ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
彼等はキングス・クロス駅に来ていた。騒がしい人混みの中に、魔法使い達は紛れていた。かなりマズイ時間帯だ。後一分で汽車が出発してしまう。彼等はホームを走り抜け、急いであの入り口へと向かった。
「九と四分の三番線」へ、ウィーズリー家は次々と入っていった。アイルは、ハリーとロンが迷子にならないように二人についていた。アイルは先にホグワーツ行きのプラットホームへと入った。後少しで出発だが、今なら間に合う。魔女と魔法使いで溢れかえるプラットホームへの入り口で、アイルは二人を待った。しかし、彼等はやってこない。汽車はもう出発するが、アイルは二人に何かあったのではないかと思い、もう一度マグルのプラットホームへ戻ろうとした。しかし、その壁は依然として機能しないのだ。本来ならばすり抜けられるはずなのに、それができなかった。もしや魔法が解けている?!
「何で?!」
アイルは杖を取り出し、すぐに壁にかけられた「空間移動呪文」をもう一度かける。これでまた、こちらからでもあちらからでも移動は可能だろう。汽車がもう発車するという所で、ハリーとロンがあちら側から走って出てきた。プラットホームの魔法使い達は急いで彼等に道を開けた。アイルの魔法で、間一髪の所で荷物と一緒に汽車に乗り込む事が出来たのだ。
三人共酷く息が切れていた。アイルは立ち上がり、小さな窓からプラットホームを見つめる。一体、何故魔法が解けたのだろうかーー
*
久しぶりのホグワーツ。これほどまでにホグワーツが待ち遠しかった事はまたとないだろう。ただ、一つ嫌な事はロックハートがやってくるという事だ。しかし、大広間の席ではスネイプによって隔てられる。これは幸運だった。
教員の中で、ホグワーツ行きの汽車に乗るのはアイルだけだ。ほとんどの教員が実家に帰るかホグワーツ城に留まるかの二択で、アイルは以外は学校が始まる前に準備と称して城に戻る。
さて、その唯一の教授が紅の猛牛から姿を現わす。非の打ち所のない黒髪の美女は、闇夜の下で満月に照らされた。大きく息を吸い、冷たい空気を肺の中に入れる。
教員は早く大広間についておかねばならないので、急いで人目につかない場所に行き、魔法で空を飛んだ。ホグワーツへ入城すると、アイルは急いで『手で』大広間の扉を開けた。上座の教職員テーブルの前には、教授方が集まり、何かを話していた。
「あぁアイル、来ましたか」
「遅れてすみません…」
「おや! 貴女はアイルさんではありませんか!」
「うわッ…」
マクゴナガルの陰に隠れていたのは、ブロンドの悪魔だった。ギルデロイ・ロックハートは、光り輝くスマイルを浮かべ、アイルに見せつけてきた。一番会いたくない人物No.1に上がる人間なのに、何故もういるのだ。この男の事ならば、目立とうとして全員が集まった頃に大広間に突入してくるだろうに。
アイルは唐突なナルシストの登場に、近くにいたスネイプの陰に隠れた。
「いやはや、もしや、私に憧れを抱いてホグワーツにやってきたのですかな?」
「違います、元々ホグワーツの教授です」
「全員が揃った所で、彼の紹介をいたしましょうかの」
ホグワーツの教授が、「魔法史」のビンズ教授と「占い学」のトレローニー教授以外は全員揃っていた。あの二人はいつも、夕食の席に顔を出さないので、もういない人物として扱われているのだろう。片方はゴーストだし、片方はイカサマっぽいし。
ダンブルドアはロックハートに手を向ける。
「彼は、ご存知の通りギルデロイ・ロックハートじゃ。ギルデロイ、自己紹介をするかの」
「えぇ校長、ありがとうございます」
ロックハートは心優しい老人の前に立ち、胸に手を置いてドヤ顔をした。
「皆さん! 私はギルデロイ・ロックハートです。今までに様々な著書を出してきましたが…勿論お読みになりましたよね? 私の素晴らしい功績の数々! まぁそれは、後ほどたくさんお聞かせしてさしあげよう」
「…あ、さて、私は新一年生を迎えに行ってまいります」
ロックハートの話が長引かないうちに退室しようと、マクゴナガルは光の速さで大広間から立ち去った。すると、彼はチッチッチッ…と舌を鳴らす。
「私の話はまだ終わっていないのに」
「じゃあ私はもう席につこうかしらオホホ…」
「我輩もそうしよう」
「わしも。早くポテチ食べたいのぅ」
「さぁ皆さんお座りになりましょう」
他の教授方(アイルも含め)は、マクゴナガルと同じスピードで教職員テーブルに座る。一人取り残されたロックハートは何か勘違いをした様子で、やれやれと首を横に振り、スネイプの隣に腰を下ろした。
やがて他学年の生徒が大広間に入り、一年生がマクゴナガルの引率の元入場してきた。満天の星空に感激しながら、彼等は教職員テーブルの前に座る。一部の一年生は、アイルがーーダイアゴン横丁に行った時のーー新聞に載っていた「愛された女の子」だと気付き、周りの生徒とヒソヒソ声で話をしていた。
そして、毎年恒例の「組み分けの儀式」が始まる。ジニーは無事、グリフィンドールに組み分けされた。寮は、大体血筋で決まると言われている。ウィーズリー家は代々グリフィンドールの家系なので、ジニーが獅子寮に入るのは運命というモノなのか。しかし、そうでない場合もアイルは知っていた。
アイルの組み分けの時、帽子はかなり悩んだらしい。二十分程度の苦悩の末、結局「ねぇねぇ君はさ、どの寮に入りたい?」と聞かれ迷わずグリフィンドールと答えたのを覚えている。
帽子の歌が終わり、ダンブルドアの挨拶が始まった。
「皆、よく聞きなさい。ほらそこ、わしの白髭と肩にポッ◯ーがついておるなど言うでない。これわしの非常食なんだから。それでの、『闇の魔術に対する防衛術』の前任、ルシファースト・マルフォイ教授がお辞めになったので、今年は新しい先生がきておる! ギルデロイ・ロックハートじゃ!」
生徒間でざわめきが起きた。ロックハートが立ち上がり、ダンブルドアの方まで行くと、女子達から黄色い悲鳴が上がった。何しろ、あの有名なヒーローが今目の前にいるからだ。こんな人の授業を受けられるなんて、何という光栄だろうと思っている生徒も少なくないはずだ。
「やぁ皆さん、ご機嫌よう。挨拶は長くしたいモノですが、皆さんお腹を空かしている頃かと思いましてね…ギルデロイ・ロックハートだ! 勲三等マーリン勲章、闇の魔術に対する防衛術連盟名誉会員、そして、『週刊魔jーー」
「では、夕食タイムじゃ! スナックが余ったらわしにくれ? わしは特に日本のスナックが好きでのう…おっと失礼。では食事じゃ!」
ダンブルドアの言の葉が飛び散ると同時に、大広間はご馳走で包まれた。この時間を心待ちにしている生徒も多いだろう。美味しそうな世界各国の食事の数々が並び、皆新しい味に舌鼓をしている。ロックハートは自分の言葉が遮られた事に少し怒ったようだったが、気にせずに食事を始めた。
前まではホグワーツの料理は行事時以外は、イギリスの家庭内料理が多かったのだが、「マズイ」というアイルの鶴の一声により、世界各国の料理が並ぶようになった。これはダンブルドアも大喜び。それはというと、お菓子のバリエーションが増えたからだ。
「それでですねスネイプ教授! そこで私はバーンと杖を振り、人狼をやっつけたわけですが! そこで、ある災難が私に降りかかったのですよ」
「あーはいはい」
スネイプはロックハートのしつこさにウンザリしている様子だった。アイルはワインの入ったグラスを置き、大広間を眺める。それぞれの寮で座り、新一年生が先輩方に温かく迎え入れられている。とても美しい光景だった。
あまり食欲がない。目の前の料理が美味しそうな香りを漂わせていても、お腹は何も感じなかった。疲れてきているのかなと感じる。教授という仕事はハードではない。寧ろ楽だ。今までヴォルデモートから受けてきた苦痛と比べれば、1+1を解くくらい容易いモノだった。
「アイル、我輩と席を替わってみないか?」
「え、嫌です」
「中々座り心地の良い椅子だ」
「種類変わらないですし嫌です」
「何の話をしているのかな?」
兎に角、今年は騒がしい一年になりそうだと感じつつ、アイルはマクゴナガル教授に質問を投げかける。
「そうだマクゴナガル先生、実は、私やハリー、ギリギリで汽車に飛び乗ったのですが…」
「もう少し時間に余裕を持ちましょうアイル」
「すみません…それで、私は『九と四分の三番線』に入れたのですが、ハリーが入ろうとした時にゲートが閉じられていて。もう一度魔法をかけ直したから大丈夫だったんですけど…もしかして、不具合だとかあったんですかね?」
アイルの言葉を聞いたマクゴナガルは、眉間にしわを寄せる。基本はそんな事はあり得ない。ゲートの魔法は絶対に解けないはずだ。しかし、それをもう一度かけ直すアイルも凄い。
「原因については良く分かりませんね。しかし、調べさせておきましょう」
「ありがとうございます」