ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください   作:カドナ・ポッタリアン

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庭小人と優しき父

 とりあえずアイルは、「隠れ穴」に姿現しでやってきた。あの後ドビーとしばらくお話をして、それからこの場所にやってきたのだ。ドビーは屋敷しもべ妖精で、主人は相当鬼畜な人のようだった。たくさんのお仕置きの跡が垣間見え、あまりにも可哀想だったので、傷は全て魔法で癒してあげた。

 ハリー達が何処に行ったのかはわかっていたので、アイルは戸惑う事なく姿現しを使った。ついたと思ったら怒鳴り声が聞こえた。それは、ウィーズリーおばさんが息子達を叱り付ける声だった。どうやら、彼らは許可を取らずに抜け出してきたらしい。元は自分の所為なので、フレジョとロンを弁護しつつ、隠れ穴の「庭小人」の駆除を手伝う事になった。

 庭小人を振り回しながら、ハリーはアイルに聞く。

 

 

「お姉ちゃん、ロンは僕に手紙を出してたみたいなんだけど…どうして僕には届かなかったんだろう?」

「えっ…あ、それは…」

 

 

 本当は、ドビーが手紙を全て捨てていたからだった。どうやら、どうにかハリーをホグワーツに行かせないようにしたかったようで、友達に嫌われたと思えばホグワーツに戻りたがらないと思う…という考えだったらしい。しかしアイルは、あえてその事は口に出す気はなかった。ハリーがホグワーツに不信感を抱くのは避けたかったからだ。

 

 

「えっとね、この家のふくろうーーエロールっていうらしいのだけどーー相当な老人らしくてね、途中で断念してしまったみたいなの」

「そう、なんだ…」

 

 

 ふと目をフレジョの方へ向けると、庭小人をどのくらい遠くまで飛ばせるかを競っていた。ちなみにハリーの最高記録は、50mだ。

 

 

「ひぅぅう! あれはきっと100は行ったかな」

「そんな行ってないだろ。俺っちのは150だがな」

「いやいや兄弟。お前さんのは15だろ。一つ0が多いぞ」

「いやいやいやぁ」

 

 

 途端、ふざける赤毛の横で、物凄い速さで庭小人が飛んだ。庭小人は、視覚が届かないほど遠くまで吹っ飛び、何処からか悲鳴が聞こえた気がした。皆、庭小人を投げた犯人を見つめた。

 

「おや、あれはざっと1kmは行ったかな?」

 

 

 腰に手を当て、妖艶に微笑む犯人は、ハリー・ポッターの姉ーーアイル・ポッターだった。涼し気な風が黒髪を揺らし、すぐ近くにいるのに、いくら手を伸ばしても届かないほど遠くに感じられた。

 フレジョは歓声をあげ、アイルに向かって叫んだ。

 

 

「「キッターー! 我らが女王陛下!」」

「ひれ伏せ愚民共〜!」

「「わー! 仰せのままにーー!!」」

 

 

 アイルは双子のノリに乗って、楽し気に笑った。その姿は、昇りゆく太陽に照らされ、より美しく輝いていたからだ。

 彼女は小さくため息をつくと、ハリーに向かって言った。

 

 

「庭小人って、噛まれると痛いのよね…」

「うん、もう噛まれた…」

「えっ…大丈夫ッ?!」

 

 

 途端に余裕にあふれたアイルの顔が、一気に泣きそうになった。そしてハリーの噛まれた傷を見て、魔法で治し始めた。ハリーは、自分を気にかけてくれる姉がいる事が、少し嬉しくなった。というより、今にも泣き出しそうな姉が可愛く見えた。

 

 

「それより、何で置き手紙も残さなかったの? 元はと言えば私のせいだから文句は言わないけど…」

「いんや、ハリーと先生のためならば〜」「俺等は火の中水の中〜」

「ありがとう…ロン、久し振りだけど、かなり背が伸びたわね」

「は、はい!」

 

 

 ロンの返事を聞いて、ハリーの頭を撫でたアイルは、邪魔はしまいとその場から離れた。

 ウィーズリー家の家は、魔法界でもかなり珍しいタイプだ。魔法で作られた家はよくあるが、このようにたくさんの小屋がくっついてあるのは、興味をそそられる。相当魔力の高い人間が建てたのだろう。近くに普通のマグルの村があるが、この場所だけお伽話のようだった。

 とりあえず、家の中に入るのも忍びないので、ハリー達が中に行くまで辺りをウロウロしていようと考えたアイルは、家に背を向けた。

 近くで、黄色い可愛らしいヒヨコ達が、大きな鶏の後を一生懸命追いかけているのを彼女は眺めていた。この姿こそが、生き物の本来あるべき姿なのかもしれない。これが、平和というものだ。あぁ、美しい。

 アイルは考える。出かける度に、人に会う度に、アイルは綺麗だねと言われる。人々の羨望の視線を浴びる。かの闇の帝王でさえ魅了したけれど、自分の命を救ったけれどーーこの容姿のせいで、一体どのくらいの人間が傷ついてきたか。苦しんできたか。アイルは分かっていた。しかし、両親の与えてくれた財産だ。大切にしなければならない。これも一つの宿命なのだから。

 杖を取り出し、小さく振った。途端に杖先から美しい雪が現れ、暑い夏の炎天下の下で溶けていった。

 

 

「ふぅ…暑いなぁ…」

 

 

 魔法で辺りを冷たくしても良いかもしれないが、ハリー達は暑い中頑張って(?)いるし、時々は魔法を使わずに汗をかくのも一向だ。

 太陽の熱が首筋をジリジリと焼き付けるのを感じた。長い髪は上で結ばれ、ポニーテールとなっていた。そろそろ三十路だ。結婚も真剣に考えなければならない年頃なのに、愛しい人は何処かへ行ってしまうし、出会いの機会は一切ないしーー絶望的だった。

 小さくため息をつくと、近くでバチッという何かが弾けるような音がした。それが「姿現し」の音だと分かったアイルは、すぐに杖を構える。しかしウィーズリー家の前で「姿現し」をしたのは、赤毛の男性だった。古いローブを着た、朗らかな人だ。ウィーズリー家の人間だろうとアイルが杖を下ろすと、男性は彼女に気がついたようで、話しかけてきた。

 

 

「おや、君は誰だい?」

「あぁ、失礼いたしました。ウィーズリー宅にお邪魔させていただいております、アイル・ポッターです」

「アイル・ポッター…? もしや君は…!!」

 

 

 赤毛の男性は酷く興奮した様子で息を弾ませた。すると、身なりをすぐに整えて、アイルを家へと誘った。

 

「いやはや…ポッターさんが我が家においでくださるなんて、何と嬉しい事か。私はアーサー・ウィーズリー。魔法省の『マグル製品不正使用取締局』の局長を務めております」

 

 アイルとアーサーは握手を交わした。モリーと、歳はあまり変わらなそうだった。恐らく、ロン達の父親だろうか。アイルが笑みを浮かべていると、何処からか両手で持てるくらいの大きさの物体が飛んできた。それは大きく空を舞い、やがてはアーサーの頭に直撃した。鈍い音とアーサーの声が重なり合い、辺りに響き渡った。

 

 

「ヤバイ! 変な所に飛んでった!」

 

 

 庭の方からそんな声が聞こえてきた。アイルを苦笑をしながらアーサーを見る。しかし彼は、飛んできた庭小人の衝撃が強かったせいで、「ドギャッハー!」と叫び、頭を抱えてその場で蹲っていた。彼等は確実に怒られるだろう。

 すぐに庭からハリー達が走ってきた。アーサーの叫び声を聞いてやってきたのだ。双子の片方は、目線を逸らして走っていた。

 

 

「先生! もしかしてさっきの変な声は先生ですか!」

 

 

 たどり着いたフレッドが笑顔で言う。

 

 

「違う。貴方達のお父様よ」

「うわぁお父上様!」「何という事でしょう!」

「っていうか大丈夫なの父さん…」

「えーと…何があった」

 

 

 ハリーとロンは、おふざけなしに倒れこむアーサーの背中をさすっていた。ぶつかった庭小人は、フラフラしながら何処かへと歩いて行った。するとアーサーはゆっくりと起き上がり、心配してくれたハリーとロンに礼を言った。しかし、どうやらハリーが自分の家の子ではないと分かった様子で、彼に聞いた。

 

 

「君は…?」

「あぁ、すみません。僕、ハリーって言います。ハリー・ポッターです」

「おぉ! お姉さんが来ているからもしかしてとは思ったが…よろしく、私はアーサー・ウィーズリー。彼等の父親だよ」

 

 

 アイルが紹介をする事もなく、ハリーは自ら名乗った。前はコミュニケーション能力はかなり低かったというのに、ホグワーツに入学してからかなり成長したな…と我が弟ながらアイルは思う。二人は固い握手を交わし、お互いを見て笑顔を浮かべた。

 

 

「さぁみんな、もう母さんが朝食を作り終えた頃だろう。家に入ろう」

 

 

 驚いた事に、アーサーは双子を叱らなかった。器が広いというか、甘いというか、ただ、「危ないぞ」と後に注意しただけだった。しかし、そのフリーダムな教育が柔らかな発想と自由奔放な性格を生み出しているのか。アイルはこの兄弟を見ていると、型にはまらない彼等は物凄く面白いと感じた。

 アーサーに誘われ、アイル達は家の中に入った。

 

 

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