東方太陽録   作:仙儒

101 / 111
61話

今日はある商店の屋敷に来ている。

お手伝いさんがお茶を「どうぞ」と言いながらさしだしてくる。

それに礼を言いながら上座に座る中年の夫婦に向き合う。

お茶をずずずと飲んで片目を閉じて中年の男性の方を見る。

次にまた目を瞑り思い返す。

別にここに来る事は初めてじゃない。

此処に来るたびに何時もこんな感じだ。

不意に中年の男性が口を開く。

 

「セイバー様、その・・・・・アレは元気ですか?」

 

呼ばれる度に聞かれるこのセリフ。

そう何を隠そう此処は霧雨亭だ。

里で一位二位を争う由緒ある店の店主殿だ。

その問いにゆっくりと口に傾けていた湯呑を縦に戻す。

 

「それ程に気に成るのならお会いに成れば良いじゃないですか」

 

「だ、誰があんな奴の事気にするもんか!!」

 

そうどなり声をあげる。それに「あんた!」と中年の女性が声を上げる。

言われた男はフンとそっぽを向いてしまった。

女性が此方に向き

 

「魔理沙が何時もお世話に成ってます。魔理沙は元気でやって居るでしょうか?」

 

一礼をしながら質問してくる。

 

「ええ、私の知る限りでは元気は有り余ってる位ですよ」

 

それを聞くと「そうですか、元気でやってますか」と小さな声で呟き胸を撫で下ろした。

ほぼ毎日家に顔を出す魔理沙は見て居る限り病気をしたりしている様子は見受けられなかった。

中年の男性も心なしか安堵の表情を浮かべて居るように見えた。

こうしてここに来てるのは他でもない。

もうすぐ魔理沙の誕生日が来るからだ。

この年に成ると必ずこうして霧雨亭に招かれるのだ。

いい加減素直に成れよ、何時まで拗ねてんだ餓鬼ども。

いい加減うんざりしてるのが現状だ。

この親にしてこの子有りとは言ったもんだ。性格が魔理沙そっくりだ。

嫌、魔理沙がそっくりなのか。

 

「話が以上なら帰らせてもらっても宜しいでしょうか? クレープ屋の仕事もあるので」

 

そう言って立ち上がり出て行こうとする。

 

「お待ちください」

 

女性の呼び声にそちらを向く。

 

「魔理沙が何時もお世話に成ってます。どうかこれをお納め下さい」

 

そう言って金を出してくる。

 

「金が欲しくてやって居る訳では無いので、受け取る訳には参りません」

 

そう、この光景も十年間ずーっと繰り返している光景だ。

「では」

そう告げ能力で家へと転移する。

少々棘のある態度をしてしまったがいい加減うんざりなので気にしない事にする。

相手も後ろめたさがあるので強く出れないだろうし。

しかし、魔理沙も家に来てから十年に成るのか。

此処2年程は魔法の森に住み始めたので家に住んでいる訳では無いが。

それでも必ず朝食と夕食は食べに家に来てるし家にいるのと変わんないか。

良いとこのお嬢さんなので一応料理家事は仕込まれているしね。

それにしてもあんなに小さかった魔理沙ももう大人と呼ぶべき時に成ったんだな。

何時までも小さいと思っていた霊夢も魔理沙もいつの間にか大きくなってしまったな。

喜ばしい事だが親心としては複雑な気持ちだ。

 

そうだ、妙案を思い付いた。

クレープ屋をする前に魔理沙を除く全員を呼びパーティーを近々やるから準備してくれと頼んだ。

そう伝えて皆からおkが出たので内容を説明する。

魔理沙にはばらさない様にちゃんと釘を刺した。

そのまま、自分の部屋に行き、手紙を書く。宛先は霧雨亭夫妻に向けてだ。

内容は家で近々パーティーやるから来て下さいと言う内容で霧雨亭に再度出向いて渡す。

パーティーは霧雨夫妻が感ずかれないように魔理沙の誕生日の一週間後にした。

感ずかれると絶対に来てくれないもんな~きっと。

そんでもって何時も通りの夕食が出される

今更だが悪霊に蓬莱人に妖怪に博霊の巫女に魔法使いに月の兎に因幡の白ウサギとか、何て言うか普通の人間がいないな。

実にカオスである。

 

「今日の味噌汁担当は私だぜ、セイバー、味はどうだ?」

 

「美味しいですよ」

 

そう言うと嬉しそうにそうか、美味いかと少し嬉しそうだった。

 

 

 

 

次の日に成り、今日が魔理沙の誕生日だ。

霊夢と魔理沙の誕生日は毎年やってやってるので黙っていても二人の好物ばかり出る。

今日は魔理沙の誕生日なので魔理沙の好物ばかりが食卓に並ぶ。

魔理沙も喜んではいるがその顔には少し影が入っている。

ケーキは夜に出すのがこの家のしきたりになっている。

今日もスーツに身を包んで寺子屋に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だろう。こう。みんなの様子が少し変な気がする。

しかし、何処が変なのかが分からないので指摘のしようがない。

そう言えば今日は私の誕生日だったな。

朝から私の好物ばかりが食卓に並ぶ。

正直嬉しくてテンションが上がる。上がッている筈なんだ。

でもどうしても過去の事がチラついてしまう。

私の事覚えていてくれてるかな?

二人とも元気なのかな?

二人とも喧嘩してないかな?

二人とも・・・・・幸せでいるかな?

そんな事を考えて居た頭を振りこの考えを追い出す。

関係ない、あの人たちはもう関係ないんだ。

今日はアリスの家に魔道書でも見に行こう。

今日の夕食は私の好きなケーキが勢ぞろいに成るのだ。

成るべく途中で何かを口にするのはやめよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜に成り豪華な料理が並び、メインディッシュに複数のケーキを出す。

因みにケーキ担当は私だ。無論外に出る訳にも行かないので能力で出している。

幾つかは魔理沙の好きなケーキだが2、3種類位違うケーキを出していたりする。

これで受けがよかったら別の宴の席で出すつもりだ。

やはり魔理沙は嬉しそうだが顔には影がさしていた。

やっぱりこう言うのは本当の親にやってもらうのが良いだろう。

しかも両親ともちゃんと生きている訳だしな。

それはもう一週間だけ我慢してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして一週間が経った。

計画実行の日。あれから私が根回しするためにどれだけ努力したかが試される日だ。

寺子屋が終わって帰ってきたらちょうど霧雨夫妻が来た。

 

「セイバー様、このたびはパーティーにお招きくださありありがとうございます」

 

そう言って「つまらない物ですが」と酒を差し出して来た。

それを受け取りながら家の中に案内する。

リビングで待っていて貰う様にした。

そうしたら何時も通り魔理沙が顔を出した。

 

「おっすセイバー、じゃまするz」

 

何時も通り入って来た魔理沙は霧雨夫妻を見て固まり。

現状を理解した瞬間箒に乗って逃げようとした。

その行動は読めて居た。

 

「萃香!」

 

「ほいきた、鬼縛りの術!」

 

萃香の鎖が魔理沙を絡め取り魔理沙を家に引き戻す。

 

「何であんたらがここに居るんだよ!」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

あって早々口喧嘩が始まった。

取り敢えず

 

「”やめろ”」

 

告げた途端二人は口をふさいだ。

 

「”座れ”」

 

そう言うと二人が素直に座る。

そう、これこそが1週間死ぬ気で練習した言霊だ。

 

「今日はパーティーなので二人にゲストとして来て貰ったんですよ」

 

魔理沙に二人がいる理由を話す。

 

「今宵は月も美しい。ここいらで”腹を割って語り合う”と良い」

 

ちょうど庭にシートを引いて料理等の配置が完了した。

また喧嘩すると困るので言霊を使ったままシートの一角に魔理沙と霧雨夫妻を移動させた。

酒も二人に少し飲ませた。

私達に出来るのはここまでだ。

ここからはあんたら次第だ。

一応素直になれと言霊を追加しておく。

腹を割って話せと言う言霊のおかげか魔理沙の父親が口を開いた。

 

「その、何だ・・・・変わりないか?」

 

「あ、ああ」

 

ぎこちないがしょうがないだろう。

今度は魔理沙の母親が魔理沙を抱きしめた。

涙を流しながら「大きく成ったわね」と撫でながら言った。

魔理沙も涙を流しながら母親に抱きつく。

 

「覚えて居てくれたのか?」

 

その疑問を魔理沙は投げかける。

 

「当たり前じゃないか、お前は私が腹を痛めて生んだ大切な子供だよ。忘れるわけ無いだろう」

 

その言葉に見てるこっちが涙が出そうになる。

 

「あんたも何かいいなよ」

 

魔理沙の母親は魔理沙の父親に問いかける。

 

「お前は知らないだろうけど、毎年、お雛様とお前の誕生日とお正月のお料理はお前が家を出て行ってからもずっと出し続けて居たんだよ」

 

「お、おい!」

 

「そうなのか?」

 

聞かれた魔理沙の父親は居場所が悪そうにして

 

「まあな」

 

そっぽを向きながらそう答えた。

今更だが私達がここにいては腹を割って話す事が出来ないだろうと思いこっそりと家の中に入る。

後はあいつら次第だが大丈夫だろう。

一応言霊は使ったままだが。

 

「さて、私達は私達で食事をはじめましょうか」

 

そう言ってご飯を食べ始める。

庭から泣き声が聞こえるが気にしない事にする。

 

良かったな、魔理沙。

 

何時もこう素直に成れれば良いのにな。

人間は難しいな。

そう思いながらご飯を口にする。

 

 

 

暫くしたら霧雨夫妻と魔理沙が入って来た。

帰ると言う。

魔理沙の母親は頭を深く下げ「ありがとうございます」と何度も礼を言って来た。

別に泊まって行ってもかまわないと言ったら、「ここまでして貰ったのにこれ以上迷惑をかけられない」と言って玄関に見送りに行った。

魔理沙は帽子を深く被り目を隠してる。

しかし、はっきりと涙が頬を伝っている。

魔理沙は母親から色々言われて「あーもう、うっさい、わかってる」と言っていた。

言ってやるな魔理沙。お前も母親になればそうなるんだぞ?

霧雨夫妻は深く頭を此方に下げ、くるっと回って出てこうとしたら魔理沙が動いた。

 

「待って!」

 

立ち止まる霧雨夫婦。

 

「酒、飲み過ぎるなよ」

 

その問いに頷く夫妻。

 

「ばくちとかやるなよ」

 

頷く夫妻。

 

「生んでくれてありがとう!、二人仲良く達者で暮らせ!!」

 

魔理沙の心の奥底にある叫びが今、ようやく吐き出された。

 

「絶対に恩がえしに行くからな!!」

 

振り返りそうになる夫妻。だがそれを私が許さなかった。

魔理沙が限界だったのだ。

小さく言霊で振り返らずに帰れと呟く。

魔理沙は家族が見えなくなるまでずーっと見届けて居た。

見えなくなった後近くにいた私に抱きつき大声を出して泣いた。

 

 

 

それから幾日かして魔理沙は変わった。

本質的にはいつもと変わらないが一皮むけて大人に成った顔に成った。

寺子屋の帰り道、霧雨店による魔理沙を見かけた。

とたん大きな声が聞こえて来た。

また喧嘩かと思い近づいて見たら

 

「何しに帰ってきやがった!!」

 

「娘が自分の家に帰ってくるのに理由がいるのかよ」

 

「・・・・・そら、ねーわな」

 

どうやら取り越し苦労だったみたいだ。

家に帰って行くと霧雨亭に居たお手伝いさんが居た。

お手伝いさんは私を見つけるとかけて来て何かを渡された。

これは・・・・・手紙か?

受け取ったらお手伝いさんは帰って行った。

中を見てみる。

 

魔理沙をお願いします

 

ただ、そう書かれていた。

言われなくても解って居る。

その次の日、家に霧雨店から立派なタンスが送られてきた。

そして何故か魔理沙の顔が真っ赤に成ってたが風邪か?

風邪はひきはじめが肝心だと言うからな。

永琳に見てもらうように言ったら呆れた目で見られた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。