足が地面に付く感触と強い減速Gを感じて、ワープが成功したことを知る。
ちょっと違うか。ワープが終わっただけで成功したとは限らない。
「すごい!さっきまで森の中に居たのに!」
レーネさんはシャロさんと同じく、ワープの衝撃に耐性を持っているようで、元気のある反応をしている。
吐き気を堪え周囲を確認する。乾いた大地に埃っぽい風。気候としては乾燥帯に分類されるだろう。
「向こうに街らしきものが見えますね。うぷっ」
同じように吐かないように気をつけながら辺りを見回していたリースさんが目的地ドンデリィを見つけた。
じゃあ、行きますか。と姉さんが言うと、少し早足でドンデリィに向けて歩き始めた。
ここドンデリィは古代文明の時代から残る街らしい。何回目に起きた文明かは分からないが。しかし肝心の古代の歴史についての言い伝えなどは既知のものしかないそうだ。
とりあえずここに居る間に寝泊りする宿を探すことにした。衣食住の確保は大事だ。
「ほぉ…なるほど……ふむふむ」
効率よく宿屋を探すために別行動を取っているところで、僕は偶然本屋を見つけた。
引き寄せられるようにそこへ入って行き、1冊の本を手に取り立ち読みを始めた。
そしたらなんとその本は印刷されていたのだ。しかも文字の種類が多い日本語で。
ある程度(少なくとも現代の現実世界)より更に進んだ文明では日本語のような言語が多く使われているらしいから、一度はその高みへたどり着いたであろうこの世界の文明が日本語を使っていることはなんら不思議ではない。個人的にはどの星へ言っても通貨の単位が円になっている銀河鉄道999の方が凄いと思う。地球より影響力が強いであろう機械帝国があるにも関わらず。
閑話休題。
つまりはこの世界にはオフセット印刷機や少なくとも活版印刷技術があるということだ。
本自体は屋敷の書斎やエドワーズさんの部屋にあったからあることは知っていたけど、豪華な装丁から読むのを憚っていたからこれほどまでの印刷技術があるとは知らなかった。
だからといって何か言うわけでも無いけど。意外と進んでいるなぁ程度だ。
あ、やばい。こんなことしている場合じゃなかった。さっさと宿屋を探さないと。
読んでいた本を棚に戻し、店を出た。
「何してたのかな、ラミアちゃん?」
後ろから声を掛けられた。声だけで分かる。シャロさんだ。あちゃ、見られていたか。逃げようかとも思ったけど、時間の問題だろう。どの道、後で合流するのだから。
「みんなが今日寝る場所探しているのに、なーに1人で本屋で立ち読みしてるのよ」
それに関してはこちらに非があるので、反論の余地はなかった。何で本屋に入ったんだろうね?
体が小さくなったから精神年齢もそっちに引っ張られて幼くなっているんだと思いたい。
シャロさんが後ろから歩いて来て僕の隣に移動する。そこで止まらずそのまま歩いていくので、僕も歩き始めた。
「まったくもぅ、私も誘ってよ」
そのまましばらく歩いていると、口を尖らせながらそう言った。珍しく姉らしいことをしていると思ったらこれだ。だから今殴ろうと思ったのは決して悪いことではない。むしろ正しいことだろう。
「それで、宿はどうなったの?」
「エルフ組が見つけたわよ」
うん、何もして無いね僕。取り合えずシャロさんの機嫌をどうにかしないと。
「そう。じゃあ、今日は休んで明日一緒に行こう」
そう言って、シャロさんの機嫌を治す。
どうせしばらくはここで過ごすのだ。1日くらいそう言った日があってもいいだろう。