ファイナルファンタジーⅥ『鬼畜少女が斬る』 作:ロシアよ永遠に
勝てなかった。
というか、傷一つ付けられなかった。
あれだけの手数を撃ち込んだにも関わらず、奴の氷はほぼ無傷。
どんだけ寝ておきたいんだよという、ティナの内心の突っ込みを余所に、相変わらず惰眠を貪る彼?による寝ぼけにも似た電撃により、鎮座していた三体の魔導アーマーは爆散。少女もその爆発によって吹き飛ばされ、気絶してしまった。
「ん…?」
目を開けば知らない天井だった。テンプレにも似た物だが、それでもそう書かざるを得ない。浮遊感にも似た感覚を味わいながらも、頭だけを動かして状況を確認する。
…
……
………
わからん。
ただ一言言えるのは、室内であることくらい。
別室にあるのだろうか、暖炉に灯が灯っているからか若干暖かさも感じられた。
「ふむ、お目覚めかね。」
部屋の扉を開けて入ってきたのは初老の男性だ。モブのようでそうでない。そんな印象。それだけだ。
「ここ、どこ?」
「ここはナルシェにある私の家だ。君が北の炭鉱の中で倒れていたのをここまで運んできた。」
なんともまぁ物好きも居たものだ。
「そういえば君の名は?」
「私…私の名は…」
思い出そうとするが、急激な目眩と激しい頭痛。頭の中ももやが掛かったかのようで、それでいて真っ白だった。
「おそらくは操りの輪を嵌められていた反作用だろう。一時的に記憶が喪失されているが、徐々に戻る。」
「そう…私は…私の名は…」
それだけが絞り出せた記憶。
「ティナ…。」
名前を、まるで便秘のようにひり出したあと、無理に思い出そうとしたからか気分が悪くなった。落ち着かせるために老人が淹れてくれた紅茶を飲み、空腹に苛まれていた胃袋を満たし、のんびり、まったりと過ごしていた。
なんと穏やかな物だろう。
あれだけの所業をなしてきた少女が、まるで憑き物が落ちたかのように静かにしているのだ。
このまま、このまま平穏に過ごせる…
「ふむ、そらそろ来るか…。」
「来るって…何が?」
待つこと一時間。
「おかしいな…そろそろのハズなのだが…」
「おい!お前が行けよ!」
「い、嫌だぜ俺は!」
「俺だって嫌だよ!まだ生きていたいよ!」
「俺だって、い″ぎだい″っ!」
昨夜の吹き荒ぶ北風が収まったナルシェ、老人の家の前。
二人のガードが揉めていた。
「お前がノックしろ!お前に気を取られている間に俺が捕縛する!」
「いやいやいや!そうなったら俺死んじゃうっ!ビリーの奴みたいに、HPがゼロになってもなぶられ続けちゃうっ!」
「俺は先月子供が生まれたばかりなんだ!まだパパって呼ばれてねぇんだよ!」
「俺だって先週親父が還暦迎えたんだ!これから今まで親不孝したから、その罪滅ぼしで親孝行すんだよ!」
「あーだ!」
「こーだ!」
「こーだ!」
「あーだ!」
「えぇい!貴様ら!」
ばたん!と勢いよく開かれた扉。老人が出てきて二人のガードに怒鳴り込む。
「早いところ魔導アーマーに乗っていた少女を出せと、まるでヤミ金の借金取り立ての如く訪ねてこんか!あの娘なら、時計の中に隠しておいた、儂のヘソクリエリクサーをちゃっかり回収して裏の炭鉱に逃げおったわ!!」
お前はどっちの味方だ。
「「な、なんだってーーっ!!」」
そしてさも当然のように驚くガード。
「そっか!それならリーダーに逃げられましたと報告すれば!」
「そうだな!万事解決…」
「早いところ追いかけんか!」
老人に文字通り足蹴にされ、二人のガードは階段を転げ落ちていった。
炭鉱内で及び腰のガード達に追い詰められ、崩落に巻き込まれたティナ。落下の衝撃で、ほんの少しだが昔のことを思い出していた。
「ムッハー!セリス将軍ペロペロ。」
「セリス-!俺だー!結婚してくれ-!」
「ウホッ!いい女!」
兵士に持て囃されるセリス。
「いかん…いかんよこれ!僕ちん、セリスの奴に人気が傾いてるのはよろしくないと思うの!というか、こんなのが帝国の兵士でええの?いやよろしくない!反語!」
陰でセリスを取り巻く兵士達の危惧をするのはケフカ。なぜか精神的にアレなハズの彼が真面なことを言っているのが不思議でならない。
「何やってるの?」
「むっ!魔導の娘っ子!今僕ちんは忙しいの!しっしっ!」
「ファイア。」
「あっちっち!!ゆでだこゆでだこ!?」
どこかでホンモノのタコがクシャミをした、様な気がする。
「まぁったく!!ちょっと無下にされただけですぐこれだ!そんなんじゃ将来、『酒がねぇ!買ってこい!!ついでにツマミもだ!』と~か言って買いに行かせる親になるぞ!」
そこまで言って、ふとケフカは妙案を思い付いた。そうだ、これなら面倒を起こさずにあのアホな兵士を粛正できる!
にんまりと口許をつり上げる道化に、ソレを見て首を傾げる彼女。
「そうだ!お前、バーベキューは好きか?」
「…モーグリの次くらいに。」
「そぉかそぉか!そんじゃお前に仕事をやろう!その内容は…
帝国の変態の排除だぁ!」
どやっと決め顔。
「…それとバーベキューとなんの関係が?」
「いいか?あのセリスとか言ういけ好かない女将軍を取り巻く、これまたアホな兵士。同じ女兵士であるお前には取り巻きが居ない。この差はなんだ?」
「…知らない。」
「理由は簡単。
あいつは≪ピーーー≫
お前は≪ピーーー≫
アイツの変態的な≪ピーーー≫が、兵士達の変態的な皮付きアルトバイエルンを固くして…」
「ファイガ。」
「あぎゃぱぁ!?」
焼き焦げる道化を余所に、ティナの目には憤怒の炎が宿る。
持て囃されるセリス。しかし、彼女はそれを疎ましくすら思っているが、ティナにとっては何処吹く風。踏み出す一歩で炎が揺らぎ、城の室内温度を徐々に上昇させていく。
「む、なんだ…少し暑くないか?」
「それでしたらセリス将軍!そのレオタードをお脱ぎになればよろしいかと!!」
「うぉぉ!!直球!!」
「俺達に言えないことを平然と言ってのけるッ!!そこにシビれる憧れるゥッ!」
「どあほう。」
ちなみに取り巻く帝国兵は三百人。ゆらりゆらめくティナの嫉妬という憤怒の炎が、城内を所狭しと焼き尽くすこととなった。
「私は何で……あの人と…何が違ったの……?」
薄れ行く意識の中、肝心なキーワードを思い出せないままに、ティナの意識は暗闇へと落ちた。
しゅくだい。
ケフカの いっていた ≪ピーーー≫に あてはまることばを かんがえなさい。