ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
夜は更け、真ん丸な顔が闇から姿を現した。数多に輝く宝石達が笑顔で地上を照らし、天から古車が舞い降りてきた(物理)。
大きな怒鳴り声が辺りに響き、その車は静かに道路に着地した。ハリーは驚きのあまり声も出ず、アイルは満足そうに頷いていた。途端に車の中から、燃え盛る少年が姿を現した。前よりも背がかなり伸びたような気がしてならない少年は、息を弾ませていた。そばかすだらけだが、その可愛らしい顔立ちは未だ健在していた。
「ハリー! あぁ、やっと会えたね!」
「ろ、ロン?! 何で此処に…もしかして、お姉ちゃん?」
「エ、ナンノコトダロウナー…」
アイルはそっぽを向いて月をジッと見つめた。すると、二つの低い重なった声が聞こえた。
「「おう、せんせーい」」
「あぁ、面白ツインズも来たんだね」
車の中では、同じく赤毛の瓜二つの少年が二人いた。車の窓から体を乗り出し、ハリーとアイルを見るや否や、ニヤニヤし始めた。フレッドとジョージだ。相変わらずの息ぴったりさに、流石のハリーも驚くしかなかった。そもそも、この車は何だろうか。
「お姉ちゃん、何でロン達が此処にいるの?」
「だって、もう叔父様が学校には行かせん!って言うし、夏休み中あの場所にいても退屈でしょ? だから、ウィーズリー達を呼んだの。こんな手段でくるとは思わなかったけど…私好みよ。ナイス!」
「えっ…僕、行っても良いの?」
「ハリー、これが私からの誕生日プレゼント。目に見えるモノじゃなくてごめんなさい」
「ううん! 嬉しい!」
何だか気が晴れた。やっぱりお姉ちゃんは、僕の事を忘れないでくれていたんだと分かると、物凄くホッとした。
急いで黄色の古車に乗り込み、後ろに座るロンの隣についた。
「そうだ! 荷物は?」
「既に彼らの家に送り済み。大丈夫よ」
「お姉ちゃんは乗らないの?」
「私は…ちょっと用があるから。先に行ってて」
「う、うん…」
痛そうに悲鳴をあげるエンジンがかかり、車は空へと飛び上がった。ハリーの騒ぎ声が聞こえる。上空へと舞い上がると、車は見る見るうちに姿を消した。
アイルはその姿が消え失せたのを確認すると、小さくフッと笑った。そして、大きな声で呼びかける。
「ねぇ、何かな? さっきから私達の事ジーッと見つめて」
「ひぃっ」
「『ステューピーファイ! 失神せよ!』」
「うわぁあ!」
アイルの杖先は、近くの茂みに向いていた。茂みをかき分けて覗いてみると、拳くらい大きな目で、ダブダブのゴム手袋のような尖った耳や肌を持ち、ボロボロの古い汚い布切れを体に巻いている生き物がいた。屋敷しもべ妖精だ。
膝くらいの高さまであるこの生き物は、体が痺れて動かないようだった。
アイルはため息をついてその生き物を持ち上げ、近くの公園まで連れて行った。もう誰もいない公園は、昼とは抽象的な静かな場所となっていた。
ブランコに腰掛け、膝に生き物を乗せてアイルは言った。
「貴方…お名前は?」
「ど、ドビーでございます…お嬢様」
「そう。ドビーっていうのね。素敵よ。ねぇ、何故私達をつけていたの?」
「そ、それは…」
ドビーと名乗る生き物は、アイルの膝から飛び退いた。その目は涙で濡れ、ウルルと揺れていた。体は震え、何かに酷く恐れている様子だった。アイルはそんなドビーを見て、小さく笑った。
「大丈夫。私は貴方を傷つけはしないし、怒りもしない。何を恐れているの? もし貴方が望むのなら、守ってあげる事が出来るわ」
「ご主人様は…ドビーのご主人様でございます。ご主人様の命令は絶対なのです。本来ならドビーめは、この場所に来てはならないのです。彼の方の愛する貴女様と、こうやって話す事も許される事ではないのです」
「愛する…?」
途端、アイルの表情が変わった。自分を愛する人間…それは自分でも数え切れないほどいるとは分かっている。しかし、屋敷しもべ妖精を持つ人間は、相当地位が高く、金持ちなはずだ。今の魔法界でも、屋敷しもべ妖精を家に置く魔法使いは多くない。と考えると、今の範囲ではドビーのご主人様はルシフかヴォルデモートという事になるがーー
「貴方のご主人様は誰!」
「ど、ドビーめは…それは言えないのでございます。ただ、警告を」
「警告…? どういう事?」
「ご主人様が仰っておりました。今学年、ホグワーツは闇に包まれると。人が死ぬと。だからドビーめは、かの最強の魔法使いである『例のあの人』を倒したハリー・ポッターと、闇の帝王すら魅了した貴女様を守ろうと警告しに参りました。今年、貴女方は、ホグワーツ魔法魔術学校に戻ってはなりません」
「…そう。ご丁寧にありがとう。でも、私は大丈夫よ」
彼女を知る人間にこう質問すると良い。
「魔法界の中で最も強い者を三人あげよ」と。
そうすれば、全員がこう答えるだろう。
「ダンブルドア、『例のあの人』、そしてーーアイル・ポッター」と。
もしも彼女を知らない人ならば、アイルの位置には「グリンデルバルト」という名の闇の魔法使いが入るだろう。つまり、アイルの力量はダンブルドアやヴォルデモートと等しい…いや、もしかすると少し下か、それ以上かもしれない。それほどまでに強いのだ。
「一つ聞くけど、その闇に包まれて人が死ぬっていうのは…ヴォルデモートが関係しているの?」
「その名を…!! …いいえ、『例のあの人』は関係しておりません」
「じゃあ、もっと大丈夫」
魔法界最強のダンブルドアとアイル・ポッターがホグワーツにいるのだ。ヴォルデモートが敵に立たない限り、この二人がいればホグワーツは世界一安全な場所となる。それは、如何なる敵がやってこようとも、ヴォルデモート自身が出向かなければ敵わない。尤も、一対一ならば兎も角、二対一ならば圧勝だ。ヴォルデモートなしにして、ホグワーツが危険にさらされるなんて、有りえない…アイルはそう思っていたのだ。まだこの時は。
「ドビー、伝えに来てくれてありがとう。とても嬉しいわ」
「ど、ドビーめは…貴女様と会えて光栄です」
「そう。良かった…良ければ、もう少しお話しないかしら?」
*
一方、黄色い鉄の塊の中は、声が飛び交っていた。車は姿を隠して空中を掻き、インクの中を泳いでいた。ハリーは日本の聖徳太子ではないので、三人が同時に話したら、聞き取れるわけがなかった。それでも彼らは問いを続けた。
「どうして手紙をくれなかったんだ?」
「あぁそうだ、お誕生日おめでとうハリー」
「先生はなんであんな美人なんだよ?」
「家を抜け出して大丈夫か?」
「誕生日プレゼント用意してるんだぜ」
「兎も角、先生無茶苦茶綺麗!!」
否、問いでも何でもなかった。ロンは純粋にハリーに質問をするが、ジョージは誕生日の事、フレッドはアイルの事ばかり言っていた。ハリーは苦笑いするしかなくて、小さくため息を漏らしていた。運転は大丈夫なのかと一瞬頭に考えがよぎったが、多分フレジョの事だから何があっても大丈夫だろうと思っていた。
散りゆく宵が段々とあけてきた。ハリーはロンの質問の答えを知らなかったので、何と答えるべきかかなり迷った。結局、どうするわけもなく朝となり、車は田舎のある一角に着地した。大きな鶏の鳴き声が、眠気に襲われていたハリーを吹き飛ばした。
車から降りると、ハリーはわぁ!と大きく感嘆の声を上げた。
とても不思議な大きな家だった。何だか、たくさんの小さな小屋が不安定に魔法でくっつけられているようで、赤い屋根に何本もの煙突が飛び出し、土の上では鶏や豚が楽し気に朝日を浴びていた。家の周りにある柵の入り口には、「隠れ穴」という看板がぶら下がっていた。物語の中に入ったような気分になった。
「変な家だろ? これでも、我が家さ」
「すっごい素敵だよ。世辞とかもなしに、物凄く好きだ」
「まだ誰も起きてないはずだ。さっさと入って隠れとこうぜ」
フレッドに背中を押されるまでもなく、ハリーは目を輝かせながら中へと入っていた。狭いが何だか暖かい、家庭的なリビングだった。たくさんの鍋が沸騰して泡をふかし、多くの椅子の並んだ細長いテーブル、歩く度に軋む床、窓から差し込む朝日は、新鮮な空気と共に流れ込んできた。全てが全て、とても新しくて素晴らしく思えた。
途端、大きなバチッという音がしたかと思えば、近くの階段から太ったおばさんがドタバタと音を立てて駆け下りてきた。
「ロナルド・ウィーズリー! フレジョ!」
「「「は、はい!!」」」
それは、ウィーズリーおばさんだった。目が若干腫れ、殺気立っていた。花柄のエプロンをかけ、片手にはフライパンを持っていた。今にもその鉄のパンで殴られそうだった。彼女はハリーを見るや否や、優しい撫で声を出した。
「一体、何処に行っていたの! 母さんは、心配で心配で…」
「だって、アイル先生に頼まれたからーー」
「それでも置き手紙くらいは残しなさい! 心配するじゃないの!」
「はい…」
「あぁハリー。貴方は責めてないのよ。ゆっくりしていってね」
「は、はい…分かりました」
「フレジョ! アンタ達は本当にもう…」
「まぁまぁおば様、あまり責めないであげてくださいな」
途端、家のドアが開き、麗しき女性が足を踏み入れた。
ちょ、ちょっとだけ言い訳をさせて。更新が遅れた言い訳をさせて。
新作ハリポタ二次をネリネリして書いてるんだウン。それも二作。だから大目に見てください。
アイル「時間止めれば良いのに」
カドナ「私はアンタみたいにチートじゃないんだよ」