ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください   作:カドナ・ポッタリアン

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決闘クラブ

 

 それから、様々な事が起こった。

 まずはクィディッチの試合だ。グリフィンドール対スリザリンは、全校生徒が注目する試合だった。スリザリンは最新箒の「ニンバス2001」をメンバー全員が持っており、スピードと反則ギリギリのブラックプレーを繰り返していたが、見事にグリフィンドールに負かされた。

 次に、スリザリンの継承者についての噂が尾びれに背びれと完全に嘘になっている状態で、学校中に滴っていた。アイル継承者説が最も有力な仮説となっていたが、勿論違う。先生方もダンブルドアもハリー達も、アイルが継承者ではないという事を、心から信じていた。一応「呪文学」の教授だという事もあるので、学校側も変な噂を流したままではいられなかった。このままでは授業を休む生徒も出てくる恐れがあったが、アイルは特に気にしていなかった。

 

 そして最後に、新しい継承者の犠牲者が出たという事だ。

 新たな犠牲者は、一年生のコリン・クリービー。ハリーの大ファンで、マグル生まれのとても元気の良い子だった。噂では、コリンがハリーにいつでも付き纏っていたので、アイルがハリーのために追い払ったらしい。絶対に違う。

 このまま学校側も黙っているわけにはいかなくなった。そして、スリザリンの継承者対策として「決闘クラブ」を開く事になった。

 

「アイル、『決闘クラブ』の教授を務めてもらえませんか?」

 

 朝食の席で、マクゴナガルはアイルにそんな事を言ってきた。

 

「先生…ご冗談でしょう?」

「ご冗談ではございませんよ」

「私、スリザリンの継承者って言われてるんですけど…」

「汚名返上のチャンスでは? それに、現在教師としてついているのは、スネイプ先生とロックハート先生でして…」

「あらそれは不安ですね」

 

 アイルは皮肉気にそう言うと、バターを塗りたくったトーストにかぶりついた。スネイプとロックハートは良い仲だ(悪い意味で)。きっと上手くやってくれるだろう。しかしマクゴナガルはそう考えてはおらず、頑としてでもアイルにもやってもらおうと考えていた。

 

「アイル、貴方の弟のハリーは、姉がスリザリンの継承者だと噂され、酷く心を痛めているのですよ。貴女が生徒達に親切で、フレンドリーな様子を見せていれば、きっと彼等も噂を嘘ではないかと思い始めます」

「…人に教えるのは好きじゃないんです」

「じゃあ何で教師になったんですか」

「ダンブルドアに頼まれたからですよ」

 

 アイルがそう言うと、マクゴナガルは小さくため息をついた。

 

「貴女は、ああ言えばこう言うタイプでしたね…ハァ、弱りました…アイル、本当にダメなのですか?」

「…うーん、マクゴナガル先生にそこまで言われると私も罪悪感凄いんですよね…分かりました、やりますよ。スネイプ先生とロックハート先生を傍観しておきます。…あ、殺っても良いですか?」

「どうぞ死なない程度に料理してあげてください。まぁ、傍観だけでも十分です。宜しくお願いしますね」

 

 引き受けたは良いモノの、一体何を教えろというのだろうか。「武装解除呪文」や「失神呪文」などの攻撃系が頭に浮かんだが、一年生や二年生にそれはキツイかもしれない。かといって教えないわけにもいかない。

 やっぱりアイルは「呪文学」を教えるだけで手一杯だった。

 

 そしてやってきた「決闘クラブ」の日。スリザリンの継承者相手に決闘のやり方を学んで、一体どうなるのかと叫んでやりたい所だったが、今はそれよりも現実を見た方が、遥かに楽だった。しかし、意外と参加者人数が多いので、やはりアイルの出番は多くなるだろう。どうせなら、マクゴナガル先生がやれば良いのに。

 確かにスネイプとロックハートじゃ不安なので、アイルは泣く泣く会場へと足を踏み入れた。

 

 決闘クラブは大広間で行われ、長テーブルや椅子はなくなっている。広い空間の中、上座から真ん中辺りまで続く細長い道には、ギルデロイ・ロックハートが立っていた。女子からの黄色い歓声を浴び、上機嫌にお辞儀をしていた。

 個人的に、ああいうナルシストはいけ好かない。本も読めせてもらったが、書いてある事は聞いた事を文章にしたような薄っぺらいモノばかり。やっている事は確かに凄いが、本人にそんな力量があるか? 否、だ。というか、ダンブルドアには彼を採用するにあたって、教職員方にペテン師である事を伝えている。

 今の魔法界の魔女は、彼の容姿に騙されて本質が見えていない。可哀想に。

 

 アイルが入ってきた事に気がついたロックハートは、手を叩いた。大広間にいたたくさんの生徒達が、ノロノロと彼の周りに集まる。その中にハリーやロン、ハーマイオニーの姿も見かけ、アイルは少し安心した。せめてモノ対策を知っておくのは大切な事だ。

 すると、ブロンド野郎が叫んだ。

 

「あぁ皆さん! 皆さん、私がよぉく見えますか? 私の声でよぉぉおっく聞こえますか? …よろしい。今回私は、ダンブルドア校長より決闘クラブを開く許可をいただきました。自らを守る必要が生じた場合に備え、皆さんをしっかりと鍛え上げるためにです。詳しくはーー私の著書をみてください」

 

 アイルは皆の集まっている場所へ歩いて近づいていった。

 

「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」

 

 ロックハートは満面の笑みを浮かべ、振り返った。そこには、仏頂面の黒装束スネイプが、腕を組んで立っていた。あぁ、気が付かなかった。

 

「スネイプ先生が仰るには、決闘についてほんの極僅かベリーちょびっとを、ご存知らしい。訓練を始めるにあたって、短い模範演技をするのに、勇敢にも手伝ってくださるとのご了承をいただきました」

「その点に関してだが、」

 

 スネイプがロックハートに割り込んだ。

 

「『呪文学』の教授である、アイル・ポッター教授に相手を交代してもらおう」

「えッ…」

「アイル、構わんだろう?」

 

 スネイプは冷たい視線をアイルへ向けてきた。生徒達はギョッとした表情をして、アイルを見つめた。そんな目で見ないでほしい。スネイプは若干申し訳なさそうにしているが、ロックハートは口元をヒクヒクさせていた。

 

「いやはやスネイプ先生、私はレディには手を出したくないんですよ」

「別に、貴方にやられるつもりはないから大丈夫ですよ」

「おやおや、強気なお嬢さんで」

「言っておくけど、私と貴方同い年よ」

 

 目立ちたがり屋のロックハートの名前を、アイルは若干覚えていた。在学時代に、クィディッチピッチに六メートルほどの大きさで自分の名前を彫ったり、自分の顔を光で再現して空に打ち上げたり、自分宛に800通モノバレンタインカードを送って大広間を糞まみれにしたりーー頭はソコソコ良かったらしいが、何故こんなペテン師に育ってしまったんだろうと、少し可哀想に思える。

 アイルはロックハートの乗っているステージに飛び移り、小さくため息をついた。生徒達は恐々と心配そうな顔をして、ステージから遠ざかる。スネイプはその場から飛び降り、二人の経緯を見物し始めた。

 

「お姉ちゃん、ロックハートを殺っちゃえ!」

「そうだそうだー、ロックハートなんてコテンパンにしちゃえ〜!」

 

 たくさんの男子から野次が飛んできた。アイルはこっそり、全寮10点ずつ加点してあげた。ロックハートはどうやら、自分の都合の良いようにしか耳が働かないようで、野次なんて全然頭に入ってこなかったようだった。

 アイルはロックハートとは反対側の方面へ行き、杖を抜いた。お互いを見ながら一礼し、杖を突き出した。決闘のやり方は慣れている。

 

「ご覧のように、私達は作法に従って杖を構えています」

 

 ロックハートは自慢気にそう言う。アイルもとりあえず、授業の一環として、教師として言葉を付け加える。

 

「決闘のやり方は、覚えておいて損はないわ。まず、杖を取り出し、側面に腕をつけて礼をする。その後、相手から十メートルほど遠ざかって杖を構える。本来の魔法使いの決闘は”殺し合い”だけど、間違っても相手を殺すんじゃないわよ。これはあくまでも『クラブ』だからね」

「その通り! 今私が言おうとしていました! さて、三つ数えたら最初の術をかけまよ、良いですか?」

 

 ロックハートは笑顔を振りまき、肩にかけていたマントを女子の集団に放り込んだ。彼女等は黄色い悲鳴を上げ、床に寝転んでまでマントを取り合った。

 

「では行きます。一、二の…三!」

「『エクスペリアームス 武器よ去れ』! 『ステューピーファイ 失神せよ』! 『ペトリフィカス・トタルス 石化せよ』!」

 

 アイルの三連続攻撃を受け、ロックハートは杖を体を吹き飛ばされた状態で失神し、そのまま宙を舞いつつ石化してしまい、あられもない姿で床に叩きつけられた。女子達は悲鳴を上げてロックハートに殺到したが、正直アイルは後悔などしていない。逆にロックハートが好きじゃない人にとって、これほどスッキリする事はなかった。日々のロックハートストレスが晴れた。

 

「スネイプせんせー、ロックハートの介抱はしなくても良いですよねー」

「あぁそうだな。彼は、あー…我輩が隅の方に寄せておく。君は授業を進めろ」

「はーい」

 

 とりあえずアイルは皆を集めて、先ほどの決闘の説明(言い訳)をし始めた。誰も咎めていないから大丈夫だが、一部女子の敵対心がこちらに向いている。しかし命に別状はないのでどうって事はないだろう。すぐに起き上がるさ。多分。

 

「決闘で一番大事なのは、いかに相手を倒すか。試合は、元は『死合』と呼ばれ、殺し合いだったのよ。つまりは、真剣勝負。呪文を使う上で大事なのは、相手よりも多くの呪文を出す事。『無言呪文』というモノもあるけど、今回は分かりづらいから使わなかったわ。まぁできるならやった方が良いけど。基本、決闘は自由よ。ただ、”魔法”を使ってね。時々力技使う人がいるから…」

 

 その後、自分達の好きにペアを組ませ、決闘の練習が始まった。安全のため、床は倒れるとクッションが出るよう魔法をかけ、スネイプと二人で見回りをする事。

 

「今のは良かったわよボードル、レイブンクローに5点」

 

「惜しいわサイガ、此処はもう少し発音をシッカリした方が良いと思うわ。そう、その調子よ。スリザリンに5点ね」

 

 アイルはスネイプとは違い、良い生徒を見つければ誰でもすぐに加点してくれているので、皆必死にアイルにアピールをした。予想した以上に皆の出来が良く、スリザリンの怪物には敵わなくても、決闘の良い練習になる。

 

「さぁ、練習を続けよう」

 

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