せかいシリーズ   作:猫舌36@活動停止中

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これで第一部は終了です。皆さんありがとう御座いました!


第八話&エピローグ

「ねぇ…あんたどう言うつもりよ!」

 

大空へと飛び立った二人を見送り椅子に座ってから答える。私が大掛かりな小細工をして自由に形を変えられるスライム状の式神は計画通りに渚を取り込み空へと飛んでいった。龍の形をとったのは想定外じゃったが、それ以外は渚や周囲の空間霊力を吸収してどんどん巨大化したり空を飛んだりと予定通りの動きをしているのじゃ。

 

「何、簡単なことじゃ。あの二人は幼馴染なんじゃよ。それが理由かはどうかは知らんがお互い消極的でのぉ、ちょっとお互いに素直になって貰おうと思っただけじゃが?恋のキューピットと言うよりは必要悪といったかんじじゃがな」

 

「別の所でやりなさいよ!」

 

それはまあ、ごもっともで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤いビーム、もとい熱線を受けても自分がまだ思考できて風や熱線の余熱を感じることが出来て、尚且つ五体満足でいることに驚いていた。

過去形。

今はプロテクターと月読の貯蓄霊力が最大値まで回復してることと高濃度の霊力が自分の周りで停滞していると言う謎現象、それに驚いてます。

しかし、龍はそんなことお構い無しにまた口を開け熱線を吐き出した。

さっきよりは規模が小さいけどそれでも俺なんかは一瞬で蒸発するだろう。

慌てて射線上から離れる。だけどさ、ビームの直径がさ、思ってたより大きかったんだよ。

今度こそ死んだと思ったけど、またノーダメージで済んだ。

俺の周りに漂っていた高濃度の霊力が盾になったようだ。

この霊力がどこから来たのかは知らないが、それはこれが終わった後真琴に聞けばいいことである。

動きを止めている龍の腹部に向かって再び飛ぶ。右手に月読を持った状態でゴッドフィンガーの発動準備。ある程度まで加速したら月読を鞘に納め、両手を前に付き出す。

 

「ばぁぁく熱!ゴッド…フィンガァー!!」

 

フルパワーである。

ゴッドフィンガープロテクターも手の甲を覆うようにスライドしてエネルギーロスを最小限に抑えた状態だ。

その両手を龍の腹に突っ込む。さっきまでスライムだったからふにゃふにゃしてるとばかり思っていたけどそんなことは無く、塊肉に手を突っ込んだ感じだ。

勿論手を突っ込んだだけじゃ終わらない。

 

「石破、天驚拳!」

 

一体いつからゴッドフィンガーしか使えないと錯覚していた?

ゴッドフィンガープロテクターはあくまでも霊力の貯蓄及び放出機能を備えたものなんだぞ。別にゴッドフィンガープロテクターを再現したわけではないのだ。形は再現したけど。

そんなことは今はどうでもいい。

石破天驚拳を体の内側に撃たれた龍は体中が歪に膨張してバァン!と爆発した。

 

「渚ぁぁあ!」

 

ボロボロと落ちて行く龍の肉片の中から渚を探す。

早く見つけて助けないと地上に落ちて死んでしまう。

 

「見つけた!」

 

気絶して頭から落ちて行く渚を視認する。

ふはは。天照さん、俺の勝ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談と言うか、今回のオチ。

まこぴーによるドッキリにも似た事件によって連れ去られた私を助けて天照さんのところに戻り、勝利宣言をしたところで暦は気を失った。

私が語り部をしているのはそのためである。無茶しやがって。

結局なぜまこぴーがあんなことをしたのかは私には教えて貰えなかった。ただ、まこぴーは『これも失敗か、またしばらくは作戦を練り続けることになりそうじゃ』と意味深なことを言ってた。

ちなみに謝罪の言葉は無かった。

 

「それで、暦の願いはなんなのよ。肝心なときに本人は寝てるし」

 

「じゃあ、代わりに私が答えます」

 

暦の願いは男の子に戻ること。だけどそれだとちょっとつまらない。あと女の子状態の暦は本人が思っている以上に可愛くこれで見納めだと思うと残念だ。

だから、暦には申し訳ないが私が勝手に暦の願いを少し変えてしまおう。

 

「暦の願いは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと見覚えのある天井が目に入った。

ここは確か魔科学世界のある国の城の俺に与えられた部屋のはずだ。だが、なぜここに?

さっきまで高天原に居た筈だけど…。

ベッドから出ようとして違和感を感じる。体が元の男の状態に戻っていたのである。

つまり天照さんはちゃんと俺の願いを叶えてくれたと言うことだ。

あれ?俺天照さんに願いを言った記憶が無いんだけど。

 

「あら、暦。もう目が覚めたのね」

 

「いつからそこに居たんですか」

 

「暦がここに運ばれたときから」

 

「本当に最初っからじゃないですかルーナさん」

 

あれ?こんなフリーダムな人だったっけ?

 

「それにしてもこの前までは二つの能力を持っていたけどいつの間にか三つになっているなんて」

 

へ?

 

「そう言えば言ってなかったわね。ひとつは変身能力、これは説明はもう要らないだろうけど制約として女性時にしか仕えないことが追加されたわ。二つ目は吸収能力かしら?与えられたエネルギーを全て霊力に変換してそれを自分のものにする能力ね。欠点として三秒しか発動できないことと効果終了から五秒クールタイムが必要なこと、代償として保有霊力量とてつもなく少なくなること、制約として男性時にしか使えないわねね。最後のは性転換能力ね。効果は読んで字のごとく。代償として多重人格化があるわね。大丈夫よ変わるのは言葉遣いだけだし記憶も思考も変わらないわ。むしろ言葉遣いで本来の性別がバレることが無くなるから利点でしかないわね」

 

俺は同じ説明をもう三回聞いてようやく話を理解できた。とりあえず渚は許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何であんたはまだ居る訳?一緒に帰ればいいじゃない」

 

一足先に人間界に主様と渚を帰して私は天照と話を始めたのじゃが、開口一番これである。

 

「そうは言ってもまだ私の願いをきいてもらってないからのぉ」

 

「そ、そう言えばそんなことも言っていたわね。どう言った願いかしら?」

 

「その前に一つ言っておく。今から私が言う願いを叶える必要は無い。ただ聞くだけでいいのじゃ」

 

どうせこいつの性格的に叶えたくなるのじゃろうが、強制ではないと言うことを予め示しておかないとめんどいことになりかねん。

私は目を瞑りながら願いを言う。目を瞑ってしまうのは緊張したときの癖じゃ。

 

「私と、仲直りして欲しいだけじゃ。もう一度、姉妹としてやり直したいだけじゃ」

 

目を開けると天照は俯いていた。何も言わず、俯いたまま。一分も経ってないじゃろうが、十分くらいこうしている気がしてきた。

 

「そんなの、断れる訳ないじゃない。姉様の卑怯者」

 

顔を上げる。目を腫らしながら、泣くのを我慢しながらそう言う天照。姉様と言う呼ばれ方も何百年振りか思い出せない。

そう、何百年も前のことじゃから何が原因で姉妹仲が悪くなってしまったのかは思い出せない。些細なことじゃったのかもしれないし、何か重大なことじゃったのかもしれない。

でも、私はそれが原因で二人で住んでいた家を飛び出したし、それと同時に名前を捨てたことは事実じゃ。

繋がりを断ちたかったからじゃ。

それからと言うものたまに会うとお互いにぶつかり合って仲直りもしようとしないでいつの間にか何世紀もの時間が経っていた。

 

「今さらこういうことを言うのもおかしいかもしれんがの、すまなかったのじゃ」

 

「悪いのは全て私の方よ…多分」

 

「お互いどちらが悪かったのかを忘れてしまった訳じゃな。歳を取ったものじゃのう」

 

「姉様は私より二百歳老けてるけどね」

 

「それを言ったら…えーと、うぬの名前は何じゃったかの?」

 

殴られた、グーで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚を探して三千秒、つまり五十分。中学の授業一つ分である。もっとも最初の四十五分は食事で費やしたんだけど。正確には食堂でご飯を食べながら待っていた。

五分かけて見つけた渚は、城の西側のテラスで夕日を見ていた。

 

「こんな所に居たのか」

 

声を掛けるすぐにこちらに振り返る。

 

「こんな所だなんていっちゃ駄目よ。レーラさんに教えてもらったこの城で一番景色のきれいな場所なんだから」

 

確かにきれいな夕日だった。西には海が広がっているため水平線に沈むまで見ることが出来る。

 

「ねえ、暦。私暦のことが好きだったんだよ。でもね、私は人間じゃないって天照さんに言われたの。あの式神は私を取り込んだ瞬間龍の形を取ったでしょ?あれは私が人間じゃなくて龍神だからだって」

 

初めて渚の涙を見た気がする。気がするだけであって何回も見たことがあるんだけど。

でも、何回見ても初めて見る気がするのは、それだけ渚が泣くことが無かったからだろう。

そしてドラマやアニメならともかく、現実で、目の前で、好きな人が泣いているのはとても辛い。

 

「だったら何だよ、それくらいどうしたんだよ。それでも俺は渚が好きだ。好きなんだよ!」

 

「ほんと、暦は優しいよ…。これからもよろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが本当の後日談。

あの後二人でいるところをレーラさんとルーナさんに見つかってしまい色々弄られ。遅れて帰ってきた真琴には

 

「ようやくくっ付いたか。これで私が二人のことで悩むことは無さそうじゃな」

 

と言っていた。なぜか左頬が異様に赤くなっていたけど。

その後に天照さんが来て、渚から龍神の力を抜き取ってくれた。人間界に龍神なんて高位な神の力が一般人が持っていることを危惧してこととだ(おそらくは建前だろう。個人的には真琴のほうが危ないと思う)。これで渚は少し体が頑丈になったり体内で霊力を作れるといった後遺症が残るもののそれ以外は人間と同じになった。

このとき天照さんが真琴を『姉様』と呼んでいたことには驚いたが…。

そんなこんなで俺の青春の物語はこれで終わるわけだ。でもこれからも物語りは続くだろう。

だって俺はまだ二十歳どころか十八歳にすら成っていないからだ。




第二部は八月開始予定です。タイトル決めないとなぁ。
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