よかった、また目が覚めた。体調も悪くは無い。
状況は悪いかもしれないけど。
昨日は草原で寝ていたけど、目が覚めたらふかふかのベッドの中だった。こんなところに金を掛けるなと言いたくなる程豪華な装飾が施されたベッドで寝ていた。部屋もホテルのスイートルーム並みに豪華だ。なぜかカーテンが閉められてる。
「むにゃむにゃ、徒歩○分は1分当たり80メートル…」
ベッドの横には予想通りと言うか何と言うか、豪華なドレスを来た僕より少し年上の少女が居た。椅子に座って眠っている。青い髪にきれいな顔立ちに凛々しい雰囲気をまとっている。ただし寝顔で残念な美少女になっている。
あとなんで僕が居た世界の雑学を知っているの?これが噂の電波系って奴なの?
彼女のお陰でここが中世的な異世界と言うことが分かった。ここがこの世界にある貴族の屋敷と言うことも。
取り合えずこの少女を起こさないと。肩を叩いて呼びかければいいかな。
「もしもし、起きてください?」
自分の声に違和感を感じたけど、ここ最近自分の声を聞いていなかったからどこが違うか分からない。
「ん…はぁ。あら、起きたんだ。気分はどう?」
無駄に洗練された素早い動きで口元の涎を拭い、微笑みながら話しかけてきた。
つくづく残念な美少女だ。
「はい大丈夫です」
「そう、よかったわ。あんなところで裸で寝てたら何に襲われるか。考えるだけで恐ろしいわ」
裸で寝てたんだ…気付かなかった。体を見ると薄手のネグリジェを着ている。どうやら着せてくれたらしい。
ネグリジェ?これって確か女性用のパジャマだったはず…。僕男の子だよ。それに体が縮んでたり色白になってる気がする。
「これは?」
「その服は私がもう少し小さかったときに着ていた物よ。サイズもいい感じね」
そういうことを聞きたいんじゃないんだけど。
まぁ、下手なこと言って疑われるのも面倒だしここは女の子で通そう。
「そうですか、助けていただきありがとうございます。では僕はこの辺で」
しまった、一人称が僕になっている…これじゃあ僕っ娘じゃないか。
追求されないよう、逃げるように部屋を出る。
「あ、駄目よ!この部屋から出ると…」
後ろで呼び止める声が聞こえたけどもう遅い。扉を開けて廊下に出てしまった。やはり廊下も豪華な造りになっている。外の光を積極的に取り入れるようになっておりかなり明るくなっている。
「うぷっ、おえぇ」
しかし僕はその廊下に感心する暇なく強烈な吐き気に襲われた。と言うより実際に吐いた。胃の中が空っぽだったから胃液だけだったことは不幸中の幸いかな。
「だから駄目って言ったでしょ」
少女が僕を抱いてベッドに連れ戻しながら言う。少女に抱いて貰えるのはご褒美ではなく拷問だ。すごく恥ずかしい。
それと力強くない?いくら今の僕が小さいからといって少なくとも40キロは超えているはず。それを難なく抱くことが出来るって…これが女子力(物理)?
僕を再びベッドに寝かせ少女は廊下に出ると2回叩いた。するとメイドさんが1人やって来て僕の吐瀉物の掃除を始めた。さすが貴族、一々指示を出さなくても簡単な合図だけでいいのか。
「もしかして、あなたは記憶が無いの?普通なら今の時間に外に出るなんてことしないはずだけど。そもそもこの時間に活動しないはずなんだけど」
いつの間にかベッドの横に戻っていた少女がそんなことを言う。
どういう意味だろう。昼間に外へ出ないなら人間はいつ外に出るんだろう?
混乱していることを察したのか、彼女は僕に真実を告げた。
「思い出せない?あなたは吸血鬼なのよ」