帰ると既にシャロさんは起きていた。もっと強く叩くべきだったか…。
「おかえりー、目が覚めたら頭が痛いんだけど…何でかな?」
しまった、強く叩きすぎたかな?取り合えず取り繕っておこう。
「寝過ぎただけでしょ」
「そうなのかなー」
納得したのか上半身を起こし、棚に置いてあるりんごを指差した。
僕も小腹がすいていたからそのりんごとナイフを手に取り皮をむく。
りんごの皮をむくのはこれが初めてだな。いつもはむいて貰う側だった。
お母さんもお父さんも姉さんも、暦さんも渚さんも真琴さんも向くのがうまかった。唯一兄さんは下手だったなぁ。
「そう言えば入院するのは初めてだね。普段は病院送りにする側だったんだけど」
「一体何をしてたんだよ」
一応貴族の令嬢だよね?なに破天荒なことしてんのさ。
「権力ってすごい、それくらい揉み消せる」
「だからどんなことをしてたのさ!?」
「ラミアちゃんってツッコミをスルーされると声荒げるよね」
「うぅ…そうかな?」
そういう無意識でやっていることを言われると恥ずかしい。穴があったら飛び込みたい。
かばんから使い捨ての紙皿と爪楊枝を取り出し、切ったりんごを盛り付ける。
それをシャロさんの手が届くところに置いた。
「それで、何か収穫はあったの?」
りんごを食べながら徐にそんなことを聞いてきた。
「収穫って?」
「ほら、ここって一応古代文明の遺跡なんでしょ?だから何かなかったのかなーって」
そういうことか。なら答えは1つしかない。
「特になかったよ。変な壁画がある程度だった」
「どんな壁画なの?」
「何か、白と言うか銀色と言うか…白銀って言えばいいのかな?まぁそんな色をしたカブトガニみたいな奴がかかれてた」
「カブトガニ…あー、あれね。それで?」
「あとは…赤い星が書かれてたね。どういう意味かは分からないけど」
赤い星と言えば火星かな?いや、恒星と言う可能性もあるか…赤色巨星か矮星か。どちらにしても直接浴びたら灰になることには変わりない。
「ところで、私はいつ退院できるの?」
「意識がなかったから入院させただけだから、早くても明後日には」
それを聞いて、シャロさんは大きくため息をつき、横になった。
3日後、ようやく退院できたシャロさんと一緒に村の出口前に来た。
少し時間が掛かったが、ようやく旅を再開することが出来る。当面の目標は、ここから南西に位置するケーリッヒ遺跡だ。
昨日買ったレンバッハ帝国の地図を見ると、それほど離れておらずワープする必要も無いくらいだ。
「で、これしかないの?上に上がる方法」
「ここからじゃないと無理だね。何が起こるか分からない以上魔力は温存しておきたい」
この村は地下にあるから、地上に行くには上下運動をするしかない。しかし何度も文明が滅んだこの世界にはまだエレベーターなんてものは無い。なので、低レベルな文明でも作ることの出来る梯子で行き来するのだ。
「ここに来たときは私気絶してたでしょ。どうやって入ったのよ」
「飛び降りた」
「大胆ね。…そうだ、ラミアちゃんは背中に翼生やせたよね!空を飛べば」
「僕1人ならともかく、2人は厳しいと思うけど…。あ、もしかしたら行けるかもしれない」
思い浮かんだ秘策を実行するために僕はシャロさんをお姫様抱っこした。