ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
夏休みが始まった。
アイルは長期の休みをバーノン叔父さんからもらっていた。ハリーはよく、アイルと外に散歩に出かけていた。
9月に入ったら、ハリーは7年制のストーンウォール校に入る。アイルと別れるのは辛いが、ダドリーから離れられるのはありがたかった。アイルも悲しいのか、学校の話をすると何やら苦い顔をする。
ダドリーは、バーノン叔父さん卒の名門校スメルティングズ男子校に入学する事になった。
7月の誕生日、ハリーの枕元にはアイルがいた。
「っ! 何してるの、お姉ちゃん」
「あぁ、おはようハリー。えっとね…ハリーの学校の制服。ちょっと金欠だったので、私が作ったよ」
「え…?」
ハリーは、ベッドの上から床に畳まれた服を見た。
「まぁ…多分使わないけど」
「え、どういう意味?」
「あ、いやーー何でもないよ。私でるから、着替えてね」
アイルは慌ててそう言うと、物置から出て行った。
途端、郵便受けがパカッと開いて、手紙やら何やらが床の上に落ちた。アイルはそれらを手に取ると、一つ一つ送り主を確認した。
一つは叔父さんの妹のマージから。一つは市役所からの請求書。一つはーーハリーとアイル宛ての手紙だった。
「あぁ…そっか。もうこの時が来たのか」
アイルは自分とハリー宛ての羊皮紙をポケットにしまうと、リビングへ行き、叔父さんに二つの手紙を渡した。
*
「ハリー、貴方に話さなければならない事があるの」
「何? お姉ちゃん」
朝食を取った後、アイルは自分の部屋にハリーを呼び出した。
彼女の手には、黄色ずんだ分厚い羊皮紙の手紙が握られていた。その封筒の真ん中には、紋章の入った赤いロウで封されていて、Hという文字を、ライオン、ワシ、アナグマ、ヘビが囲んでいた。
「それは?」
「これは…私とハリー宛の手紙よ。やっとこの時がやってきた」
アイルは優しく微笑んだ。
「全てを話す時が」
「どういう、意味?」
「今まで、ハリーの周りでは不思議な事がたくさん起きてきたでしょ? 例えば…この間のヘビとか」
「うん」
ハリーは興味しんしんで頷いた。一体、自分の姉は何を話してくれるのかーー物凄い気になったからだ。
「単刀直入に言うね。貴方は…魔法使いよ」
「え…っ、冗談?」
「私が冗談言った事ある?」
「あるーー」
「まぁそれは置いておいて!」
アイルは羊皮紙の封筒をハリーに渡した。ハリーは、封を破って中に入った紙を取り出した。
『親愛なるポッター殿
この度、ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可された事を心よりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。
新学期は9月1日に始まります。7月31日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。
敬具 副校長 ミネルバ・マクゴナガル』
「こ、これ…は…」
「ホグワーツ魔法魔術学校。イギリス一の名門魔法学校よ。私も此処の学生だった。つまり…私も魔女よ」
「じゃあ、僕が今までやってきた事は…魔法?」
「えぇ。そして、何事もなかったのように日々が過ぎて行ったのは私のかけた魔法のおかげなの。ハリー、貴方は魔法学校に行きたい? それとも、普通の人間として…」
「僕、行きたい。ホグワーツに」
ハリーは、真剣な目でアイルを見た。
結局の所、どちらへ行ってもアイルと別れる事になってしまうーーハリーはそう思っていた。
「あぁ、それは大丈夫。私はホグワーツでも結構優秀でね。教授にならないかって来てたの。勿論了承したよ」
「っ! 本当?」
「うん。楽しみだな〜、ホグワーツは久しぶりなんだよね」
アイルは笑顔で言う。
ハリーも嬉しかった。しかし、彼は一つ疑問を持っていた。
「ねぇお姉ちゃん。僕はどうして傷を持ってるの? お姉ちゃんは僕を特別な存在だって言うけど、僕は何なの?」
「っ…」
アイルは悲し気な顔を見せた。途端にハリーは青ざめる。姉には悲しんでほしくないからだ。
「あ、ごめんね」
「ううん、大丈夫。あまり思い出したくない時代だってだけ。でも、ハリーはずっと気になってたからね。話してあげる」
彼女は話し始めた。
時は10年ほど前に遡る。
暗黒時代ーーあの頃はそう呼ばれた。
誰も信用できない。皆が恐怖におののいていた時代だ。
一人の魔法使いが闇の道に踏み込み、「死喰い人」という仲間を従えて、魔法界を支配しようとしていた。
勿論、それに抵抗する者達も現れた。ハリーとアイルの両親もその一環だ。
ある日、その闇の魔法使いが私達の家にやってきた。
そして両親を殺し、ハリーとアイルも殺そうとした。しかし、不思議な事に彼は殺さなかった。闇の魔法使いは殺さずにアイルを連れ去り、監禁した。
アイルがハリーばかり気にかけるので、それに怒った闇の魔法使いは、ハリーを殺そうとした。
しかし、それは出来なかった。
ハリーの何かがヴォルデモートを負かしたのだ。
それ以来、『生き残った男の子ハリー・ポッター』と『愛された女の子アイル・ポッター』の名は、魔法界で知らない者はいないという。
「概要はわかったけど…その闇の魔法使いって人の名前は?」
「魔法界で、最も恐れられているから、あまり人前で言うとビックリされるんだけど…彼の名は『ヴォルデモート』。『例のあの人』や『名前を言ってはいけないあの人』として、恐れられている。私からして見れば、名前も怖くて言えないなんて、情けない。ヴォルデモートは死んだと言われているけど、私はそうは思わない。まだやつは生きてる。復活を目論んでるわ...」
アイルはわざとらしくため息をつき、やれやれと肩をすくめた。
「お姉ちゃん、この事、叔母さん達には…」
「そうだね…言うよ。私もホグワーツに職つくワケだから。彼らは私が説得する。うん、説得…」
ハリーは嫌な予感しかしなかったが、部屋の何処からか現れた黒いふくろうに目を奪われてしまった。
「魔法界では、郵便の代わりにふくろうが代用されるの。魔法界のふくろうは、とても頭が良いの。宛先を自分で探し出してくれる」
アイルはそう言うと、ツクエの上で紙に何やら書いて、ふくろうの足に結びつけた。
「あの子はパル。私のふくろうよ。しばらく会ってなかったな...友達なの」
「へぇ、凄くカッコイイや」
アイルはパルを窓から放した。
友達…か、とため息を漏らして、ベッドに座った。
優秀故にか、美しすぎる故か、誰も彼女に近寄れなかった。一部では信者ができていて、宗教団体が出来るんじゃないかと言われた事もあった。
今では懐かしい話だが、ハリーは優しい子なので、友達はきっとたくさん出来る事だろうと彼女は思っていた。
「さて、明日は買い物に行こうねハリー!」