ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
「早く、早くハリーを助けに行かないと…!!」
トムの魔法のせいで、体が全く動かない。かろうじて顔ならば動かす事が出来るが、首から下がまるで無機物かのようだ。
しかし、体が動かなくても、杖がなくても、魔法が使えないわけではない。
「『フィニート・インカンターテム 呪文よ終われ』」
試しに唱えてみれば、単純な「呪文解除呪文」で拘束を解く事が出来た。しかし、杖無しで行う魔法はかなり体力を浪費する。何でも良いから、とりあえず杖を見つけなければ。
早くしないと、ハリーが、生徒達が、殺されてしまう。
しかし、ベッドから降りるも全身に力が入らない。立つ事もままならず、吐き気と眩暈がアイルの体に襲いかかる。視界がぼやけ、上から空気が押し付けてくるような感覚がする。
「ダンブルドア…貴方は何処…? お願い、助けて…」
アイルの悲痛の叫びは、誰にも届かない。ただ何も出来ない自分が情けなくて、幼くて、いくら強くてもやっぱり弱い。今の自分は、ヴォルデモートに連れ去られたあの時と同じだ。何も出来ない。助けを求める事しか出来ない。
途端、甲高い鳥の鳴き声のようなものが耳に飛び込んできた。重い首を入り口の方へ向ければ、そこから真っ赤な見慣れた美しい鳥が、古ぼけた魔法使いの帽子を持って飛んできた。
「フォークス…?!」
ダンブルドアの不死鳥だ。
フォークスはアイルの傍に止まり、赤いキラキラと光る羽を擦り付けてきた。
「あぁフォークス、随分楽になったわ。ありがとう。…不死鳥って、涙以外でも効果があるのね。良い子…」
随分と体が動くようになってきた。アイルはフォークスの頭を撫でながら、床に落ちた帽子を見た。組み分け帽子? 何故こんな物をフォークスが持ってきてくれたのだろうか。
「ダンブルドアのお使い?」
帽子に手を突っ込んでみると、何か硬い物が手に当たる。訝しく思い引っ張ってみると、赤い宝石の埋め込まれた銀色の鋭い剣が握られていた。
刃の部分には「ゴドリック・グリフィンドール」と刻まれており、フォークスは剣をジッと見つめている。
まさかこれが、かの有名なホグワーツの創設者の一人であるゴドリック・グリフィンドールの物だったとでも言うのだろうか。
「私に、これであいつを倒せと?」
フォークスは静かに頷く。あのヒゲ老人でもどうにかなるでしょうに。
「剣術は得意じゃないけど、仕方ないわね…行くわよフォークス、手伝って」
アイルはフォークスの足を掴む。不死鳥はグリフィンドールの女神を連れて、秘密の部屋から飛び立った。
*
〔ハリー・ポッターは…一体何処にいるんだろうな、バジリスク〕
〔さぁ? 私に分かるわけがないでしょう〕
実体化したトム・リドルは、バジリスクと共に夜のホグワーツを徘徊し始める。しかし、この一件のせいで、生徒も教師もゴーストでさえも見当たらない。
ハリー・ポッターがいるのならば、グリフィンドール寮だろうな。そう思い、トムはグリフィンドール寮へと足を向ける。
〔主、音がいたしますぞ〕
〔音…?〕
バジリスクは鎌首をもたげる。トムも耳を澄ましてみると、階段を駆け下りる靴の音と声が聞こえてきた。
『先生の部屋、何もなかったね』
『お姉ちゃん…一体何処に行っちゃんたんだよ…クソッ!』
〔へぇ、探すまでもなかった。バジリスク、此処で待っていろ〕
グリフィンドール寮に行って一々皆殺しにする手間が省けた。バジリスクをその場に待機させたまま、トムは清々しい笑顔を浮かべてハリー達に近づいていった。
「やぁ君達、一体どうしたんだい? そんなに急いで」
一見して、スリザリンの優しい上級生。しかしハリーの目には不信感しか募っていない。今この状態で寮の外に出ている事自体おかしいし、まず雰囲気からして普通の生徒とは違う。
こんな切羽詰まった状況で笑顔でいられる人間なんていない。しかもスリザリンだし。
「…誰だよお前」
ハリーの反抗的な声が階段に木霊する。トムは憎らしげな表情を表に出さず、努めて笑顔で話しかけた。
「僕かい? 僕はスリザリンの監督生だよ。さぁ、早く寮に戻らないと」
「…ロン、こいつから離れろ」
ハリーはいつもとは違う低い声を出し、杖を抜いた。トムは少し驚いた顔をするも、まだ微笑んでいる。
何がどうなっているのかが分からない赤髪の親友は、動揺しながら後ずさりをする。
「ど、どうしたんだよハリー」
「…こいつから、お姉ちゃんの匂いがする」
「へぇ、鼻が良いな」
鼻が良いっていうレベルじゃねぇよ…というロンのツッコミは闇に消えた。
この誰もが羨む整った顔立ちをした美青年とハリーが睨み合う。トムの口元にはもう笑みなんて一切浮かんでいない。
「お前、お姉ちゃんを何処にやった! お前が継承者なのか?!」
「アイルの事かい? あぁ、彼女を『お姉ちゃん』と気安く呼ばないでくれるかな」
「どういう事だよ。お姉ちゃんは僕だけのお姉ちゃんだ」
「違う。アイルは僕の姉さんだ」
「何か姉争奪戦が始まったよ…!!」
両者杖を抜き、交代ずつアイルへの愛を語りだした。
「お姉ちゃんはいつも僕の事を想ってくれて、優しくて可憐で最強で最高な世界一の姉だ! 僕はお姉ちゃんの事を一番よく理解している。お前みたいなよく分からない奴が弟を名乗るだなんて許さない!」
「お前は知らないだろうが、姉さんは人よりも深い心の闇を抱えているんだよ。お前のいう通り姉さんは美しい。まさに闇の女神だ。僕の姉にこそ相応しい。あぁあのシルクのような黒髪に顔を埋めて深呼吸をしたい。あの血に染まった赤い瞳に僕だけを映し出したい。あの透き通る声で僕の名だけを呼んでほしい。…お前のような血の繋がりがあるだけの奴が姉さんの弟だなんて、虫酸が走る」
「何言ってるんだよ。お姉ちゃんを僕を”愛してる”んだ。お前みたいな何処の馬の骨かも知らないような男を弟と認めるわけがない!」
「アイルは僕にだけ心の内を明かしてくれた。弟のお前にも話さないような悩み、苦悩、楽しみ…多くの事を僕にだけ教えてくれた。要は、君よりも信用されているんだよ僕は」
・
・
・
一向に話が進まない。お互いに自分はこう愛されているだとか、アイルの美しさの論争だとか、どのくらい多くの事を知っているかだとかいう、ロンにとっては全くもってくだらない話。
それでもハリーとトムはそういうわけにもいかず、ただ一心に自らの愛をぶちまける。此処まで心を露わにするのは両者初めてであったが、どんな言葉が出ようとも一歩も引かない。
「ラチがあかない! この僕が、直々にお前を殺してやる!」
ヤンシスェ...。
体育会も終わり、そろそろテストがやってきますね嫌だもうバッキャロー。
何が言いたいかって? アズカバンの囚人の執筆とテストに向けての勉強で更新が遅れるって事だよ。
アイル「勉強? 何それ美味しいの?」
カドナ「マズイ。超絶マズイよ」
アイル「私も勉強はあんまり好きじゃなかった。何方かって言うと魔法を使う方が好きだったから。安定の学年トップだけど」
カドナ「アズカバンの囚人は、私好きなんだよねー」
アイル「ヤンデレヴォルちゃんが直接的に出てこない、唯一つの年。ある意味平和だった」
カドナ「ってなわけで、少し更新遅れるかもしれません」
アイル「貴女なら、勉強サボって執筆するんじゃないの?」
カドナ「よく分かったね、正解だよアイル」