ちょっと(?)時間掛けすぎですねごめんなさい。
剣に魔力を集中して、それを振動させる。この状態なら鉄板だってサクサク切れるだろう。
やわらかいパンだって綺麗に切れるし、水魔法と併用すれば頑固な汚れだって落とせる。振動魔法は日常でも役に立つ便利なものだ。
銀髪吸血鬼のパンチを避けて、剣を振り上げて伸びきったその腕を斬る。
直後に銀髪吸血鬼はバックステップ。再生してもう一度仕掛けてくるつまりだろう。そんなことはお見通しだ。そこには既にシャロさんが居た。
シャロさんは野球のバッターみたいに剣をフルスイングして、上半身と下半身を分離させた。
躊躇が何にも無い…。逆に怖いな。
銀髪吸血鬼の回復力は思ったよりは高いようだ。少なくとも僕よりは。
その僕の回復力がかなり低い(腕を切り落としたあと再生するまで30秒)のだけれど、回復力では相手の方が有利だ。
再生しきる前に踏んだり蹴ったりする。
そろそろ再生が終わるな、そろそろ逃げよう。
「姉さん、そろそろ逃げるよ」
「分かっているわよ!」
3メートル程離れる。本当は10メートルほど距離を取りたいが、周りの木が邪魔で動ける範囲が狭まっている。
それに霧も出てきた。僕は問題ないけど、姉さんはまだ人間だから目で見える範囲しか把握できない。人間の視力で見える範囲は5メートルくらいだろう。
再生を終えた銀髪吸血鬼はゆっくりと立ち上がり、物質創造スキルでナイフを作るとそれを僕に向かって投げてきた。弱そうな方から殺ってしまおうという魂胆だろう。
イナーシャルキャンセラー、慣性を殺す魔法を発動する。ナイフは僕に当たる寸前で推力をなくし、地面に落ちた。
それを見た銀髪吸血鬼は一瞬驚くが、すぐに気を取り直し今度はシャロさんを狙った。
ナイフを投げずに直接切り裂きにいくようだ。
両手にナイフを持ち、右手は頚動脈、左手は肝臓を狙っている。
しかしシャロさんは頚動脈に迫るナイフを頬と左肩で挟み無効化、同時に左手に剣を持ち帰る。右脇腹に迫るナイフを肘と手首で左手に持った剣を振り上げて弾いた。
シャロさんに接近戦を挑んだが悪い。結局左頬に浅い切り傷が出来た程度だ。本人にとっては、顔を傷は死活問題だろうが。あとで治してあげないと。
さて、反撃と行こう。
マスタング大佐の様に指パッチンで炎を起こす。霧で消えないように普段より強い火力だ。
その火炎が銀髪吸血鬼に向かっていく。しかし銀髪吸血鬼は怯まずに真っ直ぐ僕に肉薄してきた。
当然火炎とぶつかることになるのだが、大したダメージを受けた様子が無い。
再び右手にナイフを創造し、振り下ろしてくる。
僕は剣でそれを受け止める。『がきん!』と金属音が響いた。遅れて『めしゃ』と嫌な音を立てて僕の剣の柄が潰れてしまった。刀身は強化しておいたけど、柄は盲点だった。吸血鬼の握力には耐え切れなかったようだ。
このままでは不味いと思い、剣を傾けナイフを受け流してからそれを捨てる。
距離を取ろうとしたのだが、そうする前にお腹に蹴りを入れられた。
「おぶぅ…」
久しぶりの吐き気だ。
蹴りで浮いた体に、今度はアッパーが入った。綺麗に顎に当たった。そこまでは認識できたけど、それ以降は何も感じなかった。
「ラミアちゃんに何してくれてんのよー!!」
今まで意識したことはなかったけど、私の身体能力は人外の域に達しているらしい。これと言って特別なことをしていないが、それでもラミアちゃんより力が強い。
その身体能力を活かしてさっきの攻撃で燃えている森を走り奴に接近する。
ラミアちゃん曰く、吸血鬼は傷を負わせても再生してしまうから、傷を与えず痛みを与えたほうが効果的らしい。具体的にはさっき奴がラミアちゃんにやったように内臓にダメージを与えたりとか、脳震盪を起こすとか、息を止めるとか。
それにあわせて迎え撃つように奴は拳を振り被るが、私はそれを左にスライドすることで避ける。
その勢いのまま剣の腹で殴る。
苦しそうにするが、まだ行動不能と言う訳では無い。
次の攻撃を察知して左前に転がる。背中を向けてしまうことになり、奴の攻撃を直接見て動けないことがきついが、直撃を受けるよりはましだ。
右足での回し蹴り。それによって起こった風に煽られる。
当たったら内臓破裂じゃ済まないだろう。きっとばらばらになる。
振り向きながらナイフを投げてくる。
ふと、そんなことが脳裏に浮かんできた。それを信じて右に転がる。今までも何回か体験したことで的中率は百パーセントだ。
予言どおりナイフが飛んできたが、難なくそれを避け振り返る。
次の瞬間体がバラバラになりそうな衝撃を受けた。
何が起きたの?ラリアットかな?
そう思った瞬間、今度は銀髪吸血鬼が吹き飛んだ。