そよ風と荒風の隙間から   作:かえー

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生活と正義の間に

私たちは普通に生活してたらどんな生活していたんだろ。いつもは海にいる私たちが、地上で生活していた時のとあるお話。

 

矢矧が入院し、家は静かだった。あの戦いのあと、一週間作戦停止が告げられ、私としおいは家にいた。が、まったく元気が出ない。一人欠けると何か違う。仲間がかけたことが私たちの心をえぐっていた。

そんな話とは裏腹に住人が一人増えた。その住人はしおいがいないテレビを独占し、特撮を見ている。

彼女は嵐。アイドルグループではなく、艦娘だ。ある日、いきなり家を訪問しここに住み着いた。そして、しおいと同じようにテレビを占領し始めた。

が、そんなことにかまってられず、私としおいは失望していた。なぜなら、矢矧がいなくなったからだ。矢矧は作戦中に大和をかばい瀕死の重傷を負った。意識不明でいつ生き返るか分からない。私達は矢矧を助けきれなかったことにショックを受けていた。数日間、このままの雰囲気が続いた。

そんな中、ある日、来客があった。それは隣に住んでいる人間だった。母親と思われる女性とその娘だろうか、小さい子供が母親の裾に捕まっていた。母親ははかなり慌てている様子で突き出すように子供の体を押した。「あ、あの、この子を頼みます!」そしてどこかに行ってしまった。少女はきょとんとしていた。頭には黄色のリボンをつけ、シャンプーのいい匂いがした。怖がる様子はなく嵐の元へ向かい、一緒にテレビを見ていた。

「ぜかましー?今日のご飯は?」「麻婆春雨だよ…」

少女が来てから、家の雰囲気は少し変わった。正直死といつも向かい合わせの生活に怯えているのは変わらないがあの暗い雰囲気は少女が照らしていつもの生活に戻りつつあった。私は矢矧の代わりに料理を作り、しおいはテレビを見ずに家事を手伝ってくれた。嵐も子供をいい具合にあやしていた。それどころか嵐は一緒に特撮ヒーローを見て変身ポーズをとっていた。

「ぜかましーこれがさー…人間でいう家族ってやつなのかな…」

私もよくわからないな…そう返し、麻婆を皿に盛る。そして、机にみんなを呼ぶ。「皆、ご飯だよ!」

 

この生活になり早三日。彼女が外出したいと言いだした。正直、人間を連れて外出なんてしたことなかった。したと言えば、大人の提督と近くのコンビニに夜食を買いに行ったぐらいだ。そして、どこに行くか今とても悩んで私達3人はは机の上で会議していた。

「あのさ…人間ってどこいくの?」私は質問するが、あまり期待してはいなかった。なんせ、私達は艦娘なので海以外に知識が無い。地上のことは全くわからないと思っていた。が、甘く見ていた。

「子供だからさ、街に出たらいいんじゃない?」しおいが一つ提案する。街…と言って何があるのか。「ショッピングモールってところに行かないか?」嵐が喋る。いつも艦娘の前では喋らない嵐が初めて発言した。「俺は…この子に笑ってもらいたい…何でもやるから…」頭を下げる嵐。一緒に頭を下げる少女。その姿に私達は頷き、近くのショッピングモールに行くことになった。

 

ショッピングモールには見たことないものが沢山あった。鎮守府によくある長椅子や、食品、机、自転車も売っていた。少女は何も喋らなかったが表情からは楽しそうだった。

Nがマークのファストフード店でハンバーガーを買い、机で食べている時ふと建物が揺れた気がした。が、周りの人は何も無いように行動している。が、突如少女の真上にあった蛍光灯が落ちてくる。嵐がいち早く行動し、少女に覆いかぶさる。そして、私たちの体も動くが、蛍光灯は嵐の背中に直撃し割れた。嵐はうめき声を上げるが関係なく自分の下にいる少女を見た。

「お前…怪我は無いか?」周囲を見て安全を確認すると抱き上げ、立たせた。「お前は俺達の家族だ。もし、お前に何があっても…俺が守る。」

少女は「うん!」と元気な声を上げた。そして、何かを見つけるとその方向に走っていった。その方向は人だかりができており、彼女がいなくなることがないように一緒に人だかりに入っていった。

そこではストリートダンスが行われていた。hiphopの曲が流れ、大いに盛り上がっていた。一人は黄色い髪をポニーテールにし、笑顔で踊っている。もう一人は灰色の髪をショートカットに切っていて、華奢な体つきだが男らしく見えた。

二人ともダンスはキレキレで、息ピッタリの動きだった。

「ちょ!嵐!?」そこに嵐が混じり込んでいく。私は止めたが、振り切られ地面に転倒してしまった。二人の間に入った嵐は知っていたかのように二人と同じダンスを踊り始めた。もちろん、下手ではなく二人に負けないぐらい上手だった。しばらく踊り、ダンスが終わると拍手が巻き起こった。

 

「はぁ…びっくりした…嵐がいきなり動くから…」さっきのファストフード店でダンスをしていた二人も含め食事をしていた。「嵐もダンス一緒にしてたんだよね♪懐かしい♪」ポニーテールが嵐と肩を組む。「もう…やっぱ昔と変わりませんね…二人は」苦笑いで二人を見るショートカット。「昔から三人は知り合いなのー?」しおいが聞くが三人は一瞬動きが止まったが、その後笑い始めた。「あのなぁ、この二人は昔一緒の駆逐隊組んでたんだよ…そん時に暇つぶしに踊ってたんだよ。」

この二人が艦娘という事実に私は驚きを隠せてなかった。ポニーテールが舞風、ショートカットが野分で陽炎型でも同じだった。

「よく外でれたね…大淀さん怒ったでしょ?」「もちろん、許可とって来てるよ…海軍のボランティア活動の一環で。」「ふーん…さりげなく広報活動しているわけね…」「あのさーなんで嵐は駆逐隊を離れたの?」「それは…ですね…昔…」暗い雰囲気になる。「そ、そういえば…少女はどこいったのかなぁ…」その場が凍りつく。あの子がいない。非常事態に気づき、私たち三人はハンバーガーを置き捜索を始める。舞風と野分はきょとんとしていたが舞風が手を振る。それを見ることが出来ないぐらい私達は焦っていた。「…嵐は、守ることができなかったんだす。だから…」野分がそう呟いた。

 

私たちはモール内を徹底的に調べ上げた。トイレ、各コーナー、どこに行ったか分からない。「ぜかましー!これ!!」しおいが床に落ちていたリボンを指差す。この付近で誘拐された線もあることが分かった。が、その周辺はすでに探しきった場所しかない。諦めかけていた…その時、男が目の前を通って行った。いい匂いが鼻をくすぐる。このにおいには覚えがあった。

「「「シャンプーの匂い!!」」」

私たちはこの匂いを頼りに彼女を探す。大変彼女の体はシャンプー臭がすごいので先ほどのダンスの時遠くでもかなりのにおいがした。そして、匂いに身を任せ、たどり着いた場所は…倉庫だった。嵐は倉庫のドアを思い切り開く。倉庫の中は意外に荷物が少なく、できたばかりだからかだだっ広かった。そこには大柄な男が一人と縄で縛られたあの少女がいた。傷はなさそうだったが、男の手にはナイフが握られていた。

「おい、その少女を返してもらおうか。」嵐が一歩踏みよる。「いやだね、この少女にかまわない方がいい。君たちはなんなのか知らないが、怪我をしたくなかったら逃げた方がいい。」男がナイフを持ち近づいてくる。が、嵐は一歩も引かない。「なぁ、俺は言ったよ。お前は俺達の家族だ。もし、お前に何があっても…俺が守るってな。」

私は連装砲ちゃんを男に投げつける。急な行動に驚き、男に見事直撃した。男は気絶して倒れる。その直後、サイレンが鳴り、黒ずくめの人間が中に入ってくる。しおいは少女の拘束を解き背中に背負っていた。脱出しようとしたが、出入り口はふさがれていて、脱出ができない。また嵐が前に出る。「…これ以上誰かの涙は見たくない!みんなに笑顔でいて欲しいんだ!だから…!」走って敵に突っ込んでいく嵐。左手に持つ爆雷を投擲した。

爆雷は敵の中心部に転がっていき、爆発。火花は散らず煙が立ち込めた。その間を私たちは走り抜ける。ショッピングモールを出るが、私たちは歩いて来ていることに気付いた。奴らは後ろから追いかけてきていて、恐らく車で追いかけてくるだろう。そうなれば、全力で走ることになり、少女を怪我させてしまう。どうすればいいか。ここまでだと思った。

 

すると、蒼いダンプカーが駐車場に止まっていた。窓からは矢矧が叫んでいる。「乗って!島風たち!!」荷台に艦娘の三人が乗り、助手席には少女、運転は矢矧がすることになった。もちろん、矢矧は無免許で運転は非常に荒かった。左右に揺られるが、私たちは必死に粘った。そして、何とかいつもの家にたどり着き、家に逃げ込んだ。

窓から、後ろを確認してみるが、どうやら、うまくまいたみたいで、一応、平和が訪れた。「矢矧…生き返ったんだ…!」私が後ろを見た矢先、矢矧が倒れていた。急いで明石を呼ぶ。

 

『全く…何やってんの…』スピーカーから明石の呆れ声が聞こえる。『矢矧…すごいな、これが火事場の馬鹿力ってやつか…』「でもさ、矢矧は意識不明だったんじゃ…」『今回に関しては私は無関与。何も改造は施してないわ。多分、察知したんでしょ。あなた達が危なっかしいからってね。』私以外にも…心、意思があるのかと実感した。それを知った時、私は泣いていた。ただ泣いていたのだ。「矢矧…」『…貴方は同型艦もいないけど…なぜ同型艦じゃないのに泣くの?』明石が不思議そうに聞く。が、私はただ泣くしかなかった。『…輸送艦隊を編成して矢矧を回収するから。その場で待っててよ。』返事をしたあと無線機を切った。

 

部屋に戻ると、またいつものような部屋の雰囲気に戻っていた。嵐は少女と遊んでいる。その中にしおいもまざっていた。三人で楽しそうに特撮アニメを見ている。そこにアラームが鳴り響く。

『駆逐艦島風、駆逐艦島風、大至急、舞鶴に戻りなさい。艦隊招集です。駆逐艦島風……』大和の声が繰り返し流される。三人を見るが、気づいていない。

「嵐ーちょっと来てよ。」嵐を呼び、出発することを伝えた。が、少女はどうなるのかとふと思いそれも伝えた。嵐は答える。「まぁ、母親が帰ってくるまで預かればいいんだし…今度こそ…逃げずに…守るものを守るよ。この家は俺としおいに任せてくれ。お前もやることあるんだろ?」ニヤリと嵐らしからぬ笑いがこぼれる。それを見て私も安心した。「なら、任せて私は出るかな。」立ち上がり、荷物を持ち家を出る。「やっはぎーによろしく伝えろよ!」「またねーぜかましー!」少女も何も言っていないが、手を振ってくれた。私は出撃での労いよりこの時の方が暖かく感じた。少女の顔は今までにないぐらい笑顔だった。

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