ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください   作:カドナ・ポッタリアン

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あの部屋

 

 

 

 ハリー達は透明マントの中に隠れ、ルシフの部屋に向かった。「闇の魔術に対する防衛術」の教室は、4階にある。教授方はほぼ、自分のクラスの教室の中にある階段を上がった先の、部屋で寝泊まりしている。この間ハリーが盗み聞きした場所も、教室の中にある部屋だった。階段を上がったその先には、一体何が待ち受けているのか。それは誰にも分からない。でもただ彼らは、高まる鼓動をいなし、マントの中で身を縮め、歩いているのだった。

 静けさが冷えとなり、肌に鋭いモノを突きつけた。固唾をのみ、足音が立たないように進んだ。

 ホグワーツはまだ明るかった。永遠と続くように長い階段は、大広間のように蝋燭が何個も浮いていた。肖像画の主達は、深い眠りについている。羽飾りのついた大きな帽子を被った紳士は、蝋燭の明かりの所為で何度も目覚めていた。

 ついに4階へとたどり着き、教室へと足を向けた。声が出せなくて、お互い意思共有する事も出来ない。周りは広く、マントにはまだ隙間があるというのに、とても狭い空間に押し込まれているような感覚だった。

 教室へと繋がるドアをそろりそろりと開け、中に入った。誰もいない、シンとしたたくさんのツクエが並ぶ教室だ。月明かりがガラス窓から差し込み、哀しく輝いていた。

 すると、ハーマイオニーが小声で言った。

 

 

「ねぇハリー…大丈夫なの? 乗り込むつもり?」

「当たり前だよ。お姉ちゃんを助けるためだったら…僕は何でもする。君達まで巻き込みたくないから…こん中にいてよ」

 

 

 ハリーは一人で透明マントから出て、二人の無言の制止も虚しく、教授の部屋へと続く階段を駆け上がった。当然親友を止めないわけにもいかず、透明マントを脱ぎ捨てた二人の若者もまた、階段を駆け上がる。音でバレそうだが、もう引き返すわけにはいかない。

 しかし、杖を持った心優しき友は、ドアを凝視して殺気立っていた。到底、言葉で止められるわけなかった。

 何か言うまでもなく、ハリーはドアを蹴り飛ばした。その華奢な体に何故そんな力が眠っているのかは分からないが、ドアは金具もろとも吹っ飛んだ。普通に開けるという選択肢は、ハリーの中に存在しなかった。

 ズカズカと部屋の中に乗り込み、ハリーは杖を構えた。

 

 

「ルシファースト・マルフォイ! お姉ちゃんを返せ!!」

 

 

 しかしその怒鳴り声は、部屋の中で空回りした。ロンとハーマイオニーも中に飛び込んだ。しかし、部屋は私物や何か特殊な機械のようなモノ、たくさんの本が詰め込まれた棚などがあるだけで、人の姿はなかった。ルシフも、アイルも見当たらない。

 ただハリーは、壁付近でしゃがみこんでいた。

 

 

「いないわね…二人共。ハリー、どうしたの?」

「…これ見てよ」

「うわっ、何だこれ!」

 

 

 ハリーの見ていたそれは、鎖を手錠だった。よくよく見ていると、赤黒い何かがこびりついている。随分と悪趣味な拘束用具だった。アイルが捕まっていた、というのはあながち間違いではなかったようだ。

 

 

「あの変態ハゲ…お姉ちゃんをこんな汚い場所に監禁して…殺したらお姉ちゃんご褒美くれるかなぁ」

「ハリー、君怖いよ…でも、監禁されてたのは君の姉ちゃんだとは限らないよ? だって、クリスマスにダンブルドアのお使いで仕事をしてるってあっただろ?」

「あれは、マルフォイの奴が偽の手紙を送ってきてたんだよきっと…お姉ちゃんに無理矢理書かせて…僕が怪しまないように…」

 

 

 彼はキッと歯を食いしばった。その苦しい表情からは、何よりも大きな怒りを感じた。これを抑制できるのは、彼自身とアイルしかいないだろう。この怒りの矛先を何処へ向ける? そう問われれば彼は迷わず「マルフォイ」と答えるだろう。

 ハーマイオニーは少し安心した様子でハリーに言った。逆上させないように、慎重に、だ。

 

 

「ね、ねぇハリー…もう夜も更けたからそろそろ寮に戻らない? ほら、アイル先生無事だって分かったでしょ?」

「違うよハーマイオニー、まだマルフォイがいるであろう場所があるんだ」

「えっ…?」

「大丈夫だよ、君達に心配はかけないから」

 

 

 彼の纏う殺気は、恐らくヴォルデモートでさえ怯むような強いモノだった。ロンとハーマイオニーの目には、そんなハリーはアイルがルシフに捕まっていると完全に思い込んでいるようだった。怖かった、こんなハリーは恐ろしかった。でも二人は、それでもハリーの良き友人であり続ける。それはハリーのためでもあるし、自分達のためでもある。

 

 

「ど、何処なの?」

「ほら…あの立ち入り禁止の部屋だよ。この間、マルフォイがそこに入るのを見たんだ。絶対、あそこにいるはずだよ」

「分かった。じゃあ行こう」

 

 *

 

 あの三頭犬のいる立ち入り禁止の部屋、ハリーは躊躇なく飛び込んだ。一人で行かせるわけにもいかず、二人も恐る恐る中に入った。

 音楽が聞こえる。優しいハープの音だ。ふと前を見ると、真っ黒な三頭犬がグッスリと眠っている。右には、金色のハープが独りでに動き、美しい旋律を奏でていた。小さな窓から入る月明かりだけが、この部屋を照らしていた。

 すると、ロンが小さくささやく。

 

 

「眠ってる…マルフォイは何処に行ったんだ?」

「…これだよ」

 

 

 三頭犬の大きな腕の下には、大人一人ならギリギリ入れそうなドアがあった。ハーマイオニーが魔法で持ち上げ、ハリーがドアを開けた。下にも明かりがあるようだったが、中の様子はよく見えなかった。

 

 

「きっとこの奥だ」

 

 

 ハリーはそれだけ告げると中に飛び込んだ。ロンとハーマイオニーも飛び込んだ。途端、体全体に激痛が走る。骨が折れたような気がしたが、動かす事が出来たのでそんな事はなかった。

 

 

「『ルーモス 光よ』」

 

 

 ハリーは杖を右手にそう唱えた。真っ白な光が辺りに広がり全てを照らした。石の壁、石の床、上を見上げると開けっ放しのドアが見えた。

 三人は次々と進んでいった。道中、首と胴がバラバラで血まみれとなったトロールや、破壊された大きなドア、散らばったたくさんの鍵、捥がれた羽、そして粉々になった大きなチェス盤ーー全て何者かが通った後のようだった。

 

 そして最後にあったのは、楕円形の部屋だった。壁に何か貼ってあったので、ハーマイオニーは口に出して読み上げる。何やら暗号のようだった。

 近くの細長いテーブルには七つの小瓶が並んでおり、全て同じ形をしていた。後ろを振り向いてももう戻るドアはなく、その場所は大きな黒い炎が燃え盛っていた。閉じ込められたのだ。今存在するのはこの部屋だけ。何だかとてつもない恐怖が三人を襲った。

 暗号によると、この七つの小瓶のうち、一つがこの先へ。一つがこの部屋の前へ。そしてもう一つが暗黒へと誘うという。これを飲んであの炎の中に飛び込めば良いようだったが、ほんの一口分しかない。

 

 

「この問題は、一体誰が作ったのかしら? まぁ誰にせよ、とても頭の良い人だって事は確かなようね」

「ハーマイオニー、解ける?」

「えぇ。自信満々というわけにもいかないけど。でも困ったわ。どうやらこの部屋に三人来るとは誰も思っていなかったようね。一つが暗黒へ…無事とは言えないかもね」

「ハーマイオニー、この先へ進むのはどれ?」

 

 

 ハリーが聞くと、彼女は一番真ん中の小瓶を指差した。

 

 

「僕がこれを飲んで先へ進む。そしてお姉ちゃんを助けて、マルフォイの野郎を八つ裂きにする」

「は、ハリー…」

「そして、何方かが戻る薬を飲んで、ダンブルドアを連れて来るんだ。そしたら此処に残った人は大丈夫だろう?」

「…ハリー、君本気なの?」

 

 

 ぼそっとロンがつぶやいた。今まで特に口を挟もうとはしなかったロンだったが、もう我慢の限界だった。

 

 

「君は一年生だよ? マルフォイは先生で、熟練の魔法使いだ。一人じゃ危ない。君も此処に残るか、戻ってダンブルドアを呼ぶべきだ!」

「僕はお姉ちゃんをーー」

「正気の沙汰じゃない! 君おかしいよ!! そりゃあ、僕にも年上の兄弟が何人もいる。だから君の気持ちは死ぬほど分かる。大好きな人がいなくなって、悲しくて、孤独で…君にとって、先生は凄く大切な事、僕達分かってるよ」

 

 

 ロンはその真っ赤な赤髪に負けないくらい耳を赤くして言った。ハリーは表情一つ変えず、彼の言葉を耳に入れていた。

 

 

「でも、先生は君に傷ついてほしくないと思うんだ。誰かを傷つけないでほしいと思うんだ。先生ならきっと大丈夫だよ。ねぇハリー、気は変わらないかな?」

「…」

「僕もハーマイオニーも、君が大好きだ。とても大切な親友だ。だから、君が先生を想うように、僕達も君を想ってるんだ。君には笑っていてほしいんだ。正直、僕は怖いよ」

「…ロン、君が何を言おうが僕は変わらない。戻るつもりはないし、お姉ちゃんを助けるって気持ちも一緒。危険なのは承知だ。殺す殺す言ってるけど、まだ未熟な僕にマルフォイは倒せない。でも、お姉ちゃんがいなくなったら、僕…生きる意味を失っちゃうから」

 

 

 ハリーは優しく笑うと小瓶の中身を一気に飲み干した。全身が冷たくて、石みたいに固くなった。しかし怯まずに彼は炎の中に飛び込んだ。二人の親友の制止も届かず、ハリーは炎に飲まれていった。

 

 目を開けると、そこには誰かがいた。まだ試練があるのかと思ったが、そんな事はなかった。先客がいたのだ。一人は血だまりの上に倒れ、一人は大きな鏡の前で立っていた。

 

 

「お姉ちゃん!」

 




何でお気に入りが増えないのだろうか...文章量? 時間帯? ストーリー?
そして、自分の文章力が低い事に気がつく...悲しきかな、これは才能だからな(T ^ T)
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