい。あんなの可愛いモノよ」
ハーマイオニーは信じられない…という驚愕の表情を浮かべ、ハリーは素朴な疑問を感じた。
「あの犬は…何のためにあるの?」
「これ以上はダメよ。クビになっちゃう…」
「え…」
「どうしても知りたいのなら、ヒントを上げるわ。『不死』『黄金』…よ。後は自分で調べなさい」
「『不死』…『黄金』…」
ハーマイオニーは復唱する。本気で知りたいのかもしれないが、アイルは三人の好奇心に答えるほど甘くない。これでも教師だ。いくらハリーでも、機密事項は漏らせない。
「お姉ちゃん、機嫌良いね」
「んっふふ〜、気づいた? 実はね、ルシフにこれ貰ったんだ〜」
アイルは嬉しそうに左手首を見せた。そこには、銀色のチェーンの黒の光沢のある宝石がついたブレスレットがあった。
「まぁ、素敵!」
「ありがとうハーマイオニー。ルシフったら本当に優しい人なんだから〜♪」
「良かったねお姉ちゃん。初めて恋人が出来たね」
「っ、皮肉なの? 嫌味なの? ハリー」
ハリーは少し悲しそうな目をしていた。ロンとハーマイオニーはその原因が分かっている。大好きなお姉ちゃんに、恋人が出来てしまったからだ。今までずっと相手がいないのは可哀想だなとは思っていたハリーだったが、それならば一生そのままで良いとも思っていた。ずっと自分の側で笑っていて欲しかった。恋人ができたら、もしかしたら自分から離れていってしまうのではないか、取られてしまうんじゃないか…という不信感があったのだ。
「別に…」
「(あー、これ不機嫌だなハリー)」「(しょうがないわね。後で元気付けてあげないと)」
「む〜、じゃあみんな、ハグリットの所にいかない? 丁度彼、見せたいモノがあるって言ってたし」
*
ハグリットの小屋は、「禁じられた森」のすぐ側にあった。トンガリ屋根のホグワーツに比べるととても背の低いレンガの家だ。しかし、近づくと2メートル以上はあるのではないかと思うくらいの大きさだった。近くの畑にはカボチャや野イチゴが植えられていた。三人共、この場所に来るのは初めてだった。
「ハグリット〜、いる〜?」
アイルは小屋の大きな扉をノックした。すると、中でギシギシという軋む音がして、扉が勢い良く開いた。ハリー達は驚いて飛び上がった。
「おう、アイルか。いつ来るかと待っとったぞ」
小屋の中から、髭もじゃの巨大な男が出てきた。三人共その大きさに唖然としていた。普通の人の2倍はあるのではないかという縦幅と横幅。そして豊富な髪と髭。切っても切っても無くなりそうになさそうだった。
「やぁハグリット。今日はハリーとそのお友達も連れてきたんだよ」
「おお、みんな、まぁ中に入れや」
彼は朗らかに笑うと、扉を開けたまま中に入った。アイルが先導して、三人も中に入る。少し埃っぽい小屋だった。鍋やら何かの卵やらが天井からたくさん吊り下げられ、アイルは何も言わずに近くにあったイスに座った。すると、黒い大きな犬がアイルの元にやってきた。
「嗚呼、久し振りだねファング。相変わらずじゃないか」
アイルはファングの頭を撫でる。ハグリットは、そこに大きなケーキのようなモノを持ってきて、自分も座った。
「お前らも座りぃや」
「あ、ありがとうございます」
ハリー達は、大きなソファに三人で並んで座った。なんとも言えない空気が流れたが、アイルは嬉しそうにファングの頭を撫でるだけだった。
「おうお前さんら、俺はハグリット。ホグワーツの森の番人だ」
「僕はハリーだよ、ハグリット」
「お前さんがハリーか。いやぁ、ジェームズに似てるなあ。ただ、目だけは母さんだ」
ハグリットは堪能したような笑みを見せ、他の二人に目を向けた。
「私は、ハーマイオニー・グレンジャーよ。ハグリット」
「僕はロン・ウィーズリー」
「お? またウィーズリーか? あの家は子供が多いな。お前さんの兄さん達にはいつも手こずらされてるぞ。お前さんからも一言言ってくれ」
「フレッドとジョージ?」
「そうだ。『禁じられた森』に入ろうとしてな」
彼は苦笑いを浮かべながらため息をつく。
「フレッドとジョージは、中々面白い生徒よね」
「そう言うのはお前さんだけだ」
「でもね…彼らは本当に面白いんだよ」
アイルは楽しそうに笑う。フレッドとジョージは、アイルからしたら面白い生徒なのかもしれない。とても気が合うし、口が上手い。
「そういえばアイル、ルシファースト・マルフォイと恋人同士だって聞いたが? 事実か?」
「…まぁ、そうね」
「お、そんな目で見らんでくれ。俺はスリザリンとかグリフィンドールとか、寮同士の偏見は持たないつもりだ…良かったなアイル」
「ありがとうハグリット。それで、見せたいモノって何なのかしら?」