目的地であるイスブルグ第三遺跡に付いたのは次の日の昼ごろだった。
縦145メートル横30メートルで、高さ7メートルの2階建ての石造りの神殿。サイズはイスブルグ遺跡群の資料から。正確な長方形と言うわけではないから多少誤差はあるらしいけど。
150メートルって歩く分にはすぐの距離だけど建物のサイズになると急に大きく感じるよね。
2階建てだからか、自然と二手に分かれて探索するとになった。僕とシャロさんは2階部分の担当だ。
2階は1階よりも2周り狭く、さらに壁や天井が崩れてできた瓦礫により一層狭く感じる。
その瓦礫の山に腰掛けて、溜め息を付く。
手に入ったのは陶器の欠片と金属の小さな筒だけだった。
陶器の欠片は食器なんだと思うけど、筒はなんだろう。金属で筒だと、空き缶とか継ぎ手くらいしか思いつかない。
「ラミアちゃん、こっち来て!」
まだ何か落ちてないか探そうと立ったところで、シャロさんに呼ばれた。
シャロさんは壁の近くに居たのでそっちに向かう。
「なにかあったの?」
「違う違う。この穴から壁の向こうに行けそうなんだけど、私じゃ通れなさそうだから」
見ると壁には穴が開いており、その向こうにも空間が広がっているようだ。
しかしその穴は小さく、僕でも通るのが精一杯と言った感じだ。
「わかったよ、ちょっと行ってみる」
しゃがみ歩きで穴をくぐり、壁の向こう側に来た。
そこには、本棚とそこに保管されている本、そして一人の人間が居た。
「いやああ――!!」
そしてその人にものすごい悲鳴を上げられた…。何か、傷つくなぁ…。
当然あんな大きな悲鳴を耳が良いエルフが聞き取れない筈がなく、すぐに2人ともこっちに来た。
なお、耳が良いと言うのは偏見である。
取り合えず向こう側から引っ張り出して、リースさんによる職質が始まった。
僕は取り合えず本を回収している。中身は確認してないけど、それなりの保存状態だった。もしかしたらあの空間は最近まで真空に保たれていたのかも知れない。
つまり、あの穴は彼女が開けたのだろう…。いや、無理だよね。能力者とか人外ならともかく。
で、肝心のそこに居たシャロさんより少し小さい程度の少女は、ずっと涙目のまま黙っている状態だ。
かなりビビリらしく、僕達の動きに一々反応している。こう言うビビリな子って見てて楽しい。
「私の名前はリステルマです。リースと呼んでください。それであなたの名前は?」
「…アガ…アガサ、です」
ようやく聞き出せた名前は懐かしい響きだった。でもあれか、アガサって名前は日本独自の名前って訳でもないか。かのアガサ・クリスティだって英国の人だし。
「なぜあんな場所に居たんですか?」
「変な…人におわ、れて…隠れてた」
変な人に追われてそれから隠れる為にあそこに隠れてたってことか。
ん?待てよ、それってつまり彼女を追ってきた人たちが近くに居るってことじゃないのか?