「もう、先に言ってよね!びっくりしたじゃない!」
梯子を使っていたら10分は掛かるだろうが、なんと3分で地上に出れた。
やったことは簡単だ。上昇気流を生み出し、羽ばたきながら、壁キック。
「ごめんごめん、説明するのが面倒だったんだ」
「そこはちゃんと説明して欲しかったんだけど…もういいや…」
過ぎたことを言ってもしょうがないと思ったのか、それ以上の説教はなかった。
「さぁ、ケーリッヒ遺跡へ出発だよ」
ケーリッヒ遺跡は樹海の中にある。樹海と言えば自殺の名所のひとつの青木ヶ原樹海が思い浮かぶ。
向こうは遊歩道から出なければ迷うことは無いらしいが、こちらは遊歩道や看板と言った人工物の気配すら感じない。
樹海に入って早々方向感覚が狂ったので俯瞰視点の魔法を使って何とか遺跡に向かっている状態だ。
「後どれくらいで着くの?」
「このペースだとあと1時間くらいは掛かるかな」
「そっかぁ」
自分の血で形作ったマチェットで邪魔な木を切り倒しながら進む。
結局、これだって感じの武器には出会えず、仕方なく血を操って代用することにしたのだが、これが結構使える。
必要に応じて形を変えられるし、何て言うか…吸血鬼っぽい。欠点としては魔力を貯める血液を外に出すことくらいか。
勿論木を切るときには刃を振動させている。血に大量の魔力が含まれているからわざわざ魔力を込める必要が無いことも便利な点だ。
しばらく木を切ったり避けたりを続けているとようやく視界が開けた。
目の前には四角錐の構造物、俗に言うピラミッドがあった。
「…おかしい」
そのピラミッドを見て僕は呟いた。
「ええ、おかしいわね。主に頭が」
シャロさんもそれに同意する。
そう、おかしいのだ。
こんな深い樹海の中心部のピラミッドを住処とする人間が居るなんて。
その人はこちらに気付き、ゆっくりと近づいてくる。
次第に輪郭がハッキリした。耳が長いからエルフか?だったらこんなところに好き好んで居るのも分からなくは無いが…
お互いの姿をはっきりと確認できるところまで近づいた。
髪は金のロング、瞳は赤。スレンダーな体つきで、緑色の露出の多い服を着ていて背中には弓矢を背負っている。まんまラノベのエルフじゃないか…。それとまた金髪キャラで被ってるし。
エルフの女性って本当に胸が無いのか。僕が読んだラノベに出てくるエルフがスレンダーな体型と書かれていたが、どうやら正しかったようだ。
エルフも値踏みするように僕達を見た。
そして背中の弓矢を取り出しつつこう言った
「片方は人間、しかしもう片方は吸血鬼か…。ふむ、吸血鬼は殺そう」
いきなりのお前を殺す宣言。パーティの招待状を渡したわけでも無いのに。
「姉さんは少し下がってて。喧嘩売られたから買ってくるよ」
そう言って戦闘態勢を整える。手の平を突き破って血が飛び出す。それを纏めて2振りの短刀を作りそれを手に取る。
シャロさんも何も言わずに近くの木の根元に腰掛けた。
何で僕に敵意剥き出しかは知らないけど、黙って殺されるわけには行かない。まぁ、どうやって僕を殺そうとするかは気になるけど。