ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
『クィディッチワールドカップに黒い影、闇の印に会場騒然』
1994年8月25日、イギリスでクィディッチワールドカップが開催された。試合は非常に賑わい、ブルガリアがスニッチを取り、アイルランドが勝つという予想だにしない終わり方をした。
だが、試合が終わったその夜、事件は起きた。
死喰い人と思わしき人物達が、突然暴れ出し、マグル狩りを始めたのだ。周辺地域のマグルは多大な被害を受け、魔法使い達も私物を破壊される等の被害を受けている。
また、暗黒時代、「例のあの人」の印として使われていた闇の印が打ち上がったとの情報が入っている。これはかつて、死喰い人が人を殺した際に打ち上げたとされている。
魔法省の役人はこの事件に対し、
「死人は出ていない」
とだけコメント。
魔法省は事態の対応に追われている。
「あー、まだやってるねこの新聞」
「まだやってるねぇ」
ホグワーツ行き特急にて。
黒髪の美女は、コンパーメントで新聞を開き、足を組みながらコーヒーを口にしていた。
未だに「日刊預言者新聞」は、この間のクィディッチワールドカップ事件の事を取り上げている。今魔法省は、テントの損害賠償やら書類仕事やらで、どの部署も大わらわらしい。全く関係のない役人も駆り出されているだとか。魔法省の責任問題ではないというのに…可哀想だ。
「誰が打ち上げたのかしら、この印…」
「確か、魔法省の役人の人達が駆けつけた頃には、もう姿はなかったんでしたっけ?」
「えぇ。分かるのは、男って事くらいかな」
コンパーメントにいる四人で唸る。すると、ロンが何かを思い出したかのように言う。
「そういえば、今年の『闇の魔術に対する防衛術』の先生はどうなるんですか?」
「新しい先生が来るわよ、リーマスは辞めちゃったし…」
「またロックハートみたいな奴じゃなきゃ良いんだけど」
「その点は心配しなくて良いと思う。うーん…良い意味でも、悪い意味でも、物凄く刺激的な人だしね。でも、機嫌を損ねないように気をつけてね」
「うわぁ、嫌な予感しかしないや」
その嫌な予感は、ある意味当たりとも言えよう。
今年の「闇の魔術に対する防衛術」の教師は、元闇祓いのアラスター・ムーディだ。ダンブルドアの頼みながら、一年だけ教員職を請け負うと言ってくれた。アズカバンの大半の闇の魔法使いは、彼が逮捕したものだ。
暗黒時代、ヴォルデモート対抗組織「不死鳥の騎士団」のメンバーとしても闇祓いとしても何度か会った事があるが、中々クレイジーな奴だった。
出会って早々、
「お前には闇祓いの素質がある! どうだ、わしと一緒に死喰い人共を蹴散らそうじゃないか!」
と思い切り背中を叩かれた。いや、まだ学生なんスけど…と言いたかったが、その時点で既に、熟練の魔法使いに匹敵する実力は持っていたため何も言えなかった。
「闇祓い」…将来の仕事として、幾度なく選択肢に上がったものだったが、今は教師をしていて良かったとつくづく思う。平穏な日々も悪くない。…いや、平穏じゃないな。
「本当に凄い人なのよ」
「楽しみだなぁ…」
今年は、何事もなく終わるだろうか。
*
ホグワーツにつくと、アイルは皆と別れ、急いでホグワーツ城へ向かった。
新しい先生の紹介のため、大広間で皆の前に出る前に挨拶を済ませるためだ。事前に報告を受けているため、先生方は皆、ロックハートのような無能ではない事は認知している。
ムーディを紹介する他に、今年の「
「今年度から一年間だけ、ホグワーツの『闇の魔術に対する防衛術』を請け負う事になった。アラスター・ムーディだ。元闇祓い、ダンブルドアの旧友、以上!」
「まぁ…こんな奴じゃが、宜しく頼むぞ皆」
ムーディは、十何年も前に会ったあの時から、全く姿が変わっていない。
左目の義眼は相変わらず奇妙だし、その義足の独特な歩き方もまた、彼らしい。ざっと今年の行事について説明が終わった後、先生方は続々と教職員テーブルに戻っていった。
「何年振りかしら、久しぶりね、マッド−アイ」
「あぁ、久しいなアイル。ダンブルドアに聞いたぞ、学生時代に何度か会っただけだったが、見違えるほど強くなったようだ」
「いえいえ。マッド−アイも、変わりないのね」
「本当だな」
ギョロギョロと、いつも焦点の合っていない義眼がアイルを見つめる。
「ホグワーツの教授になったとは…お前は、『闇祓い』になると思っていたが」
「ハリーがいるしね。魅力的なお仕事だけど…やっぱり平和が一番よ。仕事に危険は持ち込みたくないし」
「そうだな…だが、油断大敵! いつ何処に敵が潜んでいるか分からないぞ!」
「そうね、気をつける」
彼の突然の「油断大敵!」には、いつも驚かされてしまう。突然叫ばないで欲しいと、何度心の中で願った事か。
だが、昔の知り合いに会うのも悪くない。
しばらくすると、生徒達が入場してきた。
今日の天気は土砂降り。生徒達は皆ーーあの雨の中を通ってきたのだろうーー全身雨水まみれだ。可哀想に。
このままだと風邪を引くかもしれないと思ったアイルは、
「『ウィルタンズ 乾け』」
と全生徒達にまとめて呪文をかけた。新一年生には後でかけてあげよう。
口々にアイルにお礼を言う生徒達。その中には、教職員テーブルの横で仏頂面をしているムーディを見つける生徒もいた。特にスリザリン生はバツの悪そうな顔をしている。
ムーディはあまり人を信用しない人種らしい。食べ物ならまだしも、飲み物は絶対に自分の携帯用酒瓶から飲むとか。
ダンブルドアがワインとポテチを後で勧めようとしていたが、何かを口にするまもなく却下されていた。ちなみに、ポテチは歯に挟まるから嫌らしい。
すると、新一年生達がマクゴナガルの引率の下、大広間に入ってきた。彼等もビショ濡れだ。話を聞いてみると、ピーブスが悪戯で水風船を生徒達に投げつけたらしい。ホグワーツ初日にして、期待とイメージは台無しだろう。
だが、そこでもアイルはすかさず魔法で生徒達を乾かした。
「ありがとうございますアイル、それでは、組み分けを始めましょう」
大広間の空は、暗く、雷が轟いている。外の景色が丸ごと反映される大広間の天井からは、雨が降っているようにも見えた。
何千個ものロウソクが各テーブルの金食器を照らしたが、今年は何故だか少し重い空気が流れている。
組み分けが終わり、夕食が始まると、マクゴナガルはため息をつきながらテーブルに戻ってきた。
「ピーブスにはもううんざりです。全くもう…今年は二校の方々が来るというのに…」
「私は嫌いじゃないですけどね、悪戯の伝道者って感じで。学生時代の父さん達とフレジョを、足して2で割ったような感じですね」
「本当にその通りですよ…ハァ…」
疲労困憊している様子のマクゴナガル。恐らく、大広間から一歩出れば、そこにはピーブスが水風船を持って待ち構えているだろう。
聞いてみれば、毎度毎度、大広間での食事に招待されない事に腹を立てているだとか。自業自得だろうに、何を言っているんだか。
さて、食事も終わり、遂にホグワーツの大行事を発表する時がやってきた。と、その前に新しい先生のご紹介。
「前任のリーマス・ルーピン先生がお辞めになってしまったため、今年度から新しく、元闇祓いのアラスター・ムーディ先生に『闇の魔術に対する防衛術』の担当教授をしてもらう事になった」
ダンブルドアに発言に、大広間中がざわめく。
アラスター・ムーディ…最恐の闇祓いとも称される彼。魔法族の家系の子ならば、一度は聞いた事のある名だ。特に元死喰い人を親に持つ生徒としては、今「絶対に関わりたくない人」堂々のナンバー1に輝くだろう、ベストオブ恐怖だ。
そのどよめきには一切反応せず、ムーディは簡潔な自己紹介で済ませてしまった。勿論締めは、「油断大敵!」。
「さて、今年はホグワーツで、とある大行事が開催される。その名も…『
ダンブルドアの発言に、またもやホグワーツ中がざわめく。
双子に至っては、「ご冗談でしょう?!」と声を張り上げていた。
「それがご冗談ではないのじゃよ、ウィーズリー君達。長年、夥しい死傷者が出やがったせいで、開催出来なかったのじゃ。魔法省の『国際魔法協力部』やら『魔法ゲーム・スポーツ部』等の方々が交渉をしてくださり、やっとの事で開催にこぎつけたんじゃ。
知らない者もいるだろうから、とりあえず説明しようぞ。これは、ヨーロッパの三大魔法学校、『ホグワーツ』『ボーバトン』『ダームストラング』から、各校で一人ずつ代表選手を選抜し、互いに競うものじゃ。代表選手は、公明正大な審査員が決める。ちなみに、十七歳未満はエントリー出来まっせぇーん。残念だったなガキ共! そして、今年はクィディッチはありません! はい、解散! 終わり!」
マジかよー、クレイジーな校長がクレイジーな行事やるとか楽しみで仕方ねーわー、今年半端ねーよ、つーかガキっつったぞあのジジイ、と口々に今年度のクレイジー具合を呟きながら寮に戻る生徒達。もう少しマトモな説明をしろと説教されるダンブルドア。グビグビと携帯用酒瓶の飲み物を飲むムーディ。
本当だ、クレイジー。
アイルは良い子だから、口には出さなかった。
あけましておめでとうございます。
これから物語が加速していきますので、これからもどうぞ宜しくお願いします。
ちなみに、結構前に活動報告でアイルさん(大人バージョン)の絵を出したんで、良かったら見て行ってくれると嬉しいです。