ファイナルファンタジーⅥ『鬼畜少女が斬る』 作:ロシアよ永遠に
霊峰コルツ
サーベル山地の一角で、一概にコルツ山、等と呼ばれているが、大陸の中心に位置する、最大の山地だ。その長く厳しい山道は修行にもってこいらしく、こぞって拳法家が訪れるという。
そんな山道を歩くのは、青年と少女、そして最低限の布地を纏う変態だ。
「険しい山だが…ティナ、問題ないかい?」
「大丈夫、問題ないわ。」
何やら鳥やら猪やら触手やらがぞろぞろと押し寄せるが、ティナの文字通り指先から放たれる炎によって消し炭と化し、跡形も残らない。
「フォォォッ!!」
ロックはというと、何処で手に入れたやら、三又の鞭を振るい、敵を調教していく。
彼等を阻む者などおらず、ただただ彼等が歩いた後は阿鼻叫喚の死屍累々の光景が残るのみだ。
どれくらい歩いたか?
ちょうど谷を降りたあたりの洞窟の前だ。
「マッシュの手の者
か?」
浅黒い肌をした男が立ち塞がる。その筋肉は隆々とし、見るからにかなりの実力者であることが見て取れる。
「…アイツを知っているのか?」
「…貴様、似た顔だと思ったが、アイツの言っていた双子の兄貴だ
な?」
「だったら?」
「悪いことは言わん。アイツを見つけない内に国へ帰れフィガロ王
よ。」
どういうことだ?
この男の言う内容が今一理解できないティナとエドガーは顔を見合わせる。
「我々はこの先にある渓谷に向かいたいだけなのだ。通して貰おう。」
ここで空気を読んでか否か、ロックがモンローウォークで男に一歩一歩歩み寄る。端から見れば、否、正面から見ようものなら、その恐怖の光景にしめやかに失禁してしまうに違いない。
だがこの男…バルガスは拳法家。修業によってその胆力は鍛えられており、怯むことなくこちらも歩み寄る。下半身のみ胴着を身に纏った彼は、鍛えられた肉体を惜しげも無くさらけ出している。
対しロックは、白のブリーフ、その側面を異様に引き延ばして肩に掛けて、尚且つその顔面にはボーダーパンツ。だが彼も、鍛えたのか、もしくは別の何かによって変貌を遂げた肉体は、同じく力強さを感じさせる物だ。が、必要最低限の衣服であることを差し引いたとしても、変態であることには変わりない。
そんな二人が、試合前のプロレスラーのように至近距離でガン飛ばし、一触即発となっている。
見ているだけで吐き気を催しそうだが、見ている二人は色々と逸般人なので平然としている。
「「ふんっ!!」」
どちらからともなく両手を組み合い、互いを押し合う。額を打ち付け合い、相手を押そうと踏ん張る。
力が拮抗しているのか、双方微動だにしない。
「やるではないか。ダンカン流を極めた俺と押し合うと
は。」
「力比べならば互角。ならば!」
「ぬぉ
っ!」
飛び上がったロックは、掴んでいる手はそのままに、大腿部でバルガスの頭を挟み込む。魔導アーマーの兵士を悶絶させた、ロックの秘技だ。
「ミラージュ・ダイブ!」
股間の柔らかな感触、そして得も知れぬスメルがバルガスに精神的ダメージを確実に与えていく。
「ぬぉっ!?小癪
な!?」
藻掻くバルガスだが、しっかりと頭部に組み付いているので、中々振り払うことが出来ないで居た。
「えぇい!奥技!!連風燕略
拳!!!」
よく分からないエフェクトでロックを吹き飛ばしたバルガス。高々と打ち上げられた彼は、くるくると回転。数メートル後方に危なげなく着地する。
「やはり貴様、俺の編み出した奥技を喰らってなお無事とは…ただ者ではない
な!」
「そちらも、ミラージュ・ダイブを喰らっても、精神の均衡を保っているとは…やるな。」
双方ニヤリと、まるで好敵手、いや、極上の獲物を見つけたかの要に嗤う。
「ならば、この技を以て屠ろう!終死
け…。」
「待ちやがれバルガス!!」
突如として、第三者の声によって、二人の決闘は遮られる。岩場の奥から、素早い身のこなしで現れた男が一人。バルガスと同じく、鍛えに鍛えられた肉体。エドガーと違い、角刈りのような頭。後頭部は少し伸びている程度で、申し訳程度に縛っている。
「マッシュ
か!?」
「バルガス!何で、何でダンカンのじじぃを殺しやがった!?実の息子であるテメェが!」
「それはなぁ!奥技継承を息子の俺ではなく、お前にすると言ったからだ
よ!!」
「違う!じじぃはテメェの…」
「何が違うんだ?違わないとお前の顔に書いてある
ぜ。」
「違う!じじぃは俺ではなく、バルガス!テメェの素質を…!」
「戯言など聞きたくない
わ!」
「どうやら、やるしかねぇようだな。」
「宿命だ。貴様は私に勝つことが出来ない。それもまた、宿命
だ。」
「オラァ!!」
「ぬぅ
ん!!」
目の前で始まる、拳法家二人による、常軌を逸した格闘戦。拳と拳、脚と脚。技と技がぶつかり合い、文字通り火花を散らす勢いだ。
「烈風
殺!!」
放たれた真空刃が周囲を切り刻んでいく。マッシュは腕で辛うじて防ぐが、その鍛えられた肉体でも完全に防ぐことは出来ず、赤い鮮血が宙を舞う。
そしてその真空刃の被害は周囲にも及んだ。
軽鎧で身を包んでいるエドガーはともかく、ティナはお色気バトル漫画の負傷の如く、18禁にならない必要最低限の布地を残して、衣服が霧散し、自身の裸体が晒されそうになったことで、身を抱いて身体を隠す。
これなら挿絵があればサービスシーンとして紳士諸君を喜ばせていただろう。
だが待って欲しい。
彼女よりも更に薄く、少ない布地の男がいることを忘れてはならない。
「ぬぅっ!?」
ロックのVの字にして股間から肩にピンと張って伸ばしていたブリーフ。張り詰められた物は、ほんの少しの損傷で、その形を崩壊させていく物だ。つまり…
「フォォォッ!?」
真空刃がほんの少し、ブリーフに切り目を入れた。
後は…想像したくないだろうが、読者紳士諸君の想像通りの展開だった。
「終死
拳!!」
「ぐほぁ!!」
そんな嬉恥ずかし見苦しい背景を差し置き、バルガスの拳が、マッシュの鍛えられた腹筋に深々と突き刺さる。
「ふっ…これでお前の命もあとわずか
だ。」
「てめぇ…じじぃが使うなと言っていた殺人拳を…!」
あくまでも自身の鍛錬と、そして最終手段として学んでいた終死拳。それを拳法家の決闘で使用するという暴挙に及んだバルガスに、マッシュはダンカンを殺された怒りに加え、更なる炎を燃やす。
「拳など、ふるってなんぼだ。今の時代、活人拳など甘っちょろい物にするよりも、こっちの方が喰っていける
ぜ?」
もはや許すことが出来なかった。
マッシュの中で何かが切れる。
自身と共に極めてきた拳法。それを汚そうとし、剰え、じじぃと口悪く呼びながらも敬愛していた師を殺された。
「てめぇは…」
もはや、語るまい。ふつふつと沸き上がっていた怒りが沸騰し、マグマの如く激昂する。
「てめぇは、このマッシュ・レネ・フィガロがじきじきにブチのめすッ!!」
「やれるか?この俺を倒せるか?生温い拳法に染まったお前が?笑わせ…」
「もう御託は要らねぇ…!
オラァ!!」
「ぐ
ふっ!」
瞬時に懐に飛び込んだマッシュの拳により、今度はバルガスの身体がくの字に折れ曲がる。
「裁くのは…俺のこの拳だ!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーッ!オラアアアアアアアアァァァァァ、オラオラオラオラオラオラオ、オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーッ!!」
そこからは最早圧倒的だった。
両拳から放たれる鉄拳、その無数のラッシュが、バルガスの体に刻み込まれていく。
意識が飛ぼうが、次の拳がこれを強制的に引き戻し、また次の拳が意識を刈り取っていく。その繰り返しが最早バルガスの
「オラァ!!」
フィニッシュのストレートが、バルガスを易々と吹き飛ばし、地に伏せさせた。最早その顔は原形を留めておらず、文字通り虫の息だ。
「キ、貴様…スデにその技
を!?」
「てめーの敗因は…たったひとつだぜ…バルガス…
たったひとつの
『てめーは おれを怒らせた』」
その言葉を聞いてか聞かずか、バルガスはその意識を絶った。
恐らく死んでは居ないだろうが、あの傷では暫くは動けないだろう。
「やれやれだぜ。」