東方太陽録   作:仙儒

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間休

お兄様が月を見限った。

それはマスコミを通じて月の都じゅうに広がり綿月家の権力が大きく揺らぐ。

それを好機と見た綿月家を良く思っていない政界の幹部が軍の一部を引き連れて大規模なクーデターが発生した。

軍の上層部はお兄様とのつながりが深く、例え本当にお兄様が月を見限ったとしても、お兄様から受けた恩は忘れない。だから綿月家を守ってくれると言ッてくれた。

上層部の力を借りて軍を再統一してクーデター鎮圧に打って出る。

軍の上層部は、地上に居た時からお兄様と一緒に異型を相手に戦い抜いてきた歴戦の勇士だ。

クーデターも直ぐに鎮圧できるだろうと思っていた。

しかし、悪い知らせが入り、状況は私達の方が不利に成ってしまう。

武器庫が制圧されたのだ。

武器庫にはお師匠様が置き土産にして行ったパワードスーツに量産型玉兎が数万も収納されているのだ。

他にも様々な兵器が収納されている。

流石に核兵器は使ってこないだろうが万が一と言う可能性がある。

それにパワードスーツを着れば歴戦の勇士たちと互角に戦えるだけの性能を持っている。

神卸を使って斬り捨てて居るがきりがない。

お母様にお父様は師匠が月に居た時に作った隠しシェルターの中に隠れて貰っている。

お姉さまの能力も使い、万が一にも見つかる事は無いだろう。

そう思っている内に大規模な結界を張られる。

不味い、あれは確か魔力の結合はもちろんのこと、霊力の結合まで無効化する代物だ。

しかも神卸の力も半減してしまっている。

玉兎達は月の魔力と霊力を空気中から吸収して動くので半永久的に動き続けられるし結果内でも霊力を使った攻撃を可能としている。

味方にすると頼もしいが、敵に回すとこれ程厄介な物だとはな。

今はお姉さまの能力でレーザーやミサイル銃弾と霊力による弾幕は私達に当たる事は無いが、何時か能力に限界が来る。

それまでに速やかに武器庫を制圧できるかが今回の戦いの鍵だ。

相手は師匠お手せいの穢れ浄化装置を持っているため確実に殺しに来るだろう。

こうなるんだったら師匠が作った蓬莱の薬を飲んでおけば良かった。

月に居れば老いる事は無い。

それに月の都では死=穢れなので基本殺しに来る者は居ないのだ。

もし来られたとしても抵抗するだけの力があると自負していたのも大きい。

それになんとなく人間をやめるのに抵抗があった。

後悔は先に立たないとは言った物だ。

思わず唇を噛みしめる。

しかし、これだけ強化無しで切り続けて居るのにも関わらず刃こぼれ一つしない何て流石はお兄様がくれた霊刀「伊吹」だ。

これだけが心の支えだった。

本来刀で金属を切るのにはそれなりの技術が必要だ。それがオリハルコン等に成ると余計だ。

それを度がえしにして斬る事が出来るのは心強い。

 

「依姫!」

 

 

「しまっ!」

 

お姉さまの声が響く。

三体の玉兎が剣を持って接近してきた。

今まさに振り下ろそうとしている所だ。

今更防御に周っても間に合わない。

その時だった。

 

ギンッ

 

斬り裂かれて落ちて行く玉兎三体。

それと同時に膨大な神気を感じる。

 

「何とか間に合いましたね」

 

薄く銀に近い色をした髪の毛に紫色の甲冑。

背中にはマントが羽織られておりその上から炎で出来た2対の翼を持った女性。

神の力を行使する私だから解る。

この神は私なんかよりもずっと強いと。

これだけの力を持つ神ならば名前ぐらい知って居ても可笑しくない位の神格なのに名前すら知らない。

それだけでは無い。どうして私達の見方をしてくれるのかが解らない。

正に正体不明の神である。

 

「これだけ戦って民間人を巻き込まないとは流石ですね」

 

称賛の言葉が掛けられる。

問いかけようとしたら「来ます」と言って敵を斬り捨てる。

私もその言葉に慌てて戦場である事を思い出し、敵を斬り捨てる。

ゆいつ解っている事は羽織っているマント大一大万大吉と書いてある事だけだ。

それはまだ幼い頃、お兄様が常に持っていた扇子に書かれていたものだ。

確か一人が万人を思い、万人が一人を思う事で幸せに成れると言う意味だったと思う。

お姉さまの扇にも書かれている。

また膨大な神気を感じる。

上を向くと地球をバックにしてオレンジの髪をしたゴスロリのような甲冑に身を包んだ少女がハンマーを構えて降りて来た。

そのまま地面に降り立つ直前に真下に居た敵の頭をハンマーでたたき壊す。

降り立つと同時に後ろに居た三体の頭をハンマーで吹き飛ばす。

頭に被った帽子にはデフォルメ化された兎のような物が左右に付いていた。

此方も同じマントを羽織っている。

少女は指を立てるとそこには小さな鉄球が指の間に挟まれていた。

 

「ぶちまけろ!!」

 

その一言と共にハンマーで叩き飛ばした。

叩き飛ばされた鉄球は赤い閃光となって敵陣を貫いてゆく。

玉兎達はシールドを張るが、シールド何んか無いかの様に貫いてゆく。

また膨大な神気を感じる。

青を基調とした甲冑に身を包んだ犬の耳のような物と尻尾が生えた筋肉質な男が居た。

此方も同じマントを羽織っている。

 

「盾の守護獣ザフィーラ、主と牙の誇りに掛けて民間人には指一本触れさせはせん!」

 

デュオ! と言う掛け声と共に地面から生えた光の刃が大量の玉兎達を串刺しにする。

更に私達の真上に膨大な神気を二つ感じる。

緑を基調とした甲冑に身を包んだ女性と黒を基調とした質素な甲冑に身を包んだ女性だ。

此方も二柱とも同じマントを羽織っている。

 

「あの、私達敵では無いです」

 

緑の甲冑の女性が話しかけて来る。

確かに見方はしてくれているが鵜呑みにはできない。

この身は月を守る使命があるのだから。

もしかしたら月を侵略するのも無きにしも有らずなのだ。

 

「依姫、情報を教えなさい、多分だけど信用できる人物よ」

 

お姉さまの言葉を聞き、少し考える。

そうしれ居る間にも敵の攻撃は続いている。

しょうがなく今の状況だけを簡潔に教える。

あくまでも状況だけだ。

 

「成程、聞いてたわねヴィータちゃんにシグナム!」

 

そう空中に展開されたモニターに問いかける。

 

「ああ、要はAMF内って事だろう? 実にあたしら向きじゃないか。それに神気使えば飛べるし魔力も強化だけなら出来るから問題ねー」

 

「確かに不利ではあるがベルカの騎士に負けは無い」

 

ゴスロリの少女に炎の翼の女性が返事を返してくる。

とは言え二柱とも数百メートルと離れては居ないのだが。

 

「! いけない、守ってクラールヴィント!」

 

その声と共に私達を囲むように淡い緑で出来たステンドグラスのような障壁が展開されて攻撃から身を守ってくれる。

 

「! 下がれ湖の騎士」

 

黒を基調とした甲冑の女性が近づいてきたパワードスーツの男を殴り飛ばす。

 

「あの、全部を教えてくれないとこのまま私達と一緒に数で圧倒されちゃうんだけど」

 

確かに、この湖の騎士と呼ばれた女性の言う通りだ。

隠すのは無しにしよう。

素直に武器庫の情報にマップをつけて相手のディスプレイに情報を送る。

 

「ありがとう、見たわねシグナムにヴィータちゃん。今回の戦闘では如何に此処を速やかに制圧できるかが鍵になるわ。ここはシグナムが先行して行ってくれる? ヴィータちゃんはここで私達と一緒に守りを固めて!」

 

シグナムと呼ばれた騎士が戦場を一気に駆け抜けていく。

 

「あ、後、負傷者を此処へ集めて、治療したいですから」

 

その言葉にお姉さまは素直に従った。

次々にお姉さまの能力で負傷者が現れる。

 

「クラールヴィント、本領発揮よ。静かなる風よ、癒しの恵みを」

 

湖の騎士と呼ばれた女性の足元には淡い緑色の三角の魔方陣が展開される。

そこから一陣の風が優しくふく。風にあたった者は次々に傷が癒えてゆく。

私も風に当たったせいか疲れが取れたように体が軽くなる。

 

「湖の騎士シャマル、癒しと補助が本領です」

 

そう言いながら緑の神気で出来た残りカスを手に乗せて優しく口でふいて飛ばす動作をする。

どうやら彼女は医療の神みたいだ。

そうして見て居たらその女性の両手が光り、その光が私の剣へと吸い込まれていく。

私はあわてて女性に刀を向けると女性は手と頭ををぶんぶんと振りながら「強化にブースとをかけただけですから!」と答えた。

試しに周りにいた玉兎達を斬り捨ててみる。

先程よりもよく切れるような気がする。

どうやら本当らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは急なことだった。

ふらっと居なくなった主から念話が入り、気が付いたら月の見える宇宙空間に居た。

主が転移させたのだろう。

また念話が入る。

どうやら月では大規模なクーデターが起こったらしい。

そのクーデターを鎮圧せよとの事だ。

しかし、クーデター兵を殺すなとの命令が出た。

何故クーデターを鎮圧するのにクーデターを起こした奴らを殺すなと言うのだろうか?

疑問は残るが仕方ない。

 

「ふらっと居なくなったと思ったらこれかよ」

 

ヴィータが不満を口にする。

その意見には同感だが

 

「言っていても仕方があるまい、アギト、ユニゾンだ」

 

おうともさ、と言う頼もしい声で答えて私の体の中に消えていく。

ヴィータもリィーン! と言いはいです! とユニゾンする。

赤を基調としたヴィータのバリアジャケットが白に変わり、髪の毛もオレンジに変わる。

私も見た目は変わったが生憎鏡が無いので自分の姿は解らん。

次にマントが5つ出て来た。

どうやらこれを羽織って行けとの事だ。

マントには大一大万大吉と書かれていた。

これの意味は解るのだが何故これなのかが解らない。

また念話が入る。

妹君を守って欲しいとの事だ。

主の妹君なら写真で見たことあるので皆が知っている。

まずは月の情報を知る為にシャマルがサーチャーを放つが月にある程度近づいた所で消えてしまう。

何度か同じ事を繰り返して駄目だったのでサーチャーが消えないぎりぎりの位置から戦況を確認する。

すると主からマップデータと共に点で示されたデータが転送されてきた。

どうやらここへ行けと言う事らしい。

皆で加速して月へと降りて行く。

そこには今まさに斬られようとしている妹君の姿が映った。

急いで攻撃態勢に入った敵を斬り捨てる。

見た目こそ人に近いが中身は機械である事を主からの事前情報で見て居る。

とたんに飛行魔法がキャンセルされる。

無理やり魔力を放出しながら滑るように地面に降り、他の二体を斬り捨てる。

しかし、流石は主の妹君だ。

これだけの大規模な戦闘に成って居るのに民間人が巻き込まれた形跡がない。

素直に称賛の言葉を贈る。

レーザーに銃弾の雨が当たる。

 

「中々の威力だ、だが我が甲冑を貫くにはまだまだ足りぬ」

 

それからしばらくは斬って斬って斬りまくる作業が続く。

どうでも良いが騎士において三百人を斬ってようやく半人前だ。

しかし、一体どれだけの数が居るのだ? 50体は斬り捨てたぞ。

そうしている間にシャマルからディスプレイ越しに情報が話される。

それに答えるヴィータの声。

私もヴィータの言葉に賛同する。

私にとって遠距離魔法を一つしか持たない私には近づける距離まで近づいて斬る以外の戦闘方を知らない。

それにこの身は武神の加護を受けており、私自身も武神なのだ。負ける事は私のプライドが許さないし、主の顔に泥を塗るような行為をする訳にはいかない。

ディスプレイにマップ情報が流れて来る。

此処を叩けとの事だ。

シャマルの判断のもと、私が先陣を切ってマップに映し出された武器庫を押さえろと言われる。

確かにこのメンバーの中では一番火力があるのは私だ。

それに一番乗りは騎士の誉だ。断る理由などどこにもない。

回転してレヴァンティンを振りながら敵陣を突き進む。

神気で作った刃に当たり敵が次々と斬り捨てられていく。

こんな中を突き進む馬鹿は私くらいだろうな。

思わず苦笑いが漏れる。

パワードスーツの者が立ちふさがった。

斬り捨てようとしたら受け止められた。

 

パキッ。

 

罅が入る音がする。

音のした方を見てみるとレヴァンティンに罅が入って居た。

可笑しいな。レヴァンティンはアームドデバイスでそこらのデバイスよりも遥かに硬い強度を誇っている。

それに信仰を得てアームドデバイスの何倍もの強度を誇るれっきとした神具なのだ。

それに罅が入るだと・・・・。

パワードスーツの兵が槍を振るう。

避けきれないのでいなして肩を掠める。

掠めた所から少しだが血が出る。

我が甲冑を貫くか。

面白い。

月にはこんな兵者達が居るのか。

地上では私達の相手を出来るものは居ない。

と言うか、地上の現代人には我々の姿を見る事の出来る者は稀だ。

血がたぎるのを感じる。

レヴァンティンにリカバーをかける。

 

「神罰の執行者、剣の騎士烈火の将シグナム。セイバーの左腕、押して参る」

 

セイバーの名が出た時に敵に微かに動揺が走ったが関係ない。

レヴァンティンに魔力を流して強化し、斬りかかる。

パワードスーツの兵に受け止められる。

やはりこの結界内では魔力では出力が出んか。

 

(! シグナム後ろ!!)

 

急いで鞘を出し飛びかかって来た敵兵を突き飛ばす。

 

「すまない、助かった」

 

(全くだぜ、シグナムはちょっとでも強い奴に出会うと周りが見えなくなるんだから気をつけろよ)

 

ああ、肝に銘じておくよと言い残す。

シャマルからパワードスーツの弱点の情報が入ってくる。

心躍る戦いで名残惜しさはあるが、今は武器庫を1秒でも早く制圧しなければならない。

移動に神気を回して弱点の後ろ側を斬り捨てる。

斬られたパワードスーツの兵は倒れた。

主との約束だから殺しはしていない。

と言うか硬過ぎて兵士の体までは剣が届かなかった。

敵が集中する。

武器庫が近い証拠だ。

シグナムは剣を大きく振るう。

振われた剣は連結刃と成って敵陣を縦横無尽に駆け抜ける。

自在な機動で長く伸びる剣は、対象に刺突・魔力・炎の三種混合ダメージを与える。

今回は魔力が使えないので神気でだが。

兎達が次々に落とされていく。

連結刃から剣に戻す。

 

「時間が無いのでな、一気に行かせてもらうぞ!」

 

アギトの炎熱加速とシグナム・レヴァンティンの炎熱変換により、カートリッジの使用なしでの大威力火炎斬撃が可能とした一撃。

左手に剣を模した伸縮可能な炎を発生させ、それで斬りつける事で任意空間を薙ぎ払う。シグナムゆいつの空間殲滅魔法。

 

「剣閃烈火!、火龍一閃!!」

 

伸縮可能な神気で出来た炎の剣が戦場をなぎ払う。それにより100体位の玉兎の小隊を撃破する。

敵が居なくなった空間を素早く移動する。

後ろからミサイルが直撃する。直撃した際の爆発の衝撃で地面に叩きつけられる。

バリアジャケットの御蔭で怪我は無いが衝撃までは幾らバリアジャケットと言えど吸収できない。

レーザーに銃弾の雨が集中する。

 

「流石にすんなりとは通して貰えないらしいな」

 

軽口を吐きながら突撃する。

武器庫に近づくにつれてパワードスーツの兵が多く成る。

此処まで殺さずに来れたが、ここから先は敵兵を殺さないという約束を守れるか解らない。

其れ程までに強いのだ。敵が。

パワードスーツの兵と闘う度に罅が入るレヴァンティン。

何人か斬り捨てた所で遂に半ばから折れてしまった。

くそう、リカバーが間に合わなかったか。

しかし、どうした物か。私は無手で戦った経験が無い。今までに斬り捨てて来たパワードスーツの兵の剣や槍を使おうかとも思ったが囲まれてしまったのでそれは叶わない。

本当に困った。

ここで負ける訳にはいかないのに肝心の武器が無いとはな。

そこでふと思い出す。

主が湖に浸していて忘れて行った一振りの剣を思い出す。

帰ってから渡そうと思っていたが、その日からふらっと姿をくらませて返せず仕舞いの剣。

その剣がレヴァンティンの空き容量に入れられているのを思い出した。

レヴァンティンからその剣を取り出す。

黄金の剣、確か名前はデュランダルと言ったか? を構える。

神気が一気に溢れ出す。

その神気は私の消費した神気を補って尚余る程だ。

主の忘れものがこんな所で役に立つとはな。

それで近づいてきたパワードスーツの兵の武器を斬る。

バターを切る様に斬れた。レヴァンティンの時とは大違いだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シグナムが単騎で敵陣を切り抜けていく。

あいつは少しでも強い奴に出会うとそいつに夢中に成り、周りが見えなくなるから心配だ。

でもこのメンツの中では一番の火力を誇っているのも事実だ。

セイバーの妹はどれだけの力を持っているのか解らないから今回は戦力に入れていない。

今回は場が特殊な為、あたしがここに残らざるおえないのだ。

シャマルはフルバックな為、戦力には成らないしリインフォースも今回ばかりは見方がどれだかわからない為、持ち前の広域殲滅魔法が使えない。

下手に使って見方を巻き込みましたとか洒落に成らない。

よって、戦力不足な此処をあたしがカバーする事に成ったのだろう。

シャマルも無理して砲撃魔法で援護してくれているが今一効いているのか解らない。

そう状況を判断しつつも敵を叩き潰す。

このやろう、生意気にバリア張りやがる。

だが、そんなの関係ない。フロントアタッカーの自分はバリアの上から叩き潰すのが十八番だ。

此処に来て結構な数を潰したつもりなんだが一向に減った気配がしない。

何度目に成るか解らないアイゼンを振るい敵をなぎ倒す。

 

「いい加減うんざりしてんだ!」

 

そう言いながら近づいてきた敵をアイゼンの柄で叩き、ねじ伏せる。

しかし、呼びだしておいて自分が来ないとはどう言う事だ?

そう思いながらも口にはしない。

それはきっと、ヴォルケンリッターを含めリィーンにアギトも思っている事だから。

 

(ヴィータちゃん!!)

 

ユニゾン中のリィーンから叫びが聞こえる。

振り向く前に凄まじい衝撃を受けた。

耐えきれずに吹き飛んでしまう。

どうやらリィーンがシールドを張ってくれたみたいだ。

お返しにと敵にアイゼンを振りかざすが防がれてしまう。

 

「なんだ、こいつら。人形の癖に何でこんなに強い」

 

率直な感想だった。

二体の刀を構えた兎が連携を取りながら弾幕を張ってくる。

それを避けながら観察する。

あの二体だけ他の奴とは比べ物に成らない動きをしている。

弾幕を避けている間にいつの間にか懐に入られて急いでアイゼンで防ぐ。

力もケタ違いだ。

 

「気おつけて! それにはお兄様とタケミカヅチのデータが入ってます!」

 

妹の片割れがそれを口にする。

おいおい冗談じゃないぜ。

神を二柱も同時に相手にしてるってことじゃないか。

アイゼンで防いでる間にもう一体が後ろから弾幕を張って来た。

それをリィーンがシールドで防いでくれる。

しかし、流石は神のデータが入っているだけあって衝撃が半端じゃない。

 

「けどな!」

 

目の前の一体を蹴飛ばす。

そのままアイゼンを振り向きざまに後ろから近付いてきたもう一体の体にめり込む。

テートリヒ・シュラーク。アイゼンがハンマーフォルムの時に使用する攻撃。その意味は痛烈な一撃。防御されても相手を吹き飛ばす程の威力を持ち、命中・防御問わずに対象を破壊する。

アイゼンの一撃をくらった一体は近くのビルへと吸い込まれるように消えて行った。

遅れて聞こえてくる爆発音。

 

「どんなにうまく真似ても、所詮は人形何だよ」

 

前に振り替える。

残った一体が大勢を立て直し弾幕を張りながら近づいてくる。

 

「人形に負けてて神罰の執行者が務まるか!!」

 

弾幕をかいくぐり、アイゼンが相手をとらえる。

地面に叩きつけられた残りの一体が爆発する。

 

「今度作る時は、あたしのデータを入れるんだな」

 

そう言葉を発した。

 

パキッ!

 

何かに罅の入るような音がする。

音の方に目をやるとアイゼンに亀裂が走って居た。

くそう、限界かよ。

心の中で悪態を吐きながら神気をアイゼンのリカバーに回す。

今ここで武器を失う訳にはいかない。

今ここで武器を失えば護れなく成る。

セイバーが主になって、いろんな所を旅して、すっげー幸せだったんだ。

きっとセイバーが主に成って居なければ味わえなかった幸せ。

きっと此処で護れなくなってもセイバーはあたしたちを責めたり恨んだりはしないだろう。

でも、そうしたらきっと・・・・・

頬に涙が伝う。

アイゼンを握る両手が力み過ぎて震えだす。

 

「セイバーが笑わなく成ったら嫌だもんな」

 

だから、

 

「アイゼン!!」

 

叫びに答えるようにアイゼンが輝く。カードリッジが2つロードされる。

伸縮自在のアイゼンが後ろに伸び、巨大なハンマーに成る。

 

「轟天爆砕!」

 

一度ためを入れる。

 

「ギガントシュラーク!!」

 

ヴィータが持つ最大の技を繰り出す。出し惜しみは無しだ。

ヴィータの身の丈ほどもあるギガントフォルムを振り回し、さらに数十倍にまで巨大化させ、その質量と込められた魔力による、単純ゆえに強力無比な一撃を叩きつける。

日本語訳すると巨人族の一撃。その名に恥じぬ威力を見せ付ける。

近くにあったビルごと沢山の敵を巻き込んで地面へと叩きつけられる巨大なハンマー。

今の一撃で相当な数の敵を葬れた筈だ。

パワードスーツの奴はセイバーから言われているので殺しはしないが、それ以外なら何だってやってやる。

ミサイルが背中から直撃し地面に叩きつけられる。

 

「痛く・・・・・・無い!!」

 

もう戦闘が始まって早数時間。

騎士甲冑もボロボロになり、お気に入りだった、セイバーの作ってくれた呪い兎のついた帽子は敵の攻撃の中に消えて行った。

 

「あたしは今、すっげー幸せなんだ、だから痛くねー!」

 

意地を張るヴィータ。

アイゼンを杖代わりにして立ちあがる。

すぐさま残りのカードリッジを確認する。

魔力を含んだカードリッジが17発残っているがこれは使い物に成らない。

神気のカードリッジは残り6発。

自身の体に流れる神気は残りわずか。

昔と比べて科学が発達した世界ではあたしたち神の存在は無いと言われている。

何処かの哲学者が言っていたな。神は死んだと。

全くその通りだよ。

あたしたちは特殊な方法で今でも信仰を集められているが、昔に比べたらかなり減った。

オカルトマニアの連中が連日絶えないがそこから得られる信仰は微々たるもの。

それでも大神と言われる位の神格は維持できたが、それは戦闘で神気を使わないからだ。

今回のような神気を使った戦い、しかもこれ程大規模で長時間の戦闘で消耗戦に成れば神気が尽きる。

要するにガス欠が近いのだ。

それに周りを見渡せばまだまだ敵はわんさかいる。

ここぞという時の為に神気の込められたカードリッジは温存しときたいが状況がそれを許さない。

6発の内、3発をアイゼンにセットしてロードする。

一時的に爆発的に増大する神気を全てアイゼンのリカバーに回す。

アイゼンから空に成ったカードリッジが排出される。

そうしている間にも敵の攻撃は止む事が無い。

ミサイルにレーザー、霊力による弾幕。

リィーンのサポートで強化されたシールドを張るが破られて吹き飛ぶ。

リカバー中のアイゼンが手から離れてしまう。

攻撃の的となったアイゼンはリカバーが間に合わずに砕け散ってしまう。

ああ、終わった。

 

「セイバー、ごめん」

 

小さくそう呟いた。

リィーンとのユニゾンも強制解除される。

降り注ぐ攻撃の雨に目を瞑って構える。

しかし、不思議な事に攻撃が来ない。

それに不思議な浮遊感に見舞われている。

目を開く。

銀色に光る球体に入って居た。

 

「謝る事なんてありませんよ」

 

聞きなれた懐かしい声がする。

目の前には銀に輝く鎧を身にまとったセイバーが此方を優しく見て居た。

 

「鉄槌の騎士がこんなに成るまで戦ったんです。誇れども咎められる事なんて何一つ有りませんよ。それよりも遅くなってすいません、まさかこうまで遅く成るとは思いませんでしたから」

 

膨大な神気がセイバーからあたしに流れ込んでくる。

傷も手当してくれたのか治っている。

アイゼンも元通りだ。

多分全員に神気が供給されてるんだと思う。

 

「今まで何処で何してたんだよ」

 

「それは後ほど」

 

そう言って下ろされる。

言いたい事はまだまだたくさんあるが、確かに今は戦闘中だという事を思い出し深くは追求しなかった。

 

「さて、一度皆を呼び戻しますか」

 

その一言でシグナムにシャマルにザフィーラ、リインフォースが呼び戻される。

 

「リインフォース、ユニゾンを」

 

「はい、我が主」

 

セイバーにリインフォースがユニゾンする。

セイバーの目の色が碧色から青色に変わる。

光の球体に罅が入る。

そして音を立てて光の球体が割れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆け付けた時には皆が皆、疲弊しきって居た。

その事に申し訳なく思い、まずは一番ピンチだったヴィータを此方で強制召喚した。

ヴィータは普段はつんけんな態度をしているがその実、誰よりも人思いで責任感が強い子だ。

つんけんな態度は長い旅の中で少しづつ直せたが、それでも名残が残ってしまう。

今回も責任感の強さで無茶をした為か、泣きながら謝って居た。

それに罪悪感を覚える。

知って居たのに戦場に送った事に。

本当はヴォルケンズだけで鎮圧できると高を括って居た。

だから私は他の”用事”に専念していた。

まさかここまでの物だとは夢にも思わなかった。

この辺り、永琳が頑張り過ぎた所が窺える。

まさか魔法や霊力まで使えなく、あまつさえ神気の威力を半減にする結界を完成させていたなんて夢にも思わなかった。

流石は月の頭脳だな。

私なんかの仮初の才よりも本当の天才だな。

だが、この結界は私には通用しない。

私が例外なだけだけどね。

取り敢えず夜天の書を通して皆に枯渇した分の神気を供給する。

そのまま皆を私のもとへ強制召喚する。

最初こそ皆が一瞬戸惑ったが、私を見た瞬間に理解してくれたのか何も言ってこなかった。

ここら辺、長い時を一緒に旅してきた絆の賜物だろう。

さて、反転劇を始めようじゃないか。

リインフォースにユニゾンするように命じる。

最初のころは対魔力のせいでユニゾン何て出来なかったからな。

今でも能力なしではユニゾンできないが。

足もとに大きな三角形の魔方陣が出る。

因みに場所は依姫と豊姫の上だ。

全員に魔法と霊力を使えるようにする。

忌まわしいこの力が役に立つとはな、本当に皮肉だよ。世界って奴はとことん私を嫌っているらしい。

まぁ、今はこの力に感謝だがな。

最愛の妹達を助ける事が出来るのだからな。

 

シグナムが独白を始める。

 

「我ら、夜天の主の下に集いし騎士」

 

「主ある限り、我らの魂、尽きる事なし」

 

「この身に命ある限り、我らは御身の下に在り」

 

「我らが主、”夜天の王”。セイバーの名の下に!」

 

シャマル、ザフィーラ、ヴィータが独白に続く。

私にまとっていた光の球体が砕け散る。

私の登場に敵味方問わずに動揺が走る。

ゆっくりと依姫と豊姫のそばに降り立つ。

玉兎達だけが攻撃を続けて居るが、矢除けの加護を持つこの身に飛び道具は通用しない。

ある理由で矢除けの加護が一気に上昇したのだが、それはまた次の機会に話すとしよう。

剣を持って近づいてきた兎は魔力の刃によって貫かれて沈黙する。

無論、その魔力の刃を飛ばしたのは私だ。

手を伸ばし二人の頭を撫でる。

 

「大きく、そして美しく成られましたね」

 

その言葉に驚きの表情を浮かべ、顔を見合わせた後、

 

「お兄様、記憶が戻られたのですか」

 

そう言ってくる。

記憶か・・・・・。おそらく”彼”の事を言っているのだろう。

だが、私は彼とは違う。

 

「当たり前だ。大切な家族であり最愛の妹達であるあなた方を忘れるはずがないでしょう」

 

じゃあ、そう言いかけた彼女達の言葉を止める。

二人の唇にそれぞれ人差し指を立てた。

柔らかな感触が鎧越しにも伝わってくる。

言いたい事は解るが、これを片付けたあとでだ。

 

「さて、生憎負け続ける戦いは得意なんですけどね。今回はそうは言ってられないみたいですからね」

 

そう言って両手を天高く掲げる。

 

「今ここに勝利を誓おう」

 

そう力強く告げると同時に炎が走り、ゆっくりと掲げた上へと昇って行く。

炎が通った下には蒼銀に輝く美しい剣が姿を現す。

膨大な神気が溢れ出す。

星が鍛えた聖剣。過去、現在、未来を生き抜く兵達の情熱を太陽の光によって形作られた剣。

 

勝利の剣閃(ガラティーン)!!」

 

掲げられた剣に太陽の光が降り注ぐ。

ガラティーンの一撃は太陽の炎による一撃。

大量の陽光を浴び、それに答えるかのように剣に炎が灯る。

その一撃が敵をまとめてなぎ払う。月の都に一筋の炎の線が迸る。

無論、そこに民間人は居ない。武器庫めがけて一直線に進んでいく。

が、武器庫寸前で止まってしまう。

だがまだだ、まだ隠された力がこの剣にはある。

忠義に生きた騎士の思いとは別の、本当の名前が。

彼の王が持つ約束された勝利の剣に隠れてしまったもう一振りの勝利の剣だったもの。

その剣の名は”永久に誓われた勝利剣”

今解き放たれる。

 

「この剣は太陽の映し身!もう一振りの星の聖剣!!」

 

その名を表すように剣は美しい孤を描きながら天高く投げられた。

足元には太陽を表す模様が浮かび上がる。

天には小さいけれども、圧倒的な存在感を誇る太陽が現れる。

太陽に愛されたこの身はこの小さな太陽に力を増す。

三倍の三倍。

ふざけてるとしか言いようのない力が漲る。

 

輝けるかの剣こそは

過去現在未来を通じ

戦場に散っていく全ての兵達が

今際の際に懐く悲しくも尊きユメ―――

 

 

 

『栄光』という名の祈りの結晶

 

 

 

その意思を誇りと掲げ

その信義を貫けと糾し

今、太陽の騎士は高らかに

手に執る奇跡の真名を謳う

其は――

 

永久に誓う勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!!」

 

先の炎による一撃よりも強大な力を持った一撃が、圧倒的な炎となり、敵陣を飲み込む。

先程よりも威力を増した炎の剣戟は武器庫をそのまま飲み込み破壊する。

武器庫の中にはそれこそ月の都を一瞬で灰にするだけの量の核ミサイルも収納されているが、それをも関係ないと言わんばかりの一撃が核ミサイルの余波をも相殺する。

それでも暴れ出す核の光、それを空に浮かんだ擬似太陽が核の光をも飲み込む。

サイズこそ小さいものの、質量は太陽と同等だ。

それに太陽の聖剣だけあって、浄化の概念も付いている。

まぁ、この他にもこの数億年で様々な概念が追加されたが。

核の放射能も浄化していく。

最早焼け野原と化したこの光景を見てやり過ぎたか?

と思うが、これ位が丁度良い。

もう綿月に手を出す物が居なくなるだろう。

 

この光景を見たのかクーデター派の者が次々に降伏する。

先の二撃で殆どのクーデター派を殺した。

ヴィータ達にクーデター派を殺すなと言ったのは穢れが月に蔓延すると困るからだ。

最も、ガラティーンにかかればこれだけの浄化は大したことじゃない。

後は主犯格を叩くのみだ。

シャマルからの情報で反乱の原因は政界の幹部だという事が解っている。

政界の幹部ってからには無論、蓬莱の薬を飲んだ不死者なんだろうな。

でなきゃこうもすんなりと白旗を上げるとは考えにくい。

大方死なないからと高を括っているのだろう。

だが、そうはいかないよ。能力を使い逃げだした主犯格を目の前に出す。

こう言うのは好きじゃないんだけどね。

腐った部分は消さなきゃな。

鍵剣を使いある槍を出す。ミストルティン。

それが槍の名前。古ノルド語で「ヤドリギ」を意味する普通名詞。

その槍は不老不死の神を殺した神殺しの槍でもある。

無論不老不死を殺しただけあって、その効果はありとあらゆる物の天敵である。

私や一部の神祖の吸血鬼を除いたね。そもそも神祖の吸血鬼に死と言う概念が無い。格言う私もどちらかと言えばそちらよりだ。

不死者は皆この槍にて貫いた。するともとからそこに存在しなかったかの様に消えて行った。

さて、皆のもとへ帰ろうかね? 

降参の白旗が上がった時点で能力を使い、転移したからね。

そう言えリインフォースとユニゾンした意味あったかな。

一応炎熱加速はやってくれて居たみたいだけど。

まぁ、良いや。

これにて一件落着。

元の場所に戻ると依姫に豊姫がかけて来て抱きついてきた。

泣きながらお兄様お兄様連呼する二人を優しく抱きしめる。

その時に背中に加護の札を張り付けておく。

こんなことが二度と起こらないように願いを込めて。

有りっ丈の神気を注ぐ。

二人を優しく突き放し、背を向ける。

背中に羽織られたマントには雲霞んだ月が描かれて居て、その月の真ん中に綿月と書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上と母上に伝えて下さい。親不孝をお許し下さいと」

 

「「お兄様!!」」

 

二人の妹から声が掛けられる。

 

「お兄様、私達と一緒に月に住みましょう!」

 

「そうよ、そうしたらきっと・・・・」

 

それをセイバーは止めた。

 

「私はあの星の者、あなた方が忌み嫌う星の者なのですよ」

 

悲しげに笑った。

こう言った差別を許さない性格のお兄様がはっきりと口にした。

遠まわしに生きる世界が違うのだと言われた気がした。

次に呼びかけようとしたら居なく成って居た。

お兄様が居た場所には紙が残されていた。

ピンチに成ったら何時でもすぐに駆けつけます。

そう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

それから三日、軍の施設の立て直しに武器の確保、とまあ、忙しい日々を送って居た。

あのクーデターは月の都中で放送されていたらしく、お兄様の姿もはっきりととらえた映像が流れ、やはりセイバー様は月の都を見捨てなどしなかったのだとお祭り騒ぎ。

お兄様が月に残ってくれなかったのがゆいつの心残りである。




リインフォースⅠとリインフォースⅡを区別するためにわざとⅡの方をリィーンと呼ばせてます
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