今後の動きを考えていたら、いつの間にか夕食の時間になったらしく、受付の女の子を少し大きくした子が知らせに来てくれた。
姉なのかな。妹とは対照的な性格のようで声も小さかった。
夕食はパンとビーフシチューとプリンだった。
モンフォール家で出された料理と比べればかなり質素だが、僕にとってはこれくらいがちょうどよかった。テーブルマナーにさほど気を使わずに済むのもうれしい。
「こんなときでも開店していて助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、あなた達みたいな旅人の為にやっているんですから。せっかくこの街に着たのに止まるところがなくて野宿、て言うのはひどい話ですから」
既に食事を終えたシャロさんは女将さんと話している。
なにやら談笑を始めたようだが、その声が聞き取れないくらいに集中していた。
行方不明の原因、自然災害か人為的なものか、自然災害の場合どんな災害でどう対処すべきか、人為的な場合その正体と狙いは何で平和的解決は可能か。
災害の場合山脈地帯で起こりえるのは土砂崩れだろう。いや、さっきみたいにモンスターに襲われたという可能性もある。しかし、その場合だとなんとか逃げ切った人がいてもいい筈だが…大規模な集団が丸ごと消えた事例もあるから、モンスターは除外。土砂崩れだって、流石にこれだけの回数は起こらないだろう。
だとするとやはり、災害ではなく人為的なものの可能性が高い。まず正体だが、それすらも予想することは難しい。可能性がいくらでも考えられる。だからその中から絞って特定するしかない。
レンバッハ帝国の攻撃かもしれないし、山賊による犯行かもしれないし。あ、もしかしたら――
「ラミアちゃん、そろそろ戻るわよ」
と、シャロさんに声を掛けられて現実に戻ってきた。いつの間にか食器も片付けられていた。
それに気付かない程考え込んでいたようだ。
はて?さっき何か思いついたような気がしたけど何だったかな。思いついた瞬間に話しかけられてから忘れてしまった。
思い出せないまま部屋まで戻ってしまった。思い出せないってことは大したことじゃないんだろう。
まぁ、どんな敵が現れても吸血鬼の身体能力なら大丈夫だろう。
フラグを立ててそのまま2日が経ち、今僕達はケルトン山脈に居る。
標高1000~1500メートルくらいの東西に伸びるこの山脈を越えればレンバッハ帝国に行ける。
山の中は木が鬱蒼としていて、昼間なのに夕方のように暗くて視界も悪い。
これだけ視界が悪い環境で奇襲を受けたら何が起こったか分からないだろう。
「姉さん、左にジャンプ」
上から何かが来ることを察知して、それがシャロさんを狙っていると判断した僕は、すんでのところで姉さんに危険を伝えた。
それを聞いた姉さんが左に跳んで着地するのと、上から落ちてきた物が着地したのは同時だった。
人が土煙の中から現れた。銀髪赤眼の男だ。ニヤリと笑いながら近づいてくる。
その歯は僕と同じ八重歯…つまりは吸血鬼。
「フフ、貴様らの血も吸ってやろう」
この言葉から察するにこいつが一連の失踪事件の犯人だろう。
僕は何も言わず、腰からロングソードを抜いた。