夜、正確な時刻は分からないけど多分20時過ぎだと思う。
吸血鬼になった僕の食事は僕を拾ってくれた命の恩人であるシャーロット・モンフォールさんの血だ。
普段は紅茶などを入れるものである白いティーカップには赤い血が入っている。
シャーロットさんが手首を切って血を注いだのだ。勿論治療済み、こっちの世界でも霊術は問題なく使えるようだ。
ごくごく。うげぇ、まずい。
鉄の味がする…吸血鬼だからって血をおいしく感じるわけではないのかな?それとも直接吸わないと駄目なのか?
カップにこびり付いた血を水の霊術を使って洗い落とす。
どこに戻せばいいのか知らないのでシャーロットさんに聞こうと思ったけど、彼女はさっきからずっと僕を見ながら考え事をしているから聞くに聞けない。
何でも僕の名前を考えているらしい。
確かに前世の名前だとこの地域では場違いな響きだろう。一応男女共用的な名前だから今でも使えないことはないけど。
昔は神島と書いていたらしい。神蔵家が大倉と名乗るようになると、他の霊術使いの家も苗字から神の文字を消したそうだ。今でも神と付いているのは神風家くらいかな。
「ラミア。ラミア・モンフォール。響きがいいわね。これに決めましょう」
どうやら僕の名前が決まったらしい。それも響きがいいと言う理由で。
ラミア・モンフォールと言うのがこれからの僕の名前のようだ。いつの間にかモンフォール家の一員になっていることには触れないでおこう。
「あなたは私の妹と言う設定、正確には義妹ね。お姉ちゃんと呼んでもいいのよ」
それはちょっと恥ずかしいな。実の姉にさえ『お姉ちゃん』と呼んだことがないのに。
「じゃあシャロさんで」
「それは私のあだ名でしょ。お姉さんでもいいのよ」
「じゃあ姉さんで」
少し不満そうな顔をしたが納得はしてくれたらしい。
「まぁ、いいわ。本当は貴族らしくお姉様と呼ばせるのが正しいんだけどね」
それでいいのか貴族社会。少なくとも僕とシャロさんはいいようだけど。
「あと、これだけは聞かせて。あなたは魔法が使えるの?」
「魔法?何それ、ハリー・ポッターのこと?」
「ハリー・ポッター?とぼけないでよ、さっきだって手首の切り傷直してたじゃない」
霊術のこと?そうか、この世界では魔法と言うのか。
もっとも、使えない人は居ないはずなんだけどね。皆存在を知らないだけで、使えない訳じゃないはずだ。
「え、これ?使えないの?」
右手の人差し指を伸ばしそこから光球を出す。ただ光るだけの名前もない初歩的な霊術だ。
「やっぱり魔法を使えるじゃない。お願い、私に教えて!」
教えて欲しい?なるほど、存在は知っているけど使い方は知らないと言うことか。その発想はなかった。
「分かった教えてあげるよ。その代わり、この世界のことについて教えて欲しいな」
魔法の件でもあったように、常識が違う部分があるようだ。この世界で生きていく以上そういった食い違いをなくして置きたかった。