ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
『ハリー! 凄いな! どうやってゴブレットに名前を入れたんだ?』
『やっぱアイル先生に頼んだとか?』
『応援してるぜハリー!』
ハリーは虚ろな瞳のまま、談話室に戻った。
そして、グリフィンドール生達の熱い歓声に包まれた。グリフィンドールから代表が出たのが余程嬉しいのか、ハリーを揉みくちゃにしながら応援の言葉を投げかけた。
「ハリー、名前をゴブレットに入れるんだったら俺等に言ってくれりゃ良いのにさ!」
「そうだぜ、一人だけ抜け駆けなんて狡ィや」
すっかり髭の取れた双子がハリーの肩を揺らす。
ーー僕は、自分の名前をゴブレットに入れてない…なら、一体誰が? お姉ちゃん? いや、お姉ちゃんはそんな事はしないはず……マッド−アイの言う通り、僕の命を狙っている人がいるとか?
「なぁ、どうやって入れたんだ? 名前を」
「先生に頼んだのか? まぁ、彼女なら何とか出来そうだしな。あーあ、アイル先生に言ってみりゃ良かったなー」
もしかしたら入れてくれたかも、とフレッドが続ける。
トロフィールームで、先生方の言葉を聞いて、視線を見て、嫌でも分かった。
ハリーの名前がゴブレットから出てきた事で、弟のためにアイルが手引きしているのではないか。
先生方はアイルを疑っている。
あの時のアイルの悲しい表情と言ったら……思い出したくない。何もしていないのに疑われて、きっと心苦しいはずだ。それに、自分とは接触しないとまでーー
何とか、アイルの容疑を晴らさなくては…そうだ。
「うん、入れたよ。まさか本当に名前が出てくるとは思わなかったけどね」
「マジで自分で入れたのかよ!」
談話室が感嘆の言葉で埋め尽くされる。
そうだ、自分で入れたと言えば、アイルは責められない。だって、全く関係がないのだから。
先生方からの評価が下がろうが、誰が自分を陥れようとしていようが、知った事ではない。自分が名前を入れたと認めれば、それで解決なんだから。
まぁ…他寮からは非難の嵐だろうけど、堂々としていればどうって事ないよね。
マッド−アイが言っていた「錯乱の呪文」も……使えない事もないわけだし。認めてしまえば、本当に名前を入れた人間も困惑するかもしれない。
困惑せずとも……そんな奴の思い通りになんて絶対になるつもりはない。
「すげーな! どうやって入れたんだ?」
「秘密。フレッドとジョージだって、悪戯の種を明かそうとは思わないだろう?」
「まぁ、そうりゃそうだな。気が向いたら教えてくれよ」
いざ先生に問い詰められたら、マッド−アイの言っていたような事を言えば良い。
アイルに聞かれたら……アイルなら、本当の事を話しても良いか。
「あれ、そういえば、ロンとハーマイオニーを知らない?」
*
誰が、名前を入れたのか。
アイルは自分の部屋で、そんな考えを巡らせる。
確実に自分ではない。
リドルの時のような魔法具も持っていないし、そんな記憶もない。そもそも入れる理由もない。
ハリーはどうだろう……アイルに認めてもらおうと、褒めてもらおうと、自分から名前を入れるだろうか?
いや、それは有り得ない。
アイルが不正を好まない事をハリーは知っているはずだ。あの子は、アイルに嫌われるような事は絶対にしない。
「シリウスとリーマスに、手紙でも出すか……」
あまり心配はかけたくない。
けれど、ニュースになる前に、事前に知らせておく方が賢いだろう。
「もしゴブレットに名前を入れて、確実に代表選手になるのなら…マッド−アイの言った『錯乱の呪文』が一番効果的よね……」
流石、元闇祓いというだけある。
「錯乱の呪文」は非常に強力な呪文だ。相手を錯乱させ、嘘を吹き込む事だって出来る。「服従の呪文」に近い呪文……だが、闇の魔術ではない。
まぁ、闇の魔術を嗜むくらいの実力はないと扱いは難しいけれど。
「ハリーは無理。あの子にコレはまだ早いわ……やっぱり、カルカロフかしら」
真っ先に自分に疑いの言葉を浴びせたのは彼だ。
元闇の魔法使いで、マッド−アイとはあまり良い思い出がなさそう……けれど、彼にそんな事をする度胸はあるのだろうか?
確か、捕まった際に我が身可愛さで、仲間を売った事があったはずだ。客観的に見れば一番疑わしいが、ヴォルデモートが消えて安堵した人間の一人のはず。
そんな彼が、ハリーを危険な目を遭わせようとする理由なんてない。
「じゃあ、誰が?」
やはり、あの二人に手紙を出して相談しよう。
犯人は分からなくても、安心したいし……リーマスには定期的に「脱狼薬」も届けないといけないしね。
「ハリーを助けてあげたいけど……接触しないって言っちゃったからなー。言わなきゃ良かった。せめて、私の無実は晴らさないと……」