今度のエルフは赤毛の癖の無いセミロングの髪に、暗い緑色の目を持ち、金髪エルフと違い露出の少ない服を着た、僕よりちょっとだけ背の高い小柄な少女のようだ。
しかし口を開けるとその愛らしい見た目からは想像できない物騒なことを言った。
「これ以上戦うなら今の10倍の風で地平線の向こうまで吹き飛ばします」
普通の人間なら立っていることも出来ない程度の風が吹く。本気なんだろうと思う。少なくともそれが出来る力をこのエルフは持っている。
「やってみるかい?僕が攻撃するのは、僕か姉さんを攻撃した者だよ」
脅されて、それが冗談ではないと分かったらこちらも脅し返す。あ、さっき思ったことブーメランじゃん。え、僕だって愛らしい見た目じゃない?
周囲の湿気を集めそれを冷やし直径1センチほどの氷塊を幾つも作る。速度出せば風で煽られる暇なくぶつけることが出来るだろう。音速ちょい超えくらいで十分かな?
しかし、この状況だと2対1で僕が不利だ。シャロさんは参加するつもりは無いらしく後は任せたと言いたげな笑顔でこちらを見ていた。
ちょっとむかつく。
「いえ、私のスタンスもあなたとそう変わりません。そちらに攻撃の意思がないならこちらも手を出しません」
小柄なエルフはそう言って風を止めた。
僕も氷塊を魔力に還して霧散させる。
「先生!こいつは吸血鬼なんですよ!」
金髪エルフはそれに納得していないようだ。口ぶりからしてエルフと吸血鬼には何かしらの確執があるようだ。
「誇り高きエルフが差別をしますか。やはりあなたを連れてくるのは失敗だったようです」
「そんなことはっ!それに先生1人だけでは危険です!」
「私1人でも十分です。現にその吸血鬼を退けたではありませんか。大体あなたはすぐ頭に血が上って、大事なことを見落としてしまいがちです。基本的に吸血鬼というのは自衛以外の戦闘はしないと何度も言ったでしょう」
2人は話し出して小柄な方のエルフが大柄のエルフに説教する様子は滑稽だが、話が見えてこない。しかし『基本的に自衛以外の戦闘はしない』と言うのを聞いてその通りだとは思った。
口を挟むべきかしばらく待つべきか悩んでいると隣にシャロさんが来た。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「そんなこと、言ってたっけ?」
「口では言って無いけど表情で言ったよ」
どうやらあのむかつく笑顔は大丈夫という意味だったらしい。思い出しただけでイライラしてきた。
それを自分達に向けられた怒りと勘違いしたのか小柄なエルフが説教を止め、こちらに向いた。
「失礼、私たちの里は以前吸血鬼に襲われたことがありまして目の敵にしてるものが多いのです」
「それは大変でしたね。あっラミアちゃんは大丈夫ですよ!人畜無害ですから」
さすが姉さん、コミュ力高い。て、人畜無害ってなに?こちとら、人の生血を吸う吸血鬼だよ!まだ人から直接吸ったことはないけどさ…。まぁ、遭遇した魔物については美味しく頂いたけど。
「ついでに私はシャーロットです。お二人は?」
基本的に僕達が貴族ということは伏せている。その方が何かと楽だからだ。貴族と知られると恭しく接せられるか、要らぬ恨みを買うことは分かっている。それは面倒だった。
「私はリステルマです。気軽にリースとお呼びください。こちらはエーレーネ、適当にレーネとでも呼んでください」
自分とその子の扱いがまったく違う。まだ怒っているようだ。
リステルマとエーレーネ、リースとレーネ。よし覚えた。
「さて、これからどうするかな」
空間魔力を取り込み消費した魔力を補いながらそう呟いた。誰の耳にも届かなかったようだが。