予告より遅いとか予告を最後に失踪よりはいいですけどね。
第一話
気が付くと家の庭とは違う所に居た。しかし今まで訪れた世界ほど現実からかけ離れた景色は無い。失敗して別世界への移動じゃなくて、ただ単に違う場所へ瞬間移動したと思うくらいによく見る普通の住宅街だ。
てか住宅街はやめろよ、誰かに見られたらどうするんだよ。って真琴どこ行った!?
「五月蝿いぞ、私は今お前様に憑依してる状態じゃ。ちと疲れたわい」
「あっそ。で、この世界はどんな世界なんだ?」
「そうじゃの、上の方から一体悪魔みたいなものが近づいてくる以外は普通の世界だと思うぞ」
そう言われて視線を上げる。
そこにはオカルト雑誌で見たことがあるモスマンみたいな生物がもの凄い勢いでこちらに突っ込んでくる姿が見えた。
「はぁ?何だよこの世界は!いきなりUMAのお出ましかよ!?」
モスマン。確か千九百九十年代にアメリカで目撃された、体長二メートル前後の蛾人間である。確か時速百キロで飛ぶ。
そしてあいつは今高度を下げている。つまり加速している。このままだと俺はまた死ぬよ?ルパン並みの生命力を持っていない大倉暦は死んじゃうよ?
しかし予想に反してモスマンは地上十メートルくらいの位置で急停止。ホバリングを始める。
しかし止まってくれたお陰でやり易くなった。
「結、滅」
久しぶりの結界術。うん、思い出した思い出した。
しかしモスマンの死体は残せなかったか。あれを世界に発表すれば億万長者になれたのに。
「まあ、大体は真琴の所為だな」
「おい、何でそこに私の名前が出てくるんじゃ」
「おいそこの人、お前何物だ!」
思わぬ声に一瞬思考が停止する。
もしかして、見られちゃった?
声のする方を見るとさらに驚く。そこには茶髪に赤目の少女が居た。
それだけならそこまで驚かない。そんな特徴を持つ人なんて腐るほど見てきた。
しかしその少女の顔は緑川翔子さんにそっくりだった。
こちらの方が小柄で幼い印象があるが、顔のパーツ全ての特徴が俺の知ってる翔子さんと瓜二つだ。
「翔子…さん?」
思わずそう呟いてしまうほどにそっくりだった。
「なっ!お前なんで私の名前を!?」
どうやら聞き取られてしまったらしい。やれやれ、説明するのはめんどくさいぞ。
「くそ、こんなことならあのモスマン倒さなきゃ良かった」
「モスマン?お前はあれをUMAだと思っているのか?」
ああ、あれか。別世界の同一人物と言う奴か。それなら納得だ。てか翔子さんは『お前』なんて言葉は使わないし。
「質問に答えろ!」
「へ?」
俺に出来たのは考えることを一旦やめ、少女の方を見ることだけだった。
直後腹部を襲った激しい痛みに俺は意識を失った。
何なんだこの女の人。
怪しげな攻撃で下級とはいえ妖魔を一撃で消して、さらには私の名前まで言った。
今は私のパンチで気絶して伸びてるけど。あれいつの間にか二人に増えてる。しかもいつの間にか現れた方は頭から動物の耳と、お尻の辺りからは九本の尻尾が生えてるし。まさか…。
一度私の家まで運んだほうが良さそうね。
「菜坂、聞こえる?」
「翔子ちゃんか、どうしたんだ?」
「不審者二名を拘束したわ。迎えに来て。場所は」
「場所は分かる、そこを動くなよ」
しばらくすると全身黒い格好をした男が現れる。
「遅かったわね」
「しょうがないだろ、幾ら魔法でも二つ分の担架を作るには時間が掛かるんだ」
「移動しながら作ればいいじゃない」
「その手があったか!」
この人は馬鹿なのか天才なのか分からない。しかし現状数少ない仲間の一人だ。
「しかしこの少女は良いが、こっちは神様なんじゃないのか?」
「そうね、確かに妖魔とも妖精とも思えないわね」
むしろ妖怪。しかし妖怪なんてものは昔話の中だけの話だし、恐らく神だろう。
「だとすると気を失ってる間に片付けたほうが良いな」
そう言いつつ魔法でナイフを作る菜坂。そのナイフが神の喉を切り裂こうと振り下ろされる。
だけど途中で何かに阻まれる。
いつの間にか復活していたもう一人の少女がナイフを刀で受け止めたのだ。
どこから出したのかは知らないが。
「お前たち、これ以上真琴に手を出すと、次は斬るぞ」
深爪はあのナイフを受け止めたらそこから折れた。一晩もすれば生えてくるけど。
「真琴、起きろ。取り合えず逃げるぞ」
「あうー、すごく腹が痛いわい。これはどう言う状況じゃ?」
「よく分からないが取り合えずあの二人がお前を殺そうとしていた。恐らく敵だ、憑依するんだ」
「分かっておる。…しかし、いや、今は良いか」
意味深な言葉を言いながら真琴が俺に憑依する。
後でこの意味を聞かないとな。
この章は私の過去作を元に作っています。理由はその過去作が黒歴史だからです。
どうにかしたかったんです…。