せかいシリーズ   作:猫舌36@活動停止中

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しばらく執筆していなかったからか、1行書くことすら辛く感じる。
昔はすらすら書けたんですけどねぇ…。


第23話

そう言えばこの車を買うのにいくら掛かったんだろう。

 

「大体50万程です。そこまで高いものでもないです」

 

シャロさんを見ると『何だ、その程度なんだ』と言うような顔をしているが、レーネさんは少し顔が青くなっている。

酔ったのか、値段に驚いているのか。

 

「現実逃避はもういいでしょう。今は逃げることを最優先にすべきです」

 

そう、今はアガサを狙っている人たちに追われている。

なぜこの子が追われているのかは知らないが、それは後で本人に聞けばいいだろう。

現実を見たところで、状況を整理する。今は戦車3両に追われている。

同じエンジンを積んでいるのに、重いはずの戦車が軽いジープを追いかけることが出来るのは不思議だが。前行った仮説の通り古代文明製のはすごいのだろう。

とりあえず、僕が殿になれば何とかなるだろう。

 

「じゃあ、僕が足止めするよ。皆は先に行ってて」

 

そう言って後部座席から飛び降りる。砂の上を何回か転がって衝撃を殺し目の前の敵を見据える。

戦車が3両、横に並んで迫ってくる。距離は…1キロもないか。

蛇でも絶望的な状況だけど、こっちは吸血鬼…誰がバイだ!普通に可愛い女の子が…しまった、百合だ!

落ち着いて。

右手を握った状態から人差し指だけを伸ばす。まずは挨拶代わりの電撃だ。

これで向こうは僕に気が付いたはず。気付かれず素通りされたら飛び降りた意味がない。

金属の箱に電気を通したって表面を流れていくだけだから、効かないのは百も承知だし。

僕の存在に気付いた戦車隊は機銃を撃ってきた。全くもって容赦が無い。

銃座に人が居なくても撃てるってことはリモートウェポンシステムか。21世紀並みの技術じゃん。

感心しながら避ける。予想以上に回転速度が速くて5・6発食らったけど、問題ない。

血が止まって肉がぐじゅぐじゅと出てきて傷を塞ぐって、改めて考えるとかなりグロい絵面だ。

あ、貫通しないで体内に残っているはずの弾丸はどうなったんだろう?そのまま体内に残りっぱなし?それとも某執事みたいに口から出せるのかな?

とまぁ、余計なことを考えながらでも近未来の主力戦車の相手はできる。

基本的には避けて、当たりそうなのは魔力の壁、要するにバリアで弾く。たったそれだけだ。

主砲の砲弾も裏拳で弾き飛ばす。

さて、いつまでも防戦一方というわけには行かない。できれば生け捕り、そうでなくても無力化しないといけない。

スカートのポケットから昔懐かしのフィルムケースを一回り小さくした円柱状の物を取り出す。

それを天高く放り投げると内側から破裂し、中からレーザーが10本ぐらい飛び出す。レーザーはそのまま放物線を描きながら、それぞれの戦車の天板装甲に降り注ぐ。

レーザーの数や軌道を思い通りに変えられる優れもの。あらかじめ魔力を詰めてあるから消費する魔力は操作に使う分だけ。

 

「まだ動けるのか…」

 

真ん中の一台は煙を吹き始め動かなくなったが、両サイドの2台は煙こそ吹いているもののまだ動けるようだ。

10式戦車の正面装甲を破れるだけの威力はあるはずなんだけどな…。

残った戦車の動きを見て慌てて飛び立つ。その直後、さっきまで居た地面が大きく抉れた。

人に向けてはいけない物の一つである戦車の主砲。死なないだけで、普通に痛みは感じる。あんなの食らったらどれくらいの痛みになるのやら…。

様子見のためにしばらく滞空する。

上からだとレーザーによって開いた穴がよくわかる。当たった箇所が悪かったようだ。砲塔に穴が居ているけど肝心のエンジン部分にはあまり当たっていない。

精度が悪いのか、狙いが甘かったのか…。どちらにしろ今後の課題かな。

血で槍を2本創り、今度こそエンジンがあるはずの部分に当てる。

まぁ、それは後でいいか。今はこの謎の集団だ。真ん中の戦車の上に降りてハッチを開けてみる。

 

「…あぁ、そう言うあれね」

 

いざ蓋を開けてみると、中には誰もいなかった。

無人制御、それか遠隔制御で動くのだろう。

確かアガサは追いかけられていると言っていたから、これは自分達のフィールドに追い立てるためのものと見るべきかな。

だとすると、この先に親玉が居るのかも知れない。早く追いかけないと。

 

「…あ、皆どっちに行ったんだっけ?」


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