ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください   作:カドナ・ポッタリアン

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戦闘描写下手くそ野郎の悪あがきをご覧ください。


獅子の本質

 

 アイルの声に反応し、バジリスクが雄叫びをあげる。メスだけど。

 突進してくるバジリスクに斬りかかるも、切り傷を作れただけで致命傷は与えられていない。しかし、グリフィンドールの剣の威力は凄まじい。これだけでも十分血が流れてくる。

 

 廊下でグルリと体をうねらせ、バジリスクの顔は今背後にあった。まずい、動いてあまり時間が経っていないせいで、素早く動けない。

 慌てて振り向いて剣で良ければ、銀色に光る刃にバジリスクの鋭い歯が強く当たる。流石に魔法が上手くとも、身体的な力が凄いわけではない。長時間この体勢で耐え切れるわけがない。腐っても女子の端くれだ。

 

「クッ! ーッ!!」

 

 バジリスクは歯ではなく重さで殺そうと目論んできた。胴体を持ち上げて上から力をかける。剣を持つ腕が震えてきた。全身の骨が軋む音が聞こえる。

 この状態でいるのはマズイと感じ取り、アイルは咄嗟に身を引いて、バジリスクが怯んだ隙に口を切り裂いた。丁度口裂け女のように口の端が何十センチか切れた。

 

 少し油断したせいかバジリスクの長い尾でアイルは突き飛ばされ、硬い壁に頭を打ち付けてしまう。頭がクラクラし、視界が歪んでいくーー

 体が痛い…少し咳をすれば、真っ赤な血がベットリと手についた。立ち上がって対峙しようとするも、猛烈な痛みが上半身を襲う。肋骨を何本がやられたかもしれない。

 バジリスクは思うように身動きの取れない私をジッと見つめながら、スルスルとゆっくりこちらに距離を寄せてくる。

 

 〔私を…殺す?〕

 〔継承者が望んだ事だ。お前も、あの少年も…私の言葉が分かる。…何故?〕

 〔分からない。でも、姉弟揃ってパーセルマウスだなんて奇妙だわ〕

 〔お前も、スリザリンの継承者か?〕

 〔さぁね。大昔の事だから、もしかしたらそうかもしれない〕

 

 ヴォルデモート卿と同じ血が流れているなんて考えたら、身震いしか湧いてこない。しかし、純血一族は大方が血縁関係にある。ヴォルデモートとアイルも、遠い親戚にある事は確かだ。

 

 〔お前が継承者ならば…私はお前を殺せない〕

 〔主様の命令じゃないの…? ケホッ〕

 

 また血を吐いてしまった。壁に背中をつけ、何とか気力だけで立ち上がる。

 

 〔そうだな。しかし、私はスリザリンの下僕である。下僕が主の一族の者を殺すなど、あってはならない事だ〕

 〔じゃあ、殺さないでいてくれる?〕

 〔それは、出来ない〕

 

 一体何方なんだと言いたいが、声が出てこない。殺さなければならないのに、殺せない。矛盾した命令と感情が交差して、バジリスクは迷っていた。

 

 〔継承者の命令は、自らの欲に満ちたものも存在した。私は別に、マグル生まれを殺すために生まれたわけではないというのに…望まぬ行動をさせられて〕

 〔違うの? 見聞ではそう記されているけれど〕

 〔違う。私はサラザール・スリザリンの私物…いわばペットのようなものだった。ホグワーツを出ていかざるを得なくなり、私を飼うスペースがなくなったのだ。また会いにくると約束して、彼は私を秘密の部屋に封印したまま去って行ってしまった!〕

 

 潰れた両目から、今にも涙が溢れてきそうな声だ。バジリスクはマグル生まれを殺すための「恐怖」ではない? …歴史も見聞も、完全に信用できるものではないようだ。

 

 〔こんな事、主は望んでいなかった! あぁ、私は罪深い。主はもうこの世には存在しない! 私は、私は私はああぁぁぁ…!!〕

 

 辛い話をさせてしまった。大好きなご主人様と別れて、それでも迎えに来てくれる日を何百年も待ち続けて。ようやく会えたと思ったら、主人の意思と反した行為を強要されて。今までずっと、辛かったんだろうな。

 

 〔…あぁ美しき蛇語使いよ、どうか私を殺しておくれ。この年老いた蛇王を、どうかその剣で叩き切ってくれ〕

 〔…分かったわ。なるだけ、痛くないようにするから〕

 

 バジリスクは呻きながら私に頭を垂れる。襲ってくる気配はない。きっと本気だろう。一番痛くない、すぐに終わる死に方ーー確か、中世ヨーロッパの処刑道具「ギロチン」は、一見残酷に見えてすぐに死ぬ事ができるから辛くはないよね。

 失敗したら痛いだろうが、一番すぐに逝けるのはこれだ。

 

 〔ニックみたいになったら…ごめんなさいね〕

 

 力の限り剣を振り上げる。そしてーー

 

 **

 

「ハリー・ポッター…お前がこの僕に敵うとでも思っているのか? 姉さんだったら兎も角…お前じゃ僕には勝てない」

「魔法の事を言うんだったら、否定はしないな」

 

 先にロンに誰かを呼びに行かせ、ハリーとトムは対峙して始めた。お互いに杖を向け、睨み合う。能力的にも、トムが有利なのは確かだ。

 トムは自らのローブの中から、本体である日記帳を取り出してその場に置いた。

 

「お前にチャンスをやろう。僕も勝ち目しかない戦いなんてつまらない。今僕は姉さんの魂のおかげで辛うじて実体化している状態。でも、僕自体の魂はこの日記帳の中にある。これを破壊できたら、めでたく僕はお陀仏さ」

「…本当だろうな」

「ヴォルデモート卿は()()()に嘘をつかない」

 

 しかし、これならばハリーにも勝機が無きにしも非ず。あくまでも有利なのはあちら側だが、これならばきっと、気力で勝てる!!

 ハリーは杖を構えたまま歯を食い縛る。一体どうやってあの日記帳を破り捨てよう、一体どうやってこの男を殺そうーーその二つの考えが頭の中をエンドレスし続けた。

 

「ん…? 反対側の音が止まったね。もしかすると、もう決着がついてしまったのかもしれない。姉さんの遺体は腐りも廃れもしない状態で完全に保管してあげるよ。生きて一緒にいたかったけど…きっと姉さんは、死んでも美しいんだろうな」

「お姉ちゃんは、あんな化け物なんかにやられない!」

「さぁ? いくらダンブルドアと肩を並べる実力も持ち主だとしても、バジリスク相手で、杖もなしに…敵うわけがない。勿論お前も、だ。ハリー・ポッター」

 

 トムは口角を吊り上げながら詰め寄ってくる。かの闇の魔法使いヴォルデモート卿と、生き残った男の子であるハリー・ポッターとの二度目の一騎打ち。一度目は負けたが、あれは単なる偶然だ。

 

「勝負だ、ハリー・ポッター!」

 

 トムの杖先からは、魔法の火花がほとばしる。赤、緑、青ーー色鮮やかな閃光は、ハリーの目の前で壁に塞がれる。

 いざという時アイルを守れるようにと、一番練習した「盾の呪文」。姉への思いは、トム・リドルの攻撃呪文さえも防いでいた。

 

「『エクスペリアームス 杖よ去れ』!」

「甘いな! 『ソウェード・クァイタス 銀の刃よ』!!」

 

 トムはハリーの「武装解除呪文」を軽く避け、闇の魔術を連続して使い続ける。もう「盾の呪文」も限界に達してきた。

 

「口程でもないな」

「『アクシオ 日記帳よ来い』!」

「お前は、少し無言呪文というものを学んだ方が良い」

 

「呼び寄せ呪文」で日記帳を呼び寄せようとするも、すぐさまトムに弾かれてしまう。

 二年生のレベルで此処まで魔法を扱える事自体、異常だ。それに加えて「無言呪文」は少々厳しい。既に体力も多く消耗しているというのに。それでも、流石アイルの弟と言えるだけある、魔法の才能と魔力だ。

 

「『インカーセラス 縛れ』」

 

 油断した隙をつき、トムはハリーを縛り上げる。立っている事もほとんど限界に近かった眼鏡の少年は、膝をついてその場に倒れこむ。死ぬのなら、せめて姉と一緒に死にたかった。

 

「あぁハリー・ポッター。無様だぞ。アイルのために戦い、そして死ぬ、か…まぁ本望じゃないか?」

「ク、ソッ…」

「おやおや、お口が汚いでちゅよ〜。ハッハハ!」

 

 トムは倒れこむハリーの顔を、足で強く踏みつけた。このまま甚振って殺すのも一向か。痛みと屈辱に顔を歪ませ、ハリーは自分の眼鏡がポキリと折れるのを感じ取る。

 

「君の本体が壊れたね」

「いや、眼鏡は本体じゃないから…」

 

 彼はハリーの壊れた眼鏡を執拗に踏みつけながら、杖で体の何処を狙うか考えている。逃げ出す手段なんて頭に思い浮かばない。ただぼんやりと浮かぶのは、アイルの笑顔だけ。アイルのいない世界なんて、文字のない本と同じだ。全く意味を成さない。それならば、此処で死んでしまっても良いのではないだろうか。

 

「あら、勝手に人を殺さないでほしいわね」

 

 途端、懐かしい綺麗な声が耳に飛び込んできた。

 

「お姉…ちゃん…?」

 

 目を向けたその先には、日記帳に何かの牙を突き刺す愛し姉の姿があった。

 

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