息抜き   作:あるまーく

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第2話

「あいつがかよ…」

 

部屋にベートの呟きが浸透する。告げられた人物、その人物に、一同は虚をつかれた。

 

「……それでどうするんだい?」

 

「どうもこうもないわ。喧嘩を売られた訳やからな、買うに決まってるわ。唯、ウチらが全員で相手するわけにもいかんからなぁ…。この中の誰かに任すわ」

 

ファミリアとしての体裁がある。都市最強ファミリアであるロキ・ファミリアが、極貧ファミリアであるヘスティア・ファミリアに全員で戦うのは、もはや苛めだ。

 

しかし、喧嘩を売られ何もしない訳にはいかない。

 

故にロキは、一対一の決闘を行う気でいた。

 

相手は全員で掛かってこい、と言っていたが、恩恵を貰ってない者に全員で挑む必要などない。

 

それでもこの中の誰かに任す事にしたのは、ロキの保険によるものだった。

 

下位の団員に相手を任すのも、大判狂わせがあるかも知れない。それだけは避けたかったからだ。

 

それでも、この中の誰かに相手をさせても、苛めと叩かれるかもしれないが、喧嘩を売ってきたのは向こうだ。それをどうこう言う権利などないだろう。

 

「俺がやる。雑魚の分際で意気がりやがって」

 

真っ先に返答したのはベートだった。

 

というより、他のメンバーも分かっていた。この場の中で、その役をやるのに相応しいのが誰かと。

 

彼は、身の程を弁えない雑魚が嫌いだ。他のメンバーを押し退け、ロキの前へと歩み出そうとした時。

 

「ーーー私がやる」

 

そのベートより早く、アイズがロキの前へと歩み出た。

 

「アイズ!?」

 

誰もが驚いた。ロキでさえ、まさかの人物の返答に目を見開く。

 

「ごめん、譲って」

 

横入りをしたことに謝罪し、後ろにいるベートに振り返る。謝られた本人も、思ってもいない事態に、声を返せない。

 

こんな結果の分かりきった戦いに、アイズが参加しようなど、誰が思うだろう。

 

だが、アイズの胸中は違う。あの酒場の時にアイズは一度見逃されている。

 

その事がどうしても悔しかったのだ。

 

しかし今は違う。ランクアップを果たし、今やLv.6となった。そして前回のような油断もない。

 

「……分かってると思うけどアイズたん、これは決闘や、下手な真似は駄目やで」

 

「分かってる」

 

主神であるロキの見定める瞳に対して、アイズはその瞳を見つめ返す。

 

そして、はぁ、とため息を吐いてから、静かに頷いた。

 

ーーー『剣姫(けんき)』アイズ・ヴァレンシュタイン、参戦。

 

ーーーーーー

 

翌日のギルドは賑わっていた。否、都市全体が異様な熱気を醸し出していた。

 

それは、ギルドに貼り出された一枚の紙によるものだった。

 

【『ロキ・ファミリア』と『ヘスティア・ファミリア』による戦争遊戯。

 

対戦内容は『一対一の決闘』

 

『ロキ・ファミリア』からはアイズ・ヴァレンシュタイン。

 

『ヘスティア・ファミリア』は期日中に対戦者の名を提示するべし】

 

それはロキが朝一でギルドへと提出した紙だった。

 

本来であれば、相手側の神であるヘスティアとの合意で決めるのだが、これ以上の譲歩は出来ない。

 

元より仕掛けてきたのは向こうだ。今さらヘスティアの合意などあってないようなものだ。

 

それに、仕掛けてきた本人は何人でも構わないと言っていたのだ。それを譲歩してこちらは一人にしたのだ。

 

ただし、参戦させる眷族のLvまでは、向こうに合わせる気はないが。

 

戦争遊戯ーーー対戦対象(ファミリア)の間で規則を定めて行われる、派閥同士の決闘。

 

……しかし今回のこれは決闘ではなく、苛めとしか捉えられなかった。

 

『ロキがやらかしたァー!!』

 

『すっげーイジメ』

 

『逆に見てみたい』

 

その紙は、初めはギルド内でしか貼られていなかったが、娯楽好きの神々により、既に都市全体へとばら蒔かれていた。

 

「僕はまだ許可していない!!」

 

何とかしようと、街を出歩いていたヘスティアは、舞う紙の一枚を掴み取り、それに目を通した。そして都市全域に響くほどの声を上げ、ギルドへと走っていった。

 

そして…。

 

「ほぅ…」

 

その人物もまた、違う場所においてその紙を手にしていた。

 

「くっくっ…」

 

手にした紙に目を通してーーー笑った。

 

「そうか、ここまで我をコケにするか」

 

片手で顔を覆い、空へと哄笑する。

 

……何人でこようと問題は無かったが、よもや一人とはな。

 

「どこまでもふざけた奴だと思ってはいたがな」

 

そして手にもつ紙を、グシャと握り潰した。

 

「良いだろうロキ。貴様の眼前で、この雑種を見るも無惨な姿に変えてやろう」

 

ーーー『英雄王』ギルガメッシュ、参戦。

 

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